THE ALFEEによる日本武道館公演は――ライブ本編のMCで坂崎が語っていたように――2022年12月24日の「冬の天地創造」をもって通算99回を数えることになった。立見チケットも出たと聞いて、ALFEEの衰えない求心力と、感染症対策は維持しつつも行動制限のないクリスマスが久しぶりに戻ってきたと実感する。

公演回数の多寡がアーティストの価値を決めるものではないし、THE ALFEEが日本武道館という会場のステイタスに拠り所を求めているわけもないだろう。でも、だからこそTHE ALFEEと、彼らを愛する人々が、毎年クリスマスの季節に、決まって同じこの場所に集うことが大きな意味を持つのだ。

1曲目は最新シングルから「星空のCeremony」。「星空のディスタンス」を思わせるタイトルや<カシオペアを探して>という歌詞と相俟ったハードロックなサウンドが武道館の八角形の空間を満たしてゆく。高見沢のチョーキングは、まるで距離に隔てられて身悶えする男女の恋愛感情のようだ。

「星空のCeremony」と同じく冬の星座と恋愛感情をモチーフとした「Orionからの招待状」、ライブで歌われるたびに存在感を増してゆく「Flower Revolution」、『Battle Starship Alfee』のリリース以降、よりアンセミックなオーラを纏うようになった「STARSHIP-光を求めて-」、ALFEE最初期のメタルナンバー「ジェネレーション・ダイナマイト」と続いた序盤のセットに会場の一体感が高まる。とりわけ、「Flower Revolution」の<語り合いたい/世の中のこと 政治のこと/この星の平和への話も>という、われわれが生きているいまの時代を憂いているようなメッセージに、はっとさせられた。何度も聴いているし、よく知っている歌のはずなのに、そのときどきの聴き手の感情や、世相の変化によってこんなにも印象が変化するものなのだというポジティブな驚きが新鮮だった。

この日最初のMCは、特効のド派手なファイヤーボールメーカーに面喰った3人の「熱いよな!」「みんな大丈夫?」「ドッカンで目が覚めたかな?」という素のやり取りから、多重録音ばりに悪ノリしたメンバー紹介、桜井営業部長による気合の入ったグッズ紹介などなど、小ネタを効かせたトークで場を和ませる。

「クリスマスの武道館でやるのはかなり久しぶり」という前説から「霧のソフィア」と曲名を告げると、武道館が微かな歓声に包まれる。1985年のリリースということは、高見沢ボーカル曲としては「恋人達のペイヴメント」と同時代の作品だ。クリスマスや冬の情景を歌った曲ではあるが、ストーリーもピアノの響きも悲恋に満ちていて、次の「風に消えた恋」との曲間に挿しこまれた北風のSEがリアルだ。

高見沢のアコギ、坂崎のそっと包み込むような声音で歌われた「風に消えた恋」、ギターを抱きしめるように歌った高見沢の姿に心を打たれたノスタルジックな青春賛歌「Far Away」。「古い曲をナツメロにしない」という高見沢のステイトメントに続けて、「そんな僕らを支えてくれているバンドメンバーを紹介します」と、サポート歴17年のドラマー、吉田太郎と、サポート歴15年のキーボーディスト、ただすけの名を告げる。照れ隠しのジョークを織り交ぜつつも、ふたりのミュージシャンへの揺るぎない信頼と感謝の気持ちを滲ませた高見沢の言葉に客席も大きな拍手で応える。

箱鳴りするアコギのイントロに導かれるようにオーディエンスが立ち上がった「天地創造」。桜井の伸びやかなボーカル、三声のコーラス、エレキとアコギの応酬は――高見沢いわく――「大仰なタイトル」に違わぬ最新型のTHE ALFEEともいえる。高見沢のエンジェルギターが奏でる「木星(ジュピター)」(組曲「惑星」より)のインタールードから「星空のディスタンス」へと繋ぎ、<古い価値のすべてが終わる>というフレーズが価値観の変化を予感させる「風の時代」、そして本編のラストは「愛という存在」。どこまでもやさしい高見沢の歌声が響き渡った。

アンコールでは、マラカスライト「ミカエルの剣」の青い光が灯るなか、着流しにサンタクロースの帽子と髭という昭和三兄弟が、コミカルなトークからの「きよしこの夜」で支離滅裂な恰好に似合わぬ美しいハーモニーを披露。ここからはTHE ALFEEに戻って「心の鍵(new take)」、「Happy Christmas time」、パーティーチューンの「クリスティーナ」を挟んで、サンタダンサーズを従えての「聖夜-二人のSilent Night-」というクリスマスに相応しいセットでアンコールを締めくくった。

ダブルアンコールは、過去のALFEE作品からのフレーズを散りばめた「Circle of Seasons」。失った時間を取り戻すような、明るい未来に導くようなDチューニングのサウンドを解き放つ。高見沢が「このDチューニングが俺たちの原点のような気がするな。(クロスビー、スティルス&ナッシュの)「組曲: 青い眼のジュディ」を3人でコピーするようになって、それを弾けるようになったときはすごいうれしかったね」と10代で3人が出会った当時のエピソードを披露する。さらに「毎年思うんだけど、今年のクリスマスが最高!まだいろんな制限があって声が出せない分、みんなの拍手がすごく沁みるんだけど、今日はみんなのアンコールの声が聴こえた気がするね」と思いの丈を打ち明けると客席は万雷の拍手で応える。

「いろんなコンサートが僕らを作ってきたし、いろんなツアーが僕らを鍛えてきた。いろんなことがあったけど、3人でそれを乗り越えてきた。それがTHE ALFEEなんじゃないかな。平和なクリスマス……この国は平和です。でも世界では戦争が起きている国もあります。自由に歌える時代、コンサートができる時代がいつまでも続くように願いたいと思います。聖なる夜にこの曲を」と告げて、讃美歌539番「あめつちこぞりて」で気高く、厳かな三声のコーラスを響かせてから「至上の愛」へ。そして文字どおり拍手が鳴りやむ間もなく湧き起ったトリプルアンコールは、8楽章から成る8分47秒のALFEE流プログレ曲「組曲: 時の方舟」を、まるでライブ序盤のようなテンションで歌い上げ、大団円を迎えた。

来年2023年、いよいよ結成50周年を迎えるTHE ALFEEだが、そのとき世界が平和でありますように。

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/上飯坂 一

LIVE INFO

THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代
4月6日(木) 川口リリア メインホール
4月8日(土) ロームシアター京都 メインホール
4月9日(日) ロームシアター京都 メインホール
4月15日(土) 静岡市民文化会館
4月18日(火) 市川市文化会館
4月19日(水) 相模女子大学グリーンホール
4月22日(土) 宇都宮市文化会館
4月28日(金) 富山オーバード・ホール
4月30日(日) 新潟県民会館
5月4日(木) 松山市民会館
5月6日(土) 倉敷市民会館
5月13日(土) 福岡サンパレスホテル&ホール
5月14日(日) 福岡サンパレスホテル&ホール
5月19日(金) 仙台サンプラザホール
5月21日(日) けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)
5月27日(土) NHKホール
5月28日(日) NHKホール
6月3日(土) フェスティバルホール(大阪)
6月4日(日) フェスティバルホール(大阪)
6月10日(土) 美喜仁桐生文化会館シルクホール(桐生市市民文化会館)
6月14日(水) 神奈川県民ホール
6月16日(金) 札幌文化芸術劇場 hitaru
6月18日(日) 網走市民会館
6月22日(木) 大宮ソニックシティ
6月24日(土) ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
6月25日(日) 呉信用金庫ホール(呉市文化ホール)
7月1日(土) 名古屋国際会議場センチュリーホール
7月2日(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール

THE ALFEEオフィシャルサイト

DISC INFOTHE ALFEE「星空のCeremony / Circle of Seasons」

2022年10月5日(水)発売
初回限定盤A/TYCT-39183/1,100円(税込)
ユニバーサル ミュージック

THE ALFEE(ユニバーサル ミュージック)

THE ALFEE「星空のCeremony / Circle of Seasons」

2022年10月5日(水)発売
初回限定盤B/TYCT-39184/1,100円(税込)
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THE ALFEE「星空のCeremony / Circle of Seasons」

2022年10月5日(水)発売
初回限定盤C/TYCT-39185/1,100円(税込)
ユニバーサル ミュージック

THE ALFEE「星空のCeremony / Circle of Seasons」

2022年10月5日(水)発売
通常盤/TYCT-30133/1,100円(税込)
ユニバーサル ミュージック

THE ALFEE『天地創造』

2022年2月23日(水)発売
通常盤(CD)/TYCT-60191/3,300円(税込)
ユニバーサルミュージック

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