After the Rainにとっては、2019年夏に富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催したワンマンライブ以来、約4年ぶりの有観客でのワンマンライブで、この日から声出しも解禁。5月3日からはHaneda、Namba、DiverCityの3会場で約5年半ぶりのZepp公演とあわせて全4公演のツアーとなっていた。また、まふまふは2022年6月から無期限でソロ活動を休止していることもあり、ツアー初日のさいたまスーパーアリーナ公演はスタジアムモードのフルキャパシティながらもチケットはソールドアウト。会場の通路にはファン有志による数多くのスタンド花が所狭しと飾られ、場内では開演前から二人のイメージカラーである青と白のペンライトが輝くなど、この日を待ちわびた約3万人のファンが集まり、彼らに熱い声援を送った。

開演時間になると、イラストを使ったオープニングVTRに続いて、バンドメンバーが位置につき、10秒前からのカウントダウンがスタートした。ステージ上がスモークに覆われる中、After the Rainがステージ中央の大階段から姿を見せた。二人は爽快感溢れる「セカイシックに少年少女」でライブの口火を切り、そらるは観客に向けて手を振り、まふまふは「みなさんお久しぶりです!」とあいさつ。イントロで歓声が上がった「アイスクリームコンプレックス」では速いパッセージのメロディラインを一気に駆け抜け、場内の熱気を一気に上昇させた。

CHICA#TETSU

最初のMCでは、そらるが「みなさん、お待たせ。最高なんだが!気持ち良すぎる!!」と笑顔で声を上げる中、まふまふは、満員の観客から受ける大きな声援に感涙。「大丈夫?なんか、泣いてるんだけど(笑)。目が潤んでるんだけど、どうした?」とそらるに明かされたまふまふは、「ソロお休み中なんですけど、After the Rainとそれを応援してくれるみなさんのおかげで、こうしてまたステージに上がってくることができました」と丁寧に感謝を伝えた。そらるに「固いな」と突っ込まれたまふまふは、「死ぬほど緊張してます。脚がずっと震えてて」と正直な気持ちを吐露し、「でも、ここからが僕のターンでしょ。僕の装備アイテムを呼んでいいですか?あれがあればパフォーマンスの硬さも柔らぐだろうと」と語り、エレキギターを呼び込んだ。

雨ノ森 川海

続いてのブロックでは、二人ともエレキギターを演奏しながらのパフォーマンスが展開された。炎が立ち上がり、レーザー光線が放たれたワイルドなロックナンバー「負け犬ドライブ」から、まふまふの弾き語りから始まった「10数年前の僕たちへ」、二人の繊細で透徹した歌声が切ない風景を引き連れてきた「夏空と走馬灯」、ヘヴィーでラウドなサウンドにツインヴォーカルとしての魅力が詰め込まれた「わすれられんぼ」と、エレキギターに焦点をあてたバンドサウンドと二人の激しい歌声が絡み合い、春の終わりにぴったりの抒情的なムードを醸し出していた。

SeasoningS

ここで、エレキギターの演奏に関して、「俺は気が重い」と語っていたそらるは、「乗り切ったー」と安堵した表情を見せ、「4年ぶりのオフライン。みなさんにプレゼントがあります」と語り、未発表の新曲「ナイトクローラー」を初披露。まふまふはエレキギターを弾きながらラップもするミクスチャーロックとなっており、<バイバイ/グッバイ>と繰り返されるフレーズが真っ直ぐに胸に飛び込んできた。その後のMCでは、After the Rainとしての活動を始めてからを振り返り、「春音(しゅんおん)」と名付けたツアータイトルについて、そらるが「長い長い冬が開けて、春の音をみんなに届けたいという思いがあってつけました」と説明。そして、「ここまではギターが中心でしたが、ここからはみんなが聞きたいなと思ってくれている曲をやっていきます」と語り、「恋の始まる方程式」「モア」「アイスリープウェル」とテンポの速い楽曲を連発して盛り上げた。

和を感じるロックナンバー「四季折々に揺蕩いて」からバンドによるインスト「コンティニュアム」を挟み、ライブは後半戦へと突入。アニメ「ポケットモンスター」のオープニングテーマ「1・2・3」では<レッツゴー>というフレーズに合わせて会場全体が一体となってペンライトを振り上げ、「ネバーエンディングリバーシ」では、センターステージで顔を見つめ合って歌う二人に大きな歓声が上がった。まふまふが「この景色を見て、僕たちはまだまだ頑張っていけそうです」と話した後、Neruの「脱法ロック」では花道の両端に設置されたリフターがクレーンのように上昇。まふまふは柵に手をつけず、立ち上がって熱唱する一方で、そらるは「怖い……」と呟き、柵を掴みながら座ったままで歌唱。リフターから降りたそらるは「今までのライブで一番怖かった……。やだった。もう一生やりません!」と宣言。「バカ緊張していた」「楽しい」と語っていたオープニングとは正反対の様子に観客からは笑い声が上がっていた。その後、みきとPの「ロキ」で再び観客を熱狂の渦に巻き込むと、「折り紙と百景」「夕刻、夢ト見紛ウ」とエモーショナルな歌声が響き渡る和風のロックナンバーを続け、場内がピンクのペンライト一色に染め上げられた「桜花ニ月夜ト袖シグレ」で、声出し解禁のオフラインライブの再開という新しい季節の訪れを告げた本編を締めくくった。

アンコールでは、トロッコに乗り込み、場内を周回しながら観客の元に近づき、手を振り、時に飛び跳ねながら「世界を変えるひとつのノウハウ」「絶対よい子のエトセトラ」をパフォーマンス。最後に、まふまふがエレキギターをプレイした「テレストリアル」から「彗星列車のベルが鳴る」という青春を想起させるギターロックで観客全てに笑顔を届けると、そらるは「あー、楽しかった」と感想を述べ、まふまふの「みんな最高だったぜ。ありがとう!マジでまたみんなの前に来たいです」と再会の約束をし、約4年ぶりの有観客ライブは興奮と熱狂のうちに幕を下ろした。

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/小松陽祐(ODD JOB)、堀 卓朗(ELENORE)、加藤千絵(CAPS)、笠原千聖(cielkocka)

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