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2021.07.16

GLIM SPANKY「風は呼んでいる/未完成なドラマ」インタビュー――古い地図があったとしても

アコギと共鳴する松尾レミのエモーショナルなヴォーカル、縦横無尽にドライヴする亀本寛貴の饒舌なエレキギター。GLIM SPANKYの2021年第1弾配信シングル「風は呼んでいる」はタイムレスな逸品だ。翻ってDISH//に提供した楽曲のセルフカヴァー「未完成なドラマ」はファンクネスとヴィンテージを増幅させた。原点に立ち返り、新たなフェーズへと向かおうとしているふたりの視線を追う。

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――コロナで世界が一変してしまいましたが、いかがお過ごしでしたか?

松尾レミ「私はけっこう、しんどかったですね。特に最初のころは。たとえば休みがあったとしても、人に会わないとか外に出ないとかになると、宇宙の中にひとりぼっちという感覚になっちゃうタイプなので(笑)。ウィンドー・ショッピングなんかも好きなのに、それもできないし。さらにライヴはなくなるし、スタジオにも入れないし、どうすればいいんだろうっていう不安がありました」

亀本寛貴「最初は、まあ数ヵ月だろうみたいなテンションだったんですよ。ツアーやフェスで忙しかった分、ちょっと休憩して、楽器の演奏とか音楽の知識理論とかを、もう1回おさらいするチャンスぐらいに考えればいいんじゃないかと。でも長いし、まだ続いているし、最近になって、“大丈夫かこれは?”と思い始めています。ライヴができないストレスは、そんなにないんですけど、ライヴって自分たちが肯定してもらえる場じゃないですか。作って発表したものを含めて。そういうリアクションの場がないと、より強いメンタルと自信を持たないといけないことを知りました。自分たちがやっていることは、絶対大丈夫なんだという気持ちでいないといけないなって」

――時間ができた分、曲を作ったりもしていたんですか?

松尾「ひとまずリリース計画があって、ニューアルバムの制作に取りかかっていたんです。でも自粛になって、自宅で作業しようということに決めて、急遽作って発表したのが「こんな夜更けは」で。ほかにも意外とやることがあって、幸運なことに楽曲提供やアレンジのお話もいただいていたし、何かしら作ってはいましたね」



――最新シングルの「風は呼んでいる」は、abn(長野朝日放送)の開局30周年テーマソングです。これは書き下ろしていますが、どんな経緯で?

松尾「私たちが長野県出身だということと、番組のスタッフさんが音楽的に好きになってくださったことで、以前から繋がりがあったんです。番組に呼んでいただいたり。私たちも昔からabnを観ていて、親しみがありますしね。それで、30周年のタイミングで曲を、ということになりました。テレビ番組のテーマっていうと、とても保守的なイメージがあったんですけど、皆さんけっこうロックな人で(笑)。ミーティングをした時に、今までのやり方に固執するのをやめて、新しいことをやっていかないとダメだと。だからこそGLIM SPANKYとコラボしたいんだし、どんどん攻めていきたいということだったんですね。それを聞いて、同じ気持ちで作ることができると思いました」

――番組サイドからの要望などはあったんですか?

松尾「本当にGLIM SPANKYの音楽を好きでいてくださって、ありがたいことに、お任せという感じでした。ただ、老若男女が観る番組というのと、長い期間オンエアしてもらえるということだったので、飽きのこない、心地よくじんわりと心に響いていくような楽曲にすることを考えました。弾き語りで作っていきましたね」

――どんなイメージやインスピレーションが浮かびましたか?

松尾「実は、並行してDISH//の曲も書いていて、両方作らないといけない状況だったんです。一番初めは、こっちをDISH//に提供しようと考えていました。で、メロディとコードを弾いて、亀本に送ってみたんです。そしたら、イメージとしてDISH//には、よりキャッチーでポップなもののほうがいいんじゃないかという話になりまして。でも、すごくいいから自分たちの曲にしようということで、改めて作り始めました。そして亀本が、DISH//の曲の母体になる部分を作り始めたという流れです。自分が曲を作る時に、特にこういうアコースティックの楽曲や歌ものの場合は、絶対に頭のどこかに長野の風景があるんですね。サイケな曲でも、フォーキーな曲でも、長野の山並みとか自然の空気感とかを思い浮かべているんです。今回も頭の中にイメージとしてあったので、すんなりとシフトできました。でも今回はそれだけじゃなくて、コロナで時代が変わっている時だからこそ、素直に自分が思ったことを書こうと思いました」

――アレンジの面で心がけたことのはどんなこと?

亀本「アルバムでは今までやっていなかったことを試してみたりしているので、この曲に関しては、GLIM SPANKYらしさというのをあえて意識してもいいんじゃないかと思いました。レミさんが送ってきた音源が、最初からイントロがなくて歌とアコギで始まっていて、それがいい雰囲気だったので、そのまま活かそうと」

松尾「まずは作ってみたから、“はい”って渡しただけなんですけどね。それがたまたま(笑)。別に深く考えたわけじゃなかったんですけどね。でもすごくいい感じだったので」

――そうだったんですね。演奏がオーガニックというか、生の音が共鳴している感覚があって、個人的には、やっぱりバンドっていいなと思いました。

亀本「それは、意識的にやっているところもありますね。楽器の音にしても、エアー多めというか。近いマイクだけじゃなくて、遠くのマイクが拾った音も入っているし、生演奏感を重視しました。質感としては、1stアルバムと2ndアルバムのようにしたかったんです。とはいえ自分らも年を取っているので、もうちょっと今風になるんですけど、そういう意識はありました。自分たちの昔のアルバムの音に、刺激を受けるっていう(笑)」

――改めて、昔のGLIM SPANKYのどんなところがいいですか?

亀本「“これって生?”みたいな(笑)。今の音楽って、生ドラムっぽくてもサンプリングの可能性が高くて、叩いていないかもしれないんですよね。生ベースっぽくても打ち込みだったりして、そこのリアリティが下がっているんです。別に生演奏で録らなくても、生楽器の音が使えるので、それで作っていったほうが時間をかけて作り込めて、出たとこ勝負にならない。バンドで集まって録音となると、出たとこ勝負になるので、アレンジ面であまり詰めにくかったりするんです。だから、生音のサンプルを使うことが多いんだと思いますけど。マイクのかぶりなんかもなくて、音がクリアになるし、クリアだけど生みたいにできますから。僕らは今回、マイクのかぶりもありにしました。そのほうが、生で録る意味があるし、かぶらないなら録らなくてもいいぐらいなので。だから、ベースとドラムとアコギは、みんな一緒に演奏しました。アコギのマイクに、かすかにドラムが入っていたり、ベースのマイクにも入っていたりというのを大事にしたら、こういう仕上がりになったというわけです」

――歌詞にある<古い地図は信じない>というフレーズが沁みます。

松尾「もちろん、普遍的にどんな時代でもわかってもらえるとは思うんですけど、私としては今の時代というか、この自粛生活の中で感じたことなんです。こういう世の中になると、絶対にコロナ禍前のことを考えると思うんです。ちょっとうらやましくて、早くまたそうなればいいなって。やっぱりどうしても過去は美しく見えるし、私も昔の写真を見て、ライヴでぐちゃぐちゃになって楽しかったなとか考えますけど、どうしたって過去には戻れないんですよね、もう。古い地図があったとしても、それはもう使えないし、どんな人が何を言おうと、正解はわからない。自分が信じられるものを信じていくしかない、自分のメンタルを強くしていかなきゃいけないと思ったんです。そういう現実を見て、歌詞が浮かびました。<こんな今日をずっと待ってた>とも歌っているんですけど、こんな今日を待ってたっていうのは、実はこんな気持ちになれる自分を待ってたということなんですよね。自分に対してなんです。いろんなものに期待して、こうならないかな、ああならないかなって願っているけど、自分が思える自分になれれば進んでいけるよっていう。どんな年代の人にも、何をしている人にも届くメッセージなんじゃないかと思っています。なんかとてもベタなんですけど、私はリアルにそう感じて生きているので」

――GLIM SPANKYの新時代のスタンダードという印象ですが、そういう手応えはありますか?

松尾「やっぱり、こういう純粋なロックサウンドって、気持ちいいなと。コロナ禍で、家で音楽を聴いていたんですけど、最初は自分を癒せるフォーキーなものとかチル的なものを聴いていたんです。でも途中で、試しにロックンロールを聴いてみようと思って、それこそストーンズとかT・レックスとかを流してみたんですよ。そしたら、めちゃめちゃ気持ちよくて。もはや海外ではロックは盛り上がっていないけど、気持ちを奮い立たせたい時に、ロックってものすごく有効だなと。セラピーって、こういうことなんだなって実感しました。この時代に、改めてロックに影響を受けるという(笑)。そういうこともあって、今回シンプルなギター・ロックを作れたというのは意味があることだし、リリースできて気分がいいです」

亀本「最初にお話ししたように、やっぱりライヴをやらないとリアクションが見えづらいですよね。出してはみたけど、正直どうなのかがまったくわからない。聴いたみんなに、感想を教えてほしいです。アルバムでいろいろなことをやっているし、自分たちとしては、ここから新たなチャレンジだなっていうのがあるんですね。もう1回、GLIM SPANKYらしいサウンドというか、原点のようなサウンドを、ちゃんとやっておくべきだと思って。“みんな、どうかな?教えてくれよ!”っていう感じです(笑)」

――これ、おふたりの地元で流れているわけですよね?

松尾「私は先週、abnで弾き語りをしたんですよ。リリース前にアコースティックでやったので、みんなアコースティック曲だと思っていたみたいでした。リリースしたものを聴いて、がんがんエレキを弾きまくっていて、いいじゃんっていう感想はもらいました(笑)」



――もう1曲の「未完成なドラマ」は、冒頭のお話ですと、亀本さんがまず作り始めたと?

亀本「そうです。やっぱり、北村匠海君が歌うっていうのをイメージしますよね。あいみょんさんが書いた「猫」にしても、言い方が難しいけど、等身大というか、ある種の若々しさとか青臭さを持った音楽性かなって。でも、北村君は役者でもあり、カッコよくて色気もある男だと思ったので、ちょっと大人っぽい味もあって、かつノリのいい曲をイメージしました」

――セルフカヴァーは、初めてなんですよね?

亀本「僕からしたら、DISH//のヴァージョンでもギターを弾いているし、アレンジというかプロデュースというか、自分がいいと思うメンバーを含めて録ったんですよね。だから、セルフカヴァーって言っても、変えるところはないけどみたいな(笑)。でもそこで、違うアプローチを考えた時に、自分たちのふだんのライヴメンバーで録ったら新鮮かなと思ったんです。これまでは、ドラマーだけとかはあったけど、メンバーみんなとっていうのは、なかったので。それでやってみたら、やっぱりいい感じになりましたね」

――より濃くなったというか、ロック度が上がった印象を受けます。

亀本「DISH//ヴァージョンは、もちろんDISH//のメンバーも演奏しているので、やっぱり若々しくなるんですよね、自然に。ノリとかも、自分がゴールと思っていたところよりも、若い分、前のめりというか。そのノリを、セルフカヴァーではもうちょっと落ち着かせたかったのと、サウンドをよりヴィンテージっぽいテイストにしたかったんです。GLIM SPANKYバンドは全員30代以上なので、大人っぽいな?っていう感じが出ていると思います(笑)」

――歌詞は、北村さんをイメージして書いたんですか?

松尾「そうです。北村さんが映える歌詞ですね。亀本とやり取りする中で、今まで自分が使っていないような音階とか、北村さんだから映えるメロディを作ってみようという挑戦が、自分の中でありました。そうすると、今まで使っていないような、面白い言葉も浮かんでくるんです。もちろん、文章として読んだ時にちゃんとしていることにはこだわっているけど、今回は北村さんが歌って映えて、また北村さんを好きな人が聴いた時に、楽曲の中の登場人物になれるような歌詞を考えました。北村さんって、テレビの中の人じゃないですか。でもこの曲では、テレビの世界から1歩こっちに抜け出してきてくれたみたいな感覚になってほしいんです。俳優やミュージシャンとしての北村さんと、プライヴェートな北村さんが、ごっちゃになった世界観の曲になったらいいと思っています。北村さんの人間らしさや、生活感を垣間見せられるかという挑戦でもありましたね。だからあえて、ドラマという言葉を使いました」

――GLIM SPANKYのメロディとして新しさを感じましたが、作っているご当事者からしてそういう感覚だったと?

松尾「楽曲提供の時は、自分じゃなくてその人が歌ったら映えるメロディを考えるので、そうなっていきますよね。もちろん、自分が歌ってもカッコよくなるものにしたいと思って、作っていますけど」

――ジャケットのアートワークも松尾さんが手がけているそうですね。

松尾「あれはですね、数年前、地元の村を散歩した時に撮った写真なんです。スマホのアプリを使って、ピンク・フロイドの作品のジャケットのようなイメージで撮りました。今回は、絶対に長野を感じさせるようなジャケットにしたかったんです。でも「未完成なドラマ」は、都会の中で歌っているイメージがあるんですよね。歌詞にも街とかが出てくるし。両方を表現するには、どういうアートワークがいいのか考えました。そして、自然味あふれるサイケ調の写真が長野の風景だとしたら、そこにポップアート的なベタ塗りのアプローチを加えたら、都会的に見えると思ったんです。あれは、写真の上からベタ塗りをしたものです。プリミティヴなものと、ポップアート的なものをかけ合わせて、ギュッとひとつにしました」

――こういう作品を聴くと、GLIM SPANKYのライヴを早く観たくなります。早くやりたいですよね?ライヴ。

亀本「そろそろやりたいよね」

松尾「やっていないとダメだなって、特に最近感じています。自分の表現を忘れてしまうんですよ。細かいところで言えば、歌う時の足の親指の向きとか」

――足の親指 !?

松尾「足の親指の向きで声の出しやすさとかが変わってくるんですよ(笑)。向きと、力の入れ具合で。あと、喉が疲れてきた時に、使うところをちょっとずらして復活させたり。私はステージが怖いタイプなんですね。楽しいんだけど、ステージに上がる前は、本当に怖い。でもそのメンタルを、どうやって切り替えるかっていうのが、自分の中にあったんです。しばらくやっていないってなると、筋肉がなくなっちゃうみたいな感覚なので、本当にいちからのスタートですね」

(おわり)

取材・文/鈴木宏和









グリムスパンキー
GLIM SPANKY「風は呼んでいる/未完成なドラマ」
2021年6月16日(水)配信
Virgin Music




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