INTERVIEW
第4弾シングル「ウインク」のテーマはハロウィン。レトロなテイストの楽曲といい、ハロウィンを取り上げたことといい、今回は変化球で来ましたね。
「そうなんですよ。10月にリリースということだったので、“だったらハロウィンの曲がいいな”って思ったんです。今や、みんながバレンタインデーやホワイトデーよりハロウィンが好きですし、たぶん1年で一番盛り上がるイベントですからね。例えば、仮装した人たちが集まった渋谷とかに曲が流れているようなイメージ。それが僕の頭の中に浮かんだので、“こんな曲がいい”っていう例をスタッフに聴いてもらって作家さんに依頼した結果、最終的にこの曲になったんです」
「ウインク」は、ボカロPのすりぃさんの楽曲ですが、それは手越くんが指名したんですか?
「いや、指名はしていないです。僕は歌詞を含めてイメージを伝えただけ。でも、集まってきた曲を聴いた中で、この「ウインク」が抜群にハマったんですよ。曲のテイストに関しても、「シナモン」から前回の「LUV ME, LUV ME」までの流れを考えて、それとは全く違ったものを選んだんです。「ウインク」は、ライブでもやりやすいでしょうし、MVもイメージしやすかったですから」
色を出しやすそうな楽曲ですよね。
「そうなんですよ。世界観を作りやすいんです。それに、こういう曲だと声の出し方とかも自由に操れるので楽しいですね」
曲を聴いていて、この歌詞の世界が目の前に広がっていくように感じました。そのへんは意識しているんですか?
「いや、もう歌い方は昔も今も直感です(笑)。その曲を聴いたときの自分のイメージで、まずレコーディングブースに入って歌うんですよ。歌い方はお芝居と一緒で正解がないので、もっとロックにも歌えるし、もっとボカロに寄った歌い方もできるんですね。だから、少しずつ変化させながら何回か歌ってみた中で、“この曲はこの方向性でいこうかな”っていうのを自分の中で決め、それから本格的なレコーディングに入るんです。そして、そこからはかなりこだわる。ワンコーラス目とツーコーラス目の声の出し方も変えますし、例えばサビの<ハロハロウインク>の<ク>を発音するかしないかまでこだわりますね。今回は、その“クッ”っていう音があったほうが、絶対に耳に残ると思ったんですよ。それで最初に歌ったときは入れてなかったんですけど、わざとカタカナっぽく歌う感じで、最終的には“クッ”を入れたんです」
リスナーが聴いたときのインパクトを大切にするんですね。
「そうです。だから<ラッタッタッ>っていう部分も巻き舌にしたほうが耳に残るんじゃないかとか、<ずるいよバカ>とか<甘いよバカ>の歌い方も、うまく歌うんじゃなくて残る歌い方を心がけました。それに最初は入ってなかったんですけど、間奏に狼の声を足してっていうのもお願いしましたね(笑)」
なるほど。曲自体も遊び心のある曲だけに、歌い方も、いい意味で遊んでいるんですね。だから、聴いているだけだと楽しいんですけど、実は音の高低差が結構ある曲なので、いざ歌うとなったら難しい気がします。
「たぶん難しいと思いますね。最後のサビも難しいし、落ちメロのところも難しいし、地声とファルセットも結構行き来しているので」
そうなんですよ!その地声からファルセットへの切り替えがとても自然なので、すごく聴きやすかったです。
「ファルセットは昔から好きなんですよ。キーレンジが高いアーティストってファルセットが苦手な人が多いんですけど、ボクは好きなので、そこは生かしたいと思っていますね。結局、歌って引き算が一番難しいんですよ。でも、全部地声でいかずに、わざとファルセットでささやくように歌ったほうが、時にセクシーに聴こえることもありますからね」
確かに。そのほうが余韻がありますよね。それに語尾の抜き方もすごく印象的でした。
「歌って語尾勝負のところがあるんですよ。語尾の歌い方ひとつで、歌の表情が変わる。だから、僕は歌は語尾が一番歌い手の個性が出るんじゃないかと思っていますね」
もし、今回の「ウインク」も、もっと語尾を強く歌っていたり、パキッと切って歌っていたりしたら、また全く違う聴こえ方をするんでしょうね。
「変わると思います。だからこそ、ライブのときは遊べる。もしダークな演出をするんだったら、がなり声を入れてもいいですし、パーティーっぽく歌うんだったら、声を前に飛ばすように明るく歌えばいい。そういう遊び方ができるところがライブの良さだと思いますからね。CDに入っているのは、あくまでも歌い方のひとつの例なんですよ」
この曲だけでも、手越くんの歌い方は、どんどん変化していっていますよね。転調部分では、雰囲気がガラッと変わるので。
「ハロウィンって、二面性があるじゃないですか。仮装する前の自分と仮装したあとの自分がいるので。そして、誰もが仮装したあとの自分のほうが自信がついていたりする。だから、MVもそういう作りにしているんですけど、曲自体も表情や声の出し方に関しても二面性っていうものを大事にしたかったんです。それで2つの曲が1曲の中に入っているみたいな作りにしたんですよ」
そういう意図があったんですね。それに、この曲もそうですけど、最近の曲には、いわゆる定型から外れたものも多いですよね。
「そうですね。ルールがなくなってきている。そこに捕らわれていない曲が多いと思います。ヒットしている曲でも、めちゃくちゃ転調しまくっていたりしますから。でも、それが最近の子にはハマるんでしょうし、僕自身も、そこが面白いなって思います」
特にボカロPの楽曲は、それが顕著。
「やっぱりボーカロイドっていう機械に歌わせることを前提に作ってますからね。僕、YouTubeで「命に嫌われている。」っていう曲を歌ったんですけど、ボーカロイドの曲なので、息継ぎがないんですよ(笑)。人間と違って息継ぎが必要ないので(笑)」
確かに(笑)。ボーカロイドが歌うなら何でもありですもんね。だからこそ、楽曲の自由度が広がっているという。
「きっとそうでしょうね。機械は低い音から超ハイキーまで出ますから。でも、最近は歌い手やボカロが時代を作っていっている感じがあるじゃないですか。それは、みんなが聴きたいと思っているから。だから、今回のすりぃさんもそうですけど、ボカロPの曲も僕は取り入れていきたいと思っています。僕は、才能にキャリアは関係ないと思っているんですよ。新人の中にも天才はいるので、そういうところには変なこだわりは持たないようにしていますね」
そして先ほども少し出て来たMVですが、それも“ハロウィン”なイメージですよね。
「そうですね。今回は初めて外ロケをしました。“ここで絶対に撮りたい!”って場所も僕が指定して、夜の竹下通りや渋谷のスクランブル交差点で撮影したんです(笑)」
大丈夫でしたか?(笑)
「僕は変装していって、パッと撮影だけして、“早く車に入れ!”って(笑)。でも、そのおかげで最高の映像になりましたね。ちょうど、ちょっとだけ雨が降っていたんですよ。だから、道路が濡れていたりして、雨だからこその妖しい感じが出たんです。あれは人工的にはできないことなので、小雨って聞いたときは、“よっしゃ!” って思いましたね」
先ほど言っていた二面性も出ていますね。
「私服っぽい僕と、ハロウィンに飲み込まれて狼になった僕と、髪の毛も編み込んで、完全にハロウィンのナイトみたいになった僕の3パターン出て来ますからね。洋館みたいな妖しいところに素の自分がいて、原宿や渋谷っていうリアルな場所に作り込んだ自分がいる。そういうコントラストというか、視覚的な違和感を作りたかったんです。そういった「ウインク」のイメージが僕の頭の中にめちゃくちゃあったので、“こういう風に撮ってほしい”と監督には伝えましたし、編集も全部細かくやりとりしながら仕上げました」
そのハロウィンのナイトっぽい扮装で渋谷のスクランブル交差点に行っているので、ひと足早くハロウィンを味わっている人っていう感じですよね(笑)。
「そうなんです(笑)。監督やレコード会社の人は“スクランブル交差点ですか!?”って驚いていましたけど(笑)、日本のハロウィンを象徴する場所は、あそこですからね。今年のハロウィンは、例年みたいな人出はないかもしれないですけど、まさにハロウィンの日に渋谷で「ウインク」の宣伝用トラックを走らせまくる予定なんですよ。そのトラックの映像では僕がスクランブル交差点で立っているんですけど、それを実際にその場にいる仮装した人たちが見たら面白いし、ハロウィンでワクワクしている人たちが「ウインク」を聴いたら、もっと楽しい気持ちになってくれるかもしれない。そうやって全部連動させているんです。この2年間くらいはずっとコロナ禍だったのでガマンすることが多かったですけど、人間は止まったままではいられない。できることから始めて前に歩き出さなきゃいけないですし、そのためにはエンタメって、すごく大事なものだと思いますからね」
はい。元気をもらえるものだと思います。手越くん自身も10月30日、31日には幕張メッセで行われるHYDEさん主催の「黒ミサ 2021 Halloween」に出演しますしね。
「独立して音楽活動を本格化した年にHYDEさんのイベントにお声がけくださったのは、すごくありがたいですね。僕自身も楽しみですし、HYDEさんのファンの方たちにも、いいステージだなって思っていただけるように頑張りたいです」
HYDEさんから依頼が来たんですか?
「はい。“手越、出てよ”、“もちろんっす!”みたいな(笑)。まだお声がけいただく前は、僕個人で“何かハロウィンイベントをやろうかな?”と思っていたんですよ。でも、“黒ミサ”のお話をいただいたので、だったら、そっちに出ようって。そうやって柔軟にチョイスできるのも独立したからこそですね」
手越祐也としても、ライブツアー「ARE YOU READY?」を行いました。いろいろな手越くんが見られる内容になっていましたが、ツアーをやってみて、手越くん自身は、どんなことを感じましたか?
「すげえ自信がつきましたね。あのツアーのセットリストは、ひとつのツアーで1曲だけ歌う想定で作られた曲たちが集まっていたんですよ。つまり、それを自分ひとりで休憩もなく歌ったという経験はなかった。だから、“果たしてノドが耐えられるのかな?”っていう心配はあったんです。でも、リハーサルして、“いけるな!”ってなりましたし、ひとりっきりで歌い始めて、ひとりっきりで全部を歌い終わる。そういうことに完全に慣れたなって自己確認できたツアーになりましたね。それくらい自分的には全公演気持ちよく声を出せましたし、クリスマス・ライブやフェスはありましたけど、全員が自分を応援してくださる方の前でセットを組んだステージで歌うのは久しぶりだったので、“ああ、やっぱりライブはいいな”って思いました」
ライブの演出や構成も手越くんが手掛けたんですよね?
「そうです。演出、照明、衣装、曲間のタイミング、全部セルフでやりました。それも初めてだったので、楽しかったのと同時に、やっぱり大変でもあった。だから、仲間と分担してやれていた今までの環境に感謝もしましたね。各セクション、全部のスタッフと確認ごとが連日ありましたし、ライブの初日が終わった夜も、翌日に変えたい部分を深夜までやりとりしていて。そこまで細かくチェックすることは今までなかったんですけど、初めてお仕事することになったツアー周りの各セクションのスタッフとも、とても初めてとは思えないくらい疎通が取れたんです。それだけに達成感がありましたし、すごく自信がつきましたね。と同時に、全部自分でやってみたことで、“誰かをプロデュースしたいな”という気持ちも、より湧いて来たんですよ。僕は演出もできるので、自分ではない誰かを輝かせるようなプロデュースもしてみたい。そういう形で、今まで培ってきたものを生かしたい気もしています」
今回のライブは演出も、かなり凝っていましたよね。だから、拝見していて、手越くんがやりたいのは、やっぱりエンターテイメントなんだなって思いました。
「そうですね。独立はしましたけど、僕がやりたいエンタメが以前と変わったわけではないですから。よりそれを細分化し、責任感を持って突き詰めていきたいだけ。だから、やっぱり舞台特効や見せ方、ちゃんと物語性のあるライブっていうのはやっていきたいと思っていますし、そうするためには今までの経験がめちゃくちゃ生きていますね」
早速次のツアーも年明けに決まりました。それは12月にリリースするアルバムを引っさげたものになるとは思いますが、現時点では、どんなライブにしたいと考えていますか?
「「ARE YOU READY?」というライブは、僕の中ではエピソードゼロ的な位置づけだったんですよ。だから、革命的な演出にして、僕が立ち上がり、ここからまた世界を変えていくぞというようなものにしたんです。手越祐也の声明を表現した感じですね。そういう意味では、次のライブがエピソード1。今度リリースするアルバムと共にオリジナル曲を引っさげ、自分は、さらに先に進んでいくというものになると思います」
まさに第一歩というか。
「そうですね。だから、会場数も多いですし、今回のツアーより細かく全国を回る。それを僕自身、すごく楽しみにしています。やっぱりツアーは楽しいんですよ。各地でファンの子のノリも違いますし、会場の風景も違う。もちろん、それぞれの土地のおいしいごはんも楽しみですしね(笑)」
年明けのツアーでは、ファンの方たちも一緒に歌える環境になっているといいですね。
「本当ですよ!僕は20年間活動して来ていますけど、やっぱり最初にステージに出た瞬間の、お客さんの“キャー”って最高だなって思いますからね(笑)。「ARE YOU READY?」のときも、それがあったらなって内心思っていたので、次のツアーでは、ぜひ、あの“キャー”が欲しいです(笑)」
でも、ファンのみなさんは一生懸命ペンライトを振ってリアクションしていましたよ。
「ありがたかったですね。実は、最初はうちわもペンライトも売るつもりはなかったんですよ。でも、独立しても僕についてきてくれたファンの子は、うちわやペンライトを新しいものに更新したいだろうなって思ったので、最後の最後に追加したんです」
ファンの方はうれしかったと思いますよ。そして、次のシングルも、もう11月にリリース予定。また今までの4曲とは違うタイプの曲になるんでしょうね。
「前回のインタビューのときは、もう「ウインク」はレコーディング済みだったんですけど、次の曲は、まだ今の段階では録っていないんです。ただ、「ウインク」とは全く違うっていうことだけは言えますね」
毎月新曲を出すのって大変ですよね。
「マジで大変です!“6ヵ月連続リリースって、誰が言い出したんだよ?”って思いますもん(笑)。たぶん僕でしょうけど(笑)。ミュージックビデオとかも撮らなきゃいけないし、毎月だと、“次の作品どれだっけ?” って混乱しちゃったりもしますから。でも、その大変さも楽しんでいるので、うれしい悲鳴っていう感じですね(笑)」
では、次のシングルも楽しみにしています。
(Vol.5につづく)
- 取材・文/星野 櫻
- 写真/encore編集部
Message from 手越祐也
ウインクはアーティストとしての僕の武器
USENのウェブマガジン「encore」では、手越祐也の6ヵ月連続デジタルリリースに合わせて6ヵ月にわたるインタビューを連載!せっかくなので毎回テーマを設けて手越祐也本人にメッセージを発信してもらうことにした。第4回目のテーマは「ウインク」をリリースした今、手越祐也が“魅惑のウインク”をするタイミング。
ウインクって海外に行くとしますよね。ごはん屋やバーに行ったとき、お店の方に“ありがとう”って言うじゃないですか。そのときに一緒にします。でも、日本にいるときはプライベートではあまりしませんね。ただ、個人的には、ウインクするやつは嫌いじゃないですよ(笑)。“バカだな~”って思うけど、“いいやつだろうな!”とも思うので。人生を楽しんでいる感じがして最高じゃないですか(笑)。でも、MVだったり、ステージに立ったときは自然としちゃいます。スイッチが入るんだと思いますよ。自分では意識していないので、あとでMVをチェックしたとき、“あれ?俺、いっぱいウインクしている”なって思います(笑)。今回の「ウインク」でも結構している。“こういう風に立ち回ろう”とかって決めて動いているわけではなく、自分から自然に出て来るものでやっているんですけどね。だから、アーティストとしての僕の武器のひとつなのかもしれないなって思います。
Movie
Release Information
手越祐也「ウインク」
2021年10月13日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「LUV ME, LUV ME」
2021年9月22日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「ARE U READY」
2021年8月18日(水)配信
フォーライフミュージック
手越祐也「シナモン」
2021年7月7日(水)配信
フォーライフミュージック
Live Information
20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween
2021年10月30日(土)、2021年10月31日(日)
@幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール(千葉)
三陸復興祈念ガラコンサート
2021年11月3日(水)
@高田松原津波復興祈念公園 特設ステージ(岩手)
手越祐也 2022年ホールツアー
1月29日(土)@東京エレクトロンホール宮城
2月6日(日)@名古屋国際会議場センチュリーホール
2月10日(木)@福岡サンパレス
2月13日(日)@札幌カナモトホール
2月19日(土)@横須賀芸術劇場 大ホール
2月24日(木)@大阪オリックス劇場
2月25日(金)@大阪オリックス劇場
3月3日(木)@LINE CUBE SHIBUYA(東京)