ジェイ・チョウ(周杰倫)のツアー<カーニヴァル・ワールド・ツアー(嘉年華 世界巡迴演唱會)>は、2019年10月17日、上海のメルセデス・ベンツ・アリーナから始まり、中国、東南アジア、オーストラリア、ヨーロッパを回り、4月6日と7日の二日間、Kアリーナ横浜で行なわれた。

ジェイは、中華圏音楽シーンのキングとして不動の地位を築いてきたアーティストである。
もともとは、友人がTVのソング・コンテスト番組に出場するのでその伴奏としてついて行ったのだが、そこでジェイの才能が注目され、まずは作家として他のシンガーに曲を提供。そして、ついに2000年にデビュー・アルバム『Jay』をリリース、瞬く間に中華圏全体で人気を博した。

彼の音楽はそれまでにない新しいものであり、バラードでは誰もがうっとりする美メロで聴かせ、中華圏のトップ・アーティストになった。そして、ジェイのすごさは映画界でも花開く。2005年には日本のコミックを実写化した映画『頭文字(イニシャル)D THE MOVIE』に主演、2007年には監督・脚本・主演・音楽を兼ねた『言えない秘密』を大ヒットさせ、その後は音楽の本業を行いながら、俳優としても大作に主演した。

ジェイの活躍を書けば、それだけで紙数が尽きてしまう。ライヴの話に行こう。

ジェイにとって16年ぶりの日本でのこのコンサートは、彼の24年に及ぶキャリアの多様さ多彩さを見せてくれるものであり、多くのジェイの初期の曲も聞け、ピアノはもちろんのこと、ギター、古筝、なんと日本の三味線まで楽器を奏し、もちろんダンスも素敵で、トークも楽しく、ファンにとってはスペシャルなものになった。
ジェイの<カーニヴァル>はこんな感じでスタートする。
ジェイのミュージック・ヴィデオなどいくつかの映像が映し出されている。会場の照明も半分くらいの明るさでかつ音量も小さめだ。そんな時間がしばらく過ぎると、まばゆい映像と共におもちゃの兵隊さんのような恰好のミュージシャンがトランペットをサーカスのクラウンが登場、ショウが始まると観客に宣言する。まさにファンタジーの世界。こうやってジェイのカーニヴァルが始まった。

ステージをよく見れば、スクリーンに映る緻密でゴージャスな映像とたたみかける縦横無尽なライティングと美しい色彩、これだけで圧倒的に魅せるステージを作り上げている。
1曲目は中華テイストの「黄金甲」。キラキラと輝く真っ赤な中華風建造物などが写り、ライティングも赤。ジェイがせりあがってきた。メタリックの時代劇風衣装に身を包み、スタイルの良さが際立っている。そこからの数曲は、時に1コーラスだけでどんどんテンポよく進む。と同時に映像、ライティング、音楽がこれでもかと畳みかけてくる。観ている方は、次々と出てくる趣向を凝らした光と映像のマジックにただただ引き込まれてゆくというわけだ。

こういった観客を飽きさせない演出が続く。たとえば、黒に赤色のアクセントがあるお洒落なコスチュームのダンサーの肘から先だけが蛍光色に輝きその手の動きだけで色々な形を作ったり、ゲームに出てくるような戦士のような大男が出て来たり、全身銀色、シルクハットも顔も銀色の宝石が光るダンサーが出たり、そうかと思うと、ジェイ自身もアメリカのカントリー&ウェスタン的スーツでセミアコ・ギターを手に「牛仔很忙(カウボーイは忙しい)」を歌ったかと思うと、キューバ音楽をとても上手に再現している「Mojito」のサルサ風ダンス、特注のデニムのスポーティな衣装でダンサーと共にバスケット・ボールを操りながらのダンス、煌びやかな舞踏と変化に富んだ映像は、ファンたちが目を離すことなく見入っています。
「簡単愛」ほか2曲では、ジェイがステージから降り上手から下手まで最前列にいるオーディエンスの手にタッチをした。

この夜ゲストとして歌ったのは、アラン・コー(柯有倫)、シンガーとしては2005年にデビュー作を出し、これは日本でもリリースされたのを覚えていらっしゃるかたもいるかもしれない。ちょっとワイルドで女心をくすぐるポップ・ロックの印象がある。
また、ジェイの事務所JVRのアーティストも出た。上海出身で『言えない秘密』のミュージカル版で主演を演じた曹楊と、派偉俊、楊瑞代も素晴らしいパフォーマンスをした。彼ら後輩と話すジェイは、会話を仕切るアニキと言った風で、普段着のジェイを見られた感じがしたし、そのやり取りは見ていてほほえましかった。

日本だけのスペシャルな演出もあった。「日本の皆さんこんにちは。僕を覚えていてくれた?日本のライヴは16年ぶりだよ。前回の武道館に来た人いる? 16年、本当に長かったね。だからたくさん歌おう!」と日本語を混ぜながら話してくれた。「実際、日本で『忍者』などのミュージック・ヴィデオをたくさん撮影したんだ。五月天 (MAYDAY)の阿信とのデュエット『説好不哭』も『等你下課』も。で、この『等你下課』が撮影された場所を知っていますか? 代々木公園なんだ。この曲を聞きたい?」というと客席のファンは熱い拍手を送り、ジェイは歌ってくれた。

そしてなんといってもスペシャルな演出というと、「周大挟」で三味線奏者を6人従えジェイ自身も演奏したことだ。そしてこの曲の後半になるとラップになり、曲は一気にジェイのヒップホップになる。
ジェイの音楽の新しさは、ヒップホップやR&Bを中華の伝統音楽と見事に融合させたとはよく言われるが、今回、日本の伝統音楽との融合を目の当たりにすることができた。伝統音楽をジェイの音楽に落とし込む、その思いっきりの良さに感心した。非常に面白かった。プロデューサー、ジェイの力が見えた。

コンサート終盤の30分ほどは後輩たちと共に、リクエスト・コーナーを行なった。リクエスト・コーナー行くよ~と言った後、まずは、この日観に来ていた台湾の俳優のチャンチェン(張震)にリクエストを募り、彼がリクエストした「龍捲風」をバンドもジェイも歌う。その後は、ステージ上手に行ったり下手に行ったりして7人ほどの観客からリクエストを受けそれをすぐにバンドと歌った。その後ジェイたちに指されリクエストしたのは皆興奮していて、ジェイに「落ち着いて、ゆっくりね」と優しく言われていたが、彼らがいかにジェイの曲を愛しているのかが伝わるような会話も行なわれ、ジェイの音楽が多くの中華圏の人たちの人生に深く関わっていることがわかった。それにしてもすべての曲を観客が皆一緒に歌っていたのにはびっくりした。

ジェイのカーニヴァル、もちろん作りこまれた美しさを持つこだわりぬいた映像とライティングが感動的だったことは間違いない。が、それに加え、ジェイ・チョウというアーティストが本当に美しいメロディを書き続けてきたということ、そしてそれを歌うジェイの声の甘さと切なさとセクシーさを強く感じることができたことも心震えたことだった。まさにジェイだけが歌えるジェイの歌を堪能したライヴでもあったのだ。

周杰倫はデビュー以来15枚のアルバムをリリースし、どのアルバムも高いセールスを記録してきた。日本では、来日記念盤として今回のライヴの曲を多く収録した2枚組CD、その名も『CARNIVAL』がリリースされた。ジェイのファンはどんなにこの日を待っていたのだろう。来てくれただけで嬉しい、といった声も聞こえた。
ライヴを日本で行なったのは今回が3度目になるが、最高のヴィジュアルと最高の音楽で、スーパースター、ジェイ・チョウの<カーニヴァル>を体験することができた。


音楽評論家
関谷元子

JAY 嘉年華 世界巡迴演唱會 4/6セットリスト

1.⁠ ⁠黃金甲
2.⁠ ⁠本草綱目
3. 我不配
4. 我落淚 情緒零碎
5. 青花瓷
6. 簡單愛
7. 夜的第七章
8. 威廉古堡
9. 哭笑不得+最後的戰役
10. 花海
11. 最長的電影
12. 不能說的秘密
13. 微光
14.⁠ ⁠ 3AM
15. 紅塵客棧
16. 東風破
17. 紅顏如霜
18. 可愛女人
19. 園遊會+倒影
20. 晴天
21. 牛仔很忙
22. 軌跡
23. 夜曲+退後
24. 稻香+熱帶雨林
25. Mojito
26. 前世情人+雙截棍
27. 鬥牛
28. 告白氣球
29.⁠ ⁠周大俠
30. 等你下課
31. 陽光宅男
32. 七里香

JAY嘉年華世界巡迴演唱會 4/7セットリスト

1.⁠ ⁠黃金甲
2.⁠ ⁠本草綱目
3. 說好不哭
4. 我落淚 情緒零碎
5. 青花瓷
6. 簡單愛
7. 夜的第七章
8. 威廉古堡
9. 哭笑不得+最後的戰役
10. 花海
11. 最長的電影
12. 不能說的秘密
13. 微光
14. 紅塵客棧
15. 東風破
16. 紅顏如霜
17. 可愛女人
18. 園遊會+倒影
19. 晴天 
20. 牛仔很忙
21. 軌跡
22. 明明就+擱淺
23. 稻香+熱帶雨林
24. Mojito 
25. 前世情人+雙截棍
26. 鬥牛
27. 告白氣球
28. 周大俠
29. 等你下課
30.⁠ ⁠ 3AM
31. 陽光宅男
32. 七里香

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