INTERVIEW
――6ヶ月連続配信シングルのラストは「モガケ!」になりました。この曲は今年3月に関西コレクションにゲスト出演した際に初披露され、さらにイベント出演時や先日行われていたツアーでも歌われていた曲ですよね。これを第6弾としてリリースしようというのは、いつ頃決めたんですか?
「「LUV ME,LUV ME」くらいだったと思います。「モガケ!」をラストにするのが一番バランスがいい気がするし、その先のアルバムで伝えたいメッセージや今みんなの背中を押すっていう意味も含めて、6ヶ月連続リリースの締めにふさわしい強い楽曲なんじゃないかと思いましたから。それでスタッフとも相談して、この曲を第6弾にしたんです」
――歌詞の中にアルバムタイトルにもなっている<New Frontier>というワードも入っていますしね。それに今言った通り、聴く人の背中を押す楽曲にもなっていると思います。そういう楽曲になったのは、昨年から続いているコロナ禍の状況も鑑みてのことですか?
「そうですね。それにちょうど「モガケ!」という楽曲が出来上がった頃が、今の音楽チームに出会ったくらいのタイミングだったんですよ。僕は、完璧な準備をして独立したわけではなかったので、当たり前ですけど、最初は周りにスタッフも何もかもいなかったんですね。でも、僕の思いに共感してくれたり、手を差し伸べてくれる方がどんどん増えてきて、そのときにこの曲が出来たんです。つまり、当時の僕自身ももがきまくっていた。だから、すごく思い入れもあるんですよ」
――この曲が出来たことが、まさに手越くん自身の背中を押したんですね。
「そうです、そうです。もちろん制作するときにも今の時代プラス僕自身の現状というところのリンクは大切にして楽曲を発注したんですけれど、完成したものは本当に当時の自分と重なりましたね。だから、この曲を初めて披露したのは京セラドーム大阪で行われた関西コレクションのステージ上だったんですけど、そのときも、”やっと音楽活動をちゃんと出来る。やっとここまで来たな!”っていう喜びの中で1曲目に持ってきたんです。僕は、その前にバトルロイヤルゲーム『荒野行動』の3周年記念イベントで「wake me up」っていう曲を歌ったんですけど、そのときなんて音楽チームは誰もいませんでしたから。でも、その数ヶ月後に音楽チームとこの「モガケ!」が出来た。それだけに喜びは大きかったですね」
――手越くんとしては、やはり音楽活動を主軸にしていきたかったんですね。
「はい。だから、”なんとかしなきゃ!”って思って、当時はこの歌詞の通り、すごくもがいていました」
――ということは、ある種、独立後の自分の初心を思い出す曲にもなっているんですね。それで連続リリースの最後にしよう、と。
「そうです。最初じゃなくて。ここまでいろいろなイベントで歌ったり、自分のツアーでも歌ったりしてきましたしね。もちろん、そのときはMVもなければジャケット写真もなかったんですけど、その場に来てくれたみんなは曲は知っている。じゃあ、「モガケ!」でいこうよっていう感じですね」
――独立後も音楽をやっていきたいと思ったのは、やっぱり音楽でたくさんの人をバックアップしたり、救ったりしたいという思いが大きいからですか?
「大きいですね。前回のインタビューでも言ったと思いますけど、言葉で言うより音楽に乗せて伝えたほうが、聴いてくれる人の心にスッと入っていくと思うんですよ。誰もが素直に聴けるというか。だから、音楽の存在ってすごくデカいし、たくさんの人を救っていると僕は思っているんです」
――手越くん自身も救われましたか?
「はい。やっぱり力をもらえますよね。しかも、僕は高校通学中に「アゲハ蝶」を聴いていたんですけど、その曲を聴くと当時の情景も一緒に浮かぶんですよ。そういう不思議なパワーを音楽は持っている。だから、「モガケ!」を聴いてくれた人が、少しでも明日からの人生に勇気を持ってトライしてくれたらいいなと思いますね」
――特にこの2年くらいは、たくさんのガマンを強いられて心が疲弊している人も多いと思うんです。だから、「モガケ!」のストレートなメッセージに勇気をもらえる人はたくさんいるでしょうね。そして、そういう楽曲だけに手越くんの歌声も、とても真っすぐ。言葉が伝わるようにクセも全部排除して歌っている印象を受けました。
「こういう真正面からメッセージを伝えるような楽曲に関しては、僕は敢えて声の出し方は何も意識せずに歌っているんですよ。「ウインク」や「シナモン」は声を作っていますけど、等身大の自分のままでいける曲は、もう本当にそのまんま。普通にマイクの前で出したい声を出すようにしていますね」
――等身大の思いを歌に乗せたからこそ、聴く人に届くのかもしれないですね。
「そうだといいなと思います。1番のAメロに<突然に世界が姿を変えた日を その痛みをその嘆きを覚えてる>っていう歌詞があるんですけど、これって、いろいろなことに当てはまると思うんですよ。コロナのパンデミックもそうでしょうし、震災とかもそう。個人的な事故もそうですよね。人間、いつ何があるかわからないので、突然大事なものがなくなることあるかもしれない。でも、その痛みを背負い、例えば失った人がいたなら、その人の分も強くなって前を向いて歩んで行くしかないと思うんですよ。だから、僕はこの歌詞がすごく好きなんです」
――個人的には、手越くんってスーパーポジティブな人だと思っているんですけど、それでももがいたりあがいたりするんですね。
「めっちゃしますよ。特に僕は周りが今までやったことのないことや、挑戦した人がいないルートを通りたい願望があるんですね。だから、僕と同じように独立した人たちの中には、その後それぞれの好きなことを自分のペースでやっている人もいますけど、僕は全てを派手にやっている(笑)。やっぱり夢と希望を下の世代に与えたいですからね。ひそかに成功していたのでは、それはわからないので、ちゃんと伝えたいんです。僕の場合、全ての活動がネットニュースとかに取り上げられますけど、僕はそれはありがたいと思っていて。だって、その結果、“あいつ、独立しても楽しそうだな”とか“こういう道もあるんだな”ってわかってもらえますからね。でも、人が通っていない新しいルートって、ものすごく茨ではあるんですよ。誰かが整備してくれていたらラクなんですけど、そうじゃない生き方を僕はしていっていて、それは難易度が高いダンジョン。静かに活動している人より矢も降ってくるし、心無い言葉も受けるんです。それに対してあがいたことももがいたこともあれば、すごく傷ついたこともありますけど、「モガケ!」の歌詞にもあるように<答えのない坂道を転がって それでもそれでも前へ>行くしかない。決して後ろは見ず、絶対に前だけを見て進むようにしていますね」
――それが手越くんの生き方なんですね。
「そうです。「スぺプラ手越~Music Connect~」っていう番組で、よくバンドのボーカルに聞かれるんですよ。“何でそんなにポジティブなの?”って。でも、僕はポジティブっていうシールドの作り方とかわし方、それに切り替え方がうまいだけ。中にいる僕は不死身じゃないので、みんなと同じように1回は傷はつくんです」
――自分自身も傷を負い、あがいたりもがいたりしている。そういう手越くんが歌うからこそ、「モガケ!」には説得力があるんでしょうね。そして、今言っていたような生き方そのものに励まされる人もいると思います。
「でも、僕の生き方は、わかってくれる人にわかってもらえさえすればいいと思っているんですよ。何かにチャレンジしたい人に僕の活動が刺さればいい。昔からですけど、全員にわかってほしいと思ったことは一度もないんです。イカよりマグロが好きっていう人に、どんなにイカの素晴らしさをプレゼンしても無理ですからね(笑)」
――確かに(笑)。だから、そういう意味でも音楽はいいですよね。手越くんを知らない人も、純粋にいい曲だなって思えば聴くでしょうから。
「そうなんです。スポーツや音楽の力は必要不可欠だなって思いますね。音楽やアスリートが頑張って戦っている姿は、何の弊害もなくダイレクトに心に届くので」
――コロナ禍で一時期はエンターテインメントがほぼ姿を消すような状況になりました。でも、徐々にそれが戻ってきたときに、やっぱりとても喜びを感じたんですね。だから、大変な出来事ではありますけど、逆に言うと、改めてエンターテインメントの価値や意義を感じた年でもあった気がします。
「僕らから言っても、そういう部分はありましたね。「スぺプラ手越」でいろんなバンドのボーカリストやアーティストと自分のライブへの思いを話すじゃないですか。そうするとみんな、”今まで当たり前だと思っていたものが当たり前じゃなかったことに気づいた”って言うんですよ。ライブでひとりひとりのお客さんと出会えること。コール&レスポンスが出来ること。フルキャパで自由に音楽が出来ること。そういうひとつひとつに改めてありがたみを感じるようになったって。だから、ポジティブに考えると、今回のことは、一度、心をフラットに戻すきっかけにはなったと思いますね」
――手越くんも今年東名阪のワンマンツアーを行いました。そこで自分のためにチケット代と時間と労力を使って会場に足を運んでくれる人たちがいるのは、本当にすごいことだなって実感したんじゃないですか?
「そうですね。その感覚を味わいました。でも正直言えば、やっぱり登場時の黄色い歓声は欲しい(笑)。それを考えてライブって作っているところがあるので(笑)。それに僕は、みんなのおかげであの気持ち良さをずっと味わうことが出来て来た人。だから、早く声を出せる状況になってほしいですね」
――年明けにはアルバムを引っさげたツアーも予定されています。その頃には、今より状況が良くなっているといいですよね。
「そうですね。そして、そのときには、ぜひアルバムを聴いて来てほしいです。アルバムを聴いた、みんなの反応が楽しみで仕方ないですから」
――アルバムのお話は次回じっくりお聞きしたいと思っていますが、現時点では、どんな1枚になりそうですか?
「今までリリースしてきたシングルでも、様々な曲調や声の出し方、メッセージといった具合に、6作6様だったと思うんですね。それがさらに広がるのが、今度リリースするアルバムです。それにその後にツアーが控えているので、それを見据えた選曲にもなっていて。ツアーでパフォーマンスしていることを想像しながら作りましたから」
――ということは、ツアーでは全曲披露する予定ですか?
「もちろん!」
――それは楽しみですね。ちなみに「モガケ!」ですが、楽曲が出来た当時にはなかったMVは、もう撮影したんですか?
「もうすぐ撮ります(笑)」
――(インタビューは11月下旬)また結構ギリギリな(笑)。
「ギリです(笑)。でも、この間、監督と打ち合わせをさせていただいて、自分なりのアイディアもいろいろ出させていただきました。もし変わったら申し訳ないんですけど、今の段階ではドラマ調にしようかなと思っているんですよ。曲が始まる前にひとつのドラマがあって、その中で主人公のいろいろな葛藤が描かれるんですね。そして、それに対して僕のリップが入って来るみたいなイメージです」
――演じるのは役者さんですか?
「はい。僕がYouTubeでやっていた「キミコイ(君が決めた恋をした。)」っていう番組に出ていた女の子に主役をやってもらおうかなって思っています。僕は、その子を「モガケ!」を歌って応援する役割ですね。でも、もちろんお芝居部分も僕がディレクションしますし、ロケ地も僕が16歳くらいの、まだ右も左もわからないときに出た映画と同じ場所を使おうかなって思っています」
――映画『疾走』ですね!
「そうです、そうです。その当時も僕はもがきまくっていましたから。芝居もわからない中で主演をやって、ニュー・モントリオール国際映画祭にも招待されたりして、わけがわからないままに戦いまくっていた。だから、せっかくならそういう過去の自分ともリンクさせたら面白いかなって思ったんです」
――それはいい試みだと思うので、今のアイディアが実現することを願っています。
(Vol.7につづく)
- 取材・文/星野 櫻
- 写真/encore編集部
Message from 手越祐也
“モガケ!足掻け!”~前に進む原動力
USENのウェブマガジン「encore」では、手越祐也の6ヵ月連続デジタルリリースに合わせて6ヵ月にわたるインタビューを連載!せっかくなので毎回テーマを設けて手越祐也本人にメッセージを発信してもらうことにした。第6回目のテーマは「モガケ!」の歌詞にもあるフレーズ、“モガケ!足掻け!”と前に進む原動力は?
人かな。これは芸能界に限らずですけど、組織の中にいる場合、日本の教えとしては、“その組織内の人とうまくやっていきなさい”っていう感じだと思うんですよ。でも、僕は20歳の頃から、いい悪いは別にして、組織内のつきあいって、ほぼしなかったんです。それは、いつか新しいステップに行くと思っていたから。そうなったとき、同じ組織内の人は助けてくれないですからね。だから、もっと広い世界を見て、そこのいいところも悪いところも知った上で、“どれが自分に合っているのか?”、“どんな将来に自分が進んでいきたいのか?”っていうのを20歳くらいから考えて来ていたんです。それで様々な職種の人たちと触れ合ってきましたし、大きな企業のトップの方たちとも親しくさせていただいていたんですよ。そういう方たちのことを近くで接して見ていると、やっぱりみんな楽しそうだし、誹謗中傷なんて言っていない。そんな時間があったら、自分の夢を語るほうに使いますからね。しかも、社長業もしっかりやっているので本当はものすごく忙しいはずなのに、遊びも全力でやっている。それは効率がいいからなんです。自分で自分をコントロールできるから、例えば忙しくて飲みに行く暇がないとか、トレーニングする時間がないっていうような言い訳を絶対にしないんですよ。そういう人とばかり僕は接してきた。そのことが、今まで先輩たちが作ってきた道じゃなく、それとは別の新しい道にチャレンジできる原動力になっているんだと思います。そんな一流の方たちの生き方が僕の生き方のお手本になっているんです。サッカー選手にクリスチアーノ・ロナウドっていう超一流の人がいるんですよ。僕がサッカーキャスターをやっていたとき、彼の周りの人にインタビューしたんですね。そしたら、みんなが口々に“クリスチアーノ・ロナウドはすごい。最初に練習場に来て、最後に帰る。あれだけのスター選手なのに、練習熱心で常に身体のこと、サッカーのことを考えている”って言うんですよ。クリスチアーノ・ロナウドのそういう姿勢が、周りの選手にいい影響を与えている。そういうクリスチアーノ・ロナウドみたいな人が、僕の周りにもいっぱいいるんです。“あの人の生き方ってカッコイイな。人生が楽しそうだな”っていう姿をいっぱい見て来た。だから、そういう素晴らしい方たちとのいい出会いが、僕の原動力になっていますね。こんなふうに、広い世界を見て来たからこそ、今があるわけで。組織の中しか知らなかったら、独立して一歩外に出たとき、全く動けなかったと思います。何もわからないですから。もちろん大きな組織に骨をうずめるのも、それはそれで素晴らしいと思うんですよ。でも、僕は新しいことにチャレンジしていきたい性格。そう考えると、そのチャレンジ精神も僕の原動力になっているかもしれないですね。
Movie
Release Information
手越祐也『NEW FRONTIER』
2021年12月22日(水)発売
初回限定盤/FLCF-4526/4,800円(税込)
フォーライフミュージック
手越祐也『NEW FRONTIER』
2021年12月22日(水)発売
通常盤/FLCF-4527/3,300円(税込)
フォーライフミュージック
手越祐也「モガケ!」
2021年12月15日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ONE LIFE」
2021年11月24日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ウインク」
2021年10月13日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「LUV ME, LUV ME」
2021年9月22日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ARE U READY」
2021年8月18日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「シナモン」
2021年7月7日(水)配信
フォーライフミュージック
Live Information
手越祐也 LIVE TOUR 2022 NEW FRONTIER
1月29日(土)@東京エレクトロンホール宮城
2月6日(日)@名古屋国際会議場センチュリーホール
2月10日(木)@福岡サンパレス ホテル&ホール
2月13日(日)@札幌カナモトホール
2月19日(土)@よこすか芸術劇場 大ホール
2月24日(木)@オリックス劇場(大阪)
2月25日(金)@オリックス劇場(大阪)
3月3日(木)@LINE CUBE SHIBUYA(東京)