原宿のアパレルショップで長く働かれてきた益子さんですが、今回のシープ開店における想いを教えてください

「シープは原宿の、それもラフォーレ原宿1階の入り口付近という立地もあり、日本のファッション界を背負うつもりで、新しいクリエーションを発信していきたいですね。ここから日本と世界のエマージングブランドを発信したいと考えています」

ラフォーレ原宿という館自体が、日本のファッションシーンの最先端を発信している場所という点もあり、アジア圏、欧米も含めて注目されていると思いますが、このコロナ下におけるインバンドの現状をどのように見ていますか?

「経験上、インバウンドの売上は全体の4割程度なんです。この先、状況が戻ったとしたらそれぐらい、もしくはそれ以上の見込みはあると、SNSなどでの情報を通じて感じています。コロナ禍でもシープのようなオリジナリティーのある商材が求められていますし、この先、より必要とされていくのかなと、肌感で実感していますね。それは国外のお客様だけでなく、国内のお客様に対しても感じていて、そういう理由もあって"このお店でチャレンジしていこう"という思いに繋がっています」

「求められている」という点に関してですが、具体的にどういうエリアから、どんなアプローチがありましたか?

「中国、アジア圏には、シープで扱っているような日本のブランドの根強いファンがいるんです。また、欧米、アメリカからも通販希望のDMが来ているんですよ。あとは、いまZINE(ジン)のコーナーで、ニューヨークやロンドン、スイスなどの出版社が出しているジンを展開しているのですが、各国の出版先が、日本の、それもこの"原宿"という土地で自社のジンを扱っている事にプライオリティーを感じているようで、SNSを通じてアピールしてくれているんです。そういう流れもあって、"この先のグローバルに繋がっていくのかな"と感じていますね」

ジンというファッション以外のカテゴリーから世界に広がっていくという事ですね

「ジンは、自身のインスピレーションの元となる栄養剤的な感じの物だと思うんですね。クリエーションの隅にあるように感じがちですが、本当は中心にある。そういう部分はシープで扱っているブランドと繋がっていくと考えています」

どのような客層が買っているのでしょうか?

「若い世代の人はもちろんですが、ラフォーレの入り口を通るお客様が手に取って見て買ったり、年齢層はかなり幅広いですね。特に3人の日本人グラフィックアーティストがチームでやっている"3ジン"は、その購買を目的に来店されるお客様もいます。そういう感じで、ファッションではない目的で来店される方も少しずつ増えている状況なんですよね。いま、アジア圏、とくに中国の上海などではジンが人気なんです。日本でも、手軽に作れますし、若い人は自分を表現する作品集みたいな感じで、コミュニケーションツールのひとつとして活用しているようですよ」

シープの方向性について教えてください

「シープは、"森の中に入る"というイメージの内装で、木と緑の要素を多くしています。オープン時は、お花屋さんにディスプレイをお願いしていました。今後は、実店舗ならではの体験が出来るワークショップやイベント、お花屋さんのポップアップを定期的にやっていきたいと考えています。
実際に先日、写真館やぬいぐるみのワークショップを開催しました。また、シープに合いそうな陶器を4ブランドくらいセレクトして、お花屋さんとのポップアップを行ったりもして、どのイベントも大盛況でしたよ」

オープンして約2ヶ月ですが、何か感じていることはありますか

「今は、一点物のクラフトのブランドが人気なのですが、例えば、10数年前にあったスナップブームの時には、"いかに目立つか?"というコーディネートの買い方だったと思うんですね。でも、今は見せびらかす為ではなく、自分の為に買っている形に変化したように感じています。SNSなどでも発信せず、自分だけの宝物みたいな」

いわゆるのシェアやインスタ映えには興味がない、という買い方ですか?

「そうですね。SNSにアップするのはもちろん変わらずあるのですが、SNSにアップをしない、そういう買い方をする人も増えてきましたよね。購入した商品を自分だけの物として、大切にしている感覚なのかなと感じてます」

現状、1店舗のみでの展開ですが、出店など今後の予定はありますか?

「シープは、いまの時点では地方などに広げる考えはなく、原宿のこの店舗だけで深くやっていく、この店舗に集中したいという考えで動いています。まずは、世界中から原宿に集まってほしいですしね。その日の気分で買いたい物、着たい物は変わりますから、このお店では、つねに"嬉しい""楽しい"と感じられるものを売っていきたい。だから、自分の好きなものをさらに濃く、そして面白くしていきたいと考えています」

益子さん個人として、これからの生き方で考えている事などありましたら教えてください

「今回このお店を立ち上げるにあたって、"好きな物に真っ直ぐ生きていきたい"という思いが特に強くなったかな。"ファッションで生きていく"という事を自分の中で決めた感じですね。あとは"ウェルネス"というのも自分のテーマのひとつになっていて、いろんな面でもっと心の方から健康になっていきたいと考えています」

益子さんにとって原宿という場所、そしてシープはどういう存在なのでしょうか?

「原宿は、お客様の買い方の流れがあって、そこからファッションの流れを肌で感じられる場所なんですよね。そして、特にこのラフォーレ原宿、それもシープの場所は日本のファッション情報が集まってくる、情報の一等地みたいな場所なんです。だから、なるべく店頭に立つようにして、そういう流れを実際に体感するようにしています。これからシープとしては"共感のコミュニティーをどんどん増やしていきたい"と考えていて、それが私がこの原宿という場所でやる仕事なのかなと考えています。シープは、自分のすべてに繋がっているお店なんです」

写真/遠藤純
取材/久保雅裕(くぼ まさひろ)
取材・文/カネコヒデシ

益子杏子

アッシュ・ぺー・フランスに20年間勤務し、数店舗のバイイングを担当。元WALLのディレクター。2021年同社を退社後、SHEEPのディレクター兼バイヤーを務める。日本と世界のエマージングブランドの発掘と発信をし、原宿のファッションカルチャーを牽引し続けている。

シープ

住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿 1階
TEL:03-6434-0333
営業時間:11:00-20:00

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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カネコヒデシ

メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。

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