──4枚⽬のフルアルバム『Revealia』が完成しました。非常に印象的なタイトルですが、どういった意味を持つ言葉で、どんな想いを込めたのでしょうか?
「『Revealia』は、“打ち明ける”という意味を持つ“Reveal”という英語に、主にラテン語が由来の場所や世界、概念を表す接尾辞“~ia”を組み合わせた造語です。心にかかっている1枚の薄皮をはがして、自分のありのままを見せていく、心のうちを明かす場所という意味を込めてつけたタイトルです。これまで活動する中で、リスナーから見た理想のHACHIの姿を探るのに必死だった時期があったんです。でも、それって正解がわからないものを突き詰めていくみたいなことで、どうしても行き詰まってしまって。それを打破するために、リスナーのことをそれまで以上に信頼した上で、自分のネガティブな部分も見せていこうと思いました。“自分の好きな音楽をやっている”というポジティブな側面がある一方、“あの時期にこういう悩みがあったんだよ”とか、“これが辛かったんだよ”みたいな、少し心のネガティブな部分…。今まではそういうところはあまり見せていなかったので、“リスナーのみんなを信頼しているからこそ、ここまでHACHIのありのままを見せることができるんだよ”という意味でも、“自己開示”をコンセプトにしたアルバムのタイトルにしました」
──そういったコンセプトでアルバムを作り終えた今は、どんな心持ちでいますか?
「しんどかったときの気持ちを歌に昇華できたことで、心はすっきりした感じです。ただ、今まで見せてこなかった部分を見せているので、どう受け取ってもらえるのかな?という気持ちがあって、そこは少しドキドキしています」
──どんなリアクションがあるか、リリース以降が楽しみですね。
「そうですね。今までは自分以外の明確な主人公がいて、その感情を代弁する形で歌っていましたが、今回は全曲が私自身にフォーカスした曲なので、きっと私のリスナーはびっくりすると思います」
──アルバムと同じタイトルの楽曲「Revealia」は、HACHIさんご自身の作詞になります。
「ただひたすら“あなた”を信頼して、暗闇の中から抜け出すことを決意する楽曲です。光を見出していくというか…。この曲では、アルバムの中でも一番の自己開示をしたと思います。私がどんな暗闇の中にいたのか、そしてそれを見せないように隠してきたかを。でも、隠しているのに気持ちを見抜いて気づいてほしいって、エゴたっぷりみたいな(笑)。そういう心情を前半では歌っているんですけど、後半ではいかに私がリスナーのことを信頼して、愛しているかということを歌っています。歌詞ではストレートな言葉を使っています。今までだったら“直接的すぎるかな?”って遠慮していた部分もあるんですけど、言葉って、やっぱり直接的に表現しないと伝わらないところがあるので。今回のアルバムは自分の作詞以外も全体を通して遠慮することをやめました」
──一緒に制作したクリエイターの方とのエピソードで、印象的なものを教えてください。
「やっぱりリード曲「∞」のエピソードですね。作詞作曲の海野水玉さんは2nd デジタルシングル「Rainy proof」(2021年2月6日リリース)から、ずっと一緒に音楽を作ってくださっている方なんです。歌詞に<死んでいく>、<「死にたい」>という言葉がある楽曲ですが、私たちって音楽活動をやめること自体が“死”なんです。音楽を一生続けていかなきゃならないという業、でもそこには先の見えない不安…“そういう感覚を知らなかった頃に戻りたいな、でも戻れないよね、とにかくどうしようもない不安ってあるよね”という不安があって。そんな気持ちに実際になったことがある人にしか作れない曲ですし、歌えない歌だと思います。じゃあ、私たちがそういう感覚を持ったときにどんな曲を作りたいかというと、立ち上がれなくても、動き出せなくても、それってまったく悪いことじゃないんだよって、たゆたい続けることを肯定してくれる曲なんです。人ってネガティブな感情になってときに、無理をしてでも立ち上がらないと自分は生きていけないと思いこみがちじゃないですか。でも、私はそんなときに無理やり自分を立ち上がらせてくれる音楽ではなくて、立ち上がらない自分を肯定してくれて、寄り添ってくれて、元気が出るまでそばにいてくれる音楽が作りたかったんです。「∞」は、そういう話を海野さんとたくさんしながら作りました」
──今回が4枚目のフルアルバムになりますが、これまでの音楽活動を通して変化した部分、逆に変わらない部分、その両方があると思います。
「基本的には、ずっと何も変わっていないかもしれないです。“あなたの心に寄り添う”を活動理念に音楽をたくさん作ってきましたけど、それを変えていく気が私にはなくて。近い距離感でそばにいる存在でありたいですし、寂しいときにいつでも帰ってこられる音楽を作りたいです。ただ、その中で変化したのは、周りをさらに信頼できるようになって、自分を委ねられるようになったことです。それによって、視野も広がりました」
──以前のHACHIさんは、そうではなかったのですか?
「もともとの私は私生活でも音楽活動でも人に頼るのが苦手で、あくまで自分の足で立っていたいですし、“自分の機嫌は自分で取らなきゃいけない”って、自分を強く見せたがるふしがあるんです。“悩んだことなんてないし、嫌なことがあっても自分でどうにかできるし”って。でも、リスナーと長く一緒に過ごしてきたからなのか、“もう少し人に頼ってもいいんだな”って思えるようになりました。今回のアルバムを作ることによって、そういう考え方を得ることができたと思います」
──ここまで話してきたことを踏まえて、『Revealia』はHACHIさんにとってどういう位置付け、意味合いのアルバムになったと思っていますか?
「改めての自己紹介のようなアルバムだと思っています。自分が思っていること、感じていることをすべて出して、“よろしければお友だちになってくれませんか?”と手を差し伸べているようなアルバムです。かなり自分の深層心理に触れているというか、ポジティブなところもネガティブなところも全部見せた、ある意味で泥くさいアルバムだと思います。なので、“こういう一面もあるんですが、お友だちで居続けてくれますか? こんなHACHIで大丈夫ですか?”みたいな(笑)。自分にフォーカスした曲をどう歌うか?というところで、表現の幅も広がりました。自分に矛先が向かうことで楽曲の解像度が高かったですし、歌の技術においてもレベルアップできたと思うので、特別なアルバムになりました」
──HACHIさんは“バーチャルシンガー”というスタイルで活動していますが、そのスタイルの魅力、醍醐味を教えてください。
「バーチャル空間で活動しているので、映像面や演出面でできることが多いです。ものすごい青空の下、きれいなガラス玉をたくさん飛ばしながら歌ったり、非現実的な新しい体験ができることが魅力だと思っています。醍醐味は、リスナーとの距離感がすごく近いことです。YouTubeの配信をずっと続けているので、毎週同じ曜日の同じ時間に一緒に過ごす時間があるので」
──YouTubeの定期配信では、歌以外にも雑談をしたりゲームをしたりしていますが、HACHIさんにとってどんな場所になっていますか?
「配信は、“リスナーが定期的に帰ってこられる場所を作る”という想いで続けています。“仕事が大変だとか眠れないとか、そういうときにみんなで集まろうよ”って。だから、大きなお部屋に友だちをたくさん呼んでいるみたいです(笑)。私自身も歌って話すんですけど、リスナー同士の交流の輪が広がっていくのが好きなんです。そうやって輪を広げて、みんなで楽しめる場所。それが、毎週金曜21時からの配信(『ハニカムステーション!』)の想定です。毎週火曜の『Midnight station』は24時からの配信なので、寝つけなかった人に向けた眠るまでの子守唄というか…眠れていない人を寝かしつけるために(笑)。今の活動を始める前、私も眠れないときは音楽を聴いていたので、そういう配信になればいいと思っています」
──3月5日には、台北でのライブが予定されています。
「台北の方にはたくさん聴いていただいているんですが、私自身に“海外進出したい”という野望があったわけでもないですし、具体的なきっかけが何かあったわけでもなくて、好きに歌っていたら切り抜き動画が回って、いつの間にか見つけてくれたという感じなんです。それで、好きで聴いてくれる人がたくさんいるんだったら、こっちから会いに行こうかな?って」
──思い描いているこれからの活動について教えてください。
「あまり焦らずに長く活動していきたいです。焦らずとは言いつつ、長く活動していくためには自分からどんどん動いていくことも必要だとは自覚しているので、これまでやっていなかったことにもチャレンジしたいですし、聴いてもらえる場面をもっと増やさないといけないとも思っています。なので、いろんなイベントに顔を出したり、他のアーティストさんと交流したり、2026年は外交の年にしたいです。主題歌(「Brand New Episode」)を歌ったTVアニメ「SHIBUYA♡HACHI」で声優にも挑戦させていただいたように、歌以外のアプローチでも私自身を見せていきたいです。今回のアルバムで私のすべてをさらけ出したことによって、リスナーとの信頼関係もより強くなると思いますし、リスナーが自信を持って私のことを推してくれているんだったら、私もここで腹を決めて頑張らなければ名が廃りますから! そんなことを思いながら、今はやる気に満ち満ちています!」
(おわり)
取材・文/大久保和則
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

HACHI Live Tour 2025 “Unlockture”
2025年12⽉12⽇(⾦) 神奈川 カルッツかわさき
2026年3⽉5⽇(⽊) 台北 Legacy TERA




