――新曲のお話を聞く前に、昨年10月にリリースされた約3年半ぶりの3rdアルバム『HIKARI』を振り返っていただけますか。

「作る前に打ち合わせをしたんですけど、明るい未来を思い描いた上で始まったんですよ。収録を重ねていって新曲もレコーディングして、アルバムをリリースして、ライブもあってという中で、今の私が描きかった未来は正しかったなって思える1枚になったかなと思います」

――真礼さんが描きたかった未来というのは?

「やっぱりライブが好きだなって思ったんですよね。私のライブの楽しさは、ファンの皆さんの声を聞くこと。皆さん、きっと私の姿を見にきて、私の歌を聴きにきてくれているんだと思うんですけど、私もみんなの声を聞きにきてるんだなって思ったんです。今回のツアーでは、まだ声は聞けなかったわけですけど、サイリウムの色が変わる瞬間だったり、みんなの盛り上がっている様子は見えて。やっぱり私はこの光景が好きだし、大切だなって感じて。昨年7月の立川ステージガーデンでのライブが終わった時も“内田真礼でよかった!”って思ったけど、それは、ここにいられることの感謝が大きくて。じゃあ、どうなりたかった?って自分に問いかけた時に、歌詞に<この未来を描くこと>とあった通り、私はライブがしたかったんだなって、改めて思えたので、その通り進んでるなって思いました」

――今年3月に開催されたワンマンライブ「Happy Cream Max!!」はどうでしたか。

「今回ならではの見せ方をしたかったんですよね。「HIKARI」はメッセージ性が強かったので、ただ歌うだけで、届け届けっていう思いが強すぎるなと私は思ってて。今、声が出せない状況で「HIKARI」をやると、完成系ではないだろうなというのもあったので、今回は、ちょっと違う形でやりたいですっていうお話をして。だから、今までに無いほどポップで、色がかなり強いライブになったんですよ。リハーサルも時間が足りない中でやったし、当日まで見えなかったものもあったので、苦労はしたし、すごく大変でしたけど、その分、やり切った時に、できるじゃんと思えて。自信にもつながったし、私としては、みんなで力を合わせればなんでもできるな?と思えたライブになりましたね。ほっとした気持ちが強かったかな。あとは、可愛いとカッコいいの二極をやったんですけど、カッコいいの時がすごく楽しかったです(笑)」

――ライブタイトルは「Happy Cream MAX」でイメージビジュアルは可愛い感じのアイスクリームでしたね。

「あははは!食べたかったんですかね、アイスクリーム。そのアイデアが出た時、本当に食べたかったっていうくらいで、大きな意味はなくて。でも、説明しないとわからないだろうっていう裏設定がライブの中にいっぱいあって。たとえば、1日の時の流れを表現してたりするんですね。昼間のアイスクリーム屋さんは忙しくて、お客さんの回転も速くなるから、後ろの映像の椅子がすごい回ってるとか。今は、夕暮れ時で帰り時間になってるとか。色々あったんですけど、伝えないとわからないことが多くて。それは、全部、副音声でやろうと思ってるんですけど、いつも私の抽象的なイメージをスタッフさん達が形にしてくれるんですよ。「MAAYA HAPPY CREAM MAX」というCMソングも使ったんですけど、それも、私が歌って、スマホで録ったものがちゃんとした音楽になって。そういう作り方で始まったので、面白かったですけどね」

――音楽活動は真礼さんにとってどんな場所になってますか。

「自分のアイデアを引き出してくれて。、自分のやりたいことをいっぱい叶えられる場所になってますね。これまでの活動があるからこそ、たくさん曲があるし、聞いてくれるファンの人がいる。そういう幸せな状況の中で、いろんなカラーでやれているので。自分を表現する場所として確立したなという気がします」

――通算13枚目のシングルがリリースされますが、表題曲「聴こえる?」は、真礼さんが出演しているアニメ「社畜さんは幼女幽霊に癒されたい。」のEDテーマになってます。

「エンディングをやらせていただけるということで、とてもうれしかったですね。この楽曲を最初に聴いた時は、なんてキラキラしていて、なんて難しい曲だって感じて。でも、歌詞を読んでいく中で、すごく芯のある曲だなと思ったんですよ。自分自身と向き合うというか。目標があるからこそ、辛いんですよね。自分ができなかったことが許せなかったりすることに対してのすごくポジティブなメッセージが聞こえてきて。私もコロナ禍において、諦めたことも、大変だったこともいっぱいあるんですけど、そういう思いを肯定してくれる曲だったので、自分にも重なる曲をタイアップという形で歌わせていただけるのはすごくありがたいなと思いました」

――いま、自分自身と向き合うという言葉がありましたが、自問自答しながら、現実の私と少し先にいる理想の私の間で揺れ動く心情が描かれてますよね。

「めっちゃわかります。どうしてもやっぱり厳しいこともあるじゃないですか。私自身、挫折もしてきたんですよ。中止になっちゃった公演もあったし。大変だなっていう悩みもある中でも、きっと、ここまで歩んできた私も正解なんだなって感じさせてくれたというか。今は今で正しくて、未来がすごく希望に溢れるものに感じられたんですね。すごく優しく背中をたたいてくれる曲だなって思いました」

――真礼さんの思い描く理想の自分というのは?

「耐えたり、我慢するんじゃなくて、ちゃんと表現してる自分という感じかな。未来に向けて、ちゃんと発表していく自分でありたいんですよね。これしたい!あれしたい!全部やりたい!とかではなくて。叶えるための努力をしてる自分が理想の自分っていう感じです。私、自分でやりたいんですよ。誰かに叶えてもらうのではなく、自分で叶えたい!っていう気持ちが強いんです。なんというか、車も運転したいタイプなんですよね。助手席に座って、誰かに運転してもらうんじゃなくて、自分主導で走りたいっていう感じです」

――とてもわかりやすいたとえでした(笑)。楽曲で気に入っているのはどの部分?

「Dメロですね。<たくさんの想い集めここで今/みんなの声が>。この流れで突然、内田真礼がいるのが感じられるんですよ。“あ、内田真礼がここにいるんだ”って。みんなには内田真礼が見えるかもしれないし、私にとっては、みんなが見える曲でもあって。そこから先に進んでいく絵が見えてきて」

――ライブの情景が広がっていきますよね。

「そうですね。だから、アニメの曲とも聴こえるし、内田真礼の曲ともちゃんと聴こえてくる。タイアップだけど、私の曲に落とし込んでいただいてるなって感じられるのもうれしいですね」

――<ねぇ聴こえる?>という部分も、アニメのEDテーマとしては、幼女幽霊の言葉のようですけど、内田真礼からファンに対する呼びかけにも聴こえるんですよね。歌声も力強くて、エネルギーをもらってる感じがします。

「パワーストーンみたいな曲ですよね。大きく声をあげてみんなを鼓舞する曲ではないんですけど、本当に光り輝いているというか。私は海みたいな気もするし、大地みたいな気もするし。すごく大きな心で包んでくれるような曲だなと思ってて。私の中ではライブの映像も見えているので、これがどんなふうになるのか、みんなには期待してて欲しいですね」

――MVはどんな内容になってますか。USENの番組では「新しいチャレンジで、自信作」と言ってました。

「私と同じ身長くらいの大きなクマさんのぬいぐるみと収録したんですけど。もうひとりの自分ということで、クマが大活躍するんですよ。街中をいっしょに歩いたり、バッティングセンターに行ったりしたんですけど、とにかく、クマの主張が強くて。フィーチャリング・クマみたいな感じで」

――あははははは!

「今までは、MVでも表現してきたけど、今回はクマに委ねるところも多かったんですよね。クマが主で、そこについていこうっていう寄り添い方は今までやったことがなかった。撮影は朝早くから深夜まで続いたんですけど、楽しかったし、とにかくクマが可愛くて。クマを見守るユニットになった気持ちで収録したし、クマの魅力溢れるMVになってます。あと、冬の撮影で、ライブも控えていたので、絶対に風邪をひいちゃいけないと思ってて。最初は衣装になかったタイツを履かせてもらったというのが、私の中のひとつのトピックです(笑)。実はタイツ履いてますっていう裏話でした」

――楽曲が乗ったアニメの映像はどうでしたか。

「めちゃめちゃ可愛かったです。幼女幽霊ちゃんが、「聴こえる?」の部分をリップシンクしてるんですよ!かわいい!と思って(笑)。これはね、うれしかった。自分の曲とアニメがマッチしててときめきましたし、キラキラした映像もつけてくれて。アニメと曲が合わさった時に、より歌詞が聞こえてくる感じがして、めちゃめちゃ素敵でしたね」

――作品にも倉持サツキ役で出演されてます。

「全部撮り終わってるんですけど、本当に癒し効果が高いですよ。深夜に流れて、家に帰ってきた感があるかな。ど幽霊ちゃんたちのお話なので、ファンタジーではあるんですけど、リアルに沁みてくるというか。日常の何気ない日本の風習も結構、取り入れてて。大きな事件は起きないけど、日常に親しみを感じさせてくれるというか。彼らの生活を優しく包んでくれる感じがして。ほんとに優しい、癒しの世界だなと感じてますね」

――サツキはどんな女の子でしたか。

「イラストレーターをしてて、在宅勤務なんですけど、彼女も社畜さんの一人。やらなきゃいけないお仕事に追われてて、休みなく働いて。“みんなが休んでるときに、なんで私は仕事しなきゃいけないの?”って爆発するんですけど、そこにリリィという家政婦さんみたいな幼女の幽霊が来て。サツキは“もうやりたくない”って、リリィに甘えるんですよ。リリィはツンデレなんですけど、もうしょうがないなって言いながらも、ちゃんと、面倒を見てくれて。甘えられる相手がいるってこんなにも幸せなのねって感じたし、本当に癒されますね」

――リリィはレーベルメイトでもある石原夏織さんが演じてます。

「超可愛いんですよ。ふだんの夏織ちゃんはやわらかいのに、リリィはちょっと冷たくて。現場でも“あんまり優しくしないでください”って言われてて。だから、かなり冷たいんですけど、それがいい!っていう(笑)。現場で振り返ると、夏織ちゃんはほわんとしてるんですけど、目の前のリリィちゃんは冷たいという、そのギャップも良かったですね。私はそれを感じながら収録してました」

――ちなみに幽霊は見えるタイプですか?

「いえ、見えないですね。全然見たことないです。見えないかなと思って、怪しいところに、目を凝らしたりするけど、何も見えないですね(笑)。ただ、ランタンの中にお兄ちゃんの頭が入ってるっていうキャラクターをやったときに、ちょっとだけ遭遇したことがあって。ホラー系の作品だったんですけど、“兄様、兄様”って言っていたら、後ろで頭サイズのマイクがゴロンって落ちて。私ひとりしかブースにいないのに。これ、頭ということ?みたいな。あ、いるかも?みたいなのはあったりするけど、霊感は全くないタイプですね」

――今回のアフレコはどうでしたか?

「楽しかったですね。アニメーションがすごいゆったりしたテンポなんですよ。ふだんだったら詰め込むセリフのところも、ものすごくゆっくりのテンポで話しているので、ゆったりと見れるし、なんでもない日常を彩ってくれてて。あと、お隣さんとの交流もあるんですけど、そこも今の世の中だとファンタジーっぽいんですよね。昔はあったお隣さん同士の交流の素敵さを思い出させてくれたりするし、幽霊ちゃんとの交流だけじゃなく、みんなで家族のように温かい時間を作ることに憧れのようなものも感じて。春の放送ですけど、正月に実家に帰った時の温かさを感じますね」

――先行試写会にも参加しましたね。

「キャストの皆さん全員が、癒し系なんですよ。みんな、柔らかい空気を纏っていたので、私はとても癒されましたね。作品の話もしたんですけど、それぞれの捉え方が違っていたのも興味深かったです」

――アニメのPVでは、<あなたにとって仕事とは?>という問いかけがあります。先程、音楽活動についてはお伺いしましたが、真礼さんにとっての声の仕事とは?

「私にとって声優の仕事は、目指すものという感じですね。オーディションはずっとしていくものですし、なかなか掴めないから悔しくもあるけど好きで続けていきたいものです」

――そう考えると、すごい仕事ですね。

「オーディションがあって、選ばれないと役を演じられない。どんなにやりたくても、自ら演じることはできないっていう。“やっといて!”もないですからね(笑)。“あと、お願いね”もできない。すごい大変な仕事だなと思いますけど、昔も今も憧れのままですね」

――シングルのカップリングには「Sensation Dancin‘ Show♪」が収録されてます。

「フューチャーファンクで、とにかくノリノリで楽しいなっていう感じですね。音に乗る感じが気持ちよかった。聴いてても、みんなに楽しいと思ってもらえる曲だと思うんですよね。歌詞は、攻めた感じになってるんですけど、作りたいテーマがあって。頑張ってる人にフィーチャーした曲というか。みんなを応援するような曲をたくさん歌ってきたので、そうじゃなくて、応援されてる人たちというか、日本のどこかで働いている人にスポットを当てた曲なんですよ。主役が私ではなく、ファンの人でもなく、その人たち。東京上空からぐーんって誰かひとりにカメラが寄っていくイメージ。最初は、土木作業員のおじさんとか、いろんな案があったんですけど」

――都会で働く女性が主人公になってます。

「そうですね。20代前半かな。月収16万円くらいでワンルームに住んでるっていう具体的なイメージをしているらしいです。これからまだまだがんばろうっていう若者にフィーチャーした曲だからこそ、今までにない表情感なんですよね。ただ、私が歌いたいって言って書いてもらったテーマではあるし、私を応援することでファンのみんなが明日もがんばれるような曲とも言ったけれども、ほんとに?っていう」

――現状に満足してる女の子ですよね。

「そうなんですよ。すごく直接的な言葉がたくさんあるし、描いてみたら、私とは違う人物が生まれたんですよね。私は、これがあるからOKというタイプではなく、いつまでも貪欲に人生を進んでいく、頂上に向かって山に登っていくタイプなんですね。何かを切り捨てたとしても、自由な時間を減らしてでも、夢に向かって進むタイプだったりもする。だから、みんながどう思うかを聞いてみたいなと思ってて。いろいろ話し合って、この歌詞のままにしたんですけど、どう届くかに興味があって、だから、この曲に関しては。ファンの人と語り合いたいです。あるあるなのか、いやいやと思うのか」

――いまある小さな幸せを楽しんでる曲ですよね。

「そうなんですよ。いまを楽しむことは大事だと思うんですけど……みんな、どう?って聞きたい。でも、ライブで歌うことで、そこがユートピアになるなとは思ってて。ライブ会場の盛り上がりを感じて、そこからパチンって次の演出に変わった時に、現実に戻って未来に行くっていうのが見える。ライブでの置き場所は面白いし、楽しみだなって思ってるんですけどね。ストーリーは見えてるから」

――常にライブのことを考えるんですね。

「そうなんですよ。ライブでどう表現するか、ライブの中でどんなストーリーを作るのかを考えるのがすごく楽しいんですよ。確かに今は、全部そこに繋がってるかもしれないです。頑張ってる人に届けたい応援ソングができたので、早くみんなと歌いたいなという気はしてます」

――USENで放送中のラジオ「内田真礼の真礼充ラジオ」がスタートから10年目を迎えました。

「いつも聴いてくれてありがとうって感じですね。もうほんとに1ヵ月に1回スタジオに行くことがルーティンになっているし、聞いてくれてるリスナーは濃いファンの方が多いので、ほんとに友達みたいになってきてて。兄弟が結婚したとか、地方に異動になったとか、手紙のやりとりをしてる感じがしてるんですね。ほんとに私のことを深く応援してくださってたり、よく見てくださってるリスナーの方が多いので「真礼充ラジオ」では自分をさらけ出しつつ、こっそり本音を伝える場所になっていて。そういう場所がずっと続いていけばいいなと思ってますね。目指すは15年、いや20年ですね!できるだけ長く続けたいです」

――今後の目標も聞かせてください。

「音楽活動としても10年が見えてきて。8年目に突入なので、結構やってきたなというところもあって。今年9月には1stコンサートのリバイバル公演も決定していて。昔から応援してくださってる方はもちろん、最近、私を知ってくれた方とも、いろんな楽しいことができたらと思っているので、これからも応援をよろしくお願いします」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真提供/ポニーキャニオン

LIVE INFO内田真礼ファンクラブイベント「LIVE IS LIKE A SUNNY DAY♫ Vol.4」

4月23日(土)1部/2部@J:COMホール八王子  SOLD OUT!

内田真礼オフィシャルファンクラブ「LIFE IS LIKE A SUNNY DAY」

DISC INFO内田真礼「聴こえる?」

2022年4月20日(水)発売
初回限定盤(CD+BD)/PCCG-02133/2,200円(税込)
ポニーキャニオン

2022年4月20日(水)発売
通常盤(CD)/PCCG-70495/1,400円(税込)
ポニーキャニオン

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