人と自然の理想的な関係性をデザインする
ケイクは、ミニマルで洗練されたデザイン、走行中のCO2排出量はゼロ、さらに静寂性も確保するなど、クリーンで環境に配慮した次世代のバイク。
「エキサイティングなモビリティー体験」と「環境への責任」を両立させることで、ゼロエミッション社会への移行を加速させることをミッションとして開発された。
ケイク社はこの目的を達成するため、スキーやスノーボードなどのギアを製造するなど長らくアウトドアビジネスに携わってきたステファン・イッターボーン氏が2016年に創業。
環境に優しい移動手段として電動バイクに着目し、一からデザイン、素材、テクノロジーを見直すことでバイクの概念を塗り替えた。
「ケイク社との出会いは、社会のイノベーションを共創する新しいモデルケースになると考えている」とゴールドウインの渡辺貴生社長。
「私たちが共有する環境という"コモンズ"において、人と自然の理想的な関係性をデザインすることをゴールドウインは新たな事業指針としています。その中でケイク社との取り組みは、"移動"の概念・手段をデザインし直し、持続的な未来へと進化させる事業になると思う」と話す。
ゴールドウインは2021年に長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」を発表した。
30年までに環境負荷低減素材を使った製品の比率を90%以上に引き上げるなど、今後の自社のあり方を示している。
ビジョンの実現に向け、普遍性と革新性を備えたプロダクトであるケイクはゴールドウインが軸とするアウトドア・スポーツとの親和性も高く、シナジーによるイノベーションを期待できることからパートナー契約に至った。
イッターボーン氏は「アジア進出にはハイクオリティーかつ物作りの造詣が深いパートナーと提携できることほど良いことはない。ゴールドウインは長年にわたり私がよく知る会社で、品質に対する責任、革新への情熱、顧客との関係構築力は業界をリードしている。日本のような重要な市場で共に仕事ができることを光栄に思う」とし、新たなバイクカテゴリーの日本での市場化に意欲を見せる。
自然と都市を冒険できるプロダクト
プロダクトは競技向けのオフロード仕様と業務や通勤などタウンユースに対応するユーティリティー仕様に大別され、それぞれサステイナブルな考え方が貫かれている。
持続可能性について、ケイク社は「人と自然の共生をよりスマートで、環境に優しく、健康的かつ平和的に実現すること。
そのために年齢、性別、サイズ、スタイルを問わず、誰もが敬意をもって自然と都市を冒険できる製品を生み出していく」としている。
- オフロードでも活躍(ケイク主催の競技大会も行われている)
- 都市でも音を気にせず走行できる
- 海外ではデリバリーなどの業務でもケイクを使用
- 自然を体感するシーンにもケイクで
プレミアム電動バイクとしてのケイクの特徴は3点に集約される。
①電力をエネルギーとするモーターの静寂性により、走行中に自然や都市の音をより明瞭に体感しながら移動できる(新しいスポーツ体験)、②走行中のCO2排出量はゼロ(持続可能な移動の追求)、③時代を超えて愛される普遍的な美しさを追求した、自然や都市の風景に溶け込むミニマルで洗練されたデザイン(普遍的な美の追求)。
①の静寂性は、スキーやランニングなどのスポーツで感じる環境に没入する体験と類似し、移動を通して自然や都市とのつながりを感じることができる。
②に関しては、スウェーデンの電力会社「ヴァッテンフォール」との協業により、生産時のCO2排出量も25年までにゼロにするため、工程やプロダクトデザインの改良に取り組んでいるという。
③のデザインはまさに北欧をイメージさせ、日本人の美意識との親和性も高く、長く愛着を持って使われることを意図している。
日本で展開する主要モデルは、「Kalk &(カルクアンド)」(最高速度90km/h、航続距離86km、車両重量79kg、普通自動二輪(中型)免許)、「Ösa+(オッサプラス)」(最高速度90km/h、航続距離111km、車両重量89kg、普通自動二輪(中型)免許)、「Makka range(マッカレンジ)」(最高速度25km/h、航続距離66km、車両重量70kg、原動機付自転車免許)など。
プロダクトを構成するパーツは用途に応じてカスタマイズが可能で、バッテリーはもちろん日本の充電規格に対応している。
- 「Kalk &(カルクアンド)」 291万5000円
- 「Ösa+(オッサプラス)」 225万5000円
- 「Makka range(マッカレンジ)」86万9000円
デザインへの共感、体験を通して実感を広げる
日本市場での本格展開はこれからだが、ケイク社は現在、BtoBとBtoCでグローバル展開を進めていて、30年までに20万台の販売を計画。
BtoCに関しては、ストックホルム、パリ、ロサンゼルスにショールーム・販売・サービス機能を備えた拠点があり、25年までに25拠点を作る考えだ。
「現在のシェアはまだ小さいが、ヨーロッパなどでは化石燃料を使う自動車やバイクに対する規制が強まっており、その市場の縮小が想定されます。またケイクはモデルの多様化を進め、価格も幅が出てきました。今後もモデルを拡張し、目標を実現したい」とイッターボーン氏。
日本市場については、「私たちの電動バイクをプレミアムとしているのは、環境への配慮などのパーパス、イノベーション、パフォーマンス、クオリティーの4つを備えているから。購入客へのサービスもしっかりと果たしていかないとプレミアムとは言えません。そうした機能を一貫して提供できるのがゴールドウインであると思っています」という。
ゴールドウインはスキー事業を起源として現在は様々なアウトドア・スポーツ事業を展開し、バイクのウェアやアクセサリーも製造・販売してきた。
その点でも両社は親和性がある。
日本では23年1月からの3年間で5000台の販売を目指しているが、「できることからどんどん進めようと思っている」と渡辺社長。
「アウトドア・スポーツアパレル事業を軸としながら、新たに場所や時を創る事業を、共鳴する様々なパートナーと共創していく」とする。
例えば、ゴールドウインが環境省と締結している国立公園オフィシャルパートナーシップに基づいて全国の国立公園での移動手段として提案する、スキーなどウインタースポーツ施設の夏場を活用して利用体験を提供するなど様々考えられる。
26年に創業の地である富山県に開業予定の施設「PLAY EARTH NATURING FOREST(プレイアース ネイチャリングフォレスト)」での利用体験や移動手段としての活用も想定している。
4月にはケイクを体験できるショールームを丸ビルにオープンさせる。
アウトドア・スポーツ分野での物作り力を生かしたケイクのウェア開発など、既存事業とのシナジーも期待される。
写真/© CAKE 0 emission AB
取材・文/encoremode編集部