──今年6月にKT Zepp YOKOHAMAで行われた初ライブ『1st LIVE「Agapanthus」』から振り返っていただけますか?

「それまで私の曲を聴いてくださる方に直接、会ったことがなかったので、“本当に私の曲を聴いてくれてる人はいるのかな?”っていう気持ちがずっとありました。でも、実際に目の前にたくさんいて、いつもSNSでコメントをくれてる子たちが自分の声で、“ユイカちゃん!”って言ってくれているのを目の当たりにしたときに、“あ、本当にいるんだ!”って感じることができて。すごく貴重な経験をさせてもらえましたし、ライブってすごく楽しいし、“もっとライブをしたい!”っていう気持ちがすごく芽生えました」

──人前で歌うことも初めてですよね。緊張はしなかったですか?

「すごく緊張しました。ステージの袖にいるときは、まだよくわかっていなくて、緊張も感じていなかったんです。“よっしゃ、行くぜ! いえ〜い!”という感じで、ステージに立っているマイクのところまで歩いていって、ギターを持って、いざ声を出すって瞬間にお客さんと目が合って…。“本当にいる!”っていう感動と“歌わなきゃ!”っていう気持ちが入り混じって、手がプルプル震えてしまいました。ギターもちゃんと弾けないし、声も震えちゃって。全然上手に歌えなかったんですけど、お客さんも私と同じように緊張している感じがして…お互いに“はじめまして”の感覚を実感できたと思います」

──初めてみんなに顔を見せたステージでもありました。

「“どんな子が歌っているんだろう?“っていうので、楽しみにしてくれていた方もいると思うんです。みんなは私のことを好きでいてくれている方だから、”可愛かった!“って言っていただけて…ちょっと、自惚れちゃうぐらい嬉しかったんですけど、それよりも”イメージ通りだった“って言ってくれる子たちがたくさんいました。”私って、どういうふうに見えているかな?“っていう不安があったんです。顔を出していない分、聴いてくれてる方の中で想像が膨らんでいるかな?と思っていたんですけど、”イメージ通りのお顔と雰囲気だった“と言ってくれて、すごくほっとしましたし、ライブをしてよかったって思いました」

──アンコールではライブの翌日にリリースされた「あなたが知らない貴方のうた」を初披露しました。

「アンコールで新曲を披露するって決めていました。“じゃあ、どういう曲を書こうかな?”って思ったときに、本編の一番最後の曲が「好きだから。」とのストーリー性を考えました。「好きだから。」を歌う前のMCで、“この曲は実体験が元になっていて、その男の子は私が音楽やっていることを実は知らないんだよね”っていうのを話して。その後に「好きだから。」を聴いてもらって、みんなが“実体験になっているモデルの男の子は知らないんだな”って思っている中で、「あなたが知らない貴方のうた」を披露したかったんです」

──<貴方に内緒で歌にしている>の“貴方”は「好きだから。」の“貴方”と一緒なんですね。

「そうです。「好きだから。」をリリースして、自分の曲がお昼休みの時間に校内放送で流れたことがあったんです。嬉しかった思い出なんですけど、そのとき、その男の子も絶対に聴いているというか、「好きだから。」が耳には入っているはずなので、“でも、貴方は知らないんだね”っていうのをいつか曲にしたくって。だから、「好きだから。」を書いた後の自分を書いた曲になっています」

──1st アルバム『紺色に憧れて』がリリースされ、1st LIVE「Agapanthus」も即完で大成功に収めたあと、どんな心境になりましたか?

「私にとって、アルバムをリリースすることと、ライブをすることは、今までの人生において、本当に楽しみにしていたし、一番と言っていいほど夢見てたことだったんです。いざ終えて、“自分のやれることは全部出し切った、そのときにできる全力は出せたな”っていうふうに思うんですけど、“もっといろんな曲を書きたい”とか、“次はもっといいライブにしたい”という気持ちがどんどん湧いてきて。ここで、“あーよかった。楽しかった”で終わっちゃ駄目だと思いましたし、いつも聴いてくれているお客さんに今よりもっと成長したところを見てもらいたいっていう気持ちが大きくなりました」

──そして、新曲「僕らしさ」はTVアニメ『妖怪学校の先生はじめました!』のエンディング主題歌になっています。アニメ主題歌も初めてですよね?

「はい。自分が作詞作曲した曲でアニメに携わらせていただくっていうのは人生で初めてです。“自分が書いた曲がテレビで流れるんだ!“っていうのを想像するだけで、ものすごく嬉しくて。それも夢だったので、また1つ、夢が叶ったという気持ちです」

──これまではご自身の実体験をもとにストーリーを作ってきましたけど、今回は書き下ろしですよね。他の作品からインスパイアを受けて書くというやり方はどうでしたか?

「自分が経験したことの方が書きやすかったので、その形はあえて崩さないようにしました。だから、主人公の男の子と自分が経験したことの共通する部分、同じ感情になった瞬間をピックアップして合わせながら作った曲なので、自分の思っていることでもあるし、アニメにも寄り添えているかな?って思います」

──原作を読んでどう感じましたか?

「本当に面白かったです。ちゃんとストーリーが進んでいく中でコメディーを表現していて。すごく好きなジャンルの漫画だったので、ラブソングを歌っている私がこんなに面白い漫画のTVアニメのエンディングを担当していいのかな?とは思ったんですけど(笑)、私は普段からしょうもないことばっかり言ってるような人間というか、クスッと笑わせたくなる気持ちがあるので、そこを曲で表現するっていうのは面白いんじゃないかな?と思って」

──人って文字を書いて何回も食べたり、寂しくて眠れないって言いながら寝過ごしたりしています(笑)。アニメ制作サイドからは何かテーマやリクエストはあったんですか?

「“こうしてほしい”みたいなリクエストはなかったんですけど、“初めての新生活でドキドキする感情を表現してほしい”っていうことだけはいただいていたので、入学式のイメージとか、新生活が始まるっていうところに着目をしました」

──主人公とユイカさんの心情が重なった部分はどんなところでしたか?

「新生活に不安や緊張を感じる人ってたくさんいると思うんですけど、私は楽しみな気持ちの方が大きくて。楽しみだし、ウキウキした感情があるんですけど、ちょっとだけ緊張もしているし、やっぱり不安もあるっていうのを表現したいなって思って。主人公の晴明(はるあき)くんも妖怪学校の先生をする新生活をすごく楽しみにしている描写があったんです。私の想像なんですけど、楽しみな部分の方が大きいのかな?と思ったので、“新生活が楽しみだな”って思っている感情を入れるようにしました」

──楽しむためには、自分らしくいることが大事だっていうメッセージも込められていますね。

「新生活の時って、“はじめまして”の人がたくさんいるじゃないですか。気を遣わなきゃいけなかったり、何を考えているのかわからない人もいて。それで気疲れしちゃうっていう経験が自分にもあるんですけど、自分が思っているよりも人に気を遣わなくてもよかったりすることって意外とあるなと思っていて。だから、<誰かのためにじゃなくて/自分のために>というのは、自分に言い聞かせている部分もあるんです。やろうと思ってできることじゃないし、周りの意見を気にしちゃうのは“あるある”だと思うんですけど、それでも、自分のために生きるってすごく大切なことだと思いますし、それで遠慮していたら意味ないなって思うんです。そこにたどり着いて、タイトルにもなっている“僕らしさ”っていう、自分らしい部分をもっと出していいんだよっていう意味で書きました」

──自分に言い聞かせつつ、聴き手にも向けていますよね。

「そうですね。自分の周りにも、周囲の人のために動きすぎて、自分のことが手につかなくなっている人を見てきて。“自分だけじゃないんだな”っていう感情になりましたし、そういう人にも届けられたらいいなって思っています」

──<自分のためでいいから/生きろ、生きろ、生きていてよ、ねぇ。>と強い言葉で呼びかけています。

「歌詞の題材として、生と死について取り上げられることは多いとは思うんですけど、普段の生活では、そんなことはあんまり考えないじゃないですか。“今日も1日、頑張ろう”とは思っても、“今日も1日、頑張って生きよう!”とはなかなか思わなくて。でも私は、生きることの方が大変だなって思うんです。今までは、命についてというか、生きることについて歌詞にしたことがなかったんですけど、「僕らしさ」では、“頑張らなくてもいいし、頑張りすぎなくていいけど、生きてさえいればいい”って言いたくて。生きることをだけを考えていれば、何かとうまくいくからっていうのを伝えたかったんです。“生きていてもいいことないな”って思うときもあるかもしれないですけど、すごく悩んでいたことだって、気がついたら、思い出になっていることもあります。そんなに簡単には言えないことですけど、とにかく、ただただ生きてほしいっていう気持ちを伝えたかったんです」

──そのフレーズの後にコールアンドレスポンスもありますが、どんなイメージでしたか。

「実は、アニメ尺の一番の部分は、大学1年生のときに書いて、2番からは2年になってから書いたんです。この間に1st LIVEが挟まっていて。ライブを経験して、お客さんと一緒に歌える曲というか、一緒に声を出せる曲があったら楽しいなって思って。自分がライブを自分が経験したからこそ思ったことを表現したいと思って、この歌詞を入れました」

──編曲はライブのバンマスでもある小名川さんが手がけています。

「サウンドもライブをイメージしていました。ライブでやったときに盛り上がる曲でありながら、アニメのエンディングでもあることを考えて。オープニングはアニメが見たいから、みんな見るじゃないですか。でも、エンディングって、言ってしまえば、アニメが終わっているので、見なくてもいい部分でもあって。だから、一発目に歌詞がパンッて入ってきたときに、“おやおや?”ってなってほしいと思ったので、サビの1行を取って、最初から盛り上がって、そこからスピードを落とさずに、バンドの疾走感を出したかったんです。ジャケ写で男の子が走っているんですけど、まさにそんなイメージです。ライブでも盛り上がるような曲にしたかったので、疾走感のあるバンドサウンドでゴリゴリにしました」

──細かいことなんですけど、一番最後の<進め>は別テイクもあったと思うんです。でも、“生きろ”というメッセージからの流れで、あえてこの生々しい感じを残したのかなと思いました。

「そうですね。今まで書いてきた曲はラブソングが多くて。ラブソングを歌うときは、基本的には自分の実体験ではあるんですけど、自分ではない誰かっていう存在も私の中にあって。レコーディング中にプロデューサーの小名川さんと、この曲のイメージの女の子の髪の長さとか、雰囲気とか、クラスではどの辺のポジにいる子なのか、とか…女の子の設定を結構決めて、その子を私の体に入れて、なりきって歌うことが多いんです。でも、この曲は自分のことを書いているし、それが他の人にも届けばいいなっていう感覚だったので、いい意味で何も気にせず、何も考えずに、『ユイカ』として歌入れをしました。それで自然に出てきた生々しさだと思います」

──『ユイカ』として歌った曲を“僕”にしたのは?

「アニメの主人公の晴明くんが男の子だったので“僕”にしました。私の曲ですし、私のことを歌っているので、“私”にしてもいいかな?って最初は思ったんですけど、アニメを見てその後に流れてくるエンディング曲でもあるので“これは晴明くんのことを歌ってる曲だ”って感じてもらいたかったので、“僕”にしました」

──アニメの絵についたものを見て、どう感じましたか?

「あれ、すごいですよね!」

──いや、経験ないです…。

「あははははは。自分の曲に合わせて、後ろの絵が進んでいったり、アニメに出てくるキャラクターの子たちが動くんですよ! 私の曲に合わせて動いてくれているっていう感覚がすごく大きくて。あと、エンドロールに<エンディング主題歌 『ユイカ』/作詞・作曲 『ユイカ』>って出て。それを見て、すごく感動しました。当たり前なんですけど、私が歌っていて、私が書いているっていうのを改めて実感して。ずっと夢見てたシーンだったので、テレビで見て、すごく感動しました」

──ちなみにアニメから『ユイカ』のオフィシャルYou Tubeチャンネルに流れてきた人には次に『ユイカ』のどの曲を聴いて欲しいですか?

「「僕らしさ」はラブソングじゃないので、『ユイカ』味が出ているっていう意味で、「恋泥棒。」を聴いていただきたいです。私はラブソングをメインで書いているので、ぜひラブソングを聴いていただきたいです」

──毎週アニメを楽しみにしている方々には「僕らしさ」がどう届くといいなと思いますか?

「“ああ、今日も駄目だったとか…今日もうまく生活できなかったな”とか、そういう悩みを抱えている子はたくさんいると思うんです。その子たち、11人に私が声をかけられるわけじゃないので、この曲を聴いて、ちょっとでも前を向くきっかけになってくれたらいいなと思います。例えば、学校に行けていない子だったとしても、私は無理に行こうとしなくていいと思うんです。歌詞にもあるんですけど、頑張りすぎないぐらいがちょうどいいなって思います。無理に“学校に行かなきゃ”って思わなくてもいいし、何も背負わなくてもいいのかなって。みんな、もうちょっと自分に優しく生きていいと思うんです。この曲が、自分らしく、頑張りすぎずに生きるためのお供になればいいなって思っています」

──そして、2025年1年には『2nd LIVE「Sweet alyssum」』が決定しています。まだ先ではありますが、ライブのタイトルにはどんな思いを込めましたか?

「『1st LIVEAgapanthus」』は、「好きだから。」をリリースした627日で、その日の誕生花がアガパンサスで、花言葉が“恋の便り”とか、恋愛に関することがいっぱい書いてあったんです。2nd LIVEKT Zepp YOKOHAMAZepp Osaka Baysideでやるんですけど、大阪公演が112日で、私の二十歳の誕生日なんです。112日の誕生花がスイートアリッサムで、花言葉が“優美”。私は優しく美しくみたいな感じではないので(笑)、正直、私からすごくかけ離れているなって思っちゃったんですけど、20歳になるということで、大人になる大きな節目だと思っていて。それこそ、“優美”という言葉が似合う人間になるための一歩でもあるかなと思ったので、Sweet alyssumというタイトルにしました」

──ちなみにスイートアリッサムには“飛躍”っていう花言葉もあるので、2nd LIVEにぴったりだなと思いました。高1で最初に出したオリジナル曲「好きだから。」が8000万回再生の大ヒットとなり、19歳でメジャーデビューし、1st アルバムもリリースし、アニメのエンディング主題歌も担当しました。シンガーソングライターとして、どんな20代にしていきたいですか?

「今ずっと思っているのは、「好きだから。」をリリースした16歳のときの自分がいて。常に16歳の自分と戦っている気持ちで曲を書いてるんです」

──台湾、香港、ロシア、タイのSpotifyでバイラル1位を獲得した、高い壁ですよね。

「そうなんです。最初の曲をあんなにたくさんの方に聴いていただけて。それがあるからこそ、新曲を出すたびに、毎回、「好きだから。」を超えられるかな?という気持ちになっています。私はたぶん、これから先もずっと16歳の自分と戦い続けるんだろうなっていうふうに思うんです。でも、20代になって、16歳のときには持っていなかった新しい視点や経験があったりすると思うので、その経験をふんだんに生かして、16歳の自分に打ち勝とうというのが一番の目標です」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ

RELEASE INFROMATION

『ユイカ』「僕らしさ」

2024年109日(水)配信

Streaming & DL

LIVE INFORMATION

2nd LIVE 「Sweet alyssum」

2025年18日(水) 神奈川 KT Zepp Yokohama
2025年19日(木) 神奈川 KT Zepp Yokohama
2025年112日(日) 大阪 Zepp Osaka Bayside

2nd LIVE 「Sweet alyssum」

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