2024 年 12 月 8 日(日)、川崎 CLUB CITTA' にて、毎年恒例の「hide BirthdayParty 2024 」が開催された。
今年は、hide の生誕 60 周年をお祝いする記念すべきAnniversary year。
hide のトレードマークである真っ赤な髪や赤いファッションに身を包んだファンが、赤い髪の hide 人形や赤いペンライトを持って会場に集結。
「hide の 60 歳の誕生日をお祝いしたい」というファンの気持ちが会場を真っ赤な還暦カラーに染め、集まった全員が hide への想いを共有した素晴らしい空間となった。
来年の hide Memorial day に開催される二日間の hide with Spread Beaver ワンマンライヴも発表になり、おおいに盛り上がった華やかであたたかい「hide BirthdayParty 2024 」の様子をお伝えしよう。
ステージでは 14 時から桃知みなみの客入れ DJ が始まる。会場はライブフロア以外に、バーやオフィシャルグッズ販売スペースがたくさんあり、これから始まる 7 時間の(終演予定は 21 時)パーティをあちこちで楽しめる工夫が凝らされている。
バーでは赤い限定カクテルが販売され、昨年も大好評だったクラフトビールや hide「ぷりぬい」人形、hide の専属ヘアメイクが監修したシャンプーセット、hide をイメージした着物の展示等、ライブの合間も楽しめる場所がいくつも用意されている。

この日のチケットは、早々に SOLD OUT。ファンがフロアを埋め尽くした頃、トップバッターOBLIVION DUST がステージに登場した。
静かな中にも炎が燃えているような前半から徐々にヘヴィネス全開となるドラマティックな「限界破裂」、ソリッドなスピードチューン「In Motion」と最初に OBLIVION DUST 流に昇華した hide のナンバーを2曲演奏。一気に観客の心をわしづかみにする。
続けてオリジナルを3曲プレイしたのち、「ハッピーバースデー、hide、グッナイ」と短い MC を残して、メンバーはステージを降りた。

この日の出演は全8バンド。ステージの転換中には、hide の映像作品が流れた後、出演者から 60 歳を迎えた hide へのビデオメッセージが上映される。
真面目に hide への想いと感謝を切々と語る人がいる一方、ちょっとお酒が入っていい気分でジョークを炸裂させる人と、それぞれのキャラクターが画面越しに伝わってきて、とても興味深い。
そして、誰もが「hide のことが大好きなんだ」ということが言葉の端々ににじみ出ていて、胸アツである。

白い緞帳が開き、Chirolyn のライブが始まる。椅子に座ってベースを抱えた Chirolyn+ギター、ドラムの3人バンド。
リズミカルなギターとドラムに、Chirolyn のかすれたヴォーカルが独特のレイドバックした雰囲気をかもし出している。
軽妙なトークで来年の hide with Spread Beaver ワンマンライヴへの抱負を語ったあとは観客の手拍子で盛り上がる「暇乞い」、ラップをプラスしたソウルフルな「PINK SPIDER」と、Chirolyn ワールド全開。
hide with Spread Beaver の怪人ベーシストともロザンナさんとも違う、心地よい大人のステージを見せてくれた。

映像タイムのあと、緞帳が開くとステージ中央にギターを持った CUTT が 1 人。
いつもは3人バンド SPEED OF LIGHTS での出演だが、今日は 1 人で PC を駆使しての演奏だ。
初っ端に映像が出ないハプニングがあり、いったん PC を止めてステージ上でスタッフと緊急会議。
「ごめんなさい、もういっぺんやらせてください。せっかく作ってきたんだもん、みんなに見てもらいたい」と CUTT が正直にいうと、客席から
「がんばれー」「どんまい!」とあたたかい声援が飛ぶ。機材が復活してあらためてライブが始まると、X JAPAN 風にアレンジした「Rocket Dive(X Japan Likever.)」、hide のために作った新曲「Indescribable」とこだわりがつまった楽曲を披露。
現役大学生で YouTube 番組「47 歳のキャンパスライフ」を始めた自称 hide ファミリーバラエティ班の面目躍如となるトラブルにめげない楽しいステージを展開した。

緞帳の前で、hide の相棒 INA の DJ TIME。hide とは誕生日が 1 日違いなので、「ハッピーバースデー、hide アンド俺!」と歌いながら登場し、1曲目は会場をあおり「CELEBRATION」。
1 人では心細いからと桃知みなみとパンザブロウをステージに呼び込んで「子 ギャル」を振りつきで披露したり、お客さんをステージにあげたりとアットホームでファンとの距離の近い DJ タイムである。
「次がラスト」といったあと、当然緞帳のうしろからバースデーケーキが登場するお決まりのサプライズも。
ラストの「ever free」では INA もマイクで歌を口ずさんだり、hide のバースデーをさらに盛り上げる演出たっぷりの DJ TIME だった。

緞帳が上がると、ステージバックの大型スクリーンに猫のアップが映し出されている。
DIE の愛猫ビビである。そして、両手を広げてステージに登場した DIE がピアノを弾きながらゆったりとした「Prelude」を演奏。
hide Birthday Party ではグランドピアノで弾き語りをしたり、眠りを誘うアルバム「CHILL OUT PIANO」を発表したりと、ここ近年はリラックスできる音楽を奏でることが多かった DIE。
2曲目の「FLAME」をピアノを弾きながら歌い始めたので、今年もその路線かなと思いきや、途中で突然ギターを弾きながら PATA が登場した。「ちょっとずるして、PATA さんを呼んじゃいました。あと2曲、DIE が今やっているハードな曲を聴いてください」といって、ベースとドラムも参加してバンド編成でプレイ。最後は hide との出会いを曲にした「Alright Ever Love」で締めくくった。

続いて、ZEPPET STORE。「ハッピーバースデー、hide」といいながら、木村がギターを弾きながら「FLAME」を歌い始める。hide Birthday Party では何回も演奏しているこの曲を、木村は淡々とした中に情熱を感じさせる奥深い歌声で響かせる。
hide が「ZEPPET STORE から影響を受けて作った」と公言している曲だけに思い入れも強いと思うが、その後に演奏するオリジナル曲も同じく濃厚なグルーヴで、バンドとしての勢いとまとまりを思う存分に発揮していた。
いつもステージが終わった後にハッピーな気持ちになれる ZEPPET STORE が、今回特に満足度が高かったのは現在ツアー中ということも関係しているかもしれない。

そして、hide with Spread Beaver のメンバーである KIYOSHI と JOE に、ベースのRyota を加えたスリーピースバンド MADBEVERS。
SE にのってステージに登場したKIYOSHI が「ハピハピハッピーバースデー」と空に向かって叫び、スピード感たっぷりな演奏が始まる。
3人が自由に熱を発散しているような演奏なのに、音のかたまり感がすごいのがとても心地よい。2年前の hide Birthday Party ではサポート(助っ
人)だった Ryota が昨年正式メンバーになり、今年は3年目。お兄さん 2 人にもまれながらスリーピースバンドの重厚さを担うようになり、バンド全体の勢いが増しているのは頼もしい限りだ。

長丁場のコンサートのトリを務めたのは、defspiral。hide with Spread Beaver のメンバーよりも1世代以上若い彼らだが、hide のミュージカルやホログラムライブでの演奏など、hide にまつわる多くのシーンで⾳楽を担当してきた。
TAKA が MC で「⽇本で⼀番 hide さんの曲をカバーしてきた」と話していたように、それが揺るぎない⾃信となり、バンドとしての圧巻の存在感となっている。「DOUBT」「ever free 」という hide の代表曲を最初と最後に配し、中盤には会場中が⼀つになってジャンプするキラーチューン「MASQUERADE」を演奏して、hide Birthday Party の本編最後を貫禄⼗分に締めくくった。

その後、defspiral がステージに残り、⽊村世治(ZEPPET STORE)、TAKA(defspiral)、CUTT の通称 STC が出演者をステージに呼び込む。まず最初は、hide with Spread Beaver のメンバー。
なんと全員が⾚いちゃんちゃんこと⾚い帽⼦、⽩い扇⼦という還暦スタイル。
hide with Spread Beaver は hide と年齢が近いメンバーが多いので、みんな揃って還暦前後なのである。
来年のワンマンライヴに対しての抱負を聞かれると、「会場が広いので⾛れるかどうか⼼配ですが、がんばります」(K.A.Z)「去年の最後のライヴがすごく良いライヴだったので、それを越すようなライヴをめざします。みんな来てね」(JOE)「みんながハッピーになれるライヴ、hide with Spread Beaver ってカッコいいんだなって思ってもらえるようなライヴになるように、がんばります!」(KIYOSHI)と、口々に熱い想いを語っていた。

その後、今日の出演者が全員ステージに登場し、ALL CAST SESSION。なぜかPATA1 人だけ赤いちゃんちゃんこの背中のロゴが「X JAPAN」なのに、メンバーもファンも大喜びである。
そして、全員で hide に届くように「ハッピーバースデー」を合唱した後、「CELEBRATION」「TELL ME」というおなじみのナンバーで、長時
間に渡り楽しく盛り上がったパーティは幕を閉じた。

2000 年から毎年欠かさず行われてきた hide Birthday Party。ここ数年はチケット発売後、かなり早いタイミングで SOLD OUT になっている。
今年は、夏の段階ですでに売り切れてしまっていた。長年のファンに加え、新しいファンも増えていることがその理由とのこと。この場所に来れば志が同じ仲間がいるという絶対的な安心感があるうえ、他には類を見ない長時間イベントのスタイルが観客にも定着してきて、それぞれ楽しむ方法を身につけてきていることが人気の秘密にも思える。

来年の春には、hide 特別企画展 『PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000』FINAL 横浜開催も決定。
そして、hide Memorial day の 5 月 2 日と 3 日には、hide with Spread Beaver のワンマンライブが収容人数 10,000 人の東京体育館にて 2 日間開催と、2025 年の 60th Anniversary も hide ファミリーの疾走はスピードを増していきそうである。


文:大島暁美

写真:Hitomi Katada (LINKSOLU,Inc.) / Hiroyuki Ueno (LINKSOLU,Inc.)

hide PROFILE
⽇本のロック史上に伝説を打ち⽴てたバンド XJAPAN のギタリスト“HIDE”、『ROCKET DIVE』『ピンク スパイダー』などの名曲を発信したソロ
アーティスト“hide”としてその個性的なファッションやメイクは、“ヴィジュアル系”という新たなカルチャーを創り上げ、 ⾰新的で時代を先取りした⾳楽、おもちゃ箱をひっくり返したような奇想天外なライブパフォーマンスは⽇本の⾳楽シーンに多⼤なる影響を与えた。
1998 年に急逝するも、hideが残した「サウンド」と「メッセージ」は⾊褪せることなく語り継がれ、今もなお、世界中で絶⼤なる⼈気を誇るロックアーティストである。

関連リンク

一覧へ戻る