「女性本来の魅力を演出するニュールック」を打ち出すデパリエ。
そのブランド名は、フランス語で「完璧ではない」との意味。いろいろな物事が組み合わさることで、ひとつのものが出来上がるという思いを込めたブランド名だそう。
ブランドコンセプトの根底には1960年代プレタポルテの原点となったリヴ・ゴーシュ(左岸)パリ6区がある。
「アートやシネマ、ファッション界が新しい個性を貪欲に求めていた時代で、ひとつのものが突出しているというよりは、いろんな要素が組み合わさってひとつのカルチャーが出来上がっていた時代。今の世の中がまさにそういう流れになっていると思うんですよね。そういう「今」の流れから60年代のパリ6区というひとつのカルチャーをクリエイティブの原点に置いたんです」と大槻さん。
もともとビギでプルミエアロンディスモンを手がけている大槻さんに白羽の矢が立ち、スタートしたデパリエ。
感度の高い客層を狙いプルミエアロンディスモンよりモード要素が強く、より感度の高いラインを目指したコレクションが並ぶ。
現状では上質なものやよりクオリティーの高いものを求める女性がショップへ足を運んでいる。
「ブランドとしてのオリジナリティーをしっかりと出していきたい」と大槻さん。
素材はほぼ一から国内生産もしくはインポート素材を使っており、さらにパターンやシルエットなどは大槻さんがフランス時代に修得したテクニックを使用している。
「デパリエとしてはセットアップに力を入れてます。60年代パリの女性のファッションは、メンズからの派生で女性がスーツのセットアップ等を取り入れ始めていた時代で、メンズのテクニックをレディスに落とし込んでいるんですよね。デパリエでもジャケットやパンツは、パターンなどの目に見えない部分でメンズのテクニックを使ってものづくりをしています」。
この秋冬のアイテムに関しては、「通常よりも細い糸を使用したウール100%の素材を使って、メンズライクなセットアップやスカートを作りました。ウールの素材なのでしっとりと柔らかく、デパリエらしい素材が出来上がったと思っています」。
さらに、「カシミア100%で手編みのニットを作りました。無撚糸なので、柔らかくふくらみがあり、しっとりとした手触りは他にはないクオリティーです。また、国内だからこそ実現可能な、ほぼ手作業による毛皮のようなファー加工を施したカシミヤニットも作ったんです」と、こだわりのアイテムも。
来春夏に向けては、「コロナ下という事もあり、マーケットを考慮するとカジュアルラインは必須と思っています。22年春夏に向けては、その辺りをもう少しやっていこうかなと考えています」。
ニュウマン新宿のショップ構成は、アパレルがほぼ100%オリジナルで、バッグ、靴、アクセサリーなどの雑貨はオリジナルのテイストに合うアイテムをセレクトで入れている。
将来的には、路面のフラッグシップショップの出店をはじめ、国内卸やパリからの海外卸での展開も見据えているという。
「いまだからこそこういうブランドを立ち上げて、パリの60年代当時のファッションやクリエイティブの良さを伝えていきたいと考えています」と締めくくった。
昨今のコロナ禍で外出が減り、ライフスタイルの変化によるカジュアルファッションが世の中に溢れている現状のシーン。
ファッションの原点回帰ともいえる、60年代パリ6区の気分を落とし込んだデパリエが今、新鮮なムードを漂わせている。
写真/野﨑慧嗣
取材/久保雅裕(くぼ まさひろ)
取材・文/カネコヒデシ
大槻聡士1er Arrondissement / Director、DÉPAREILLÉ / Director
文化服装学院卒業後、フランス パリへ渡る。
Jean-Paul GAULTIER、GRES PARIS、GUSTAVO LINS、TSUTSU、A.P.C.、MARIA LUISA、YVES SALOMON PARIS、BALMAIN、ISABEL MARANT、GIVENCHY、BALENCIAGA、Martin Margela等、数々のメゾンで10年程経験を積む。
2001年 LE CLUB DES CREATEURS DE BEAUTE 国際デザインコンテストに選出、新人賞受賞。
2002年 フランスディナール国際デザインコンテストに選出、市民賞受賞。
2012年 日本帰国後、(株)ベイクルーズ入社。
2016年 1er Arrondissement立ち上げる。
久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。
カネコヒデシ
メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。そのほか、紙&ネットをふくめるさまざまな媒体での編集やライター、音楽を中心とするイベント企画、アパレルブランドのコンサルタント&アドバイザー、モノづくり、ラジオ番組製作&司会、イベントなどの司会、選曲、クラブやバー、カフェなどでのDJなどなど、活動は多岐にわたる。さまざまなメディアを使用した楽しいモノゴトを提案中。バーチャルとリアル、あらゆるメディアを縦横無尽に掛けめぐる仕掛人。