INTERVIEW

メジャーデビューするにあたり、これまでreiさん、mayuさん、mikakoさん、barattiさんの4人で活動していたところから、新たにkeijiさんとeuroさんが加わって6人体制となったNagie Lane。新メンバーを加えたことで実感している変化はありますか?

rei「4人体制だったときは、全員で歌っても何かしら音が足りない部分があったんですけど、2人が入ってくれて常に完成された和音で歌えるようになりました。それだけでなく、制作面でもkeijiさんが作詞作曲をして、bara(tti)さんがアレンジをするみたいな新しい体制で曲を作れるようにもなったので、すごくパワーアップしたと思います」

メジャーデビュー作『Interview』は、どのような作品にしたいという想いで制作されたんですか?

baratti「まずは今まではミニアルバムだったので、メジャーデビューするにあたってはフルアルバムでインパクトを残したいっていうのがありました。その上で、アカペラって割と誰かの曲をカバーして違いを楽しんだりする文化が強いんですけど、そこではなく、アーティストとして自分たちを表現するための音楽を作っていきたい。そのためにはクオリティを上げるっていう想いも強かったです。また、聴いたことがないようなものを作ろうっていう気合も今まで以上でしたね。ある意味アカペラだとわからないようなサウンドを絶対に作りたいってところで、メンバー自身はもちろん、サウンドディレクターの桜木力丸さんにも参加してもらって。“本当に新しいサウンドを作る”という意識をメンバー全員が持って制作したアルバムだと思います」

新しいことに挑戦しているぶん、歌うのも大変になっているのでは?

keiji「そうです」

誰よりも先に答えてくださったkeijiさん(笑)、例えばどのへんが大変でしたか?

keiji「僕はNagie Laneに入るまでアカペラをやったことがなかったので、そもそもアカペラのレコーディングというものが今回初だったんですよね」

なるほど。アカペラのレコーディングってどんなふうに行われるというか、演奏があるものと大きく異なるものなんですか?

keiji「単純に1本ずつコーラスを録っていく感じです。でも、それが家で1人で練習しているときはできても、いざブースに入るとできなかったり、みんなで合わせるとできなかったりっていうことがあって。それはどの曲も苦労しましたね」

rei「レコーディングでは自分が担当しているパートを2本とか4本とか重ねていくんです。あ、でも今回は4本が多かった気がする。気のせいかな?」

baratti「いや、確かに多かった」

rei「だから、そこの集中力は結構使った気がします。事前に練習はするんですけど、レコーディングのときにbarattiから”ここはもうちょっとこういう楽器の、こういう音色に近付けたい”ってリクエストされたりして。その場で覚えたものを、すぐに4本同じように歌うっていうのにはかなり集中力を要しました」

baratti「そうだよね。しかも、アレンジの特徴として、楽器の音色を模していることが多いので。今までのアカペラにはないような言葉遣いというか。オーソドックスなものであれば前例があるから真似できるんですけど、そもそも真似できる前例がないので、そこを必死に理解して表現するという意味では大変なことをさせてしまっているなぁと(苦笑)」

rei「楽しかったけどね」

mikako「新しい扉が開く感じがあったよね」

baratti「ただ、最初にレコーディングする人は、たった1人でやらないといけない。演奏があって歌うんじゃないってところで、一からやる心細さはあるかも(笑)」

演奏がないということは、最初に歌う人は何を目安にして歌うんですか?

barattiクリックとか、おおまかなコードみたいなものですね」

mikako「最初はだいたいパーカッションのパートを入れるんですね。で、ボーカルはそれを聴きながら歌入れするんですけど、たまに”これ、絶対に端から見たら面白いよな~”っていう状況が生まれるんですよね。普段話す言葉じゃないような言葉をひたすら言ってる瞬間もあるので。面白いことしてるなって改めて思います(笑)」

euroさんは今回のレコーディングで大変だったこと、もしくは特に気に入っている楽曲はありますか?

euro「大変だったというわけではないんですけど、「Kiss me dry」はアカペラにしては重低音があるというか、あまりないベースサウンドになっているんじゃないかと思います。実際に歌っていても、とにかく音程が低かったので」

baratti「それは、想定していたよりも低い声が出たっていう。”あれ?出るじゃん!”と思って(笑)。もし低かったら1オクターブ上で歌ってもらおうと想定してたんですけど、試しにやってもらったら、”出るじゃん!”って(笑)。次から全部それくらいの音域でいいかなと思ってます(笑)」

euro「それこそ、自分のなかの新しい扉がちょっと開いた感じです(笑)」

mayuさんはいかがですか?

mayu「レコーディングで印象的だったのは、「sunset summer cruisin’」のベルトーン(bell tone)……ベルトーンって何て言えばいいんだろう?」

baratti「アルペジオ、かな。ギターがチャラララって弾くのを、アカペラだと1人1人がその音を担当するんです。しかも、それを速いタイミングでやっていくので、1人でもタイミングがずれるとめちゃくちゃなことになっちゃう。さらに、ギターであれば1音出したらその音がサステインして重なっていくけど、声の場合はそうではないので。音を重ねるために、最初に歌った人はちょっと長めに歌って、切るタイミングはみんなで合わせたりして」

mayu「この曲の冒頭にあるタンタタンタンっていうのを、1音ずつ違う人が歌っているんです。ハンドベルを高速でやる、みたいな。それをニュアンスもピッチも同じに歌うっていうのが、結構苦労したところでしたね。これはライブでも大変だと思います(苦笑)」

baratti「この部分は確かにライブでも聴かせどころ、見せどころかもね」

mayu「ライブでも頑張りましょうね!」

mikako「見せどころとか言っておきながら、本番で”あれ!?”ってならないようにね(笑)」

baratti「レコーディングでは別々で録ってるからね。つい最近までみんなで合わせたことがなかったっていう状態なので、本当に頑張りましょう(笑)」

barattiさんは先ほど“本当に新しいサウンドを作る”とおっしゃっていましたが、今作のなかでその手応えを感じているのはどの楽曲になりますか?

baratti「新しいという意味では「愛以外に用はない」かなって思います。これはメジャーデビュー前の既発曲以外だとアルバムの中で一番最初に着手した曲なんです。自分たちのレパートリーには4つ打ちの曲が多いんですけど、ここでは単純な4つ打ちではなくビートを半分にしてビートを速くしたり、コード進行もシンプルなようで複雑なことをやっていたりと、聴いている人を飽きさせないアレンジをしていて」

MVを拝見するとわかりますが、ボーカルも細かく変わっていきますよね。

mayu「そうですね。大抵の場合、例えばAメロがrei、Bメロはmikako、サビは私とか、セクションごとに変わるぐらいが基本だったんですけど」

mikiko「「愛以外に用はない」は、サビの中だけでも変わり方がすごい」

baratti「そこはマイクリレーを意識しました。そういう意味でも、新しいサウンドになったような気がしています。あとは、僕とかボイスパーカッションの音も、今まで以上に細かくエディットを施しているんですよ。それまではそういう最終的な工程に自分が関わることをしていなかったんですけど、今回は積極的に関わるようにして。それこそ力丸くんと相談しながら、どうすればアカペラだけどアカペラじゃない、今のクラブサウンドのような仕上がりにできるかっていうのを、かなりこだわって作った最初の曲になります」

そうしたサウンドに対するこだわりに加え、歌詞についてはいかがでしょうか。Nagie Laneとして伝えたいメッセージみたいなところも、以前より意識するようになりましたか?

keiji「今回のアルバムで僕が書いた「sunset summer cruisin’」、「Kiss me dry」、「月のベンチ」の歌詞に関しては、もちろんNagie Laneとしてのメッセージも入っているんですけど、1曲1曲ボーカルが違うこともあって、その曲でリードボーカルを担当する人と一緒に、その人の良さが出るように考えて作っていきました」

楽曲を作り始める段階から、誰がどこを歌うっていうのが決まっているんですか?

baratti「曲によってですね。先に想定して作るときもあるし、曲が完成した後に全員に歌ってもらって、一番合う人にやってもらうこともあるし」

keiji「今言った3曲は、作り出した段階から誰が歌うかが想定されていたので、ちょっと他の楽曲とは毛色が違うかもしれないですね」

baratti「Nagie Laneを結成した頃は、一番最初こそオリジナル楽曲でしたけど、他はカバー曲がほとんどったんですよね。そこから今に至るまでの3年の間に、自分たちなりの言葉というか、伝えたいことを表現する方向にシフトしてきて。それこそkeijiがメンバーに入ってくれたことによって、それが綿密に相談しながらできるようになったので、より自分たちのメッセージを歌詞に詰め込められるというか。今はむしろ、アカペラであること以上に、歌詞のメッセージ性のほうを伝えたいなと思っています」

mikako「それで言うと、「2021」は自分たちのメッセージとして個人的にコレだなって思います。やっぱり、今のこういう状況ってなかなか難しいじゃないですか。いろんなことが曖昧になりがちななかで、サビにも<曖昧な世界線>、<放て“ファンファーレ”>とあるように、未来に向かって突き進んで行きたい、自分たちの始まりの音を響かせたいっていう想いが全体的に込められているように感じます。あと、私がすごく好きなのが<宇宙から見たら 散歩みたいなもんさ>ってフレーズで」

mayu「私も一番好き!」

mikako「いいよね。なんか、すごく鼓舞されます。今って状況的にどうしても落ち込みやすくなったり、視野が狭くなったり、心が寂しくなっちゃったり……いろいろあると思うんですけど、10年後もこの状況かと言うと絶対にそうじゃないと思うんですよ。長い地球の歴史、宇宙から見たら、きっと短い期間だし、通過点かもしれないなって。そう思うと、”できることをやっていこう”っていう気持ちにさせてもらえます」

euro「なんか、びっくりするくらい被ってるんだけど(笑)。自分が音楽を聴いてるときって、歌詞が入ってくるというよりもメロディとか旋律が入ってくるほうが多いんです。でも、なんかわかんないんですけど<宇宙から見たら 散歩みたいなもんさ>は、歌いながらでもすごく耳に入ってくるんですよね」

rei「それは初耳」

euro「だから、”みんなそうなんだ!”と思ってびっくりした(笑)」

reiさんはどうですか?

rei「私はダントツで「愛以外に用はない」です。歌っていても、本当、愛以外に用はないようなぁって思っちゃう(笑)。私、サンボマスターさんの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」の歌詞にある<悲しみで花が咲くものか!>というフレーズが、座右の銘とかモットーとかに書くくらい好きだったんです。それを、これからは“愛以外に用はない”でもいいかなって。同じようなメッセージ性を感じるから。こういう時代だからこそ、愛以外は見ない、愛だけを大事にしようって。この歌詞を書いてくれたameさんにも感謝感謝です」

アルバムタイトルの『Interview』にはどういった想いが込められているんですか?

baratti「みんなで考えようってなってたくさん出た案の中で、僕が出した一つだったんですけど。なんか、僕たちって結構謎めいた存在みたく言われることが多いんですよね。動画とかで自分たちの顔も普通に出してるんですけど、”謎だなぁ”って言われて(笑)。そんななかでメジャーデビューするということで、楽曲を通してだけどインタビューのように自分たちの人と也が伝わるといいなって想いを込めたのが一つ、理由としてあります。それから、インタビューの語源が“Inter(お互い、相互にの意)”と“view(見る、眺めるの意)”で、お互いを見合う、そこから理解を深めていくっていうところから単語ができたことも調べていくうちに知って。自分たちのファンはもちろん、僕らのことをまだ知らない人にとっても、このアルバムがNagie Laneへの理解を深める存在になってほしいなとも思いました。さらに、ハーモニーを作ることも、やっぱりお互いを理解し合うことがすごく大事な部分なので。そこに通じる言葉だし、いいなと思ったんですよね」

euro「満場一致でした」

baratti「逆に不安になっちゃいましたけどね(笑)」

mikako「ホワイトボードが埋まるくらい、いろんな案が出てたもんね。でも、本当にいい言葉、いいタイトルだと思ってます」

そして、10月2日にはSHIBUYA STREAM Hallでのワンマンライブが予定されています。どんなステージになりそうですか?

mikako「とにかく”新しいNagie Laneをしっかり見せたい!”っていう気持ちが第一にあって。今回のアルバムって、今までの私たちを知ってくれている人たちにとっては尚更、聴いただけで新しいことに挑戦しているのを感じてもらえる1枚だと思うんです。まずはCDでそれを楽しんでおいてもらいつつ、ライブでは目でも楽しんでもらいたい。なので、VJであったり、ファッションや照明などのビジュアル面でも突き詰めて、日本のアカペラにはないようなステージを作っていけたらいいなと思っています」

baratti「もともとの音源もライブで再現する意識を持って作っているものなんですけど、むしろライブのほうが良かったと言ってもらえるような内容にしたいですね。その上で、今言ってくれたように、僕らの動き、照明や会場の装飾など、いろんなものを含めてNagie Laneの世界に浸ってもらいたい。ステージに6人しかいないとは思えないようなことはできると思っているので、楽しみにしていてほしいなって思います」

私たちが観たことのないアカペラコンサートになりそうですね。また、こうしてお話しさせていただいた印象だと、MCも楽しみだなって思っちゃいました(笑)。

baratti「MCってところで言うと、飛び道具はmayuだね(笑)」

keiji「一度飛んでったら帰って来ない(笑)」

rei「司会進行は私とかkeijiがだいたいやってるんですけど、たまにバッて飛んでっちゃうのがmayu(笑)」

mayu「それを呼び戻してくれるのがkeijiなんですけど(笑)」

mikako「keijiが(メンバーに)入ってくれて良かったよね(笑)」

keiji「手綱を握ってるんで(笑)」

mikako「確かに言われてみるとライブの後でTwitterで検索をかけてみると、”あのMCが面白かった”とか、曲以外のところで反応してくれてる方も結構いて。MCも楽しんでいただけるかもしれないですね」

rei「(mayuに向かって)のびのびやってね」

mayu「緊張すると無口になっちゃうからね(苦笑)」

keiji「今度のライブはリードを長めに持っておくから安心して(笑)」

mayu「範囲を広げてくれてありがとう。って、狙ってやってるわけじゃないんですけどね(笑)。期待されると緊張しちゃうので、なるべくいつも通りできるように頑張ります!」

(おわり)

取材・文/片貝久美子

LIVE INFORMATION

ワンマンライブ「Interview」

SHIBUYA STREAM Hall(東京)
昼公演:OPEN/14:30 START/15:00 Thank You SOLD OUT!
夜公演:OPEN/17:30 START/18:00 Thank You SOLD OUT!
生配信:昼公演チケット夜公演チケット昼夜通しチケット

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