LIVE REPORT

高校卒業時に歌ったRake「100万回のI LOVE YOU」がSNSで拡散されたのをきっかけに、本格的に音楽活動を始めたという三浦風雅。場内が暗転すると、まずは映像がスタート。ステージ上のスクリーンにSNSに投稿された「100万回のI LOVE YOU」の実際の映像から全国各地で行った路上ライブの様子を収めた写真、さらには幼少期の写真など貴重な資料の数々が映し出され、これまでの三浦の歩みを振り返った。

映像が終わるとバンドメンバーがステージに登場。最後に姿を現した三浦は「一緒に手拍子をお願いします!」と、この日集まった約500人の観客に呼び掛け「Make a Story」を歌い出す。路上ライブで培った度胸とスキルで、序盤から安定したパフォーマンスを披露した。「Make a Story」を歌い終えた三浦は、コロナ禍ということもあり、座席に座ったまま聴いていた観客に向かって「立ってくださ~い!」とリクエスト。それを合図に、会場にはミラーボールに反射するピンク色の淡い光が広がった。まるで桜吹雪が舞っているようななかで演奏されたのは「サクラノキノシタデ」。ずっと友達の関係でいた“君”への恋心と告白の緊張を歌った楽曲だが、その心境は、今まさにデビュー後初のショーケースライブを行う彼自身にも似たものがあったのだろうか……歌い終えると「今までにない緊張をしています」と心の内を吐露した。とはいえ、言葉とは裏腹にステージ上の彼は堂々とした歌いっぷり。

続いて演奏した「100万回のI LOVE YOU」では途中、観客が手にしているペンライトを「こうやって振って!」とリードしながら一体感を生み出す場面も。三浦の“原点”とも言えるこの曲をステージで歌うのは数年ぶりとのことで、昔からのファンも多いであろう観客は感慨深げに聴き入っていた。さらに、ORIGINAL LOVEの「接吻」を艶やかに歌い上げると、三浦はアコースティックギターを手にスツールに腰をおろす。セミや風鈴の音色が響き渡り、会場は一気に夏の雰囲気に。多くの人が“夏っぽいこと”をできずに過ごした今夏。自身も「短パンを買っただけ……」と話し、過ぎ行く夏を取り戻すように「夏っぽい曲を歌います」と言って手にしたギターを爪弾きながら「夏空」をしっとりと歌った。続く「記憶」では、美しいファルセットを披露。ピアノの旋律が印象的な楽曲だが、終盤では歪むギターや激しいドラムなどアグレッシブなバンドサウンドへと変化。それでも三浦の声はそれらの音にかき消されるわけではなく、むしろ芯の強さや逞しさを感じさせる歌声を響かせたのが印象的だった。

「次が最後の曲なんです」と伝えた後、ひと呼吸置いて、ここに辿り着くまでの道のりを振り返り始めた三浦。地元である海老名駅で歌い始めた頃の話から、全国各地で路上ライブを行ったこと、そのなかで少しずつ立ち止まってくれる人が増え、ワンマンライブをできるまでになったこと。デビューのチャンスを得るも実現しなかったこと。決して順風満帆とは言えなかったここまでの道程を語るなかで、涙がこぼれる場面も。それは、いつどんなときも支えてくれたファンの存在に話が及んだ時で、三浦は目に涙を溜めながらも、目の前にいるファン、配信を観てくれているファンに向かって真っ直ぐな眼差しで「まだ音楽をやっていいんだなって、みんなのおかげで思えました。本当にありがとうございます」と感謝の想いを伝えた。そして、「みんなとだったら、どこまでも行ける。どんな夢も叶えられる気がする。俺、バカかな?いけるよね?」と語りかけると、客席からは大きな拍手が上がった。

ラストは公式YouTubeで100万回再生を目指す「誓い。」を歌い上げ、本編を終えた。

ツアーTシャツに着替え、再びステージに登場した三浦。このショーケースを締めくくる1曲として彼が選んだ楽曲は「Start」。「最後は楽しく、ハッピーになってみんなと終わりたい」という言葉通り、演奏中は三浦とファン、そしてバンドメンバーも、会場にいる全員が手拍子で参加。もちろん顔には笑顔が浮かんでいる。

どんな困難にぶつかろうとも、諦めることなく自身の夢に挑み続けた三浦。そんな彼を支え続けたファンたち。この日のライブは三浦とファンが共に摑み取ったと言ってもいいだろう。ライブの途中のMCで、この先の目標を「Zeppツアー、そしてゆくゆくはドーム」と語った三浦。すべての曲を歌い終え、マイクを通さずに「ありがとうございました!」と客席に叫ぶ三浦の顔には、ある種の達成感と同時に決意の表情も浮かんでいるように見えた。そう、三浦の夢は始まったばかり。未来に向けての“スタート”を切った記念すべき一夜となったが、彼自身はどう感じたのだろうか。ライブを終えた直後の三浦が、encoreのメールインタビューに答えてくれた。

MAIL INTERVIEW

念願のZepp Hanedaのステージに立ち、“最高の景色”を目の前にして感じたことは?

「やっとここまで来たかと、長かったなぁと思いました。それと同時に、ここに立てるとは当時の自分の自分には考えもできなかったので、諦めなくて良かったと思いました」

今日のライブを経て改めて感じた“FUGAR”(ファンの呼称)への想いは?

「やっぱり、感謝しかないです。どんな時も周りを見渡せばファンのみんなが僕を常に支えてくれていて、その人たちが僕を信じてついてきてくれたからこそ、今があるんだと、改めて本当にありがとうと感謝の想いでいっぱいでした」

今日のライブでまさに“Start”を切ったところですが、次なる目標に掲げているものは何でしょうか?

「Zeppツアーを組んで全公演ソールドアウトしたいですね。お客さんがパンパンに入った会場で、たくさん歌いたいです。そして、メジャーデビュー曲のタイトル通り、ゴールではなくやっと辿り着いた“スタート”なので。今まで一度でも三浦風雅を応援してくれた人や、僕の曲を聴いてくれるみんなに感謝と恩返しをして、メジャーのステージでもさらに多くの人に聴いてもらえるように精進して、大舞台に立てるようにこれからも頑張ります!」

取材・文/片貝久美子

SET LIST

”MIURA FUGA Major debut showcase in Zepp Haneda”

M0. OPENING
M1. Make a Story
M2. サクラノキノシタデ
M3. 100万回のI LOVE YOU ※Rakeカバー
M4. 接吻 ※ORIGINAL LOVEカバー
M5. 夏空
M6. 記憶
M7. 誓い。
EN. Start

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