ジャズ・メッセンジャーズのリーダーとして長期に渡って活躍した名ドラマー、アート・ブレイキーは、ビ・バップ時代からチャーリー・パーカー、セロニアス・モンクといった大物ミュージシャンたちと共演している。その彼の名前がジャズ史に大きく印されることとなった最初のチャンスは、ご存知「ハードバップの夜明け」と言われたバードランドでのセッションだろう。

1954年、アルバム『バードランドの夜第1集』(Blue Note)に記録された白熱のセッションは、まさに新時代の幕開けと言って良い。ブレイキーのドラミングに煽られたクリフォード・ブラウンの熱演とルー・ドナルドソン畢生の名演は、来るべきジャズ黄金時代到来を予告している。ライヴでの名物となった、ユーモア溢れるアート・ブレイキーのアナウンスも聴きどころだ。

そして、そば屋の出前持ちが口笛でメロディを吹いたと伝えられる、モダンジャズ最大のヒット曲《モーニン》が収録されたアルバム『モーニン』(Blue Note)で、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの名前は日本のジャズファンの脳裏に深く刻み込まれることとなった。

メンバーは新人トランペッター、リー・モーガンに、《モーニン》の作曲者であるファンキー・ピアノで鳴らしたボビー・ティモンズ、そして名アレンジャーでもあるテナーのベニー・ゴルソンだ。

ジャズ・メッセンジャーズは時代によってメンバーに変動があるが、一番有名なのは、リー・モーガンとウエイン・ショーターの組み合わせだろう。1961年の来日時は彼ら二人がフロントで、これをきっかけとしてファンキー・ジャズ・ブームが到来し、次々とジャズ喫茶が誕生することとなったのである。

アルバム『ビッグ・ビート』(Blue Note)は、この二人を含む来日前のメッセンジャーズを捉えたアルバムで、これもボビー・ティモンズの名曲である《ダット・デアー》が収録されている。

アート・ブレイキーのアルバムというとすべてジャズ・メッセンジャーズが演奏しているという思い込みがあるが、『ア・ジャズ・メッセージ』(Impulse)はそうした盲点を突いた知られざるブレイキーの傑作だ。ソニー・スティットのワンホーンにピアノがマッコイ・タイナーという意表を突く組み合わせながら、ブレイキーのリーダー・シップで実に快適な演奏となっている。店でかけると必ずファンがジャケットを見に来る「隠れ名盤」でもある。

再びジャズ・メッセンジャーズに戻ると、音楽監督の地位を占めたウエイン・ショーターの要望を入れ3管編成としたアルバムが、1964年録音の『フリー・フォー・オール』(Blue Note)だ。トランペットがフレディ・ハバードに変わり、トロンボーンにカーティス・フラーが参加している。聴きどころはなんと言ってもタイトル曲で、11分に及ぶ熱演にはただただ圧倒される。

最後に収録した『ライヴ・アット・ブッバ』(Who’s Who)は、80年代に登場した驚異の新人ウイントン・マルサリスのメッセンジャーズ・デビューで、《モーニン》の80年代バージョンが3管編成で収録されている。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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