──ファーストアルバム『Believer』が完成しました。アルバムには、王道アイドルソングからミディアムバラード、セリフパートを多用した実験的なナンバーなど、バラエティ豊かでカラフルな全13曲が収録されていますね。
「4月ぐらいから準備していました。アルバムを出せることは当たり前ではないので素直に嬉しい反面、“アルバムを作るということはこんなに大変なんだ…”とも思いました。歌詞を書くことも大変でしたけど、アルバムを作るならジャンルの被りがなくいろんなタイプの曲が並んでいて、その中で様々な感情を表現したかったので、曲選びが何より大変でした。でも、結果的には本当に盛りだくさんな内容のアルバムになりました」
──いろんなタイプの曲が並び、そこで様々な感情が表現されたアルバムにしたいと思ったのは、どういう理由からですか?
「自分で歌詞を書いていることが大きいです。アイドル時代はプロデュースされる側で、“この歌詞で、この曲です”って楽曲をいただいて、それを自分なりに精一杯表現していましたけど、今はセルフプロデュース。特に歌詞は自分で書いているので、だったら自分にしか書けない様々な気持ちが入った歌詞を書いて、聴いてくださる方もいろいろな感情になってくれたらいいなと思って。私もそうですけど、人ってその日その日、状況によって気持ちは違うから、“今日はこの曲が自分にフィットするな”って、気持ちによって聴く曲が選べるアルバムになってほしいという思いもありました。“人間だから、いろんな気分の日があるよね”って。だからこそ、『Believer』には楽しい曲もあるし、メッセージ性のある曲も収録しました」
──アルバムのリード曲は、「Hello Happy My Life!!!」です。サビ以外は、自分の脳内に渦巻く複雑な感情を吐露したセリフで構成された、これまでにない新しい試みの楽曲になっていますね。
「いろんな思い、いろんな感情が入っているアルバムにしたいと思ったとき、それをリード曲で表現したいよねという話になって、「Hello Happy My Life!!!」をリード曲にしました。歌詞のほとんどがセリフなので、逆にメロディにはめなくていい分、ダイレクトに言いたいことが言えていると思います。他人が関わっていない自分に関する選択だったら、自分がワクワクするほう、好きなほうを自由に選んでいい。そうやって“なりたい自分、やりたいことを選択できたらいいよね”って思いを歌詞にした曲です。“自己中でいいじゃん!”っていうわけではなくて、“自分らしく自分の好きな自分でいいじゃん”っていうメッセージを伝えたかったんです」
──アルバムでは、1曲目のインストナンバー「Innocent Appear World」以外の12曲で作詞を手がけています(「プリンセステイラー」、「やんなっちゃうな」、「はじまる」は、kazueiとの共作詞)。どの歌詞にも思いがあるのは当然だと思うんですが、その中でも特別な思いがある曲を挙げるとしたら、どの楽曲になりますか?
「特に気に入っているという意味では、「いくつになっても可愛くいたい♡」と「BABY DOG」の2曲です。まず、「いくつになっても可愛くいたい♡」は、何年か前に七夕の短冊に書いた言葉をそのままタイトルにした曲なんです。私は11歳のときにSKE48に加入して、ずっとアイドルをやってきたんですけど、気づけばだんだん大人になっていて、今は周りに年下のアイドルも多くなりました。でも、やっぱり“可愛い”が好きなんです。そういう大人って、自分以外にもたくさんいると思いますし、“大人になっても可愛くいたい、キラキラしていたい”っていう願いをリアルに表現したかったんです。“若くて可愛いのもいいけど、大人になっても可愛くいようと頑張っている姿も可愛いって思ってくれたらいいよね“って、そういう目線で書いた曲で気に入っています」
──もう1曲の「BABY DOG」は?
「アルバムの最後に収録されている曲なんですけど、個人的に一番好きです。今、愛犬と一緒に暮らしていて、つらかったときとか、これまでいろんな場面で救われてきたなって思います。私は愛犬のことを“赤ちゃん”って呼ぶんですけど、それは赤ちゃんみたいに可愛いからでもあるし、どこかでずっと赤ちゃんでいてくれたらな…赤ちゃんだったらこの先も長く一緒にいられるな、”できることなら永遠に一緒にいられたらいいな“という願いもあるので。そういう存在との永遠だけを頼りに生きている感じが、この歌詞から伝わったらいいなと思って書きました」
──愛犬には、それだけ救われていることが多いんですか?
「多いですね。どんなに嫌なことがあっても、もう本当に無理だって思っても、“お家にあの子がいるから頑張って帰らなきゃ!”って思います。そんなふうに生きる理由になっているし、救われているなって」
──“歌詞を書く”ということに関して、自分の中での意味合いや意識は変わってきましたか?
「最初に“歌詞を書いてみないか?”って言われたときは、絶対にもっとちゃんと書ける人にお願いしたほうがいいのにって思っていましたし、今でもいろんな方にお願いしたほうが幅が広がるんじゃないかとは感じているんです。でも、自分で書くからこそ、全部じゃないにしろ、どこかには自分が思っていることが散りばめられていくと思うので、それがいいですよね。歌詞を書くと、自分の一部が形になっていることが、ちゃんと感じられるというか…。極端な話、自分で書いたら、すごくムカついたことも人にバレないように歌詞にできるじゃないですか(笑)。そういう部分も含めて、歌詞を書くことで自分の感情の一部を昇華できています。作詞をすることでそれができるようになったのは、人生の中でも大きくて。だから、作詞に出会えて良かったなと思います。今は、“歌詞を書くことは案外嫌いじゃないかも”って思っています。もちろん、いいご縁やタイミングがあれば自分以外の人に歌詞を書いていただきたいという思いはありますし、“絶対に自分で作詞をする”というこだわりがあるわけでもないですけど、どんな形でも作詞にはずっと携わっていきたいです」
──ムカついたことも歌詞になりますか?
「なりますね(笑)。でも、嫌な出来事も歌詞になった瞬間に無駄じゃなかったと思えるので、それはそれでいいことかなと(笑)」
──アルバムを作り終えた今、ソロで歌うということに関しては、どんな感覚で向き合っていますか?
「十数年、アイドルグループのメンバーとして活動してきて、“江籠ちゃんのダンスが好きです!”って言われるのはもちろん嬉しかったですし、それは今も嬉しいんですけど、ソロになって“この曲が自分にすごく刺さりました!”とか言ってもらえると、これまでとはちょっと違う次元に行けたっていうか、自分が生み出した歌で共感しあえていることは、すごく大きいと感じています。あと、私は基本的に自分のことが好きじゃないので、自分が映っている映像作品とかを見れないんです。でも、ソロになってから自分の歌は聴けるようになってきました。それは、自分で歌詞を書いて歌ってきた曲たちが、“自分が歌えて良かった”と思える曲ばかりだからだと思います。だから、歌を突破口に少しずつ自分のことを好きになれているのかもしれないです」
──アルバムは、『Believer』というタイトルです。
「アルバムの全体像が見えてから、制作期間の最後のほうに決めました。「Hello Happy My Life!!!」の歌詞で一番好きなのが、<おっきい自信の裏に潜む 何者でもない自分/夢を見たら いつか自分を嫌いになるの?>というフレーズなんですけど、自分が今やっていることに根拠はないけど自信があって、ただまだ何者でもなくて、それでも夢を見たら今度はどんどん自信がなくなって、自分を嫌いになっちゃう…。でも、やっぱりそんな自分にまだ期待しているし、信じてるんです。それがすべてかな?って思います。そういう思いがあって、信じる人を意味する『Believer』をタイトルにしました」
──11月には東京と名古屋でワンマンライブ『江籠裕奈tour 2024 〜Believer〜』が控えています。
「アルバムを引っ提げてのライブになるので、初めてみなさんの前で歌う曲も多いです。いろんなタイプの曲を生で届けるのが楽しみですし、それをみなさんがどう受け取ってくれて、どんな気持ちになってくれるのかも、すごく楽しみです! 衣装も本当に可愛いので、そこも期待していてください!」
(おわり)
取材・文/大久保和則
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
江籠裕奈『Believer』通常盤
2024年10月30日(水)発売
ZEST-0030/3,300円(税込)
江籠裕奈『Believer』@Loppi・HMV限定盤
2024年10月30日(水)発売
ZEST-0031/3,300円(税込)
LIVE INFORMATION
江籠裕奈tour 2024 〜Believer〜
2024年11月3日(日) 東京 SHINJUKU ReNY
2024年11月10日(日) 愛知 NAGOYA ReNY limited