──4月にソロプロジェクト、Cuegeeが始動しました。まずはおめでとうございます。

「ありがとうございます」

──ソロプロジェクトを始動させようと思ったのはなぜでしょう?

「純粋にやりたかったから。SUPER★DRAGONの制作に携わっていく中で、もともと自分が好きだったHIP HOPに、一人で足を踏み入れてみたかった。SUPER★DRAGONのメンバーが誰も助けてくれないところで俺はどれだけやれんだろう、という挑戦というか。自分が一人でどこまでいけるか知りたいと思って始めました」

──デビュー作をリリースしてから1ヵ月ほど経ちましたが、反響や反応はどのように受け止めていますか?

「ソロを始めるにあたって、SUPER★DRAGONが前提としてなくてはならないと思っているので、1曲目はそれがちゃんと伝わるような曲にしたかった。だから、1曲目はさっき言ったような“HIP HOPのシーンに一人でエントリーする”というよりは、ファンのみんなに行ってきますという前置きみたいな意味も込めた曲にしたんです。だからリリースしてみんなが聞いてくれて、ファンのみんなが快“頑張ってやれよ!”と思ってくれているのかなということは感じました」

──松村さんはもともとHIP HOPが好きだったということですが、そのきっかけは?

「僕は小学5年生のときにSUPER★DRAGONに……気付いたらなっていて(笑)。当時、プロデューサーに“お前、今日からラッパーな”と言われたんです。でもその頃は“ラップって何だろう?”という状態で。やっていくうちにだんだん好きになっていったという感じです」

──好きになるより前にラップをすることになる人ってなかなかいないですよね。

「そうなんですよ。普通は好きになってから始めると思うので、あんまりないパターンだなって、自分でも思っています」

──よくわからないままラップを始めたわけですが、ラップやHIP HOPとはどのように触れ合っていったのでしょうか?

「自分から聴くようになったのは中学2年生くらいのとき。最初はZORNでしたね。ちょうど「RGTO」が出るタイミングくらいだったので、そこからAKLOやSALU、そして海外のアーティスト……と、どんどん知っていきました。ラップの何に惹かれたのかは覚えていないですけど、いつのまにか好きになっていて。学校でラップ好きな友達を見つけて一緒にやってみたり。すごくナチュラルに好きになっていきました」

──特に影響を受けたラッパーを挙げるなら?

「単純にラップのスキルという意味で影響を受けたのは梅田サイファーのKennyDoesさん。精神的な意味で影響を受けたのはSKY-HIさんです。アイドルがソロでラップをやっていると言ってもあんまり煙たがられなくなっているのは、間違いなく彼が戦い続けてくれたから。だからめちゃくちゃ感謝しています」

──初めは役割として与えられたラップですが、その後、ご自身で制作して、さらにはソロを始めてしまうほどに好きになっていったのはどうしてだと思いますか?

僕、めっちゃ飽き性なんですよ。スケボーをやってみたり、いろんな趣味をやってはみるものの、どれも続かなくて。いつも初期投資だけして終わっちゃう。だけどHIP HOPは音楽性として飽きさせない仕組みになっている。例えば、ハウスにしてもテクノにしても、そもそもBPM帯や音像が変わることってそんなにないと思うんですけど、HIP HOPはトラックを聞けばどの年代に流行ったものかがわかるくらい流動的な音楽。だからずっと飽きずに好きでいられるのかな……と、自分では思っています」

──SUPER★DRAGONのライブを見ていると、年々松村さんのラップがスキルフルになっていくのを感じます。ご自身ではスキルや感情の入れ方などの上達を実感するようになったのはいつ頃ですか?

「2022年に出したアルバム『Force to Forth』あたりですかね。初めてスパドラの制作に入らせてもらったのがその作品で。作り始めたからうまくなったというよりは、自分で作るラップがうまくなってきて、世に出してもいいかなって思えるようになってきたから制作に関わらせてもらったので」

──それこそSUPER★DRAGONでもラップパートを始めとする楽曲制作に携わっていますが、今回ソロでの楽曲を作るにあたって、意識的にSUPER★DRAGONの楽曲と変えたところはありますか?

「SUPER★DRAGONとして書いている曲は、あくまでも商品という感覚で。それは悪い意味ではなくて、ラップって何?、HIP HOPって何?という方々にも聴きやすいものにしようと思って書いているんです。それと比べて、ソロはもう好き勝手やっています」

──思い切って好きなことをするソロ曲、逆にいろんなことを考えながら作るスパドラ曲、感覚的な違いだったり、心掛けていることはありますか?

「今、ソロの制作をガンガンやっていて、そのなかでスパドラの制作もちょこちょこ進んでいるんですけど、その二軸でやっているのがちょうどいいなと思いました。両方息抜きになります」

──ここからはCuegeeとしてのデビュー曲「Straight up」について伺います。先ほど、1曲目は、行ってきますという気持ちを込めたと言っていましたが、この曲のコンセプトは?

「一人ではソロ活動を始められなかったので、そういう意味での周りへの感謝の気持ちや、10年近く芸能界で見てきたことや感じたことを曲にして、一旦チャラにしたいと思いました。今までの思い出を一度曲としてまとめて、“あとはもう次に進むだけ”という状態にしたかった。だからこの曲は、振り返りながら書いた思い出話という感じです」

──これまでのアーティスト生活を振り返ってみていかがでしたか?

「小学生からやっているので、周りを見てしまう瞬間はどうしてもたくさんあったなと思って。放課後もみんなは遊んでいるのに“俺は帰って仕事行くんだ……”みたいなことも思ったし、何かを失っている感覚になっていたんですよ。だけど、今、自分がここでCuegeeとして曲を出しているのは、あの頃、放課後に遊んでいたら、たぶんなかった未来。だから今振り返ると、失った以上に得られたものが大きかったなと思います」

──それこそ<遊びが遊びじゃなくなってjobに>というフレーズもありますが、“気がついたらなっていた”というSUPER★DRAGONでの活動を、仕事にしていくという覚悟が決まった瞬間はいつでしたか?

「いつなんだろう……仕事にしているとはいいつつ、遊びではあるので

──今でも遊びの感覚のまま?

「そうですね。聴いてくれる人がいるので、そこに対して言いたいことや伝えたいことがあるという意味では仕事ですけど、気持ちはずっと遊びですね」

──変な話、同級生が進学や就職の道も選ぶというタイミングでも迷うことはなかったですか?就職しようかな……とか。

「就職しようかな……は、全く思ったことがないですね(笑)。むしろ、もう楽しくない仕事はできない体になってしまった。平日めっちゃ働いて、土日にめっちゃ遊ぶという人いるじゃないですか。僕はそれはできないなと思う。この仕事以外の選択肢は考えたことがないですね」

──まさに「Straight up」はそんな気持ちを綴った1曲ですが、ご自身の中で特に気に入っているフレーズを挙げるなら?

「<この目で見たい光景>から最後のサビに入るまでは、すごく気に入っていますね。ここはレコーディング前日に書き換えたんです。スパドラのメンバーや周りのスタッフの話が全然できていなかったなと思って。自分の周りにいる人たちに向けて書いた言葉です」

──<血より濃い繋がりに縛られた お前も道連れ>のあたりはまさにメンバーのことを歌っているんだろうなと思いました。

「まずラップというものに出会わせてくれて、ここまで来させてくれたのはSUPER★DRAGONだから。あと日本の現行のラッパーの方々って、地元について歌ったりするじゃないですか。でも僕は“地元ない系男子”で。僕にとってはそれがSUPER★DRAGONだったなっていう」

──確かに小さい頃からずっと一緒に遊んできたという意味では、SUPER★DRAGONメンバーが地元のツレみたいな存在ですよね。

「はい、そういうことです」

──今回、ソロプロジェクトとして1曲完成させたわけですが、作り終えてみた心境はどのようなものですか?

「曲自体の完成もそうですし、ジャケはどうするのかとか、アー写のカメラマンは誰にするのかとか、いろいろな方面に考えを巡らせながら一つの作品を作り上げていくのが、めっちゃ大変だなと思いましたね」

──ソロプロジェクトなので、楽曲だけでなく、アートワークや打ち出し方みたいなところも松村さんの意見が反映されているわけですもんね。

「はい、ありがたいことに。好き勝手やらせてもらいました」

──作品を“見せる”ということに関しては、もともと興味があった?

「いや。僕、アートとかめっちゃ疎くて。映画とかも全然見ないですし。どうすればいいのか全然わからなかったので、今後はそういうことを考えてくれる信頼できる仲間を見つけようと思いました。“俺、毎回これはできないな”って(笑)」

──すべてを一人でやるということではなく、好きな仲間と一緒にやるという意味でソロ“プロジェクト”なんですもんね。

「はい」

──ソロプロジェクトの名前「Cuegee」は、SUPER★DRAGONへの想いも込められた名前だそうですが、そこに込められた想い、Cuegeeというアーティスト名を付けた理由を教えてください。

「SUPER★DRAGONにちなんで付けた名前であることは間違いないんですけど……今後、その理由がわかる作品を出したいなと思っているのでお楽しみに、ということでもいいですか?(笑)」

──わかりました。楽しみにしています。ということは、次のリリースや、Cuegeeとしてのこの先のプランも結構決まっている?

「そうですね。実態があるわけではないですけど、ぼんやりとこうしていきたいとかこうすべきなんじゃないかというものは見えてきています」

──Cuegeeを始めたことで、SUPER★DRAGONの活動にはどんな影響がありそうですか?

「それこそ僕がきっかけで繋がっていくアングラのラッパーの方が“アイドルでもこんなカッコいいことしている人たちいたんだね”って気付いてくれるようになって。SUPER★DRAGONに対してそういうことを言ってもらえるのはすごくうれしいですね」

──ソロ活動をしつつも、根幹にSUPER★DRAGONがあるということは変わらずですか? 変な話、ファンの方の中にはソロ活動が楽しくなっちゃうんじゃないかという心配をする方もいると思うのですが。

「そこは心配しなくて大丈夫です!」

──安心しました。では、改めて、Cuegeeの今後の活動や展望について、今考えていることを教えてください。

「この活動のゴールは決まっています。韓国の音楽シーンって、アイドルがラップすることを許容しているし、アイドルというオーバーグラウンドなシーンと、HIP HOPというアンダーグラウンドなシーンが手を取り合っている印象があって。日本の音楽シーンもそうなるといいなと思っていますし、自分がそのきっかけになれたらと思っているんです。自分をきっかけに、アイドルの子たちがガンガンHIP HOPシーンに参入していってほしいし、ポップシーンももっとオーバーグラウンドとの繋がりが持てるようになってくれたらいいなと思っています」

──Cuegeeの楽曲で「こういうことを歌っていきたい」というものは何か考えていますか? それともその時々の感情を出していく?

「今でもラッパーの方とお話しをするときにアイドルですって言うと、それだけで話を聞いてもらえないこともあるんですよ。それだけでつっぱねられちゃうみたいな。だから大人が許してくれる限りケンカを売りに行こうかなとは思っています(笑)。というか、文句が言えないくらいの曲を作ります」

──頼もしいですね。期待しています。最後に。こうして楽曲がリリースされると、Cuegeeとしてのステージが見たいなと思うわけですが……そういうチャンスはありそうですか?

「作ろうと努力しています。というか……きっとありますよ!楽しみにしていてください」

(おわり)

取材・文/小林千絵

Cuegee「Straight Up」DISC INFO

2024年4月14日(日)配信
ポニーキャニオン

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