INTERVIEW
――ついに来ましたね!配信5回目にして正統派のバラードが。
「ハハハ!そうですね。“ついに”っていう感じではあると思います(笑)」
――当然どこかでバラードは来るだろうと予想はしていました。でも、この「ONE LIFE」は、失恋のバラードのようなせつないものではなく、自分の生き方を表明したポジティブな楽曲。手越くんとしても、今の自分の意志をこの曲でしっかりと表現しておこうと考えたんですか?
「そうですね。12月22日にリリースするアルバム『NEW FRONTIER』というタイトルも今の時代や今の自分に重なる部分があるんですけど、この「ONE LIFE」も僕自身の物語だったり人生でもあるんです。でも、それと同時に全ての人に、それぞれの“ONE LIFE”が存在する。だから、僕のことを含め、自分の人生は自分のものだということを歌いたかったんですよ。僕もいろいろな人から相談されることがあるんですけど、みんな人の目を気にして、人のために人生を生きちゃっているところがある気がするんですね。でも、自分のための人生なんだから、周りの目を気にせず、やりたい道を進むべきだと思うんですよ。僕は最近ずっとそう思っているので、そんな自分にも重ねつつ、聴いてくれるみんなにとっても少しでも背中を押せる曲になったらいいと思ったんです」
――自分で自分の道を選び、そこを歩いて行く。そういう思いに溢れた、とても勇気をもらえるバラードだと思います。
「さっきおっしゃっていましたけど、今まで僕が歌ってきたバラードって、本当に失恋の曲が多かったんですよ(笑)。泣きながら歌いたくなるようなバラードばかりだった。だから、この曲は僕にとって初めてと言ってもいいくらい前向きなバラードだと思います(笑)」
――失恋のバラードも素敵ですけど、今回のバラードも温かい気持ちになれてよかったですよ。
「僕自身も感動しました。こういうバラードもいいなって。やっぱり新たな発見は何年歌っていてもありますね」
――それは素晴らしいことですね。それに歌詞の中には<君>というワードも出てきます。そして、その<君>は<僕を照らす光>だと表現されていますよね。これは手越くんを応援してくださっている方たちのことですか?
「そうですね。特にソロアーティストになってから応援してくださるみなさんは、僕の生きざまも含めて応援してくださっていて、僕のチャレンジを一緒に楽しんでくれる人が多いんですよ。だから、きっとこの曲がより強く響くと思うんです。そしてその結果、最初にも言ったように、自分自身の人生にも照らし合わせてもらえたらなと思いますね。直接言葉にすると強くなっちゃうことも、音楽に乗せればスッと入ってくると思いますから」
――あれって不思議ですよね。でも、それこそが音楽の力なんだと思います。この歌詞の内容に関しては、今回も作家さんとやりとりして決めていったんですか?
「はい。バラードで行くぞと決めたときから、今までの楽曲同様、”こんなイメージで、こういうメッセージ性のある歌詞がいいんじゃないか?”ということは、全部お伝えさせていただきました。その後、今回のプロデュースを武部聡志さんがやってくださることが決まって。それで思ったのが、”いろいろなトップアーティストとやってきた百戦錬磨の武部さんと組むなら、前向きでドン!とした厚みのあるバラードしかないな”ということ。だから、そこからどんどんディスカッションしながら完成に近づけていった感じですね」
――生バンドとオーケストラを使って。
「もう武部さんがやるからには、”絶対に武部バンドでしょ!”って思いますからね。その結果、鶴屋智生さん(ドラム)、浜崎賢太さん(ベース)、石成正人さん(ギター)、今野均ストリングスという超有名なミュージシャンが集まってくださったので、本当に感動しました。楽器のレコーディングのとき、武部さんが“手越も来てよ”っておっしゃったので、”もちろん!”と言って行ったんですけど、急に“手越、歌える?”って言って来て(笑)。”え、朝イチで!?”って思ったんですけど、“手越が歌ってくれたほうが、みんなも弾きやすいから”って言われたので、確かにと思って、いきなりブースに入って歌ったんです。そしたら武部さん以外のスーパーバンドのミュージシャンたちも“やっぱりボーカルが乗ると最高だね!”って言ってくださったので、入ってよかったと思いました」
――まさにコラボレーションですね。
「そうですね。でも、武部さんはトラックダウンまで全部一緒にやってくださったんですけど、ボーカル録りは最後だったので、バンドの方は最終的な僕の歌は聴いてないんですよ。だから、この仕上がりに対する、みなさんの感想も聞きたいなって思っています」
――バンドの音も素晴らしいですけど、ストリングスもとても素敵ですよね。
「そう!ストリングスで一気に世界が変わるんですよ。やっぱり、あの人間の温かさには打ち込みは勝てない。どんなにAIが進歩しても無理でしょうね」
――人間が弾くことで音に深みも出ますし、ぬくもりも出ますからね。
「どんどん血が通っていく感じがするんですよ。それが楽しいです。なんていうか、ストリングスが入ってくると、どんどん世界が壮大になっていくんですよね。狭いところで歌っているのではなく、大海原で歌っているようなイメージというか。だから、歌も大きく大きく歌おうと思えました」
――私もこの曲を聴いていたとき、広い草原が見えました。
「今回のMVは、まさにそんな感じです。めちゃめちゃ作られた世界観だった「ウインク」に対して、今回は自然の中に自然体の僕がいるんですよ。「ONE LIFE」は、歌詞もサウンドもメロディラインも素晴らしい。だから、目に入ってくる情報で、この曲の世界観を悪い意味で邪魔してしまうのは嫌だったんです。「ウインク」や「LUV ME, LUV ME」みたいなタイプの曲だったら、情報を詰め込めば詰め込むほどよくなっていく。でも、「ONE LIFE」の場合は、あくまでもみんなの心に、この歌とサウンドが届いてくれたらいいなと思ったんです」
――はい。生音に乗って、手越くんの歌声が真っすぐ響いてきました。
「MVは、実際に全編ロケで撮ったんですよ。僕、陸前高田の復興ライブ(『ファンタスティックいわて 三陸復興祈念ガラコンサート』)に参加させていただいたんですね。そのときに撮影してきたんです。やっと行けた被災地でしたし、現状プラス、そこから復興しつつある人間のパワーと大自然の美しさに囲まれた場所で「ONE LIFE」が流れたら素敵だなと思ったので。だから、今回のMVは、そういう風景の中を僕が歩いているというようなイメージカットだけなんですよ。都会のキレイな景色の中で撮るのもいいんですけど、せっかく行かせていただけるならと思って、気仙沼や陸前高田で撮って来ました」
――その風景もメッセージのひとつになりますよね。
「そうだと思います。作り込んだセットではなく、温かみのある景色なので、歌がスッと入ってくると思いますね。それに「ウインク」のときと同じで、雨予報だったのに晴れてきたんですよ。だから、雨上がりの道がすごくキレイに映っていると思います。もちろん海でも撮影しましたよ。大震災のときは、その海が襲ってきたんですけど、今はおだやかだだというのも伝えたかった。自然と人間は一緒に生きていくしかないわけですから」
――手越くんの歌声も、とても優しく伸びやか。バラードだからといって歌い上げていない印象を受けたんですが、そこは意識した部分ですか?
「そうですね。僕がボーカリスト手越として一番気を付けているのは、うまく歌い過ぎないことなんですよ」
――ああ、”俺、歌がうまいでしょう!”とは歌わないということですね?
「そうです。僕、この間YouTubeでアーティストの優里くんとコラボして、カラオケの採点勝負をしたんですよ。そのとき歌ったのは「シナモン」と「ドライフラワー」だったんですけど、本来は、そんな歌い方はしないんです。ビブラートを全部盛って、声量もガーンと張っていましたからね。あれはカラオケで点数を取るためだけの歌い方。普段の歌い方はもっと引いていきますし、それは「ONE LIFE」の場合もそうなんです。こうやって音源にして、たくさんの方に聴いていただく楽曲は、カラオケの点数を取りにいくものとは違う。聴いていて心にスッと入ってくるような歌い方を心がけていますから。ただ、「ONE LIFE」も最後に転調する部分では、この曲に込めた思いを伝えるために歌で重いパンチを繰り出している。そういう引き算と足し算、さらに掛け算を楽曲の中に入れることは、どの曲でも考えますね。でも、実は12月22日にリリースされるアルバムの中には、全部を盛り盛りにした超特攻ソングもあるんですよ(笑)。そこでは声も高いキーで張りまくっていますけど、それも曲に合わせてやっていること。「ONE LIFE」や「シナモン」みたいな曲に関しては、いかに引き算をして、純情さや素朴さを出すかを考えますね」
――もし自分が落ち込んでいて、元気になりたい気持ちで「ONE LIFE」を聴いたとき、がっつり歌い上げられていたら、ちょっとトゥマッチに感じると思います。
「そうなんですよ。もっと優しくしてよって思いますよね(笑)」
――はい(笑)。そういう意味でも「ONE LIFE」の歌い方のさじ加減は絶妙だなと思いました。
「ありがとうございます」
――それに全体的に笑顔で歌っているような印象も受けました。
「僕はレコーディングのとき、結構表情にも気を付けているんですよ。表情で声色って変わるので。例えば、優しい声の出し方をしながらロックみたいな顔で歌うことって、僕は不可能だと思っているんですね。逆にディストーションボイスで歌っているときは、顔もそれっぽくなっている。だから、優しい声を出したければ口角を上げて歌うんです」
――口角は大事だって言いますよね。
「はい。それで声が変わりますからね」
――ここまでの5曲、本当にどれも楽曲のテイストも歌い方も違うので、手越くんの1曲1曲へのこだわりを感じます。でも、5曲目でバラードを出しちゃったら、”最後の6曲目はどうするの?”って逆に思いました(笑)。
「なるほどね(笑)。6曲目のシングルも、実はもうレコーディングは終わってるんですよ。それは集大成というか、この半年間の最後を飾る曲。だから、僕についてきてくれたり、僕の歌を聴いてくれたみんなに対して”一緒に幸せになろうぜ!”っていうようなわりと強いメッセージを込めました。そして今までの5曲にはない曲調になっていますね」
――ところで話は変わりますが、10月30日、31日に幕張メッセで行われた『20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween』はいかがでしたか? 前回のインタビューが、その直前だったので。
「そうでしたね!もう最高の空間でしたよ。10年以上前から声をかけてくださっていたステージにやっと出られましたから。それに僕は今ひとりのアーティストとして活動していますけど、HYDEさんはずっと前からやりたいことを自由にやり、音楽で自己表現してきた大先輩。自分でいろいろなことを設計してやっていた人なので、そういう生きざまにも憧れる。だから、そういう方と一緒にステージに立ったことによって、目には見えないような得るものがたくさんありましたね。だいいち僕自身、L'Arc-en-CielもVAMPSもHYDEさんも大好きなんですよ。(黒ミサで歌った)「GLAMOROUS SKY」も「HONEY」も、たぶんカラオケでご本人より歌っていますからね(笑)」
――もう歌い込んでいたんですね(笑)。
「そうなんです。だから、変な感覚もしましたけど、夢が叶った瞬間でもあり、気合いが入った瞬間でもありましたね。本当に、あの2日間は、いい経験をさせていただきました」
――HYDEさんは、間違いなく、ひとつの時代を作ったボーカリストですからね。
「そうなんですよ。カラオケでL'Arc-en-CielやHYDEさんの曲を歌ったとき、誰もがHYDEさんっぽい歌い方になるじゃないですか(笑)。特徴のあるアーティストやうまいボーカリストはいっぱいいますけど、そこまでの人はめったにいない。それってボーカリストとして、すごいことなんです。それだけみんなの耳がHYDEさんの声や歌い方を捉えて、それが自然と耳に宿っちゃって歌っているわけですからね。そういうボーカルを作り上げたHYDEさんのことを僕はリスペクトしているので、今回ご一緒できたことは幸せでした。しかも、僕は今回の黒ミサでソロコーナーを3曲やらせていただいたんですけど、それもHYDEさんご本人が僕のZeppライブを見に来てくださって決まったことなんですよ」
――えっ、ライブにいらっしゃったんすね!
「はい。その前は僕がソロ曲を歌うことは決まっていなかったんですけど、ライブを見て、”こいつにだったら3曲任せられるな”って思ってくださったらしいんです。それがまた嬉しいじゃないですか。HYDEさんは、人一倍音楽に厳しい人ですから」
――認めてくださったということですもんね。そういえば黒ミサでの手越くんの女装もバズっていましたけど(笑)。
「あれはHYDEさんからリクエストが来ちゃったんです(笑)。“オクターブ上で女装で歌って”って(笑)。僕からしたら、もうわけがわからなかったですよ。ご本人が出てくる前に、僕が女装で歌っているんですからね(笑)。しかもHYDEさん、何度も“手越、かわいくなった?”ってヘアメイクさんに聞いていたらしくて(笑)。本番前に僕がスタンバイしているところにいらっしゃって、“うん。かわいいね!”って言ってくださいました(笑)」
――満足していただけてよかったです(笑)。
「はい。HYDEさんの愛を感じました。それに今回こうして正式にコラボできたので、またいつか、そういう機会を持たせていただけたら嬉しいですね」
――その日を私たちも楽しみにしています。でも、まずはその前に第6弾シングルと1stアルバムが楽しみですが。
「楽しみにしていてください。その後の1月下旬からは、次のツアーも迫っていますから。だから、ずっと音楽しているんですよ、僕。こんなに人生でずっと音楽していたことは、今までないですね。でも、やっぱり最高ですよ。次にまた新曲を出すことが決まっていたり、ライブが決まっていたりするとモチベーションになりますから。それに、よりいいものを作らなくちゃいけないっていうのも刺激になる。僕の音楽を楽しみにしていてくれる人たちもいるので、これからもその期待に応えていきたいですね」
(Vol.6につづく)
- 取材・文/星野 櫻
- 写真/encore編集部
Message from 手越祐也
“僕が僕になる場所”~ONE LIFE
USENのウェブマガジン「encore」では、手越祐也の6ヵ月連続デジタルリリースに合わせて6ヵ月にわたるインタビューを連載!せっかくなので毎回テーマを設けて手越祐也本人にメッセージを発信してもらうことにした。第5回目のテーマは「ONE LIFE」の歌詞にもあるフレーズでもある“僕が僕になる場所”は?
常にナチュラルだから、いっぱいありますよ。でも、敢えて言うならまずはステージ上、それと本当に気心が知れた友人たちといるときですかね。ステージ上だと、もちろん、いつも以上に気合いは入っていますけど、僕は本当に飾ったり作ったりしない人間。だから、歌もダンスも、そのときの自分を素直に出しています。決められたものをやるのって、実は簡単だと思うんですよ。台本通りにやればいいので。それに比べて、何も用意せず、そのときの感情でやるのは一番難しい。でも、それが僕は一番楽しいんです。何があっても常に自然体の生き方をしています。実際にここ10年くらい、ドラマや舞台以外で決められたセリフを言ったことはないですから。バラエティやロケ番組、こういうインタビュー、歌やダンス。どれも決められたものはやったことがないので、全部そのときどきに素直に反応しているんです。あと、僕は誰に対しても態度を変えないんですよ。さげすむこともなければ、ゴマをすることもできない。誰とどこにいても一緒なんです。自分を作らなくていいので、全く疲れないですね。だから、僕の予定って毎日朝から夜までビッシリなんですけど、仕事もプライベートもありのままの自分でやっているから、別に疲れない。周りからは、“疲れないの?”って驚かれるんですけどね(笑)。でも、僕は自分の好きなことをやっているだけなので。だから、八方美人は疲れると思います。でも、それはそれでテクニックだと思うし、ひとつの武器だと思うんですよ。だから、そういう人を否定はしませんけど、僕はそうじゃない。このままの僕が嫌いだったら無理ですね。好きになってくれるなら、一緒にいこうぜ! というタイプ。人間に合う人合わない人があるのは当たり前だと思うので、合う人同士で仲間を増やしていけばいいと思っています。そして、この1年半で、僕にはそういう仲間がどんどん増えていっている。それは、すごくありがたいことですね。
Movie
Release Information
手越祐也『NEW FRONTIER』
2021年12月22日(水)発売
初回限定盤/FLCF-4526/4,800円(税込)
フォーライフミュージック
手越祐也『NEW FRONTIER』
2021年12月22日(水)発売
通常盤/FLCF-4527/3,300円(税込)
フォーライフミュージック
手越祐也「ONE LIFE」
2021年11月24日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ウインク」
2021年10月13日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「LUV ME, LUV ME」
2021年9月22日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ARE U READY」
2021年8月18日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「シナモン」
2021年7月7日(水)配信
フォーライフミュージック
Live Information
手越祐也 LIVE TOUR 2022 NEW FRONTIER
1月29日(土)@東京エレクトロンホール宮城
2月6日(日)@名古屋国際会議場センチュリーホール
2月10日(木)@福岡サンパレス ホテル&ホール
2月13日(日)@札幌カナモトホール
2月19日(土)@よこすか芸術劇場 大ホール
2月24日(木)@オリックス劇場(大阪)
2月25日(金)@オリックス劇場(大阪)
3月3日(木)@LINE CUBE SHIBUYA(東京)