──最初に「超かぐや姫!」に出演が決まったときはどのような心境でしたか?
「今回は光栄なことにお声がけいただいての出演だったので、最初は“どうして僕なんだろう?”というのが率直な印象でした。しかも、原作があれば“この作品のアニメ化なんだ! 読んでみよう”と思うのですが、オリジナル作品ですし、『超かぐや姫!』というタイトルということは古典『かぐや姫』とも違うわけで…。“どんな作品なんだろう?”と思いました」
──そこから『超かぐや姫!』の詳細が見えてきたと思いますが、概要や脚本を読んだ印象はどのようなものでしたか?
「この作品は映像や音楽で魅せる部分が多いので、脚本を読んでもどんなものになるのか想像がつきませんでした。完成した作品を見てようやく全貌が見えて、印象がガラッと変わりました。ですから皆さんも、ビジュアルや予告映像を見たときと、本編を見たときで、印象は全然違うものになると思います」
──では、完成した『超かぐや姫!』をご覧になったときの感想も教えてください。
「面白かったです。『かぐや姫』という多くの人が知っているストーリーを、現代の要素としての仮想空間とどう掛け合わせていくのか?というのが、この作品の見どころの一つだと思うのですが、見事に物語に落とし込まれていました。戦闘シーンや歌など、最初にビジュアルを見てイメージするような要素がジェットコースターのように駆け抜けていって、そこで終わるのかな?と思いきや、後半は人のつながりや想いにフォーカスをあてた物語が進んでいくのも面白いです。ハッとさせられる作品でした」
──後半の物語の広がりには驚かされますよね。
「はい。そこのギミックにはドキッとさせられました。見ていて爽快ですし、絵のギミックもうまく入れ込まれていると思いました。個人的には、(酒寄)彩葉の想いが描かれる部分が、劇伴や絵も含めてグッと来ました」
──『超かぐや姫!』で入野さんが演じるのは人気プロゲーマーグループ、ブラックオニキスのリーダー・帝アキラです。帝というキャラクターをどのように理解し、どのようなことを意識して演じられましたか?
「帝は仮想空間『ツクヨミ」の中でのカリスマです。ヒーローやアイドルのような存在であるということにフォーカスして演じました。特に最近の作品では、監督が見せたい絵や見せたい動きは全部アニメーションに詰め込まれているので、僕は“そこに対して過度に何かをするということをしない”をテーマに演じています。今回は、仮想空間の中では過度なほどにオーバーさが必要だと思ったので、そこは意識しましたが、それ以外はできるだけシンプルにすることを心がけました」
──ちなみに帝は、ご自身と似ているところはありますか?
「ないですね。帝は注目される人間で、自己表現が上手。僕はむしろそういうものが苦手なタイプなので…。だからこそ、仮想空間内では思い切りやろうと思いました。普段の生活の中でゲームをやっていても、日常生活で聞くと“何、言ってんの!?”と思うようなキザなセリフもゲームの世界だと違和感がなくて、むしろ気分が高まっていきますよね。帝のセリフにはそういうものがたくさん盛り込まれているので、振り切りました」
──最初に出演が決まったとき“どうして僕俺なんだろう?”と思ったとおっしゃっていましたが、実際に山下清悟監とはそれについて話されましたか?
「いえ、聞いていません。なので監督にインタビューして聞いてほしいです(笑)。でも本当に、“監督たちがどうしてこの作品を作りたかったのか?“とか、”どういう想いで進行した企画だったのか?“を、僕自身が知りたいんです。キャスティングを含めて、今、どうしてこの作品を作ろうと思ったのかって、僕だけではなくて、みんな気になると思います。”『超かぐや姫!』って何だ?“って」
──確かに思いますね。
「監督には直接“どうして僕なのか?”ということは聞いていないですが、一緒に作っていく中で、信頼していただいている感覚はあったので、要望に全力で応えられるようにというスタンスで挑みました」
──『超かぐや姫!』は様々な劇中歌が登場するところも大きな見どころです。入野さんはコーニッシュさんが手がける「Onyxxx」を内田雄馬さん(駒沢雷)、松岡禎丞さん(駒沢乃依)と歌唱していますが、この楽曲の印象を教えてください。
「カッコ良いですし、ブラックオニキスのテーマソングということで、彼らの匂いや温度感が伝わってくる曲だと思いました。しかも想像する余地があって…聴く人によってはカッコよく聴こえたり、切なくも聴こえる曲なんです。そう感じられるのが音楽の面白いところだと思いました。ただ、実際に歌うのは難しかったです。音階もですし、抑揚の付け方も難しくて。これまでレコーディングにこんなに時間がかかったことはないくらい大変でした」
──歌唱する上で大切にしたことはありますか?
「あくまでも帝というキャラクターであるということです。入野自由ではないということは意識しました。帝の持っている色気や、チャラさ…というか少し調子に乗っているような雰囲気は、他のキャラとの差別化も含めてポイントになると思って意識しました」
──ただでさえ難しい曲を、キャラクターとして歌うなんて大変ですよね。
「そうですね。キャラソンを歌わせていただくときはいつも思いますが、その塩梅が難しいと思います。自分の楽曲を歌うときとはまったく別物です」
──作中で「Onyxxx」以外に特に好きな楽曲やライブシーンがあれば教えてください。
「(月見)ヤチヨちゃんの登場1曲目です。アカペラで始まるところから鳥肌が立ちます。絵も綺麗でしたし、自分の気持ちも上がる感じがしました」

──彩葉とかぐやは、楽曲制作や歌を歌うことで仲を深めていきます。入野さんも音楽活動をされていますが、入野さんにとって、音楽はどのようなものですか?
「僕は役者としてキャラクターや作品などを通して表現するのがベースです。その中で、音楽は“自分”が前に出てくるので、自己表現の意味合いが強いと思います」
──リスナーとしてはいかがですか?
「日常的には音楽は聴いています。移動時間とか、車を運転しているときとか。“これを聴く”と決めずに流行っている曲を聴くこともあれば、自分の好きな曲を聴くこともありますし、“知らない新しい音楽を聴いてみよう”と思うこともあります。そのときどきで違いますね。自分の音楽活動のことを考えているときは、新しい曲を聴きますし、安心したいときは自分が昔から好きな曲を…気の向くままに音楽を聴いていています」

──リスナーとして特に心を奪われた音楽を教えてください。
「“音楽をやろう“と思ったきっかけで言うとミュージカル曲ですね。『レ・ミゼラブル』や『オリバー!』を子供の頃に観て、その頃からずっと歌っていました。今でも歌えます」
──少し変なことを伺いますが、子供の頃に観た『レ・ミゼラブル』の内容を理解できましたか?
「まったく理解できませんでした。でも曲がいいから自然と好きになって、子役も出てくるから“やりたい”と思ったんですよ。そうやって歌を練習しながら、何度も観ているうちに“こんな作品だったんだ”と気づきました。それってすごくいい経験だったと思います。例えば『ニジンスキー』という作品もすごく印象に残っていて…内容もあまり覚えていないですし、多分、子供が理解するには難しい作品だったと思うんです。でも、すごく覚えているワンシーンがあったりします。音楽に限らず、作品にはそういう力があると思います」
──今、リスナーとして印象深い音楽について伺いましたが、ご自身の楽曲の中で、音楽への向き合い方や考え方が変わった楽曲はありますか?
「具体的な楽曲を挙げるのは難しいですが、今話したように、僕はミュージカル曲を練習してきていて、ポップスは本当に聴くだけでした。自分がポップスを歌うなんて想像したことがなかったです。それが21〜22歳の頃に自分の歌を歌うようになって…そこが変わったタイミングだと思います。そこから、“音楽はどうやってできているのか?”、“どうやって作られているのか?”を知っていって、知れば知るほど面白くなってきました。あと、『glee/グリー』ですね。『glee/グリー』の吹き替えをやっていたので、そこで海外のいろいろな楽曲を聴くようになりました」
──では、入野さんが音楽を届ける立場になって、ご自身が歌う音楽はどのようなものだと考えていますか?
「音楽に流行り廃りはもちろんありますし、もちろんたくさんの人に聴いてもらいたいから流行りに乗っていくということも大切なことですけど…自分がやっていきたいのは、“何を歌いたいか”、“どんな音楽が好きなのか”、さらに言えば、“誰に届けたいのか”を考えて作っていくものだと思います」
──つまり、やればやるほど、ご自身と向き合う必要が出てくるものなんですね。
「そうですね。作品の中で演じていると、今自分が何を考えているのかって、意外とわからないものなんです。だけど、入野自由として届ける音楽は自分発信でやっているものなので、そういうものと向き合う…実際にどこまで向き合えているかはわからないですけど、そういうことは考えています」
──『超かぐや姫!』は彩葉とかぐやが出会うことで物語が進んでいきます。入野さんがお仕事をしてきた中で、特に大きかったと思う出会いは何ですか?
「その瞬間で大切な出会いをしてきたと思うので、何とも言えないですが、知らず知らずのうちに大きなものになっていたと思うのはゲーム『キングダム ハーツ』シリーズ(主人公の少年 ソラ役)や、映画『千と千尋の神隠し』(主人公の千尋を支える謎の少年 ハク役)は、僕の人生を変えた作品の一つだと思います。当時は“人生が変わった”と思っていなかったですが、年齢を重ねて振り返ってみると、たくさんの人に見てもらえた作品だったと思います。あとは『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門「心中天網島」より-』という舞台で出会った俳優の中嶋しゅうさんとの出会いは、自分の中ではかなり大きかったです」
──中嶋さんからはどういう影響を受けたのでしょう?
「作品に対する愛の向け方です。しゅうさんの姿を見て、僕の作品への向き合い方はかなり変わったと思います。最近で言うと浅野和之さんも。演劇をやっていると、うまくいかなかったり、怖くなったりして、“辞めたいな”とか“嫌だな”と思うこともあります。ですが、先輩たちから“舞台に立つときに怖いと思うし、嫌な思いもしてきた“という話を聞くと、“自分もこれでいいんだ”と思いますし、それを乗りこなして、乗り越えていかないといけないんだと思います。そういった一つ一つの出来事を経てそう思うようになりました」
──“怖いな”とか“嫌だな”と思うことがあっても、俳優・声優を続けていらっしゃる、その原動力は何なのでしょうか?
「何なんでしょうね。一つは好奇心です。あとは、そういう思いをしながらも向き合っていくと愛せるようになりますし、いろいろな人や作品に出会っていきたいからだと思います…自分はどこまでいけるのか?という期待も含めて。クリエイティブな面も含めて、“カッコいいな”とか“素敵だな”と思うものを作っている人がたくさんいて、そういう人と一緒に仕事をするには、自分がそこに行かないといけないので。そのために地道にやっていきたいと思っています」
──そういった入野さんのキャリアの中で、この『超かぐや姫!』はどういった存在になりそうでしょうか?
「ちょっと質問とはズレてしまうんですが…最近あまりできていなかったエンターテインメントを思い切りやれたので楽しかったです。だから多くの人に観てもらいたいです。自分のためというよりも、多くの人が関わっていますから。子役時代含めて、若い頃って自分のことで精一杯で、“自分がどう見られるか”、“自分がどうするか”ということばかり考えていました。だけど、今はそうではなくて、この作品のために宣伝や営業をしている人、絵を描く人などたくさんの人がいろいろな想いでこの作品を作っている…そういうことを知ってもらいたくて。だからたくさんの人に観てもらいたいです。『超かぐや姫!』は丁寧に観ることで気づくこともたくさんある作品だと思うので、自分も大切に作っていますし、観る人たちにもそういう想いで観てほしいですね」
(おわり)
後編:早見沙織 インタビューは23日公開予定!
取材・文/小林千絵
写真/中村功
INFORMATION

Netflix映画『超かぐや姫!』2026年1月22日(木)Netflix 世界独占配信
■キャスト
かぐや:夏吉ゆうこ
酒寄彩葉:永瀬アンナ
月見ヤチヨ:早見沙織
帝アキラ:入野自由
駒沢雷:内田雄馬
駒沢乃依:松岡禎丞
綾紬芦花:青山吉能
諌山真実:小原好美
FUSHI:釘宮理恵
忠犬オタ公:ファイルーズあい
乙事照琴:花江夏樹
■メインテーマ
「Ex-Otogibanashi」月見ヤチヨ(cv.早見沙織)
■劇中歌楽曲提供
ryo (supercell)/yuigot/Aqu3ra/HoneyWorks/40mP/kz(livetune)
■スタッフ
監督:山下清悟
ツクヨミキャラクターデザイン:へちま
現実キャラクターデザイン:永江彰浩
ライブ演出 :中山直哉
美術監督:宍戸太一
色彩設計:広瀬いづみ
ツクヨミコンセプトデザイン:東みずたまり/フジモトゴールド(ゴキンジョ)
現実コンセプトデザイン:刈谷仁美
CG監督:町田政彌(スティミュラスイメージ)
CG背景:草間徹也(キューンプラント)
編集:木南涼太
撮影監督:千葉大輔(Folium)
音楽:コーニッシュ
音響監督:三好慶一郎
企画・プロデュース:山本幸治製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
アニメーション制作:スタジオコロリド/スタジオクロマト






