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2021.07.28

ASKA「笑って歩こうよ」インタビュー――”人生のすべてはつながっている”

約2年ぶりとなるニューシングル「笑って歩こうよ」を7月14日にリリースしたASKA。どんな思いが込められて今、「笑って歩こうよ」をリリースしたのか、そして秋に控えるツアー『ASKA premium concert tour -higher ground- アンコール公演』への期待をASKAに聞いた。

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――約2年ぶりのニューシングル「笑って歩こうよ」がリリースされました。この2年の間に世の中にはいろんなことが起こりましたが、そのタイトルを始め、今の状況を踏まえつつ、「それでも、やっぱり笑って歩こうよ」というメッセージが伝わってくる楽曲でした。「笑って歩こうよ」は、やはり今の状況からASKAさんが感じ取るものがあって、生まれてきた曲なんでしょうか?

「実はですね、この曲は7、8年前にはできてたんですよ。もちろん、今回リリースするにあたって、手直しはしましたけどね。(「笑って歩こうよ」ができてから現在までの間に)アルバムを作ってリリースしたりもしてましたけど、そこに「笑って歩こうよ」は入ってこなかったんです。でも、「笑って歩こうよ」を発表するのが今で、本当に良かったなと思います。ここに来て出す意味が……だから、そういうことなんですよね」

――曲によって、発表するべきタイミングが自ずとやってくるものだという?

「そうです。だと思いますね」

――では、生まれた当時はどんな思いで書いた曲なんでしょうか?

「この曲を自分の中でジャンル分けするとしたら、ラブソングなんでしょうね。ラブソングって人間愛も含みますから幅広いですが、この曲は男女間のラブソングというカテゴリーのつもりでした。でも、それがここにくると、そうではなく感じますよね」

――僕も、そうではなく感じました。

「歌は世につれ、世は歌につれ。「笑って歩こうよ」は、それを表してくれているのかなと思いますね」



――このタイミングで、「笑って歩こうよ」をリリースしようと思ったのは?

「今リリースするなら、この曲しかないと思いましたね」

――今のこの状況でASKAさんが伝えたいメッセージは、「笑って歩こうよ」ということだった?

「世の中って、この2年間で知らないうちにかなりやられてる。みんな、いろんなところをやられてますよ。僕も、そうです。その結果、人がギスギスしてトゲトゲしくなった」

――その中で、でも「笑って歩こうよ」という。

「作ったときは、そんな感覚はなかったんですけど、出すべきときまでに曲っていうものは育っていくもので。きっとこの楽曲は、僕のストックの中から”はい!”って手を挙げたんだと思うんですよね。曲は、生きてますから。それで、今リリースしなきゃいけないという気持ちになったんだと思います」

――「笑って歩こうよ」という思いは、聴き手に大してだけではなく、ご自身に対してもありますか?

「こういうときだからこそっていうのはね、自分が生きる上でのモットーなんですよ。それは、今もこれまでも。今だからこそこれをやらなきゃいけないんだよ、今だからこうなんだよっていう気持ちを持つことで、自分のアイデンティティを維持してきました。そういう意味では、この曲を聴くことによって本当に聴き手が笑って歩こうという気持ちになってくれるかは、僕はわからないです。でも、自分の中では“今だからこそ、こうしなきゃ”というのは、人生のモットー。僕はこの曲を書いたとき、いや書いてしまったとき、どういうものが生まれたかという自覚はあまりしていなかったけど、今回この曲が”はい!”と手を挙げたときに、君の役目はここかっていうね。それが、今だったんですね」

――これまでの音楽活動の中でも、曲が手を挙げるというような経験は頻繁にあったんでしょうか?

「うーん、答えになっていないかもしれませんが、僕は本当に運に恵まれています。音楽の世界で、苦労したことがない。だって、ずっと剣道をやっていて、じゃあ音楽やろうかってギターを始めて、4年目でいきなりデビューして。で、デビューしたらどんどんお客さんが増えて、ここまで何の苦労もせずにここまできた。いろんな方が僕のこれまでを語ってくれますけど、それを一切度外視して、謙遜でも何でもなく、僕は心から運だけでここまでこれたと思っています。人との出会い、楽曲との出会い、身に起こるハプニング、全部運しかなった。そして、そのすべてが今につながっている。でも、それは僕だけじゃなくて、みなさんそうですよ。今、インタビューをしてくれている方も、今までいろんな出来事があって、今ここにいて、僕のインタビューをしている。それは、生まれてからこれまでのすべてがつながってですよね。うん、人生のすべてはつながっています」



――「笑って歩こうよ」のMVには、女優の尾野真千子さんが出演しています。

「尾野真千子さん、素晴らしいでしょ。監督には、歌っている僕とはまったく違う世界が存在して、別の時間軸が並行して流れているようなMVにしてほしいというリクエストだけしました。その結果、監督が尾野真千子さんを抜擢してくれて、本人も快諾して出演してくれたんです。僕は、女優さんを本当に知らなくて、名前を言われてもまずほぼわからない。でも、尾野真千子さんだけは知っていたんですよ。どうして知っていたかって、尾野真千子さんがヒロインを務めた、朝ドラの「カーネーション」が好きで見ていたからなんです。ドラマをほぼ見ない僕が、どうして「カーネーション」にそこまで惹かれたのか。もちろんストーリーも良かったんですけど、彼女の演技や表情が素晴らしくて、魅了されていたんでしょうね。だから、今回出演してくれるって聞いて、一番驚いたのは僕ですよ(笑)」

――それこそ、”すべてはつながっている”と感じさせてくれますよね。

「そういうことなんでしょうね」

――MVでの共演シーンはありませんが、尾野さんとお会いされたんですよね。

「とても忙しいときに快諾してくれて、しかも本来は休みだった日を返上して撮影に参加してくれたんです。僕のシーンの撮影は終了していて、僕は、一旦撮影地の茨城から東京に戻っていたんです。大事なミーティングがありましたから。しかし、彼女の撮影は雨の中でまだ続いていたので、また茨城に戻ってご挨拶しました。「本当にありがとう」という言葉が、自然に出てきました。感謝ですね。彼女が出演してくれたことで、「笑って歩こうよ」という曲の作品力が何倍にも上がりましたから。絵があった魅力が落ちる音楽もありますけど、これはもうね。本当に素晴らしい。監督の狙いは、カット割りを少なくすることだったそうですけど、確かにカット割りが多かったらあの表情は出なかったんでしょうね。尾野さんには、またあらためてお礼しないといけないです」

――オフィシャルコメントには、”1970年代のメロディーのイメージと共に~”という言葉がありました。この”1970年代のメロディーのイメージ”は、ASKAさんの中で具体的にはどのあたりの音楽を指しているのでしょうか?

「僕は、1970年代の半ばに音楽を聴き始めた歌謡曲少年なんですけど、それと並行して中学生がラジオから流れてくる洋楽を聴くという世代でもありました。僕は剣道ばっかりやっていましたけど、たまに聴こえてくる洋楽のメロディーの美しさがもうね。ビョルン&ベニーの「木枯らしの少女」とか、やっぱりサイモン&ガーファンクルとカーペンターズは、とにかくメロディーが素晴らしかった。どうしてあんなに素晴らしかったのか、今になって分かりますね。」

――どうして素晴らしかったんでしょうか?

「コンピューター導入までの音楽界で、人間ができる最高の術を使って音楽を作っていたからです。メロディーって、メロディーを作っている間にその場でどれだけ作り込めるかなんですね。今は、オケができあがってから何回も作り直せるでしょ、メロディーを。それじゃ、70年代の音楽にあった美しいメロディーは生まれない。やっぱり、メロディーってコードの流れの中で生まれるからぐっとくる。それが一番詰まっていたのが、70年代のポップスなんです。70年代の音楽は、本当に素晴らしかった。僕、今でも70年代の曲をインターネットラジオで流してますよ。そう、約30年前は一般家庭で、有線放送と契約していた人間なんで(笑)」

ASKA

「笑って歩こうよ」



――カップリング曲の「プラネタリウム」についても、その完成までの経緯を聞かせてください。

「これも、「笑って歩こうよ」と同じでずいぶん前に作った曲なんです。でも、できた当時に歌ってみたら、何か気恥ずかしい感じがあった。それはたぶん、僕が50代だったから。50代でこの歌詞を歌っても、フィーリングが違うんですよ。だから、今この曲を歌ったところで響かないだろうと。なぜなら、歌っている本人がどこか気恥ずかしい気持ちを持ってるから。だけど、60代になると不思議でね。還暦とはよく言ったもので、(暦が循環して)またゼロに戻るじゃないですか。そうすると、ラブソングを今の感覚で、ギトギトせずに純粋に歌えるんですね。50代のときは、それができなかった。不思議ですねぇ、これねぇ」

――それは、理屈じゃない感覚なんですか?

「人は年齢じゃないって言いますけど、50代で純粋な恋愛をしても、それを周りに知ってもらうことの気恥ずかしさと、周りが知ったときの不自然さはあるのかもしれないですね。でも、60代になるとそれがなくなる。これが不思議ですね(笑)」

――それにしても、キャリアを重ねてもASKAさんの歌声やメロディーに瑞々しさが失われていない印象を受けるのは、どうしてなんでしょうか?

「ある程度のキャリアを重ねたミュージシャンは、新曲を書かなくなるでしょ。それは、ともに歩んできたリスナーから新曲を求められなくなるからだと気がつきました。でも、僕は楽曲をしく生み続けていくのが、自分のミュージシャンとしてのアイデンティティだと思っているんです。なので、新旧を織り交ぜたこれからのライブはもっと楽しくなるでしょうね」



――10月からは、新型コロナウイルスの影響で残り2本を残して中止になった『premium concert tour-higher ground-』のアンコール公演が開催されます。

「僕の音楽人生の中でもすごく刺激になったツアーだったんですけど、残念ながら中止にしなきゃいけなくなった。で、今年に入ってすぐかな。その時にストリングスチームで参加してくれたコンミス(リーダー)に直接連絡して、秋からまたやりたいと思っていると伝えました。そしたら、すごく喜んでくれて、その電話で話が決まりました。もう、ミュージシャン同士は結託してたんです(笑)ようやく実現します。アンコール公演と銘打っていますけど、前回のライブの核になる部分は残しつつ、まったく別のものになるでしょうね。長年、僕のことを知ってくれている方は、ASKAが同じことをやるわけがないと感づいているでしょうけど(笑)」

――この先の音楽活動については、どんなことを考えていますか?

「楽曲を作る。ライブをやる。それだけですね。そこで、僕らの世代にしかできないことをやっていきたいです」

――今回のシングルは「笑って歩こうよ」というタイトルですが、最近のASKAさんはどんなことで笑っていますか?

「いやいや、大して笑ってないですよ(笑)。家に来たお客さんが、笑わせてくれたりしますけどね。自分は、音楽が作れる状況があるだけで幸せですよ。この状況を維持しながら、笑って生きていきたいですよね」

(おわり)

取材・文/大久保和則









ASKA「笑って歩こうよ」
2021年7月14日(水)発売
DDLB-0018/1,430円(税込)
DADA label








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