──4月クール放送のTVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ4th Season 2年生編1学期』のエンディングテーマ「ライアーヴェール」がリリースされました。
「4期連続で主題歌を担当をさせていただいていますが、自分の中で『よう実』の楽曲として一貫させていることがあるんです。まず1つは、ジャズをベースにするということ。1st Seasonの「カーストルーム」はアシッドジャズ、2nd Seasonの「Dance In The Game」はラテンジャズ、3rd Seasonの「マイナーピース」はロックなテイストのジャズというように、これまで『よう実』の楽曲を作ってきました。今回は、私が手がける楽曲としては初めてのエンディングテーマで、“(これまでの楽曲より)テンポを落としてほしい”という要望も制作サイドからあったので、“じゃあヒップホップジャズかな?”と…その発想から、今回のトラックメイクは大好きなDJ Chika aka Inheritさんにお願いしました。acro jazz laboratoriesという2人組のインストユニットを組んでいる方で、以前からすごくファンだった方です。私の原点の1つに『サムライチャンプルー』というアニメがあって、その音楽がすごく好きで…」
──アニメ音楽シーンに革命を起こしましたよね。
「そうなんです。その『サムライチャンプルー』の音楽に携わっていたShingo02さんやNujabesさんともDJ Chikaさんはお仕事をされていますし、今回はDJ Chikaさんにお願いすることでいわゆる現代アニソンぽくなりすぎず、展開が多くなりすぎないトラックにしたいと思いました。そこからちょっとゴシックな感じも欲しいという感覚が生まれたり、場末のスナックで歌っているような古めかしい感じ、ローファイなサウンドが欲しいと思ったり、ビジュアルのイメージも浮かんでいったりしました」
──なるほど。他にも一貫させたことはあるのでしょうか?
「曲のタイトルの発音を“u”で終わらせることです。今までの『よう実』楽曲のタイトルもその縛りを謎につけているんですけど(笑)、今回もその縛りに当てはまる単語を探していく中で、“ヴェール”という“u”で終わる言葉を見つけて、神秘的な感じもするしいいと思いました。そこから“ヴェール”を使って歌詞を構築していこうとなって、『よう実』に結びつけられる言葉を紡いで、4th Season だからこその展開に合う歌詞を書いていきました。そのあとにコードを書いて、メロディーを作って、という順番です」

──編曲も手がけられていますが、サウンド面でトライしたことは?
「今までは自分でピアノをガツガツ打ち込んでいたんですが、今回はDJ ChikaさんのトラックがいつものZAQよりも大人っぽい仕上がりだったので、これまでとは違うテイストのピアノサウンドにしたくて。それで、ピアニストの荒幡亮平さんにお願いして生ピアノを弾いていただいて、ベースもアコースティックベースを田辺トシノさんにお願いしました。だったらギターもどこか枯れた味わいがある方がいいということで、クラシックギターやジャズギターの名手でもある超大ベテランの伊丹雅博さんにお願いしました。“この布陣ならもう最高だろう”と、自信を持って送り出したのが「ライアーヴェール」です」
──タイトルから紐づけて言葉を探しながら歌詞を書いていったということですが、最終的に完成した歌詞はどんなものになったと感じていますか?
「『よう実』には主人公の男の子がいて、それを取り巻くヒロインの女の子たちもたくさんいます。「ライアーヴェール」は、そのヒロインたちが抱く主人公の綾小路に対する気持ち、いろんな感情がごちゃ混ぜになって生まれる彼への恐れを書いた曲に結果的になりました。最終的に言いたかったのは、“主人公の綾小路清隆ってめっちゃヤバい奴だよね”というか(笑)…でも、その奥底にはちゃんと愛があって。そんな彼への恐れと尊敬と恋慕が混ざったような歌詞、“いろんな感情を合わせて愛だ”という歌詞になっています」
──ジャズをベースにすることを『よう実』楽曲に課しているのは、どうしてですか?
「『よう実』の世界でしか出せない自分らしさを表現したいと思ったからです。『よう実』以外ではかなりオラオラしたロック系の曲も多かったりするんですけど、それらとは違うZAQを見せたくなってしまって。自分に縛りを与えることで、逆に音楽性が豊かになっている部分もあると思います」
──タイトルを“u”で終わらせることについては?
「これはもう、感覚でしかないです(笑)。でも、そういった謎のルールがあることによって、もしこれからも『よう実』の楽曲を手がける機会があった時には、どんな“u”で終わるタイトルになるのかな?とか、そういった部分でも楽しんでいただけたら!」
──カップリング曲の「暗闘(だんまり)」についても、制作過程を紐解いていただけますか?
「「ライアーヴェール」がエンディングテーマなので、カップリング曲は、これまでオープニングテーマに起用された3曲の系譜を引き継いだ曲を作りたいと思って書いた曲です。歌詞も『よう実』的な内容になっています。『よう実』の主人公の綾小路はすごく頭が良くて、いろんな人たちを支配していくフィクサーのような人なんです。でも、決して表立って自分のすごさをアピールすることはなくて、ずっと本性を隠して水面下で暗躍していて。そこから、歌舞伎用語で水面下で戦うことを意味する“暗闘”にたどり着きました」
──歌舞伎用語では、“暗闘”と書いて“だんまり”と読むんですね。
「そうなんです。『よう実』では、綾小路だけじゃなくて他のキャラクターたちも水面下で戦っているんです。みんな、暗闘しています。だから、いろんなキャラクターに当てはめられる楽曲になるかな?という想いもありました」
──今の話を踏まえると、「ライアーヴェール」と「暗闘(だんまり)」の2曲を併せて『よう実』の世界を楽しめるというか…。
「そうなってくれたら、すごくうれしいです」
──ZAQさんはこれまで4期連続で「よう実」の楽曲を手がけていますし、それ以外にも多くのアニメ楽曲に携わっていますよね。
「まず、『よう実』に関しては、連続して楽曲を手がけていることによって作品の顔の1つだという自覚、責任感も生まれていますし、何より作品への理解度がどんどん深くなっています。1st Seasonの時はまだぼんやりとしていた物語や登場人物への解像度が、回を重ねるごとに鮮明になっています。そういう意味では、より作品と楽曲を一緒に楽しんでもらえるようになっていると思います。『よう実』に限らず、アニメ作品に関わる時に1番大事にしているのは、作品に対する裏切りがないことです。作品の看板の1つとして窓口になるわけなので、いかにその作品が面白そうか、それが伝わる楽曲を提供しなければいけないので。だから、言葉の気持ち良さや曲のノリ、短いイントロだけでもかっこよく聴こえるかどうか。そういう部分は意識しています」
──ここからは楽曲のタイトルや『よう実』という作品に関連した質問を通して、ZAQさんのキャラクターが伝わればという意図で話を聞いていきたいと思います。まずは「ライアーヴェール」というタイトルに関連させた質問ですが、“ライアー”は“嘘つき”という意味ですよね。ZAQさんは、“嘘”についてどんなふうに捉えていますか?
「ZAQさんも38歳なので、そりゃいろんな嘘をついてきましたし、つかれてきたと思います(笑)。騙したし騙されたし、傷つけたし傷つけられたこともたくさんありますから。だから嘘をひと括りにして“全部ダメ”ということはないですし、本当にいろんな嘘が世の中にはあると思います。ただ、できれば自分に嘘はつきたくないですね。それでも過去の自分と今の自分を比べて、“あの時の自分に嘘をついてしまったな”みたいなことは起こるんですけど、それも含めて人間だと思える器はもうできているとは思っています」
──嘘って、確かに人間らしさを感じる要素ではありますよね。
「最近は、誰かに嘘をつかれて傷つけられても、“それもまた面白いな”と思うようにもなりました。防衛本能なのかな?(笑)」
──続いては、『よう実』の世界観とリンクさせた質問です。『よう実』ではそのタイトルからもわかるように、完全実力主義の学校が物語の舞台になっています。そこに照らし合わせて考えると、ZAQさん自身も実力主義の世界である音大の出身です。“実力主義”という価値観については、どんなことを思われますか?
「3歳の頃からピアノをやっていて、ずっとコンクールに出たりオーディションを受けたりしていたので、音大に入る前から実力主義の世界の厳しさは如実に感じていました。自分以外にすごい人、天才はたくさんいて、実力がないものは蹴落とされて見向きもされない世界です。それでも続けられたのは、自分には音楽しかなかったから。私、運動がまったくできなくて体育の成績がずっと1だったんです。算数もできなくて、一応頑張りはするんですけど点数が全然伸びなくて。その中で唯一褒められたこと、人に認めてもらえたのが音楽でした。そこから“自分には音楽の才能があるんだ”と思って音大に入りました。でも、実力のなさに打ちのめされました。“音楽がなくなったら私はどうすりゃいいんだ?”と思ってやさぐれていた時に、アニソンと出会ったんです。そこから今のレーベルとのご縁ができて、今に至ります。だから、今となっては演奏の部分での実力がすべてなのではなく、人との出会いは環境を引き寄せる力、その中でどれだけの人たちが自分を見放さないで、一緒に活動してくれるか…それも自分の“実力”だと思っています」
──なるほど。
「自分のことを褒めてくれる人が周りにいることも大事です。私が作曲を始めたきっかけは、初めてMacを買って打ち込んだ曲をお姉ちゃんに聴かせたら、“あんたは作曲の才能があるよ”と言われてことがきっかけだったので」
──今後の音楽活動においては、どんなことにチャレンジしてみたいですか?
「自分自身の楽曲を作ることはもちろんですけど、いろんなアーティストさんに楽曲提供させてもらったりして、自分の音楽がまったく違うジャンルのリスナーに聴いてもらえるといいなという想いがあります。それと『よう実』のおかげもあって海外で聴かれていることも多いので、もっと海外でライブをやってみたい気持ちがすごくあります」
──海外は、どこでライブがしたいですか?
「これまでもいろんな国でライブをして、どこも良かったのでまた行きたいんですけど、特にまた行きたいのはドイツです。クラシックの聖地のヨーロッパで、プロとしてスタンウェイを弾いてホールでライブしている自分が面白くて、自分で“すごいな”と思ってしまいました(笑)。あの体験は何ものにも代えがたいですし、ドイツ以外にもオーストリアのウイーンとかでライブができたら、最高だと思います」
──行ったことがない国では?
「行ったことがない国だと、アフリカの国とか? アフリカでの日本アニメ人気ってどうなんだろう? でも、ブラジルやチリでもライブをしましたけど、どうしてそんなに知ってるの?ってくらい日本のアニメの曲はすごく人気が高かったので、アフリカでも想像以上に人気かもしれないですよね! だとしたら、アフリカでのライブも面白いかも!」
(おわり)
取材・文/大久保和則
写真/井上友里









