こんなにも数奇な運命をたどったバンドはない。彼らは1998年1月1日、新聞の全面広告の中にhide with Spread Beaverという名前で登場した。

メンバーはhideとそのソロ活動を支えてきた仲間たち。改めてバンド名を得てさらなるステップアップが、と誰もが思った。発表前夜がX JAPANのラストライヴであったゆえ、よけいに期待は盛り上がった。

そのわずか4ヶ月後、3rdアルバム『Ja,Zoo』制作途中にhideは去った。様々なメディアで熱く未来を語り続けていた真っ最中に。しかし、苦闘のちI.N.A.を中心にhide with Spread Beaverのメンバーは制作途中の3rdアルバムを完成させ、hide不在のまま全国ツアーを行なっている。そしてアルバム『Ja,Zoo』はミリオン・セラーに。

普通だったら、ここで終わっていただろう。あるいはクイーンなどのように新たなボーカリストを迎えて活動を継続していったかもしれない。

けれどもhide with Spread Beaverは違った。映像の中のhideと共に'08年味の素スタジアム、 '16年幕張メッセ、'18年お台場野外特設ステージとビッグ・ステージに登場しつづけた。’23年には再びワンマン・ツアーすら行なっている。

hideに代わりはいない、ということを身を持って示し続けた歳月。メンバーとスタッフの努力は、回を重ねるごとに映像とバンドがより一体化していく、という奇跡をも産んでいた。

そしてhideの生誕60周年を記念して制作された永久保存版スペシャルBOX『REPSYCLE 〜hide 60th Anniversary Special Box〜』の発売を記念して開催するライヴの日がやってきた。場所は東京体育館。その公演、2日目に足を運んだ。

DJブース、hideの愛車の展示、難病や復興支援のテント、沢山の親子連れを含む単独アーティストのライヴとは思えない多彩なお客さんたち。この場外の光景がすでに特別さを伝えていた。

オープニング。スクリーン映像の中で、登場した各メンバーのアーティスト写真とリアルタイム動画が紐付けられていく。hideの写真のあとに映し出されたのは舞台中央に置かれた愛用のギター、イエローハートだった。

冒頭の3曲は「POSE」「BACTERIA」「DAMAGE」。こんなにも激ハードなレパートリーを取り揃えつつ大メジャーな存在でいられたhideの不思議さを改めて想う。

MC。「hideが帰ってきたぜ。祭りだぜー!」と叫んだKIYOSHIにすかさず「江戸っ子だってね」と返す映像の中のhide。笑った。こうした部分も明らかに進化している。「Cafe Le Psyence」ではさらに凝ったコンビネーションが。D.I.E.の素晴らしいピアノ・ソロに対してhideが絶賛する。指遣いをも褒めるとリアルで指がアップになる。しかも背景でCHIROLYNが歌い続けることで虚と実の境目がさらにあいまいになる、といった具合に。

8曲目「PINK SPIDER」あたりで気づいたのは、過去1ボーカルが鮮明、という点。hide with

Spread Beaverならではの轟音感あふれるオケの中でもクッキリと聴こえてくる。「EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver.)」も、彼の中では特異な朗々とした歌い方が鮮明に浮かび上がっていた。

「オモチャ箱をひっくりかえしたような」という生前のhideの言葉が蘇ってきたのが「FISH SCRATCH FEVER」。ここでは背中側に魚の尻尾、前側に頭が飛び出したシャツを着たD.I.E.が音頭をとって、メンバー全員を魚に例えつつコール&レスポンス。ヘヴィだったりポップだったりする楽曲群の中に謎の、そして懐かしい空間が生まれていた。

15分間の休憩を経て始まった2部は木村世治(ZEPPET STORE)のソロ・コーナー。'96年仙台サンプラザ公演でステージに彼を呼び込んだhideが「めちゃめちゃ愛してる彼の歌を聴いてください」と言った映像がまず流れ、弾き語りで「FLAKE」。さらに途中からhideが加わって「GOOD-BYE」。「木村、いつかデュエットしようぜ」と言ってくれたhideさんの言葉がかなった、と彼はしめた。

第3部は「PSYCHOMMUNITY」の映像から。ギーガー作マスクのお面をかぶって遊ぶ子供たちの映像は今見ても強烈。もうこの時点からhideは未来を歩いてたんだな、と思う。

曲は再び「DICE」「DOUBT」とヘヴィー・チューンを披露のち車椅子でPATA登場。「はい、行ってまいります」と言って「CELEBRATION」のリフを弾き始める。さらに「松本さん、今夜もお借りします」とイエローハートを手にして「TELL ME」。頭上には金銀のテープが舞い、間奏ではKIYOSHI、CHIROLYN、K.A.ZがPATAを囲んだ。さらに「でっけえロケットを打ち上げようぜ!」とCHIROLYNがさけんで「ROCKET DIVE」へ。エンディングで彼は、腹の底からWe are hide with Spread Beaver!と叫んだ。

最後に舞台の前に並んで手を取り合い掲げたメンバーたち。が、真ん中が1箇所だけ空いている。その奥にイエローハートが見えてハッとした。

色んな場面で、彼がいるような気になっていた自分に気付かされて。

「こんなときhideだったらどうするか?」とは、あの日以来メンバーやスタッフがたえず口にしてきた言葉だ。その気持ちの汲み方が27年ぶん積み重なって生まれたこの日。ゴーグルをつけて観るより遥かに愛しい、ヴァーチャル・ライヴが立ち現れていた。

photo by Kazuko Tanaka (CAPS)

hide Memorial Day 2025

hide with Spread Beaver

“REPSYCLE”

〜Life is still going on!! 〜

公演日 : 2025年5月2日(金) 

2025年5月3日(土)

会 場 : 東京体育館

[5月3日 (土) セットリスト]

SE    PSYENCE

M1    POSE

M2    BACTERIA 

M3    DAMAGE

M4    BEAUTY & STUPID 

M5    限界破裂

M6    Cafe Le Psyence

M7    FLAME

M8    PINK SPIDER

M9    EYES LOVE YOU (DEATH HOLLYWOOD ver.) 〜 EYES LOVE YOU 

M10    MISERY

M11    Junk Story

M12    FISH SCRATCH FEVER 

M13    ever free 

《2部》

Guest1    木村世治 (FLAKE)

Guest2    木村世治 feat. hide (GOOD-BYE)

《3部》

SE    PSYCHOMMUNITY

M14    DICE 

M15    DOUBT

M16    CELEBRATION 

M17    TELL ME 

M18    ROCKET DIVE

SE    HURRY GO ROUND

hide最新情報
■5月3日公演をWOWOWで6月に独占放送&配信決定!
「hide Memorial Day 2025 hide with Spread Beaver “REPSYCLE” ~Life is still going on!!~」  
hide with Spread Beaver東京体育館公演2日目を、
6/29(日) 18時〜WOWOWで独占放送&配信決定!

7月にはhide MV集と、映画2作品『hide 50th anniversary FILM JUNK STORY』『TELL ME~hideと見た景色~』もあわせてお届け!
https://www.wowow.co.jp/music/hide/

■hide Birthday Party 2025開 催 決 定!!
hide誕生日をお祝いするライブパーティーが今年も開催決定!
会場となるCLUB CITTA‘のステージには、2025年に待望のワンマンライブを実現させたhide with Spread Beaverのメンバーが、DJ、ソロ、バンドなどそれぞれの活動スタイルで出演。
ほかhideのスピリットを継承するゆかりの深いアーティストが次々のと登場し、オーディエンスと一緒にhideの誕生日をお祝いします!

『hide Birthday Party 2025』
【日時】2025年12月13日(土)OPEN 14:00 / START 14:45
【会場】CLUB CITTA’
【出演】hide/Chirolyn/defspiral/DIE/DJ-INA/JOE/PATA/木村世治/
桃知みなみ (Opening DJ) and more. . .  ※アルファベット順

■5/2(金)17:00よりhideオフィシャルファンクラブ『JETS』会員最速チケット先行スタート!
【特設ページ】 https://www.hide-city.com/feature/specialsite_bday2025
【公演についてのお問い合わせ】 クラブチッタ 044-246-8888 (平日12:00〜19:00)

hide PROFILE
日本のロック史上に伝説を打ち立てたバンドX JAPANのギタリスト“HIDE”、『ROCKET DIVE』『ピンク スパイダー』などの名曲を発信したソロアーティスト“hide”としてその個性的なファッションやメイクは、“ヴィジュアル系”という新たなカルチャーを創り上げ、 革新的で時代を先取りした音楽、おもちゃ箱をひっくり返したような奇想天外なライブパフォーマンスは日本の音楽シーンに多大なる影響を与えた。1998年に急逝するも、hideが残した「サウンド」と「メッセージ」は色褪せることなく語り継がれ、今もなお、世界中で絶大なる人気を誇るロックアーティストである。
2024年12月13日にhideが生誕60周年を迎えたことを記念して2024年〜2025年は「hide 60th Anniversary」プロジェクトを続々展開中。
プロジェクトの一環として制作された永久保存版スペシャルBOX『REPSYCLE(リサイクル)〜hide 60th Anniversary Special Box〜』が 2024年5月1日にリリースされたことを記念して、2025年・hideの命日である5月2日と5月3日に「hide with Spread Beaver」のワンマンライブが東京体育館にて開催された。

hide オフィシャルウェブサイト

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