9人組ミクスチャーユニット・SUPER★DRAGONのラップ担当・松村和哉によるソロプロジェクト・Cuegeeが、11月14日に3rd EP『Liberty』を発表。同日、主催イベント『Liberty』を東京・Spotify O-nestで開催した。昨年4月に始動して以来、グループ活動と並行して精力的にリリースを続け、外部イベントにも出演してきた彼だが、この日はsaku、Joe Cupertino、シラフ、tip jamと、Cuegeeいわく「様々な場面で自分のキャリアに影響をくれた」アーティストを招聘。Cuegeeとして活動を初めて1年以上が経ち、変わることのない信念と着実な進化がうかがえるステージで、ラッパーとしての飛躍を確信させた。

幕開けのsakuに始まりJoe Cupertino、シラフ、tip jamとステージをつないで、主催のCuegeeは大トリとして登場。気だるげなピアノで始まる「Darkhero」から、まったく異なる2つの界隈で生きる自身を“ラッパーでアイドル”とズバリ言い切り、特異な道を選んだ覚悟を1音1音、刻み込むようなラップで語っていく。そんな強気を見せながら“誰も一人じゃ生きれなくて”と歌い、我々と地続きの世界に生きる人間であることを示してくれるのもCuegeeの特色。彼の音楽と、そこに乗せられた言葉はどこまでもリアルで嘘がなく、ゆえに、心地よくフロアを揺らしていけるのだ。

1曲終えると「よろしく」と一言挨拶し、アーティスト名の由来でもあることわざ『龍に九似あり』から名を取った「九似」へ。どこか幻想的なムードもまとわせながら“死に方も生き方も俺が決めるから邪魔すんな”と意志を叩きつけ、自らを取り巻く環境への揶揄を遠慮なく混ぜ込んだ「Drama」では、明け透けに自身の経歴を綴って“俺生きるだけでDrama”とドロップする。そこにあった“ただラップがしたかっただけ”というリリックがハッタリではないと証明するように、続く「No TV Star」の披露前には「頼まれて頼まれて、やっとテレビに出ます、僕は。“出させてください”ってお願いしてるアーティスト、全員ダサいっす」と、なんとも敵を増やしそうな台詞も。さらに“ならないお茶の間のスター”“ラップしかする気がないCuegeeは”と超高速ラップで撃ち込んでいったように、ひたすらに己と、これまでの人生と、その先にたどり着いたラップへの忠誠を歌い上げるのがCuegeeのスタイルでもある。

「ようこそ『Liberty』へ」と始まったMCでは、今年5月の初ライブについて「初めて自分で動いたから“かまさないとな!”って思っていて。客演は1曲だけって決めていて、ちょっと怖かった」と振り返り。対して今回は「客演ガンガン呼んで、パーティーしようかなって思ってます」と、真逆のスタンスを宣言する。そして「パーティーお兄さん1人目」としてsakuが呼び込まれ、昨年、彼がCuegeeをフィーチャリングして発表した「Ghillie Dhu」のイントロが鳴ると、フロアからは大歓声が。スコットランドに伝承されている妖精の名を取ったタイトルが示すように、どこか幻想的な空気感のあるトラックで2人は動きと呼吸を合わせてステージ上を呼び跳ね、満開の笑顔を浮かべた。「最高!」と互いに固い握手を交わしてsakuが去るや否や、昨年夏に発表したEPでnomaをフィーチャリングした「Earmuffs」へとなだれこみ、客席からは“ゴールドジム!”のコールも。曲後半ではnoma自身もステージにあがって、重低音が響くトラックの上で野性味あふれるラップを放ち、フロアの温度とテンションを一気に上げてみせた。

「先生、ありがとう」とnomaと握手で別れ、Cuegeeは「楽しいですね!」と破顔。sakuもnomaも共に自身より4歳年上で「よく飲みに連れて行ってくれる」と明かし、バックDJとの軽妙なやりとりでも和ませる。さらに「本日0時にリリースされた『Liberty』でも、1人モテ男が客演で入ってて、2人でラブソング歌ってたと思うんですけど。2人ともあまりにもモテちゃうから、モテ男同士でラブソング作るしかないだろうってなった曲、持ってきました」と、tip jamをフィーチャリングした「Clock」を披露。かすかにロマンティックな風情のあるトラックに、募る恋情と焦燥感をまとった高速ラップを乗せて、Cuegee特有の低音ボイスの甘さを際立たせた。曲後半では、もちろんtip jamもステージに加わり、ヒリヒリするような掛け合いを展開。その後のMCでは、本日の出演者についても「ホント普段プライベートでお世話になってる人とか、兄貴分みたいな人」と紹介し、「シラフくんは、俺がちょっとメンタルやばいときに、リリース前の「So Close」を俺に送ってくれて、それで命救われてんなって思うくらい大好きな人だし、リスナーとして大ファンな人もいるし。俺の個人的な感情でしか作ってないイベントなんですけど、ここまでみんなが音楽を楽しんでくれて、すごく嬉しいです」と本心を口にした。

後半戦では最新作『Liberty』のタイトルに込めた想いを語る場面も。音楽を始めてから「基本的に上手くいかないことのほうが多い」と話し、それでも「たまにある良いことで、良い気持ちになれるからやってる」と告白。そして「そういうもんだなって理解して生きてくようになったら、すごく自分が楽になれて。Liberty(=自由)になれたなって思うんで、俺がそうなれるまでの道のりを3曲続けて聞いてってください」と伝えてからのパートは、まさにCuegeeの進化を示すものとなった。まず、今年4月に発表した「Trauma」では、これまでの辛い体験を赤裸々に書き記しながらも、選ばなかった道に後悔はなく“今が一番幸せだよ”と断言。歌い終えてから「大丈夫。俺はもうトラウマを全部愛してるから」と言い置くのも頼もしい。EP『Liberty』収録の「Back to back」では、さらにパーソナルな日常の心象風景を綴り、過去を振り返るようなノスタルジーも匂わせて、少しだけ心がほどけるような感触も。アウトロで「俺はどんどん周りから人が消えていったりするんだけど、でも、俺は今、一緒にやってる人や、今日一緒に出てくれた人を大事にしたいです」と述べる姿には、一種の悟りも見て取れた。

そして3曲連続のラストに披露されたのが、今年7月に配信されて『Liberty』にも収録されている「About time. I’

m ready.」。ここまでの楽曲とは異なるハイトーンの声音から幕開け、ひたすらに“俺ならだいじょうぶ”と繰り返すナンバーで訴えるのは、これまで自分のために歌い続けてきたCuegeeが、いつかは“あなたの光”になりたいという想いだ。“まだちょっとできないけど”と歌いつつ、その発想が生まれてきたこと自体がアーティストとしては大きな変化。自信に満ちたパフォーマンスや曲タイトルからしても、きっと準備は整いつつあるのだと感じることができた。

「……ということなんですよ。上手くいかなかったり、人がどんどん消えていったりとかあるんだよね、ホントに。大事な出会いが起きたぶん、大事な人とか連れだった奴とかがどんどんいなくなったり、音楽辞めてったり。でも、今、周りにいてくれる人とか、ここに集まってるみんながいるんで、メチャメチャ楽しいです。すごくLibertyです、僕は今」

自身の変化の経緯とリアルな今の心境を伝えてからは「すごくLibertyな空間が作れたと思います。最後だけさ、撮っていいとかアリ? アリにしよう!」と、ラスト1曲でオーディエンスにスマホ撮影を許可。「綺麗だから全員フラッシュ焚いてみて」とスマホのライトをつけさせ、明るくなった客席に「すごいすごい!」とはしゃぎ、少年のような素顔を見せるのも微笑ましい。そして「この空間に感謝をして、上手くいかないことばっかだけど、不自由を笑って、不自由をみんなで歌いましょう」と披露されたEPのタイトル曲「Liberty」は、リリックに“あなた”というワードが何度も登場するCuegeeにとっては革新的なナンバー。オーディエンスと共にライブ空間を楽しむべく「最後みんなで手あげて」と呼びかけ、共に手を振る光景を目にして、ただ自分の想いと決意をラップで叩きつけるのとは違う、新しいCuegeeの扉が開かれた気がした。

この日、ラッパー仲間に囲まれて何度も「楽しい」と漏らし、「俺、普段説教みたいなライブしかしてないんで、こんなラフに楽しむの初めてです」と喜んだCuegee。今回の主催イベント『Liberty』は11月23日に大阪・梅田Shangri-Laでも開催され、こちらのステージにはEASTA、Kay-on、KennyDoes(梅田サイファー)が出演することも決まっている。「About time. I’m ready.」のリリックを 借りるならば、“be my light”から“be your light”へ――。今、ついにCuegeeの“時”は来たのだ。

そんなCuegee が3rd配信EP 『Liberty』 を11月14日にリリースした。

ヒップホップに足を踏み入れて1年半、葛藤や迷いを経て“本当の自由”にたどり着くまでの半年間を音楽で綴った、Cuegeeの軌跡とも言える一枚。収録された楽曲は時系列に並べられ、揺れ動く感情や精神的成長がリアルに表現されており、アーティストとしての“指針”となる作品になっている。

EP収録新曲の「Clock feat. tip jam」では、人や物、夢といった大切な存在を愛すれば愛するほど、まるで時計の針のように愛情が追いかけ合い、時間を奪い合うような関係になる様子を描いており、続く「Liberty」では、自分よりも「あなた」が明らかに優れていると感じた瞬間に抱える葛藤と、その劣等感を乗り越えようと何かを掴みにいく、心のもがきを表現している。

「Back to back」は、音楽の道を離れた友人へ向けて「また戻ってきてほしい」と願いを込めて歌った、どれだけ素晴らしい才能を持っていても、やはり人と人との繋がりこそが大切だと、あらためて気づかせてくれる楽曲。

そして「Bremen」では、どんなに周囲に恵まれ、幸せに見えても、内面には満たされない欲深さが残る——そんな自分自身との静かな戦いが描かれている。

SUPER★DRAGON 松村和哉とは違った、よりディープな世界観を表現する Cuegee。

11月23日には主催ライブ 「Liberty」 の大阪公演は梅田Shangri-Laに開催する。

「Liberty」にたどり着くその瞬間を、ともに見届けてほしい。




文:清水素子

リリース情報
2025年11月14日(金) リリース
3rd配信EP 『Liberty』

01. too much
02. About time. I'm ready.
03. Clock (feat. tip jam)
04. Liberty
05. Back to back
06. Bremen

ライブ情報 
2025年11月23日(日) 
Cuegee主催ライブ 「Liberty」大阪公演

・会場:梅田Shangri-La
・時間:開場 18:00 / 開演 18:30

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