2022年8月2日に東京駅日本橋口前の東京トーチにオープンしたアナザー・ジャパンは、三菱地所と中川政七商店がサポートするもので、学生が本気で商売を学び実践する場となる。

2ヶ月ごとに特集地域が入れ替わる初回の企画展は「アナザー・キュウシュウ展」と題し、福岡、長崎、沖縄出身の学生3名が自ら現地に足を運んで仕入れた地域産品約350点が揃った。

経営全般から店舗運営、プロモーション、接客販売に至るまでを全18名の学生が手がけている。

また併設カフェ「KITASANDO Kissa」(biplane運営)も同時にオープンした。

  • テーマやアイテムごとに陳列される九州の産品
  • Biplaneが運営するKITASANDO Kissaでは、ハンドドリップコーヒーやフードも提供される

ショップコンセプトは、「いらっしゃい おかえり いってらっしゃい」。

九州地域出身の人にとっては自分の「地元」に帰ったような懐かしさを、他地域の人にとっては「旅先」を巡るような新しい発見を届ける。

「もうひとつの日本、アナザー・ジャパン」が、そこにあるという趣旨で、ネーミングされた。

エリア企画は、「キュウシュウ」から始まり、「ホッカイドウトウホク」「チュウブ」「カントウ」「キンキ」「チュウゴクシコク」と続く。

トップバッターを飾るアナザー・キュウシュウのテーマは「宴」だ。

宴の準備から装い、乾杯、贈り物などをテーマに約350点の地域産品が勢ぞろい。

  • 「宴」テーマのキュウシュウ展では、幾つかの小テーマごとに品ぞろえを組んでおり、それを説明する学生の姿は生き生きとしている。

週末には、尾崎人形の絵付け体験や竹細工づくりなどのワークショップも開かれている。

さて、学生ですべての経営と運営を賄っているとのことだが、バイイングの視点や条件などは中川政七商店の担当者が手取り足取り教えているそうだ。

完全買取の比率は30~35%で残品処分についても責任が生じる。

月間売上目標かつ採算ラインは500万円で、格安とはいえ三菱地所に賃料支払いがあり、採算ラインに乗らなければ赤字もあり得る。

学生たちにとってはなかなかの本格体験だ。

こうした取り組みは、学生にとってはリアルな職業体験として大きなメリットを生み出す。

一方で消費者にとって、アナザー・ジャパンがどのような価値を提供できるのか。

「仕入れた学生が直接消費者に伝える」と言っても、オーナーバイヤーのショップとの差別化が見えてこない。

学生の新鮮なバイイング視点は魅力ではあるが、同世代への共感があったとしても、果たして他の世代に刺さるものなのか。

実験の場として大いに注目していきたい。

写真/久保雅裕、アナザー・ジャパン提供
取材・文/久保雅裕

アナザー・ジャパン

東京都千代田区大手町2-6-3 TOKYO TORCH銭瓶町ビルディング1階ぜにがめプレイス
ショップ 11:00~20:00/カフェ 平日 8:30~21:30、土日祝 10:00~19:00
隔月2日間休業(企画展入れ替えのため)
ショップ TEL 03-6262-1375/カフェ TEL 03-6262-1384

企画展スケジュール

2022年8月2日(火)~2022年10月2日(日) アナザー・キュウシュウ
2022年10月5日(水)~2022年12月4日(日) アナザー・ホッカイドウトウホク
2022年12月7日(水)~2023年2月5日(日) アナザー・チュウブ
2023年2月8日(水)~2023年4月2日(日) アナザー・カントウ
2023年4月5日(水)~2023年6月4日(日) アナザー・キンキ
2023年6月7日(水)~2023年8月6日(日) アナザー・チュウゴクシコク

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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