UK発!大注目新人バンド、ザ・ラスト・ディナー・パーティー。東名阪を巡る2度目の来日公演中の彼らの、ツアー初日である幻想的で圧巻のZepp Haneda公演の模様を記したライブレポートが到着した。
ザ・ラスト・ディナー・パーティーの初来日は、昨年7月の単独公演&フジロック。そこから約8ヶ月という短いインターバルにも拘らず、彼女たちのパフォーマンスは驚きの進化を遂げていた。誤解しないでほしいのは、The Last Dinner Partyはもともと素晴らしいライブバンドであったということだ。テクニカルな面でも、ハイ・コンセプトな構築面でも、そして観客を自分たちの世界に全力で誘うガッツの面でも、The Last Dinner Partyは昨年の段階で早くも新人らしからぬ精度でそれらをやり遂げていた。デビュー・アルバム『プレリュード・トゥ・エクスタシー』で全英1位を獲得し、2024年に最も跳ねたUK新人バンドとなったのも納得の実力派、それがThe Last Dinner Partyだった。しかし、今回の彼女たちはテクニック面でも、構築面でも、ガッツの面でも、昨年から2段階も3段階もバージョンアップしており、濃密で過剰な『プレリュード・トゥ・エクスタシー』の世界がより立体的に立ち上がってくる、圧巻の1時間10分だったと言っていい。
The Last Dinner Partyのトレードマークである天使が左右を固めたステージは、巨大な三日月に照らされたロマンティックな月夜のイメージで作られていた。強烈な逆光の中でから赤・白・黒を基調としたドレッシーな装いの5人が現れると、瞬く間にZepp HANEDAは幻想的なムードに包まれていく。筆者が「今日のTLDPは凄い!」と確信したのは2曲目の“Caesar on a TV Screen”で、この曲特有の転調の切れ味といい、妖艶とコケティッシュを気まぐれに渡り歩くアビゲイル(Vo)のショーマンシップといい、「anyone!」連呼のカタルシスといい、まさに全方面で無敵感を増している。
アビゲイルは今やフロントパーソンとしての自信に満ちていて、客席に背中を向けてポージングしている時ですら、目が惹きつけられるカリスマだ。しかしひとたびMCになると、「東京に戻ってこられて嬉しい! ワオ、こんなにたくさんの人が観にきてくれて……今日は楽しんでいってね!」と、飾らない満面の笑顔を見せてくれる。そんなフレンドリーさから一転、エミリーのフルートを合図にミラーボールが回り始める“Beautiful Boy”、アビゲイルがステージに崩れ落ち、蹲る “On Your Side”はノクターンのように静謐な仕上がりで、この静と動のコントラストもまたThe Last Dinner Partyの真髄だ。

セットリストは昨年とほぼ同様、曲のレパートリーが増えたわけではないのだが、5人のミュージシャンシップの成長によって一曲ごとの完成度が桁違いで、全14曲1時間強とコンパクトに纏まっているとは思えないほど充足感があるステージだ。エミリー(G)のギターはますます磨きがかかり、特に“Sinner”では、今、こんなに格好良いギターソロを弾きこなす女性ギタリストは他にいないんじゃないかと思ってしまう。また、今回特に著しい成長を感じたのがリジー(G)を中心としたバックボーカルで、3パートで美しいコーラスを響かせたり、勇ましくユニゾンを轟かせたり、はたまた“Gjuha”では宗教儀式を彷彿させるミステリアスなハーモニーを効かせたりと、声楽としての厚み、面白さが格段に増していた。
進化と言えばジョージア(B)の日本語もさらに上手くなっていて、「次の曲はちょっと哀しいです。一緒に歌いましょうか」「今、新しいアルバムを作っています。次の曲は“大きな犬”、英語だと“Big Dog”です」etc.、この国の言葉でファンと積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれていた。
ちなみに恒例の日本語でのメンバー紹介ではうっかりアビゲイルの紹介を忘れ、メンバー全員笑いを堪えながら“The Feminine Urge”を歌い始める、なんてチャーミングな一幕も。
ブロンディの“Call Me”のカバーで会場をさらに温めた後の後半戦は、The Last Dinner Partyの真骨頂たる過剰さが炸裂!彼女たちのエキセントリックの極地を示すナンバー、“My Lady of Mercy”ではエミリーがフライングVを、オーロラが巨大ショルキーを抱えて5人が横一列で並んだその様に、本当に絵になるバンドだと惚れ惚れしてしまう。客席に飛び込んだアビゲイルが真紅の薔薇の手にしてステージに戻ってくるのが、まるで映画のワンシーンのようだ。恐らくThe Last Dinner Partyの最新モードを示唆するナンバーである新曲の“Big Dog”は、マキシマリズム方向に思いっきりブーストをかけたホワイト・ストライプス、とでも喩えるべき恐ろしくヘヴィ&タイトな演奏。これが彼女たちの未来だとしたら、私たちはまだまだこのバンドの全貌を知らないということになるだろう。アンコールの“The Killer”は寸劇も交えつつの徹底してシアトリカルなパフォーマンスで、The Last Dinner Partyは本当に最後の最後まで手を抜かないというか、貫き通すべき美学の在処を確信しているバンドだ。ラストはもちろんこの曲“Nothing Matters”! オーディエンスの大合唱と共に完全燃焼の幕切れとなった。
この日はThe Last Dinner Partyにとって2025年のツアー最初のステージだった。つまりある種のウォーミングアップでもあったにも拘らず、かくも凄まじいパフォーマンスを見せてくれたのだから、大阪、名古屋とさらにヒートアップしていくことは間違いないだろう。 (粉川しの)


ザ・ラスト・ディナー・パーティーProfile
ライヴ・シーンから頭角を現したロンドンの5人組バンド。
2022年にはThe Rolling Stonesのハイドパーク公演にオープニング・アクトとして抜擢され、2023年4月にリリースしたキャッチーでダークなギター・ポップ曲「Nothing Matters」はオンライン上で話題となり、急速にバンドの名が広まった。 2023年夏のイギリス各地で開催されたレディング等のフェスティヴァルでオーディエンスを魅了し、秋に開催されたUSツアーも全5公演が公演日の数週間前に完売した。 2024年にはBBCによるSound of 2024の第1位を獲得、BRITアワードのライジングスター賞受賞等、インディー・ロック・シーンの注目を集める。
同年2月、プロデューサーにGorillaz、Arctic Monkeys等を手掛けた伝説的なプロデューサー=James Fordを迎えたデビュー・アルバム『プレリュード・トゥ・エクスタシー』をリリース。同アルバムは、2024年マーキュリー賞の候補にも選出された。7月にLIQUIDROOMで行われた初の来日単独公演はソールドアウト。FUJI ROCK FESTIVAL’24のグリーンステージに出演し、大いに会場を盛り上げた。 2025年4月には東名阪を巡る単独ツアーが決定!ブリット・アワード2025で、ベスト・ニュー・アーティストを受賞。
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