──2025年、Laura day romanceは2部作アルバム『合歓る - walls』、『合歓る - bridges』のリリース、大阪城音楽堂・東京国際フォーラム ホールCでのワンマンライブ、初のファンクラブ限定ライブなどを行いましたが、バンドにとってどのような1年でしたか?
井上花月(Vo.)「すごく忙しかったですが、すべての活動を楽しくやれました。それから、バンドの規模感が大きくなっていくのをやっと肌で感じられるようになってきました。どこでライブをやっても何百人ものお客さんが来てくれる状況を、やっと納得できるようになってきたというか…」
鈴木迅(Gt.)「僕も同じで、初めて実感が追いつき出してきたように思います。今までは“こんなに人が集まってくれるのがどうしてなのかわからない”という不思議な感覚だったので」
礒本雄太(Dr)「2〜3年前は“こんなに大きな会場でできるのかな?”という話を、よくメンバー同士でもしていたんですが、気付けばそういう会場でもライブができて、みんなが来てくれて。積み重ねてきたんだと感じます」
──作品でいうと、やはり2025年は『合歓る - walls』、『合歓る - bridges』という2部作のアルバムは大きかったと思いますが、2部作アルバムを作ってみていかがでしたか?
鈴木「自分たちの表現の芯を打ち出せた気がします。Laura day romanceは制作に重きを置いていて、“自分たちの作りたいものがある”という姿勢を提示できたことが良かったと思います」
──じっくり世界観を打ち出すという意味で、2部作アルバムに味をしめてしまったんじゃないですか?(笑) それとも大変だったからもうやりたくないですか?
鈴木「もうやりたくないですね(笑)」
井上「1年間で21曲もリリースしていたんですよ」
鈴木「ちょっとやりすぎました(笑)」
井上「21曲って考えると“よく頑張ったね”という気持ちになります」
──とはいえ、それほどのボリュームで1つの世界観を作り上げたということに対する達成感や手応えはあるのではないでしょうか?
礒本「1年通して、日常生活のなかで『合歓る』というアルバムのことを考えている割合がすごく高かったです。演奏しているときではなくて、“この楽曲ってどういう曲なんだろう?”とか“どういうシーンを切り取っているんだろう?”とか、そういうことを自分で考えて解釈してみる時間が多かった印象がありました」
──そうですよね、『合歓る』の世界観を1年間ずっと持っていたから…
礒本「はい。だから自分の考え方とか行動が、作品に寄っていくというか…チューニングを『合歓る』に合わせていたという感じでした」
──“もうやりたくない”とおっしゃっていましたが、リスナーとしては、またこういう作品を楽しみにしたい気持ちです。
鈴木「本当ですか!? じゃあ頑張って、またいつか。ただ僕は自分に無理難題を課すことでやる気になるタイプなんです。“2部作アルバムを作りたい”という欲は、『合歓る』をリリースしたことで一旦落ち着いたので、今は少し違うベクトルになっています。またやりたいと思ったときに作るかもしれないです」
──ここからは、新曲「winterlust」について伺います。「winterlust」は『JR SKISKI 2025-2026 キャンペーン「今だけは青い冬。」』CMソングですが、最初に『JR SKISKI』新CMソングを手がけると聞いたときはどう思いましたか?
井上「“本当ですか? Laura day romanceで合ってますか?”って確認しました(笑)」
──そもそも『JR SKISKI』新CMソングにはどのようなイメージを持っていましたか?
井上「私は、木村カエラさんの曲(2006-2007年 / CMソングは「Snowdome」)がとても好きでした。よく見ていましたし、楽曲もよく聴いていた思い出があります」
礒本「歴史のあるCMで、その時代のムードが反映されているイメージです。楽曲もその時代の代表曲の印象があったので、非常に重いバトンに感じました」
鈴木「すごくお茶の間感のあるCMというか、王道の力みたいなものが強いCMだと思っていました。だから僕たちも、変に格好つけて挑むのではなく、僕たちなりの王道に挑戦しようと思いました」
──そんなCMソングの制作はどのように始めたのでしょうか?
井上「CMの監督が、去年リリースした「heart」のMVを撮ってくださった監督と同じ方で(岩崎裕介)。まずCMの映像を見せていただいて、それにあわせて作っていきました。もともと候補が3曲あったのですが、そのうち2曲は迅くん(鈴木)が歌詞もメロディも作った曲で、“あと1曲、歌詞から書いてみて”と言われて私が歌詞を書いて。そしたら、Laura day romanceの初期のようなバンドサウンド全開の明るい曲をつけてくれて…それがCMソングに決まりました」
──歌詞から先にできた曲なんですね。
井上「そうなんです。なんとなくの構成とあわせて歌詞を渡したら、こんなに素敵な曲にしてくれました」
鈴木「僕の書く歌詞は、よく“遠回しだ”とか“ストレートじゃない”と言われるんですが、今回は王道で挑戦したかったので、だったら、かっちゃんにお任せしたほうがいいと思いました」
井上「ありがたいです」
──井上さんの歌詞から曲ができることって、今までもありましたか?
鈴木「いや、多分ないです」
井上「初めてです。活動初期の頃に迅くんに言われてやってみたことはあるのですが、形にならなくて。そのときは多分、私が不可解な歌詞を書いてしまったんだと思います(笑)」
鈴木「いや、そのときは“ここがサビです”とかそういうものがなくて、どう料理していいかわからなかったんです。でも今回は構成も考えて作ってくれたので、“じゃあこのサビに一番強いメロディを乗せます”と作ってみたらできたという感じです」
井上「一人で作る良さは言わずもがなたくさんあると思うんです。だけど、この曲はそういうものを超えたすごく良い組み合わせの曲になったと思うので、やってみて良かった試みだと思います。こんなに大きなタイアップで試みをさせてもらって申し訳ないんですけど」
──実際にすごく素敵な歌詞ですよね。CMの映像にあわせて書いていったということですが、言葉選びの点でこだわったことや意識したことはありますか?
井上「迅くんほどではないかもしれませんけど、私もすべてを説明している歌詞はあまり好きではないので、そこは意識しました。迅くんからしたら、説明している歌詞なのかもしれないですけど…」
鈴木「いやいや!」
井上「そんなことない? 迅くんよりも直接的な表現が多くなってしまうので、そこは私の癖だと思って。それを、Laura day romanceらしいいい塩梅になるように調整しました」
鈴木「前から思っていたんですけど、かっちゃんの歌詞はいろいろ混ざっているんですよ。具体的なところはばっちり具体的だけど、ファンタジックなところはしっかりファンタジック…みたいな。「winterlust」で言うと、踏みしめた雪の音とか体温の感じはすごく具体的でしっかりと伝わってきて、かと思えば<夢の丘>とか<音もなく回る星>といったファンタジックなところもちゃんとあって。手触りがあるというか…リアリティがちゃんとある、そのバランスは僕にはないものだと思います」
井上「解説がうますぎる(笑)。ありがとうございます」
──礒本さんは、この曲を初めて聴いたときどのような印象を受けましたか?
井上「“元気が出ました”とかでもいいよ(笑)」
鈴木「この曲、叩くの気持ち良いんじゃない?」
礒本「そうだね。ただ、ボルテージをどこまで持っていくのか?ということは考えました。確かに他のLaura day romanceの楽曲とは香りの違うものではあるんですけど、素直にこの曲のテンションに乗っていいものなのか…と。曲に合わせてボルテージをトップまで持っていくとトゥーマッチになってしまう気がしました。ただ『合歓る』の曲は考えることが多くて、叩く以上にカロリーを使うところがあったので、それよりは楽曲の世界観に身を任せた演奏になっていると思います。うん、元気は出ました」
井上・鈴木「よかった〜」
井上「冗談抜きで、CMで何回も流れる曲だから、聴いた人が悲しい気持ちになってはいけないと思っていて」
鈴木「それはそうだ。考える曲ではないほうがいいよね」
井上「そうそう。考えるよりも先に、“楽しい!”とか“元気が出る!”とか、感情が先に来るほうがいいと思っていました」
──今、礒本さんが演奏についてお話しくださいましたが、井上さん、鈴木さんは演奏するうえで意識したことはありますか?
井上「私がこの曲の主人公になってしまうと、ちょっと甘酸っぱすぎて、Laura day romanceらしさがなくなってしまうと思ったので、いつもよりはナレーションの要素多めで歌いました。普段からあまり感情を乗せすぎはしないように歌うことを意識しているんですが、今回は特に気をつけました。エモーショナルになりすぎないように歌うことで、曲の熱を抑えているイメージです」
鈴木「サウンドにおいて意識したのは“無関心感”です。スキー場って、主人公の感情とは別に、様々なものが動き回っていて、そこに埋もれているからこそいつもと違った行動ができるというテーマパーク特有の“ハイ”みたいなものがあると思うんです。そういう騒々しさや自分に対する無関心な景色…そんなものをサウンドで出したいということは考えました」
井上「すごい! できている気がする。スキー場ってみんなゴーグルとかしていてよく見えないしね」
鈴木「そうそう。爆音で音楽が鳴っていたりもして。その感じが出せたらいいと思ってアレンジしました」
──作り方も含めて、これまでのLaura day romanceとはまた違う楽曲が出来上がりましたが、皆さんの手応えはどのようなものですか?
井上「CMにあわせて聴いたときにいい感じだ!と思えたので成功だと思います!」
──先ほど、今は『合歓る』とはまた違うベクトルになっているというお話しもありましたが、「winterlust」のリリースから始まる2026年、どんな1年になりそうですか?
鈴木「「winterlust」で、Laura day romanceの初期を思わせるような、バンドで“せーの!”で音を鳴らしている感じがいい具合に表現できたと思ったので、このモードで今年は楽曲そのものの強さにフォーカスした曲作りをしたいと思っています。あとはライブもたくさんあるので、いい感じにしていきたいです」
──ライブで言うと、3月から初のホールツアー『Laura day romance hall tour 2026 “Fixing a hall”』が始まります。どんなツアーになりそうですか?
鈴木「2部作アルバム『合歓る』の世界観を見せつつも「winterlust」もあるので、バンドの多面性が詰まったライブになるんじゃないかな?と思いながら、今、頑張っているところです」
井上「Laura day romanceは、最初からずっと多面性を出してきたバンドなので、その姿をしっかりと見せるホールツアーにできたらいいと思います」
礒本「『合歓る』で自分たちの芯を表現できたのは間違いないので、しっかり胸を張って演奏したいです」
──最後にもう少しLaura day romanceのことを知るために、皆さんの制作や音楽活動に影響を与えていると思うカルチャーをお一人ずつ教えてください。
井上「私は本と料理です。本で言うと最近買ったのは文芸誌の『群像』です。金原ひとみさんの対談が読みたくて書いました。エッセイや新書も読みますが、多いのは小説かな。特に最近は海外小説をよく読んでいます」
鈴木「僕は普通で面白くない回答ですが、映画です。映画ってすごいエネルギーの集合体じゃないですか。しかも、芸術なのに大衆的なものもあって、両方を兼ね備えているものも存在していると思うと、すごく勇気をもらえます」
井上「構造が音楽と似ているよね」
鈴木「うん。わかりやすいことが正義ではないですけど、ある程度残っていく作品はそのバランスが良いものだと感じています。自分が表現したいことを表現しているけど、一見するとわかりやすい…みたいな。僕たちの楽曲にもそういうところがあればいいと思うので、勉強になります。少し前にジブリの作品を片っ端から観て、子供の頃は気づかなかったことが無限にあって、とても感銘を受けました」
礒本「カルチャーと言っていいのかわからないですけど、僕は歴史や文脈があるもの全般に興味があります。例えばライブで遠征すると、その土地の人とお話することももちろんですし、風景や建物、ご当地の食べ物などにある、その土地の歴史を調べて、見えない魅力を知るようにしています。そうすると、広い心で接することができたり、より楽しめたりするんです。多分、それが結果的にLaura day romanceの曲を理解することにも役立っているというか…。迅がどういうことを考えて曲を書いたのか?とか、この曲の主人公はどういう人生を歩んでいるんだろう?とか、そういうことを考える土台になっている気がします」
(おわり)
取材・文/小林千絵
写真/中村功
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

Laura day romance tour 2026 “Fixing a hall”
2026年3月15日(日) 宮城 トークネットホール仙台 大ホール
2026年3月28日(土) 福岡 福岡国際会議場 メインホール
2026年4月4日(土) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
2026年4月10日(金) 大阪 NHK大阪ホール
2026年4月11日(土) 愛知 岡谷鋼機名古屋市公会堂 大ホール
2026年4月16日(木) 東京 LINE CUBE SHIBUYA










