山本譲二「詩乃ちゃん、今いくつ?」
藤崎詩乃「二十歳です」
譲二「二十歳かぁ…、若いよなぁ。こういう仕事の場以外で会ったら話、合わないだろうな、きっと。番組では一応簡単な台本があるから、それに沿って喋ったところで話が弾んだりもしたけどね」
詩乃「とても楽しかったです」
譲二「それは良かった。こちらも楽しかったですよ。若い人は溌剌としていてケレン味がなくて、いいなと思いますよ。詩乃ちゃん、滑舌もいいしね。歳とってくると滑舌が悪くなって、この頃よく噛むのよ。若い頃は立て板に水のごとく喋れたんだけどね。今は途中で止まっちゃったりしますからね、料金を払い忘れて電気が止まっちゃうみたいにね」
詩乃「山本さんって、そういう冗談もおっしゃるんですね(笑)」
譲二「“山本さん”じゃなくて“譲二さん”ね!なんだかよそよそしいから。で、こういうオヤジギャグっていうの?あんまり言わないんだけど、吉幾三に影響されてね(笑)」
詩乃「すみません!“譲二さん”ですね(笑)。私たち家族は譲二さんの「奥入瀬」が大好きでリスペクトの気持ちがあるものですから、ついかしこまってしまって。そういう方の番組に呼んでいただけたので今日はとても嬉しくて、生で“ジャンジャジャーン!”も聞けて感激しました」

譲二「おじいちゃんが「奥入瀬」を好きで、よく歌ってくれていたんだってね。ありがたいですよ。歌手冥利に尽きます」
詩乃「おじいちゃん、晩年は認知症だったんですけど、「奥入瀬」の歌詞は忘れずに歌えてました。私もよく一緒に歌っていたので、そらで歌えます」
譲二「嬉しいじゃん。詩乃ちゃんも歌ってくれたっていうのもそうだけど、おじいちゃん、認知症でも忘れないでいてくれたっていうのがね。歌ってすごいなって思いますよ。僕は、歌手になりたい、歌手になりたいと思って、18歳の時に夜行列車に飛び乗って一人で上京したんだけど、歌手になる道筋が全く見えなくて大変苦労したんだけど、詩乃ちゃんはどんな風にして歌手になったの?」
詩乃「私はおばあちゃんがカラオケ喫茶を営んでいたので、小さい頃から演歌・歌謡曲に馴染んでいたんです。それで歌うのも好きになって」
譲二「名前が“詩乃”だもんね。ご両親も歌が好きだったんだろうね」
詩乃「そうなんです、それで子供の頃から、私は詩乃だから歌手になるんだって思い込んでいたんです。それで中学校1年生、13歳の時に出場したカラオケ大会で水森英夫先生に声を掛けていただきました。私、その頃もう今と同じくらいの身長だったので、先生は22〜23歳くらいだと思われたそうなんですけど、13歳ではまだ早いからまずは高校までは通いなさいって言ってくださって、東京-福岡での遠距離レッスンを受けるようになりました」
譲二「これも時代の変化なんだろうね、遠距離レッスンなんて、僕らの時代では考えられなかったもんね。13歳でスカウトされたってことは、ずいぶん早く道が拓けましたよね?」
詩乃「はい、本当にありがたいことに」
譲二「僕なんて東京には出てきたものの何も変わらない毎日が6年も続いて、もうダメだなって思っていた時に偶然、浜圭介先生とお目に掛かれて。僕はその頃、弾き語りをしていたんだけど、先生に”ちょっと、こっちに来て”って呼ばれてね、”歌手になる気ないの?”って訊かれたんです。もう、すぐに”あります!”って答えてね。”でも、どうすればいいか、わかりませんでした”って言ったら”明日、僕の家においで”と。それでコースターに住所と電話番号を書いてくださって。”お名前はなんておっしゃるんですか?”って伺ったら”浜圭介です”。うぉー!この方が浜圭介先生かあ……と、信じられないような気持ちでしたよ」
詩乃「歯車が動き出したんですね?」
譲二「そうだね、それでご自宅に伺ったら奥村チヨさんが出迎えてくださって」
詩乃「奥様ですね」
譲二「”譲二くん、レコード会社もプロダクションも決めたから。デビュー曲も出来てるよ”って。もちろんものすごく嬉しいんだけど、それよりも嘘だろ!?って気持ちの方が大きいくらい。それで、きちんとデビューさせてもらえたんだけど、もっと早くデビューできていたら…とか、もっと早く「みちのくひとり旅」に出合えていたら…と思うことがあるんだよね。「みちのく」を歌ったのが31歳の時ですからね。東京に出てきて13年ですよ。長かったけど諦めなくてよかった。だから詩乃ちゃんも諦めないでね」
詩乃「はい、頑張ります!」
譲二「今はもちろんチャンスなんだけど、逃しても焦らないこと。チャンスはきっとまた巡ってくるから、その時のために努力を続けてね」
詩乃「はい、努力します!」
譲二「詩乃ちゃんと会うのは今日が3回目だけど、一番長く話せてるし、向き合って喋ってると改めて別嬪さんやなぁ……と。ホントにきれいな顔してる」
詩乃「ありがとうございます」
譲二「歌声も歌いっぷりもいいよね。張った声が良くて、そこにケレン味のなさも感じてね、遠慮なく歌うわよ!、みたいな。きっと水森さんもそういう風に指導されてるんだろうけど。「黒髪海峡」も素晴らしい曲だしね。今はなかなかCDが売れない時代でね、ヒットさせるのは簡単なことじゃないけど諦めないで、いずれは紅白にも出てほしいな。僕も何回か、13回かな……出させていただきましたけど、あの素晴らしい緊張感は他では味わえないものだから、ぜひ経験してもらいたいと思いますよ」
詩乃「はい、NHKホール、目指して頑張ります!でも、13回ってすごいですね。想像がつきません。デビューされてから50年以上歌われていて、新曲の「桜龍〜さくらりゅう〜」も素敵ですし、「奥入瀬」と同じくらいいい歌だなと思いました」
譲二「おお!そんな風に言ってもらえると嬉しいねぇ。詩乃ちゃんよりもずっと上の世代の歌ですけどね。僕は今76歳でね、大切な人をたくさん亡くしたから、この歌詞を読んだ時に、これは歌わなければいけないって思ったの。父さんや母さん、姉さん、そして友人たちへの鎮魂歌としてね。それから今日は「みちのくひとり旅」を歌ってもらいましたけど、素晴らしかったね」
詩乃「ありがとうございます! 緊張で手が震えてたんですけど(笑)。台本を持つ手が震えて紙がカサカサ揺れる音がするから手を離すようにって指示されまして、テーブルの下でこぶしを握り締めながら歌ってました。ご本人の前で歌うのって、こんなに緊張するものなんだって知りました。歌っている間、譲二さんのお顔を見られませんでしたから」
譲二「本人の前で歌うのは初めて?」
詩乃「はい、初めてです」
譲二「緊張したってことだけど、こっちも緊張しましたからね、ギター間違えたらいけないと。歌いやすいように弾かないとと思いながら演奏してましたよ」
詩乃「ありがとうございます。一生懸命歌わせていただけました」
譲二「いや、しっかり歌ってもらえて嬉しかったですよ。ところで番組の中でも話に出たけど家が福岡なのに下関の高校、それも名門の梅光学院に通ってたんだよね?」
詩乃「音楽を勉強したかったんですけど地元には音楽科のある学校がなかったので」
譲二「歴史もあるんだよね?」
詩乃「開校して150年以上ですね。帰る時の挨拶は“ごきげんよう”でした(笑)。私が入学した時には女子校から共学に替わっていたんですけど、男子は学年に3人くらいしかいませんでした。それで今は大学に通っているんですけど女子大なので、ずっと女子校ノリが抜けないんです」
譲二「梅光って坂の上の方にあるよね? 僕は早鞆(はやとも)高校で野球の練習に明け暮れていてね、放課後の特訓が終わると、もしかしたら梅光の女の子が下りてくるんじゃないかと、帰りはわざわざ遠回りして坂を上ったもんですよ」
詩乃「確かに早鞆の方からだと遠回りですよね(笑)」
譲二「それでも遅くまで練習してたから夜の9時頃で、そんな時間に女子高生が歩いてるわけないんだ(笑)。しょうがないから“唐戸(唐戸市場)でうどん食って帰ろう!”そんな高校生活でしたね」
詩乃「唐戸市場、懐かしい!」
譲二「桃太郎なんて知ってる?」
詩乃「知ってます!」
譲二「美味いよね !?」
詩乃「めっちゃ美味しいです。桃太郎のうどんを食べるためだけに下関に行ったこともありました」
譲二「しかし時代は違うけど、同じ坂道を通って高校に通っていたとはね。何か不思議な縁みたいなものを感じますよ」
詩乃「桃太郎でも繋がってますし(笑)」
譲二「よく通ったなあ……いつも天ぷらうどんとぜんざいでね。両方とも50円だったな」
詩乃「50円 !?」
譲二「そう、練習終わっての帰りだから、めちゃくちゃ腹が減ってるんよ。それで天ぷらうどんとぜんざい食べて、家に帰ってからまたどんぶり飯2杯くらい食べてさ」
詩乃「さすがに値上がりしてますけど、天ぷらうどん360円ですから、今も桃太郎は学生の味方ですね」
譲二「なんだか地元の話で、懐かしい青春時代を思い出させてもらったけど、詩乃ちゃんは今、いろんな所を飛び回ってるでしょう?」
詩乃「お蔭さまで、たくさん初めての場所に伺って、初めての経験もいっぱいさせていただいてます」
譲二「番組の中で、それが鏡に映った姿だと気付かないで、鏡の中の社長に向かって駆け出していたって、面白い話を聞かせてもらったけど、何か他に失敗談みたいなのってある?」
詩乃「あの、譲二さんとご一緒させていただいた番組でのことなんですけど、トークを撮った後に感想を求められて私”トーク番組に出演するのは初めてなんですけど”って言っちゃったんです、歌番組だったのに(笑)」
譲二「あれは面白かったな(笑)。詩乃ちゃんって、ちょっと天然?」
詩乃「そう……なのかも知れないです。A型なのに本当によく”B型でしょ?”って言われますし」
譲二「B型って変わり者、いやユニークって言った方がいいか、そういう人が多いんだよね?」
詩乃「でも私A型なので、単に変な人ってことかも知れないですね(笑)」
譲二「でも、詩乃ちゃんは明るくて、はきはき喋るからいいよね。それに噛まないし(笑)。ケレン味もないから今のままの自分を大事にしていってほしいですよ」
詩乃「ありがとうございます。譲二さんはケレン味がないことをとても大切にしていらっしゃるんですね?」
譲二「僕自身、52年、ケレン味なく頑張ってきたつもりですから。いつ、どんな時でも、はっきりと正直に生きていこうと、そんな風にやってきましたからね。右だ左だと迷ったりせずに、進むならど真ん中ですよ。自分がそうだから、そういう人が好きだしね」
詩乃「私も誤魔化したり膨らませたりするのは嫌いで、物事にははっきりと白黒つけたい性格です。私も小学生の時、野球をやっていましたので、投げるなら迷わずど真ん中ストレートでいきたいです」
譲二「打つ方はどうだった?」
詩乃「バントが上手でした」
譲二「バントも大事だけどさ、歌手になったらヒットを狙わないとな」
詩乃「それじゃ満塁ホームランを狙います(笑)」
譲二「さっきも言ったけど今は本当に厳しい時代。でも、ホームランを夢見て頑張らないと。一度しかない人生、小ぢんまり生きていても面白くないから。大きく生きて、大きく歌って、大恋愛もすればいいよ。たとえ失敗することがあったって、そこから得るものもあるからね。自分の人生に起こったことは全て身にして歌に活かして、味にしていってもらえたらいいと思うな」
詩乃「はい!人間として厚みが出るように努力していきます。あ、身体の厚みじゃないですよ(笑)。譲二さんみたいな人としての魅力が豊かな人になりたいです」
譲二「これはまた嬉しいことを(笑)」
詩乃「今日、収録からこれまでお話しさせていただいて素敵だなと感じることがいっぱいありましたし、譲二さんがお話しされる時に自然に方言を混じえていらっしゃるのがいいなと思って。私は上京してから方言を使わないようにしてしまっているので。親や地元の友だちと喋る時は方言なんですけど、それ以外は標準語で、譲二さんみたいに程よく混ぜるみたいなことができないんです」
譲二「番組のタイトルが「ぶち好きやけー!」って下関の言葉だからね、自然に出ちゃうんだな”いけんわね”とか”わや言うな、なに言いよるんか!?”とかね。詩乃ちゃんも地元の言葉で話した方がウケるかも知れないよ。絶対その方が印象に残るだろうし。”なんちかんち言いなんな!”とか」
詩乃「なんちかんち言いなんな!(笑)」
譲二「北九州の言葉で「ぶち好きやけー!」はなんて言う?」
詩乃「”ばり好きやけん”です」
譲二「じゃあ『藤崎詩乃の「ばり好きやけん」』って番組を持てるようになるといいな。そうしたら詩乃ちゃんも自然に方言が出るようになるかも知れない」
詩乃「うわー!そうなったら楽しそうですね。今はどちらに伺っても緊張でカチンコチンなので、もうちょっと素の自分を出せたらいいなと思っていますので」

譲二「それじゃあ早く番組を持てるように頑張ろう。といったところで、まだまだ暑い日が続いてますので、この記事を読んでくださっている皆さんにはくれぐれも身体を大事にしてほしいと思うんですけども、とにかく危険な暑さですからね、必要な外出以外は避けて家にいた方がいいですね。それで暑いと食欲もなかなか湧かなかったりしますから、いろいろ工夫してきちんと栄養を摂るようにしてね。詩乃ちゃんは、どう? ちゃんと食べてる?」
詩乃「私は旬のものを食べるのがいいと思っているので、最近は夏野菜を使った料理をよく食べています」
譲二「料理はするんだ?」
詩乃「私、食べることが趣味なので、ご飯に対する執着が人一倍強いんです。だから、そこについては時間も手間も惜しみません」
譲二「食べるのが好きならグルメ番組なんかにも呼んでもらえるようになるといいよね」
詩乃「出たいです! 辛いものもいけますので激辛チャレンジなんかもしてみたいです」
譲二「大食いは?」
詩乃「どうなんでしょう?でも、皆さんが想像される5倍くらいは食べると思います」
譲二「想像の5倍って、それはもう大食いじゃないの(笑)?」
詩乃「そうかも知れないですね。打ち上げなんかでも”まだ食べてるの?”なんて言われることが多くて、社長からは”もう少し控えめに食べようね”って言われます(笑)」
▼USEN MUSIC「元気はつらつ歌謡曲」チャンネル内「ジョージのぶち好きやけー!」の番組収録で。この日のゲストは藤崎詩乃と楠木康平の若手演歌歌手ふたり。
譲二「ま、ほどほどにってことで、そろそろ締めますけど、ここはお互いに曲のPRをさせてもらいましょう。わたくし山本譲二は「桜龍〜さくらりゅう〜」を歌っていまして、 なかなかCDが売れない時代だからこそ自信を持って聴いていただける歌を歌っていきたいと思っているところでリリースした作品です。全くの作り事ではなくて、いわゆる等身大の、山本譲二と同じ、あるいは近い世代の方には共感してもらえる曲だと思っていますから”わかる!””これは自分の歌だ”と感じてくださる方が一人でも多くいてくれることを願いながら心を込めて歌っていきます」
詩乃「わたし藤崎詩乃の「黒髪海峡」は、初めていただいたオリジナル曲ですので、大事に一曲入魂、全身全霊で歌わせていただいています。私には少し大人の歌ですが二十歳の今の精一杯を出し切って表現していますので、是非お聴きになって、そして歌ってみていただきたいです」
譲二「はい、詩乃ちゃん、どうもありがとう。ということで、皆さん、「黒髪海峡」そして「桜龍〜さくらりゅう〜」、よろしくお願いします!」
詩乃「よろしくお願いします。譲二さん、どうもありがとうございました!」
(おわり)
取材・文/永井 淳
写真/平野哲郎


