ジャズ喫茶を代表するジャズマンは誰かというと、それはジャッキー・マクリーンではないだろうか。マイルスやエヴァンスはもちろん素晴らしいミュージシャンだが、彼らはジャズ喫茶と関わり無く多くのファンを獲得している。だがマクリーンは、ジャズ喫茶という特別な場所から人気が広まった、マニア好みなジャズマンなのだ。

実際、ジャズ喫茶にマクリーンはよく似合う。どの時代のどんなアルバムをかけても場の空気にしっくりと馴染む。だから店の選曲でも彼の登場回数は多い。それを反映し、私の選曲している有線の番組でも、マクリーンは定番になっている。そのジャズ喫茶代表選手、ジャッキー・クリーンを3回にわたってご紹介しよう。今回はその第1回目として、プレスティッジ時代を中心に初期マクリーンの名盤をお楽しみください。

アルトサックス奏者、ジャッキー・マクリーンがファンの眼に留まった最初のアルバムが、1951年、マイルスのサイドマンとして録音に加わった『ディグ』(Prestige)だ。チャーリー・パーカーをアイドルとしたマクリーンらしく、かなりパーカーに似ている。しかし、当然だけどまだ後年の闊達さはない。一生懸命パーカーの役割を演じているところがほほえましい。最初にソロをとっているのはマクリーンの友人でもあるソニー・ロリンズで、マクリーンの登場はマイルスの後。

その後マクリーンは白人ピアノ奏者、ジョージ・ウォリントンのクインテットに在籍し、トランペットのドナルド・バードとともにハードバップの名脇役としてスタートを切る。ご紹介する曲はベース奏者、オスカー・ペティフォードの名曲《ボヘミア・アフター・ダーク》。最後にオマケのように付いている短い曲はマクリーン作の《ザ・ペック》だ。ちなみに原盤のプログレッシヴ盤は、超幻の名盤。

次にマクリーンが参加したのが、有名なチャールス・ミンガスのアルバム『直立猿人』(Atlantic)。白人テナー奏者、J.R.モントローズとたった二人のフロントで、2管とは思えない分厚いサウンドを提供している。しかしこれはミンガスのリーダー・シップが功を奏していると言ってよいだろう。

そしていよいよマクリーンがリーダーとして個性を発揮するアルバムのご紹介だ。最初は、後にアート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズでともにフロントを勤める、トランペットのビル・ハードマンをフィーチャーした『ジャッキーズ・パル』(Prestige)。あまり有名なアルバムではないが、マクリーン、プレスティッジ時代を象徴する鄙びた味の隠れ名盤で、ジャズ喫茶ではどんな状況でかけてもハズさない、重宝するアルバム。

続いて、根っからのマクリーンフリークが愛聴する『ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース』(New Jazz)。ただしこれはアナログ時代にB面に収録されたワンホーン・セッションが聴き所。しみじみと歌いかけるマクリーン節は絶品だ。そしてこれもマクリーンのマイナー・ムードが満喫できる『ファット・ジャズ』(Jubilee)は、レイ・ドレイパーのチューバが珍しい、3管アレンジがポイント。『メイキン・ザ・チェンジス』(New Jazz)も地味なアルバムだけれど、ワンホーンで吹きまくる《ビーン・アンド・ボーイズ》の気持ちよさがやみつきになる。そして最後を飾るのが、説明不要50年代マクリーンの代表作『4,5&6』(Prestige)から、有名な《センチメンタル・ジャーニー》。なぜかしら懐かしさを感じさせる名演だ。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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