百貨店での展開がベースであるJ.プレスが、レーベル、J.プレス オリジナルスを立ち上げた経緯について「ブランドを次世代につないでいくにあたり、若い世代の取り込みに課題を抱えていました。ブランドのルーツ"着る人にとって快適な服であること"を大事にしながら、もっと自由に軽快にブランドを表現し、世代を超えてお客様が求めるものを時代に即して具現化していくために、J.プレス オリジナルスが立ち上がりました」
と話すのは、J.プレス & サンズのショップディレクションとバイイングを担当している黒野智也さん。

当初は、国内外のセレクトショップを中心に卸展開していたが、「J.プレス & サンズというショップを作る事で、みなさんに見ていただける機会が作れますし、J.プレス オリジナルスというレーベルも含めて、若い世代の方に"もっとアメリカントラディショナルのカルチャーを知ってもらいたい"というのが理由です。次世代に繋げる事を使命に持ったレーベル、ショップなんです」と店舗立ち上げのきっかけを語る。

J.プレス オリジナルスのほか、ショップ別注アイテム、小物や雑貨などのセレクト、ビンテージ、リビルド商品などを展開しているJ.プレス & サンズ。
J.プレス オリジナルスにおいては、「アメリカントラッドなバルマカーンコートやブレザーなどのベースになる形に、モダンさとトレンドを組み込んだアイテムを提案しています。あとは僕らがヘリテージストックプログラムと呼んでいる、ブレザーやシャツ、スラックスなどのアメリカントラディショナルな定番アイテム。その2軸で展開しています」

J.プレスのアイテムとは「フィット感が違う」と黒野さん。
「例えば、ブレザーであれば百貨店展開の物は少しタイトなフィット感なのですが、J.プレス オリジナルスでは比較的オーセンティックなゆったりしたオーバーシルエットにしていたり。あとは国外での展開もありますので、世界へ発信できるサイズフィットで作るようにしています」
クラシカルなアメリカントラディショナルに振りたい訳ではなく、古いイメージを払拭する為に「提案したい」と語る。

また、ブランド立ち上げから「DIGAWEL(ディガウェル)」や「BLUE BLUE(ブルーブルー)」、「KENNETH FIELD(ケネスフィールド)」などさまざまなブランドとのコラボレーションも行なっている。
「自分たちの領域ではないブランドとコラボする事で、今まで僕らを知らなかったお客様が目にするという新しいシナジーが生まれますし、さらに"そこからJ.プレスを知った"というお話も多く耳にしています。ショップに来店する年齢層も20〜30代の方が多く、"トラディショナルなブランドのお店には行きづらいけれどJ.プレス & サンズなら"という方が多いようです」と反応を感じているそう。
「そういう流れもあって、あらためて20〜30代の洋服好きな方が多いと感じました」と続ける。
さらにJ.プレス & サンズでは、ショップ別注などの新しい動きも見せている。

オープンして2年。
現状、J.プレス全体から見ると次世代への認知の拡大としてはまだチャレンジ段階との事。
「今後、より幅広い世代のファンを作らなければ"ブランドが続いていかない"という危惧がありますよね。でも、まだ理想には追いついていない状態です。今までJ.プレスがやれなかった部分をやる事で、幅を出していくのが役割だと考えています」とブランドとしての方向性について触れる。

現在、J.プレス & サンズでは、頻繁にインスタライブなどのSNSでの発信も行なっている。
「10月は週2くらいで発信していました。オンラインの売上は地方の方が多く、全国にお客様はいるので、そこに向けてインスタライブでの配信を強化している段階です」と黒野さん。

さらに、オンラインサイトでは、文章、写真などを全て自分たちで試行錯誤しながらやっているという。
「今は店兼オンラインというのが新しい形だと考えています。SNSなどで商品の製造過程のビジュアルとともに思いやストーリーなどを発信する事で完売商品も増えてきていますし。だから、インスタライブなどでの地道な発信は大事ですよね」

また、個人アカウントのDMへの商品の問い合わせも増加しているそうだ。
「SNSなどでサイズやスペック、在庫までを把握してから来店されるお客様もいる、面白い時代ですよね。発信力があるスタッフもいますし、チームとしてやれている現状は良い流れだと感じています」

今後は「ブレザーのパターンメイドのサービスを始めたい」と希望を述べた。
「ビンテージの生地を使用したり、一点物を作るサービスを始めたいと考えています。あとはレディス商品の問い合わせが増えている事もあり、現状はサイズがない状態ですので、そこの展開も視野に入れています。ただ、レディスのパターンではなく、メンズのトラッドを女性が着るというスタイルですね」
今の時代感をしっかり掴んで提案していきたいそう。

今後の課題として「個人的にも消費者目線を大事にしていきたい」と黒野さん。
「J.プレスというフィルターを通して伝えるという仕事をしていますが、自分が洋服を買う時の気持ちを考えながら、意味のあるものを提案したいですし、世の中にありそうで無い物を提案していきたいです」と展望を語った。

さまざまな時代を取り入れながら進化していくブランド、J.プレス オリジナルス。
Jプレス & サンズは、世の中に無い物が見つかるショップなのかもしれない。

写真/野﨑慧嗣
取材/久保雅裕
取材・文/カネコヒデシ

黒野智也オンワード樫山・第一カンパニー J.PRESSメンズdiv.商品sec.J.PRESS&SON'S企画・バイヤー

⼀度オンワード樫⼭を離れるも、⼀昨年J.PRESS & SON'S⽴上げの為に再び戻る。J.PRESSLADIESのMDを経て現職に。海外ではアメリカでの買付けをメインとし国内外から仕⼊れを⾏う。現在はJ.PRESS & SON'Sの店舗にも⽴ち、直接お客様と接する事で企画、バイイングに活かしている。趣味でもあるカメラを活かし、インスタグラムの投稿や商品撮影、着用撮影などの運営も自ら⾏い、ショップでは、週1回のペースでインスタライブも開催している。

Jプレス & サンズ青山

住所:東京都港区北青山3-10-2 オフィス青山 1F
TEL:03-6805-0315
営業時間:12:00-20:00(平日)/11:00-19:00(土日祝)
定休日:月曜(祝日の場合は営業)

久保雅裕encoremodeコントリビューティングエディター

ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。

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カネコヒデシ

メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。

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