数々の世界的ヒットを生むと共に、「自分らしさ」 を貫くアーティストの先駆けとなった “アンユージュアル“ なポップ・アイコン、シンディ・ローパー。1980年にポップロックバンド、Blue Angel(ブルー・エンジェル)でレコード・デビュー、その後 『シーズ・ソー・アンユージュアル』 でソロ・デビュー (US発売:1983年10月14日/日本発売:1984年2月25日)を果たしてからこれまでのキャリアで、1985年の<最優秀新人賞>を皮切りに4度のグラミー受賞、1995年には人気テレビ・コメディ 『マッド・アバウト・ユー』(1992-1997)でのエミー賞<ゲスト女優賞(コメディ・シリーズ部門)>受賞、更に2014年には自身が全曲作詞・作曲を手掛けたブロードウェイ・ミュージカル 『キンキーブーツ』 で初めてのトニー賞<オリジナル楽曲賞>も受賞。昨2024年6月には、米ハリウッドのTCLチャイニーズ・シアター前に手型と足形も刻むなど、エンターテイメント・シーンにおいてひときわ個性的な輝きを放ち続けている。そんなシンディの6年振り、通算15度目にして最後となる単独ジャパン・ツアーがいよいよ4月19日(土)に大阪よりスタートし、22日(火)、武道館初日公演が行われた。
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2024年10月にカナダのモントリオールからスタートしたシンディ・ローパーの<Girls Just Want To Have Fun Tour>は、12月までに北米各地を周り、今年2月から欧州ツアー、4月にオーストラリアを経てここ日本にやってきた。6年ぶり、単独公演としては15回目のジャパン・ツアーとして、初日4月19日 (土) のAsueアリーナ大阪を経て22日 (水)、”聖地”日本武道館に到達した。
19時12分。客電が落ちると、ステージ背景に設置された巨大なスクリーンに時代を彩った映像と画像が、ノスタルジックなメロディがマッシュアップされた煌びやかなサウンドに乗って次々と映し出されていく。全盛MTVが生んだ80年代最大のポップ・スター、飽くなき音楽探求を続ける非凡なミュージシャン、ジェンダー平等やLGBTQ+コミュニティに寄り添う提唱者として活動を続けるアーティスト。短いイントロに投影された生き様だけで会場が大歓声に包まれると、シンディのシルエットが浮かびあがり、ステージ前方から客席に向かってレインボー・カラーの紙吹雪が放たれる。気が付けばSEサウンドに同化する生演奏がベースラインを刻んでいる。一気になだれ込むオープニングは「She Bop」。すでに客席は総立ち。シンディとファンが作り上げる特別な夜がスタートした。1曲目を歌い終えたところで「コンバンワ、トーキョー!」。続けて「1986年初来日公演の時に日本のみんなが<True Colors>を歌い返してくれたことが忘れられない。だから2011年の大震災の時も帰らず歌いたかったの。私の<True Colors>はもっと強いものだから……」と目を潤ませながら語ると場内は大きな拍手に包まれた。
1986年9月10日、『True Colors』のワールド・ツアーは日本武道館がスタートだった。シンディがのちに生涯忘れられない魔法の瞬間だったと語る当時の最新曲「True Colors」(全米1位は約2か月後)のアンコールでの合唱は、前作『She's So Unusual』の来日が実現しなかったファンの渇望、シンディと一緒に歌いたいという純粋な気持ちが生んだ一体感だった。そして、2011年3月11日、東日本大震災の当日<Memphis Blues Japan Tour>のために来日。彼女の乗った飛行機は地震閉鎖のため成田空港に降りられず、横田基地に緊急着陸した。多くの来日キャンセルが続くなか、シンディも同様に周囲から帰国するように勧められていたが、シンディは、3月15日の名古屋公演から予定通りコンサートを敢行。のちに彼女は自伝のなかで語っている。「日本のファンがあの日、私に歌ってくれた<True Colors>は力強かった。もし私がここで日本から立ち去ってしまったとしたら、ほんとのところ<True Colors>はいったい何を意味したというの? あのとき日本が私に心を開いてくれていたというのに? だから私が日本にとどまってパフォーマンスをすることで、元気を出してもらいたかった」。目には見えないシンディと日本の絆を物語るエピソードだ。
1stアルバム『She's So Unusual』(1983)から目下最新アルバム『Detour』(2016)までバランスの良い選曲で彼女のキャリアを追体験できる集大成ステージなっていたが、おどろくことに全15曲で約2時間。これだけじっくりと1曲を1曲に意味を持たせながら披露する洋楽ライヴは特筆に値する。日本のファンともっと深い部分でのコミュニケートを求め、すべてのMCが同時に通訳されて(シンディっぽい口調が楽しい)、楽曲への彼女の想いを伝えていく。シンディ・ローパーのソロ・デビュー40周年を記念した映画『レット・ザ・カナリア・シング』は、決して豊かではない生い立ちから世界的なスターへの道のりを描いた長編ドキュメンタリーのなかに、彼女が貫くアーティスト誇りを浮き彫りにしたが、この日のステージは『レット・ザ・カナリア・シング』のまさにリアル・パフォーマンスといっても過言ではないだろう。アーティスト・キャリアの原点と位置づけ映画本編の象徴曲にもなっていた「I’m Gonna Be Strong」では、実年齢からは想像も出来ない次元を遥かに超えた圧巻の歌唱力を誇示。非凡なヴォーカル・パフォーマンスを最大限に引き出す一新したバンドとのコラボレートも躍動感に満ちている。毎回違うアプローチを見せる「Money Change Everything」は過去最高のバンドとの一体感を展開するなかで、シンディは「Money」をシャウトし続けた。演奏前に女性と女児の権利を推進するJust Want To Have Fundamentalへの「募金」を呼び掛けたことはこれまでと違うアプローチ。ピアニカ(フーター)の間奏に条件反射のように大きな拍手を贈る客席の様相は変わることのない嬉しい光景だ。
「音楽とアートが一体となったステージをみんなで創りあげたいの」。その言葉を具現化するかのように、曲ごとに色を変えていくステージ・ライト。さらに同化するステージ背面のスクリーンが大きな役割を果たしていたが、’89年の< A Night To Remember Tour>では武道館のステージいっぱいにブルーのクラシック・カーの映像を浮かべていたが、その時とは比べものにならないほどの繊細で鮮やかなブルーな色彩が「I Drove All Night」に溶け込んでいく。この最新技術で魅せることが彼女の求めていたステージの理想形だったことを確信する。終盤、シンディがライト点灯したスマホを掲げることを客席に促す。「忘れないで、自分が光を灯すことができるってことを」。まばゆい光に包まれたなかでの「Time After Time」の合唱はこの夜最も美しい光景のひとつとなり、過ぎ去りし想いと、出来ることならばこのまま時間が止まってほしいという儚い想いが交錯していく……。
アンコールは、ステージから客席に降りてファンとハイタッチをしながらアリーナ中央に設けられたサブステージに向かっていく。レインボーのストールを手にすると、風になびいて武道館の天に舞う。彼女自身のアイデンティティ「True Colors」の力強い歌声が、会場に響きわたり、その空気の震えが直に身体に伝わる。♪True colors are beautiful〜Like a rainbow”の合唱。今夜もまだ魔法はまだ解けていなかった__。メインステージに戻ると「Girls Just Want To Have Fun」が始まる。スクリーンに映し出されたのは女性芸術家・草間彌生。ステージ全員が彼女のトレードマークでもあるポルカドット(水玉模様)の衣装を身に着け楽しく大団円。歌から歌へとめくるように物語が展開していきながら、シンディ・ローパーの音楽とアートの融合が見事に結実した。「アリガトウ!ジャアネ!」の言葉でステージを去ったシンディ。初来日から変わらない満面の笑みだった。いちばん伝えたかったのはハッピーでいることなのだろう。
映画『レット・ザ・カナリア・シング』のエンディングでは、シンディはこんな言葉を残している。「またあの場所に戻りたいからよ。永くはいられない場所だからまた戻りたくなる。魔法が起こるあの場所にね」。
日本でシンディのパフォーマンスを体験できる最後の機会となる、全16曲のグレイテスト・ヒッツ的な大満足のフェアウェル公演は、4/23(水)の追加公演、そして25(金) の再追加公演も武道館で開催される。
<Girls Just Want To Have Fun Tour>は、アナウンス時は日本が最終地だったが、夏の北米再ツアーが追加発表されている。
TEXT: 安川達也
4/22 (火) 武道館公演セットリストのプレイリストはこちら ⇒ https://sonymusicjapan.lnk.to/CyndiJPTour2025TC
また、この華麗なるラストランにあわせ、Webエンタメマガジン「Cocotame」 にて特集記事 <シンディ・ローパーについて知っておきたい12の事>も公開された。
【前編】 https://cocotame.jp/series/110653/
【後編】 https://cocotame.jp/series/110726/
【最新リリース情報】
傑作長編ドキュメンタリー映画の“サウンドトラック”アルバムが世界初CD化!
シンディ・ローパー|レット・ザ・カナリア・シング -ジャパン・エディション-
■世界初CD化 ■高品質Blu-Spec CD2仕様
■2024年最新リマスター音源 ■歌詞・対訳・解説付
■ボーナス・トラック6曲収録
SICP31756 ¥2,200(税抜\2,000)2025年4月2日発売
詳細:https://www.110107.com/Cyndi_canary
購入リンク:https://sonymusicjapan.lnk.to/CyndiLauper_ltcsAW
【来日公演情報】
6年ぶり、通算15度目にしてシンディ最後のジャパン・ツアー!
Girls Just Wanna Have Fun FAREWELL TOUR
【大阪】 4月19日 (土) Asueアリーナ大阪 <Open 17:00 Start 18:00>
【東京】 4月22日 (火) 日本武道館 <Open 18:00 Start 19:00>
【東京追加公演】 4月23日 (水) 日本武道館 <Open 18:00 Start 19:00>
【東京再追加公演】 4月25日 (金) 日本武道館 <Open 18:00 Start 19:00>
<問>ウドー音楽事務所 03-3402-5999
公演ページ https://udo.jp/concert/CyndiLauper25
【シンディ・ローパー:プロフィール】
1953年6月22日、米ニューヨーク生まれの歌手・女優。1978年、ロック・バンド “ブルー・エンジェル“ を結成し、80年にレコード・デビュー。フィラデルフィアのバンド、フーターズのバック・アップを受けて83年にソロ・デビューを果たす。デビュー・アルバム 『シーズ・ソー・アンユージュアル』(日本発売は1984年2月25日)は、アメリカだけで700万枚、全世界で1,600万枚以上(当時)という驚異的なセールスを記録。女性の社会的地位向上を高らかに謳った1stシングル 「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」から、全米1位を記録した「タイム・アフター・タイム」、「シー・バップ」、「オール・スルー・ザ・ナイト」とデビュー・アルバムから4曲連続で全米シングル・チャートTOP5入りを果たした史上初の女性ソロ・アーティストとなる。続いて、映画『グーニーズ』 (1985) のサントラに参加。主題歌となったシングル 「グーニーズはグッド・イナフ」 も世界的な大ヒットを記録した。1986年、2ndアルバム 『トゥルー・カラーズ』 を発表。このアルバムからも、彼女の2曲目の全米1位曲となった 「トゥルー・カラーズ」 のほか、「チェンジ・オブ・ハート」、「ホワッツ・ゴーイン・オン」といったシングル・ヒットが生まれた。陽気で活力あふれる個性的な歌声とファッションで人気を博し、弾けるポップスからロマンティックなバラードまで歌いこなすエンターティナー歌手として80年代に強烈に印象深い成果を残した。その後は女優として映画や人気TVシリーズ、ブロードウェイ・ミュージカルにも出演しており、グラミー賞と共にエミー賞やトニー賞の受賞経験もあり、唯一無二のポップ・アイコンとして世界中のファンに愛され続けている。
2005年には米国の同性愛者やその家族・友人を支援する団体PFLAGの「Stay Close Campaign」 に姉妹で初参加。その後も現在に至るまで、女性の社会的地位向上やLGBTQコミュニティ、およびHIV/エイズと共に生きる人々に対する支援活動を続けており、自身が設立した慈善団体(トゥルー・カラーズ・ユナイテッド)では、ホームレスになってしまうLGBTQの若者を無くすべく活動を行っている。2022年にも 「Girls Just Want To Have Fundamental Rights Fund」 と名付けられた基金を設立。女性の権利を支援する活動を拡大している。2011年には、キャリア初となるブルース・アルバム 『メンフィス・ブルース』 を発表、グラミー賞にノミネートされた。大の親日家としても知られており、2011年の東日本大震災の際には多くの来日公演が中止となる中、日本ツアーを敢行。日本中のファンを勇気づけてくれた。以下はその際のシンディのコメント。
「帰国するなんて考えられなかった。だって愛する日本の皆さんがこういった状況にある中、何とかしなければと思う。明日の夜CNNに出るので、海外の人々へも訴えていきたい。少しでもいいので、皆さんに募金をしてもらいたいという気持ちでいっぱいです。そして、いろいろな国の人々がそういった活動に協力してくれれば、たくさんの募金が集まると思いますし、それが直接困っている人たちに届けられる。とにかく私はできることは何でもやりたいと思っています。今、私はこういった時期の日本にいるのですから。私は、キャリアの中で多くの時間を日本で過ごしました。私にとって本当に大切な国で愛する国なので、できる限りのことを、とにかくやりたいと思っています」
さらに翌2012年、2015年にもジャパン・ツアーを行い、2013年には夏フェス(サマソニ)にも参加している。2013年には、ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』で、全曲作詞・作曲を担当。自身初のトニー賞を受賞した。2019年10月には、自身のソロ・デビュー35周年を記念した4年振りとなるジャパン・ツアーを開催、それまでに日本でリリースした全シングルとMVをまとめた『ジャパ二―ズ・シングル・コレクション:グレイテスト・ヒッツ』 をリリースし、好評を博した。2024年6月には、米ハリウッドのチャイニーズ・シアター前に手形・足型を刻み、その際のセレモニーでフェアウェル・ワールドツアーを発表。「ツアーからの引退」を正式表明しているため、15回目となる単独JAPANツアーは、これまで常に日本との絆を紡ぎ続けてきた彼女との時間を過ごせる最後の機会となる。
シンディはAllMusicのリンゼイ・プレイナー (Lindsay Planer) をして「ロックンロールにおける女性の役割に革命を起こした因習打破のヴォーカリスト」と呼ばしめた。なお、シンディは全世界で5,000万枚以上のトータルセールスを記録しており、グラミー賞、エミー賞、トニー賞の他にも、ニューヨークのアウター・クリティクス・サークル賞、MTVビデオ・ミュージック・アワード(VMAs)、ビルボード・アワード、ビルボードのウィメン・イン・ミュージック・アイコン賞、国連人権高等弁護官事務所によって授与される2019年度ハイ・ノート・グローバル賞、アメリカン・ミュージック・アワード(AMAs)を受賞した。ソングライターの殿堂入りも果たしており、2016年4月にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの星を贈られている。
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