a flood of circleの佐々木亮介が11月6日に新作『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』のリリースを記念して、日比谷OKUROJIにてストリートライヴを行った。JRの有楽町駅と日比谷駅の中間に位置する、明治生まれの煉瓦アーチを活かした300mの高架下空間である日比谷OKUROJIとギターブランドZEMAITISとのコラボイベントであり、通常のライヴハウスやホールとはまた異なる趣を持った秘密基地のような雰囲気の中、新曲からカバーまでも含む全19曲を披露してくれた。
開演の19時少し前、ストリートライヴらしくフラッと姿を表した佐々木は、ハート型のサウンドホールも特徴的なZEMAITIS製AAS-3000HWを愛おしそうに抱き、まずは足元を確かめるように詩人の御徒町凧が佐々木をイメージして書き上げた歌詞に曲をつけた「歌うたいのブルース」をじっくりと響かせていく。観覧スペースを埋め尽くす観客がグッと惹きつけられる中、そのまま己の生き様を投影した「月夜の道を俺が行く」へ。会場は山手線の高架下、ステージとなっているスペースも側道に面しており、街の騒音も時折流れ込むが決してうるさくはない。佐々木の咆哮のような歌声とかき鳴らすギターと混じり合い、古着のような味わいがグッとくる。
そこから《ようこそ 日比谷OKUROJI/千代田区一等地》や《死ぬ気がないなら行くだけだ》といったこの日だけ言葉を織り混ぜた「ようこそBLUES」で改めて狼煙を上げ、続けたのは新作のタイトル曲「WILD BUNNY BLUES/野うさぎのブルース」。弾き語りならではの自在に操るタイム感でまた異なる味わいが生まれるのに加え、会場の空気感がそうさせるのか、絶妙なラフさもいい。通行人に挨拶しつつ、軽快に進めながら語気を強めた《ざけんじゃねえ》という言葉も突き刺さった「理由なき反抗(The Rebel Age)」、小気味よいカッティングと共に鳴らした新曲「ひとさらい」と会場の熱気をどんどん上昇させる曲を披露していく。
「今日、アルバムをリリースしたので買ってください。ストリーミングサービスで聴かれるよりも自分の利益がいいので(笑)」と笑いを誘った後、セレクトしたのは「冬の終わり、マウンテンデュー、一瞬について」。その瞬間のニュアンスが投影されたストロークや声色で凄まじいスケール感を生み出し、繊細なギターの調べと共に鳴らした「おやすみシュガー」という流れもまた良かった。新作から多めに、ということ以外、事前にセットリストは決めていなかったようだが、そこは積み上げてきたモノが成せる技であろう。
中盤に差し掛かったところ、鮮烈に鳴り響いたのが後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)をプロデューサーとして迎えた「キャンドルソング」だった。消え去りそうになりながらも、まだまだ燃え続けたいんだという胸の内をさらけ出したこの曲を前のめりになりながら熱唱。荒々しく歌いながら緩急もしっかりつけ、近くをたまたま通りすがった人も思わず足を止めるほどの力があった。
そして、ストリートライヴと言えば、ということでレナード・コーエンの「ハレルヤ」と敬愛するスピッツの「冷たい頬」というカバーを披露。「新作のプロモーションになってるのかな?」と自嘲気味に話していたが、そのアーティストのモードやバックボーンが垣間見えるのもこういった形式ならでは。嬉しいセレクトだったに違いない。
最後までこだわり抜くことで何バージョンも歌詞があるが故、まだ入りきってないと不安を口にしながら新作から「Eine Kleine Nachtmusik」を麗しく歌い上げ、いつものお茶割りでノドを潤してから「盛り上げていいっすか?」、「Are You Ready?」と呼びかけて奏でたのが「おどるポンポコリン」。速いテンポでノリの良さも倍増し、観客も佐々木と一緒に声を上げて大きな手拍子を鳴らす。みんなで楽しさを分かち合える嬉しい瞬間でもあった。
終盤戦のスタートは、最後にチャーミングに「くたばれ、ってね」と締めたフリースタイル的前口上から続けた「くたばれマイダーリン」。中盤に「今、ちょっとお茶割りが込み上げてきた」と思わずこぼして生まれた間もいいアクセントになっていたが、圧巻だったのがクライマックスのアカペラだった。マイクを両手で握りしめながらの大熱唱。声量も大きいのだが、それ以上に佐々木の体全体から歌が鳴っていることをビシビシと感じさせてくれる。バンドサウンドに負けずとも劣らない迫力だった。
その余韻が続く中、自然に「ベイビーブルーの星を探して」と繋ぎ、終盤戦はガツンと食らわせる曲を連投。ロックンロールのカッコよさにシビれる「ファスター」を抜群のキレと威力で力強く放ち、「ゴールド・ディガーズ」へ。ホリエアツシ(ストレイテナー)がプロデュースし、昨年9月にシングルとして発表されたときは《武道館 取んだ3年後》だった歌詞も新作では《武道館 取んだ2年後》と前へ進み、その言葉を情熱的に連呼してくれた頼もしさもまた格別。観客が大歓声を贈ったのも当然だったはず。
鈴なりの観客の奥の奥の方まで視線を飛ばし、言い聞かせるように呼びかけるようにギリギリのテンション感で「屋根の上のハレルヤ」を投下し、締めくくりは「虫けらの詩」。マイクを手に持ち、ステージのいちばん前方に立ってのアカペラで全身全霊を懸けて歌い上げていく。湧き上がる感情をそのままぶつけ、最後は観客を指差しながら《俺たちはまだここで歌ってる》と収録した歌詞に“たち”と“まだ”を加えてるところも美しかった。
a flood of circleはこの日にリリースした『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』を引っ提げ、11月28日の千葉LOOKを皮切りとしたリリースツアーをスタートさせる。デビュー15周年を経て、無駄だと感じるモノはどんどん削ぎ落とし、むき出しの姿で愛や希望だけでなく、葛藤や不安もすべて抱きしめて歩みを進めている彼ら。各地での熱演にぜひ注目してもらいたい。
NEW ALBUM「WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース」
2024年11月6日(水)発売
初回限定盤(CDA+DVD)TECI-1829 (税込)5,500円
通常盤(CD)TECI-1830 (税込)¥3,300円
『a flood of circle Tour 2024-2025』
[2024年]
11月28日(木)千葉LOOK
11月29日(金)千葉LOOK
12月06日(金)堺FANDANGO
12月07日(土)堺FANDANGO w/ THE CHINA WIFE MOTORS
[2025年]
01月23日(木)名古屋CLUB UPSET
02月09日(日)京都磔磔
02月11日(火祝)広島SECOND CRUTCH
02月13日(木)松山Double-u studio
02月15日(土)高知X-pt.
02月16日(日)高松DIME
02月18日(火)静岡UMBER
03月06日(木)神戸太陽と虎
03月08日(土)鹿児島SR HALL
03月09日(日)大分club SPOT
03月11日(火)岐阜ants
03月16日(日)横浜F.A.D
03月20日(木祝)新潟CLUB RIVERST
03月22日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
03月23日(日)盛岡CLUB CHANGE WAVE
04月05日(土)長野J
04月06日(日)金沢vanvanV4
04月10日(木)奈良NEVER LAND
04月12日(土)出雲APOLLO
04月13日(日)福山Cable
05月09日(金)仙台MACANA
05月10日(土)水戸LIGHT HOUSE
05月15日(木)八戸ROXX
05月16日(金)八戸ROXX
05月18日(日)山形ミュージック昭和SESSION
05月23日(金)岡山PEPPERLAND
05月25日(日)福岡CB
05月30日(金)札幌cube garden
05月31日(土)旭川CASINO DRIVE
06月05日(木)名古屋CLUB QUATTRO
06月06日(金)梅田CLUB QUATTRO
06月13日(金)Zepp DiverCity TOKYO
06月21日(土)沖縄output