──『超かぐや姫!』というタイトルからインパクトがありますが、最初に『超かぐや姫!』に出演すると聞いたときの心境を教えてください。

「私も“どんなお話なのだろう?”と思いました。ですが『かぐや姫』という言葉自体はもちろん知っていますし、“『竹取物語』の要素が含まれているのかな?“など、さまざまな想像を膨らませてワクワクしました」

──実際に脚本を読んでいかがでしたか?

「“自分が子供の頃から知っている『竹取物語』と私たちの身近な世界観がかけ合わさると、このようなお話が生まれるんだ!“と思いました。この作品のキーワードは”ハッピーエンド“。見終わったあとに自分の人生にも当てはめられますし、最後にかぐやが言う言葉にもとてもパワーをもらえました。すごく魅力的なお話だと思いました」

──そんな『超かぐや姫!』で、早見さんが演じるのは仮想空間『ツクヨミ』の管理人兼トップライバーの月見ヤチヨです。ヤチヨというキャラクターをどのように理解し、どんな点を意識して演じられましたか?

「ヤチヨは仮想空間『ツクヨミ』という、誰もが楽しめる世界、誰もが繋がれる世界を作った人で、ヤチヨも『ツクヨミ』にいてとても楽しそうです。可愛らしくて、お茶目ではちゃめちゃで…ですがみんなのことを常に想っています。自分のことだけではなくて、『ツクヨミ』全体のこと、誰かのことを常に想っている人だと、強く感じました」

──愛がすごく深い人ですよね。

「はい! 自分自身がいろいろな経験をしてきて、喜怒哀楽全てを感じてきた人だと思います。その中で出会った人との縁を大切にし、それを拠り所にして、長い時を乗り越えてきた人だと思いました」

──そんなヤチヨを演じるにあたり、意識したことや大事にしたことはありますか?

「本編のアフレコをする半年ほど前に、監督を中心としたスタッフの方々と、“ヤチヨという人物をどう作っていくか?“ということを考えるためのボイステストをしていました。その際に監督から、”ヤチヨは、かぐやと彩葉よりも少しお姉さんで二人を見守るというベースはありながらも、ライブシーンやみんなに語りかけるシーンではみんなのアイドル的存在にもなる。かと思えば、かぐやと彩葉の前ではギャグ顔をしたり、少女のような姿を見せることもある“というお話をしていただきました。私はそれを聞いて、”ヤチヨは生きていく中でいろいろな表情を蓄えたからこそ、それが要所要所で出てくる人なのだ“と解釈しました。そのため、自分の身の上や本当の想いを吐露するシーンではシリアスに演じてみたり、ぽろっと本音をこぼすところも、一見楽しそうにしながら少し翳りを見せたりと、いろいろな描き方をしたいと思いました」

──いろいろな感情を見せるのは難しそうですが、演じるのは面白そうですね。

「はい。楽しかったです。今回は音楽のレコーディングもありましたし、先程お話したように本編のアフレコの前にボイステストもあり、大切に長い時間をかけてヤチヨというキャラクターと一緒に歩んできた感覚があります。レコーディングも含めてすべての過程が楽しかったです」

──ちなみにヤチヨと早見さんご自身は、“似ているな“と思うところはありますか?

「似ているところ…逆に似ていないところになりますが、ヤチヨはあれだけ大規模なライブをしているにもかかわらず、ステージに上がる前は全く緊張していません。“どうしよう。こんなに大勢の人の前で歌わないといけないんだ”という気持ちがないのです。自分が作った空間を前に“みんな、楽しんでいってね!”という心持ちで最高のパフォーマンスができるのは、私と似ていない部分であり、憧れです。私はとても緊張しやすいので、ステージに上がる前に、ヤチヨくらい落ち着いてできるといいなと感じています」

──アーティストとしての憧れを感じさせられたんですね。

「はい。ライブで言うと、私はヤチヨのMCがとても好きです。ヤチヨは、“みんな生きるのどうですか?”、“良いことあった?”と聞いてくれるんです。そこに、普段のふわっとしたかわいいヤチヨとは違う一面を感じています。“いろいろな悲しみや大変さを知っている人のMCだな。好きだな”と思いました。私はライブ時のMCが苦手で、“うまく言わなきゃ”や“考えてきたことを忘れないようにしなきゃ”などの邪念が混ざり込んでしまいます。なので、とても純粋に思ったことを言っているヤチヨに憧れます」

──役のセリフとはいえ、早見さんが言っている言葉なのに“ヤチヨがこう言ってくれるんですよ“とおっしゃるのが良いですね。

「はい。自分も言われているような気持ちになっているのかもしれません。ボイステストのときから、このMCのシーンはとても温かい気持ちになったことを覚えています。じんわりと温かい気持ちになりながら、“こういう場所で、こういうMCをするときっはこういう気持ちになるんだ”と知ることができたのがうれしかったですし、“ヤチヨの言葉はみんなを惹きつけるんだな、だから彩葉みたいな人を救うんだろうな”と思いました」

──ライブのお話が出たところで音楽の話題も。劇中で早見さんは、ヤチヨとして「星降る海」、「Remember」、かぐやと共に「Ex-Otogibanashi」、「ワールドイズマイン CPK! Remix」、「ray超かぐや姫!Version」を歌唱されています。特に気に入っている曲や、レコーディングで苦労した楽曲などがあれば教えてください。

「カバーもあればオリジナル曲もあって、どの曲も素敵ですが…かぐやの夏吉ゆうこさんと一緒に歌った「Ex-Otogibanashi」は、この『超かぐや姫!』という作品を音楽で体現してくれているような楽曲だと思います。ryo supercell)さんが作ってくださった曲で、カッコよくて今風なアレンジがされている一方、メロディや効果音には懐かしさや和の要素があります。『かぐや姫』を現代と掛け合わせているこの作品自体と重なる部分があります。その絶妙なバランスの曲調は、歌っていても楽しかったです」

──レコーディングはいかがでしたか?

「レコーディングはライブシーンを見ながら、夏吉さんと違うブースで一緒に歌いました。ソロで歌ったときよりも、2人で一緒に歌ったときのほうが感情が溢れ出す感覚があり、泣きそうになりました。少しマニアックな話になりますが、曲の最後の<そんなおとぎ話>という歌詞で歌い終えたあとに私は息を吸いました。それは意図したわけではなく、感極まって息を吸った音をマイクが拾ったためです。しかし、ryoさんや監督が、“それもヤチヨの想いだ”と受け取ってくださってそのまま残してくださいました。そのように細かい表現や想いまで掬い取って、曲として完成させてもらえたのは印象的でした」

──早見さんご自身もアーティスト活動をされていますが、ヤチヨという役を演じたことで、今後ご自身の音楽活動に何か影響はありそうですか?

「先ほどのステージに出る前の話もそうですが、どうしても緊張したり、曲に対する意識が強くなりすぎると、私は矢印が内向きになってしまいます。ですが、ヤチヨは常に矢印が外向きです。それは長い時間のなかで、自分の内面とすごく向き合ったからだとは感じています。“自分の音楽を聴いてくれる人や、ライブという空間に遊びにきてくれるみんなに対しての外向きの矢印がある”ということは、私も改めて意識したいと思いました」

──早見さんご自身にとっては、歌を歌うことや音楽活動をするということは、どういう意味を持っていますか?

「幼少期まで遡ると、私はお芝居を始めるよりも前に、“歌を歌う“ということを始めています。音楽は気がついたら隣にあったものといいますか”音楽をやりたい“や、”歌いたいから学ぼう“などと考える暇もなく、気がついたら歌っていました。幼稚園の頃は、車の中で大声で歌ったり、町内のステージでも歌ったりしていたようです。なので音楽は、生まれたときに隣にいてくれたぬいぐるみのような存在です。しかし仕事にすると、どうしても子供の頃のようなキラキラな存在だけではなくなってしまいます。大変な思いをすることもありますし、高い壁だと感じるものが出てくることもあります。それでもこのぬいぐるみを、見えないところに避けようとはできない気持ちがあります」

──抗えない愛着のようなものなんですね。

「そうですね」

──仕事になってから、音楽との向き合い方が変わったというお話をしてくださいましたが、仕事として音楽活動を始めると、幼少期に楽しく歌っていた頃とは違い、“聴いてくれる人の存在”を意識するようになりますよね。そこは変わりましたか? それとも昔かと変わらず楽しく歌っていますか?

「聴いてくださる方、ファンの方の存在はとても意識するようになりました。“どういうライブをしたらいいかな?”や、“どうやったら楽しんでいただけるかな?”など。でも“こう聴いてほしい”とか“こう受け取ってほしい”というものはあまりありません。ご自身の日々の中でベストなタイミングで聴いていただきたいです。届き方、受け取り方は皆さんそれぞれだと思います」

──最後に、そんな早見さんの歌声や音楽も楽しめる『超かぐや姫!』の見どころや、早見さんが感じた『超かぐや姫!』の魅力を、改めて教えてください。

「これまでお話ししたように、新しいけど懐かしい、懐かしいけど新しいという要素がギュッっと詰まっていて、自分の中にいろいろな気持ちを湧き起こしてくれるような作品になりました。何度も言ってしまいますが、キーワードは“ハッピーエンド”です。この物語がハッピーエンドかどうかは観て確かめていただきたいですが、少なくともハッピーエンドにしていく物語です。そのようにハッピーエンドに向かって歩む道のりは、それだけで既にハッピーエンドな気がしますし、観たあとに“自分の人生や日常もハッピーエンドにしたいな”と思わせてくれる作品だと思います。なので栄養代わりに観ていただきたいです。そして何よりも山下監督の映像の魅力が詰まっている作品です。華麗なアクションや仮想空間の世界、水辺や月の表現も本当に繊細で美しいので、映像も楽しんでもらいたいです」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/中村功

前編:入野自由
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INFORMATION

Netflix映画『超かぐや姫!』2026年1月22日(木)Netflix 世界独占配信

■キャスト
かぐや:夏吉ゆうこ
酒寄彩葉:永瀬アンナ
月見ヤチヨ:早見沙織
帝アキラ:入野自由
駒沢雷:内田雄馬
駒沢乃依:松岡禎丞
綾紬芦花:青山吉能
諌山真実:小原好美
FUSHI:釘宮理恵
忠犬オタ公:ファイルーズあい
乙事照琴:花江夏樹
■メインテーマ
「Ex-Otogibanashi」月見ヤチヨ(cv.早見沙織)
■劇中歌楽曲提供
ryo (supercell)/yuigot/Aqu3ra/HoneyWorks/40mP/kz(livetune)
■スタッフ
監督:山下清悟
ツクヨミキャラクターデザイン:へちま
現実キャラクターデザイン:永江彰浩
ライブ演出    :中山直哉
美術監督:宍戸太一
色彩設計:広瀬いづみ
ツクヨミコンセプトデザイン:東みずたまり/フジモトゴールド(ゴキンジョ)
現実コンセプトデザイン:刈谷仁美
CG監督:町田政彌(スティミュラスイメージ)
CG背景:草間徹也(キューンプラント)
編集:木南涼太
撮影監督:千葉大輔(Folium)
音楽:コーニッシュ
音響監督:三好慶一郎
企画・プロデュース:山本幸治製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
アニメーション制作:スタジオコロリド/スタジオクロマト

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