声優・俳優・アーティストとして幅広く活躍する蒼井翔太と七海ひろきが、9月6日(土)、東京・Kanadevia Hall(TOKYO DOME CITY HALL)で初のコラボライブ『蒼井翔太×七海ひろき DRAMATIC LIVE “METEORA”』を開催した。

『KING SUPER LIVE 2024』でT.M.Revolution×水樹奈々「Preserved Roses」を2人で歌唱したことがきっかけとなり、今年8月にコラボミニアルバム『METEORA』をリリースした蒼井と七海。“DRAMATIC LIVE”と銘打たれた今回のライブは、コラボミニアルバム収録の新曲を軸にしたストーリー仕立ての演劇パート、本公演のみの特別なコラボレーションを含むライブパートで構成。舞台の経験も豊富な2人だからこそ実現したスペシャルなライブのうち昼公演のレポートをお届けする。

ライブの幕開けを飾ったのは、蒼井翔太演じる“アオ”と七海ひろき演じる“ウミ”の物語を描いた演劇パート。温暖化により砂漠化が進んだ地の星で“花”を咲かせるために一人で研究を行うアオと、不慮の事故により宇宙船の唯一の生き残りとして宇宙をさ迷う風の星出身のウミ、お互いに孤独を抱える両者が通信によって繋がるところからストーリーが始まる。

バンドによる生演奏のBGMが雰囲気を高めるなか、幾千の距離を超えて交信を果たした2人は、ミニアルバム『METEORA』のリード曲「CosmoS」をワンコーラス歌唱。それぞれステージの上手と下手に離れて立つ2人の距離感と、スクリーンに投影された宇宙空間を思わせる壮大なグラフィックが、その巡り合わせの運命を強調する。

お互い姿は確認できないながらも、毎日会話を重ねるなかで心の距離を縮め、友達となったアオとウミ。やがてウミが生まれて初めて歌を歌った時の楽しかった思い出を語り始めると、2人はミニアルバムよりスウィンギーな「Stella」を優雅な振り付けと共に披露する。ステージ上で向かい合って手を伸ばし合う姿、ラストの2人で腕をクロスさせるポージングが、出会いの奇跡を喜び歌う歌詞の意味と深みを何倍にも増幅させていく。

そのように交流を深めていくなかで、2人は夢を通じて出会っていたことに気付く。運命を感じ、ウミは宇宙船を修理した暁には地の星を訪れること、アオはウミにいつか花畑を見せることを約束。そしてアオは、歌には花を咲かせるエネルギーがあることを発見。それを実証するかのように、続いて披露された「砂漠の花」で2人が明るく希望に満ちたハーモニーを重ね合うと、楽曲の終わりにはスクリーンにたくさんの花が映し出される。2人の歌声には特別な力が備わっているのだ。

だが、事態は急変。ウミの宇宙船の修理が進み、故郷である風の星との通信が回復したなかで、自身が乗っている船の真の目的は地の星の破壊であることを知らされたのだ。ミサイルを廃棄して抵抗するも、宇宙船は遠隔操作により“METEORA MODE”に移行され、船自体がミサイルとなって地の星に突入することに。成す術が無くなったウミは船もろとも自爆することを覚悟するが、アオの「どっちの星も生き残る方法を考えようよ!」という熱い言葉に打たれ、2人の歌の力を信じて「CosmoS」を再び歌い始める。ライブ冒頭で披露した時よりも絆を感じさせる感情を乗せた歌い口、宇宙の彼方まで届かんばかりのパワフルなボーカルの重なりが奇跡を起こす。“METEORA MODE“はシステムダウンし、風の星でも、これまで長きに渡って芽吹くことさえなかった花が咲いた。

その後、ウミは約束通り地の星を訪れ、2人は手を取り合って初めての邂逅を喜び合う。その周りに広がるのは、カラフルなライトが演出する花畑の光景。アオとウミは夢で出会ったそのままの姿に「僕たちはきっと前世で会っていたんだね」と運命を感じる。エピローグには後日談のシーンが加えられ、蒼井と七海の演じる幼い兄弟の会話から、花が咲いて豊かになった地の星に風の星の民も移住し、やがて地球と呼ばれる星になったことが明らかに。「2人の出会いは奇跡の始まりでした」というセリフと共に、演劇パートは最高のハッピーエンドを迎えた。

蒼井の公式マスコット「たむたむ」とアザラシ風のマスコット「773くん」による幕間ムービーを挿み、後半のライブパートが開幕。全身黒で統一したスタイリッシュな衣装にお色直しした2人は、ステージの高台に颯爽と登場すると、なんと水樹奈々×T.M.Revolutionの楽曲「革命デュアリズム」のカバーでライブをスタートさせる。イントロが流れ出した瞬間に会場には驚きと喜びの声が溢れる。水樹奈々のパートを担当する蒼井の天上を舞うような高音ファルセット、西川貴教のパートを歌う七海の地に足の付いた中低音域。その革命的なデュエットが会場を揺るがす。

改めて挨拶をした2人はコラボライブの実現を喜び合い、ステージ上で熱い握手を交わすと、続いては七海のソロコーナーへ。まずは今年4月にリリースした自身の3rdアルバム『Crystal』より、都会的なグルーヴとクールな歌い口が魅力的な「Not Over」を届け、ファンサ多めの包容力と惹きの強さを感じさせるパフォーマンスで観る者を魅了する。さらに『METEORA』にも収録された蒼井の楽曲のカバー「give me ♡ me」を披露。

歌に入る前のMCで説明していた通り、原曲よりもキーを下げ、七海の豊かなふくらみのあるボーカルの良さを引き出しつつ、パラパラ風のアレンジを加えたことでアゲアゲ感もアップ。客席は「しょーたん」ならぬ「カイちゃん」コールで盛り上がる。

さらに七海らしいジャジーでアダルトな世界観の「Knock down night」に繋げ、ミュージカルのように舞い踊りながらオーディエンスのハートをノック。華麗にターンしたかと思えば、片手をポケットに突っ込みながらクールに歌唱するなど、ビジュアルでも魅せるパフォーマンスで、アーティスト・七海ひろきの魅力を観客にアピールした。

その後、蒼井を再びステージに呼び込むと、ミニアルバムにも収録されていない本公演だけの特別なコラボデュエットを披露することに。その楽曲は「It's My Soul」。

七海の1stシングルで持ち曲の中でもとりわけ情熱的なロックナンバーだ。サーチライトが回転してステージを赤々と染め上げるなか、2人は冒頭からアクセル全開で歌声をぶつけ合い、お互いのソウルをどこまでも高めていく。時にアイコンタクトを交えながら歌う姿からは、最高のバディ感が伝わってくる。選曲を含め絶好のコラボレーションとなった。

続いては蒼井のソロパートのターン。ステージ中央にスッと立ち、胸元に手を当てると「参りましょう」と呼びかけて、ファン人気も高い和テイストのラウドロックチューン「零」へ。

空気を切り裂くようなハイトーン、艶やかなメロディをなぞる雰囲気たっぷりの歌い口、サビ終わりのコブシのようなビブラートといった多彩な歌唱表現のみならず、優雅な所作によって客席を熱狂させる。そして「皆さんに少しでも寄り添えるように」と語ると、『METEORA』より七海の楽曲のカバー「ポラリス」を披露。

スクリーンには星空の映像が投影されてポラリス(北極星)のイメージが浮かぶなか、蒼井の温かくも切々とした歌声が淡い感傷を描き出す。“初恋みたいな憧れだった”というフレーズからラスサビにかけて一層エモーショナルに色づいたボーカルを含め、絶品のバラードだった。

さらに「皆さんの好きな色の花を咲かせてください」と呼びかけるとシングル曲「flower」を歌唱。ペンライトが色とりどりの景色を生むなか、蒼井は色彩豊かなサウンドと推進力のあるビートに乗せて、花びらのように華麗に舞う歌声をファンに届ける。演劇パートでの“花”をテーマにしたストーリーとの相乗効果も相まって、いつも以上に心に響いたのではないだろうか。

そして蒼井が七海をステージに呼び込むと、コラボライブはついにラストナンバーに。2人が本公演のフィナーレに選んだ楽曲は「BAD END」。蒼井の近年のライブには欠かせない、確実に盛り上がるナンバーだ。

2人で共に「心が尽きるまで 燃やせー!」と熱力高く歌い始めると、会場は一気にこの日最高潮の盛り上がりを見せる。特にサビでの2人の歌声の重なり、蒼井のハイトーンとその1オクターブ下をいく七海の威力はすさまじく、歌の力が真っ直ぐ心に突き刺さる。

Dメロの“君の存在が そばにあるからさ”というフレーズでお互い嬉しそうに顔を見合わせながら歌声を交わす2人。演劇パートでのアオとウミのストーリーを踏まえたうえで聴くと、より熱くなれる瞬間だ。2人の出会いの奇跡がバッドエンドならぬ最高のハッピーエンドを描き出して、蒼井と七海の特別なコラボライブは幕を閉じた。

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