結成からわずか2ヶ月、この世に生まれたばかりの、膨大なエネルギーを放つ日韓混合バンド・CROWN HEADJ-ポップにとどまらず、世界とリンクするポップやロックも飲み込む音楽性を武器に、彼らの正真正銘の初ライブをついに目撃した。Jメジャーデビュー曲「Hidden」でいきなり橋本環奈主演のドラマ『天久鷹央の推理カルテ』のオープニングテーマに抜擢されるという注目度の高さや、結成2ヶ月ながらもSNS総フォロワー数は40万人を超えるというプロフィールを持つ彼らだけに歴史の目撃者として集まったオーディエンスは実に層が広かった。加えて、そもそもが関係者向けのショーケースとして位置づけられていただけに、音楽・メディア業界からも関係者が多数集まる中での初ライブとなった。

SF的な世界観のプロローグ映像に乗せ、バンドが紹介されると4人がステージに登場。1曲目は唯一世に出ている「Hidden」だ。TasukuDr)の4カウントでスタートし、早くも繊細で柔らかいMotoVo)とR&Bボーカル的な特徴のあるLumelBa/Vo)のコントラストやコーラスの美しさを実感。パワフルなサビではフロアの手も挙がる盛り上がりだ。背景のビジョンにはMVにリリックも投影され、最初からなかなか緊張感あふれる展開だが、終盤にはhirotoのギターソロという見せ場もあり、このバンドのキャラクターが1曲に集約されていた。この曲が終わればここにいる誰もが初めて聴くレパートリーに突入するわけだが、初見でどれだけ盛り上がれるのか?という不安はまったくの杞憂だった。「Therapist」と題された2曲目のナンバーでも映像とリリックが映し出され、タイトルが示唆するように助けが必要なのに本音を明かせない心情が綴られている模様。そんなテーマがアコギリフのループのモダンロックに乗る新鮮さ、ツインボーカルの対照も相まって強く印象に残った。

ついに始まったバンド初のショーケースライブに笑顔を浮かべる4人。想像以上のリアクションに嬉しそうだが、より盛り上がるために次の曲は撮影OKなので『ノリながらシャッターを切って』とTasukuが呼びかける。4つ打ちのポスト・パンクなビートの「Cheese」と題されたナンバーでガラッとムードを変える。グッズにもなっているメンバーをキャラ化した映像もとてもポップだ。まだ3曲しか披露していないのに音楽も映像もレンジの広さに驚かされる。さらにせつなさが滲む16ビートナンバー「ブルーシンドローム」は波打ち際の映像も相まって、せつない夏のラブソングをダイレクトに届けてくれた。本当にこれが初ライブなのかと思うほど、すでにバンドとしての世界観がしっかり築かれていた。

1曲1曲をしっかりプレゼンテーションするような演奏と演出で、初見にも関わらず4曲の個性が強く印象に残ったところで、ステージはアコースティックセットへ。彼らがInstagramに不定期でアップしているJ-ポップ、K-ポップ、洋楽ナンバーを組み合わせたマッシュアップをライブで披露するという。まさにCROWN HEADらしいアプローチだ。Tasukuがカホンを叩き、hirotoがリラックスしたフレーズを弾くなか、Lumelが「Butter」(BTS)、MotoARASHI(嵐)のメロディを歌うとフロアからは驚きと納得が混ざった歓声が。さらにはLumelが好きだというジャスティン・ビーバーとVaundyTWICEとモーニング娘。のマッシュアップメドレーを届けた。マッシュアップの意外性と親和性は同時にあらゆる世代が楽しめる彼ららしいライブの武器になりえると感じた。

マッシュアップが自然に場を温めた流れを受けて、次はカバーコーナーへ、洋楽、J-ポップから1曲ずつカバーを届ける場面も。まず、Lumelが大好きだというマイケル・ブーブレの「HOME」。Motoもアコギを弾くこの曲のニュアンスはボーイズグループのボーカルワークも思わせ、彼らのオリジナル曲での歌のあり方にも大いに納得した。ちなみに先日アップしたこの曲のカバー動画は60万再生を超えたという。そしてMotoがリードをとったのは優里の「恋人じゃなくなった日」。Motoのせつな苦しい声とLumelの洒脱な歌いこなしでボーダーレスな仕上がりになり、hirotoのブルージーなソロが彼ららしい後味を残した。ポピュラーな曲のカバーですっかり場があたたまり、オーディエンス同士のバイブスもさらにいい方向へ。

一転して、タイトルに呼応するような幻想的な映像を背負って、新曲「鬼灯」を披露する4人。嫉妬やネガティビティを伺わせる歌詞がマイナーのミクスチャーサウンドに乗る、これまた新しい側面を見せた。演奏を終えるとビッグニュースが告知される。メジャーデビュー曲のドラマタイアップに続いて、2nd Digital Singleとなるこの曲はアニメ『転生宗主の覇道譚〜すべてを呑み込むサカナと這い上がる〜』のオープニングテーマに決定したのだ。メンバーも初めてだというアニメのティザー映像を会場で観客と共に視聴。7月からのオンエアで曲とどんな化学反応を見せてくれるのかも楽しみなところだ。

続くナンバーはMotoがバンド加入後、最初に歌ったという「ベル」。駅のホームで、別方向の電車に乗るふたり、別れたくない想いとは裏腹に、無情にも発車ベルが鳴る、そんな切ない情景をMotoLumelの声の重なりで繊細に表現されており、この曲も早く音源で聴いてみたいと思わせてくれた。ラストナンバーの前にはメンバーそれぞれがCROWN HEAD結成やデビューについて想いを言葉にする。わずか2ヶ月という短期間でバンドを作り上げてきた頭脳であるTasukuは「自分が居たいと思うところに同じようにこの3人も居るんです」と、価値観の大切さを語り、hirotoも「どんなに全力でやってもバンドってそんなに上手く行かないんです」と、これまでのキャリアを振り返り、幼馴染のMotoが最後のピースとして加わったCROWN HEADの奇跡をむしろ必然と感じているようだった。Lumelは今の状態を幸せだと語り、「人としてもメンバーとしてももっと成長したい」と決意を述べる。そして最後にMotoが彼自身、3人の音楽のファンだったことから「Tasukuさんが“今までやっていたこと全部無駄になっちゃった”と言ったことがあるんですけど、そんなことはないと思っていて」と、この日はその想いを言葉にして3人に伝えたのだった。最後に加入したMotoLumelから最初に送られた曲を覚悟の証として披露する気概はMotoの「アンコールはありません。この曲に全部出し尽くします」と、この日のライブタイトルでもある「Climbing」というナンバーで記念すべき初のショーケースライブを締めくくった。視界が開けて行くようなスケール感を持つこの楽曲には4人それぞれの再出発の想いが込められていた。、そして、最後に響いた<さあ、始まるよ>という一行が、その全てを象徴していた。

ライブ中にも発表されたが、8月9日には2nd ONEMAN LIVERed Riot』も決定している。

(おわり)

取材・文/石角友香

SECRET SHOWCASE “Climbing”SET LIST

1. Hidden
2. Therapist
3. Cheese
4. ブルーシンドローム
5. Acoustic 特別コーナー
6. HOME(Michael Bubleカバー)
7. 恋人じゃなくなった日(優里カバー)
8. 鬼灯
9. ベル
10. Climbing
└ 2025年66日(金) 東京 代官山 Space Odd

CROWN HEAD「Hidden」インタビュー
CROWN HEADとは一体何者なのか?!

モダンミクスチャーとR&B的なサウンドが融合した「Hidden」でデビューした日韓混合バンド CROWN HEAD。デビューでいきなり話題のドラマ『天久鷹央の推理カルテ』オープニングテーマに抜擢されるなど、いきなりトップスピードを叩き出すCROWN HEADにインタビュー!
インタビューはこちら >>>

RELEASE INFORMATION

CROWN HEAD「Hidden」

2025年520日(火)配信

CROWN HEAD「Hidden」

LIVE INFORMATION

2nd ONEMAN LIVE「Red Riot」

〈日時〉2025年8月9日(土) 開場18:30/開演19:00
〈会場〉代官山Space Odd
〈料金〉スタンディング ¥3,000(税込)
〈チケット情報〉https://eplus.jp/CROWNHEAD/

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