ミュージシャンやパフォーマーの枠を超え、世界的な文化現象を巻き起こす稀有なスターであったフレディ・マーキュリー。4月のオークション開催発表以来、マーキュリーの死後約30年間、西ロンドンのケンジントンにある最愛の家、ガーデン・ロッジでほぼ当時のまま残されていた不朽の名曲の歌詞の未公開原稿の数々、マーキュリーの特徴的なスタイルであった華々しい衣装、日本への旅行で探し求めた極上の布地や美術品、日常生活に欠かせなかったよりパーソナルな小物アイテムなど、出品アイテムの全容の公開が世界中で待たれており、ロサンゼルス、ニューヨーク、香港で開催されたハイライト展示会は、貴重なアイテムを一目見ようとするファンやコレクター、メディアの来場で賑わいを見せた。

公開アイテムの最大の目玉は、YAMAHA G2ベビーグランドピアノだ。1975年までにフレディがクイーンの最初の3枚のアルバムのヒット曲を作曲した古いアップライト・ピアノは、彼のますます広がる音楽的野心にそぐわなくなってきていた。マーキュリーは、進化する彼の音楽的野心に共鳴するサウンドを持ち、鍵盤のアクションが簡単で、エレガントな外観を持ち、特にクリーンでクリアなサウンドを持つ、希少なベビーグランドピアノと出会う。彼はピアノを単なる楽器ではなく、自分自身の延長であり、創造性の手段だと考えており、ピアノの前でタバコを吸ったり、ピアノの上にグラスを置いたりすることは決してせずいつもピカピカだった。このピアノが彼の元に届いて数ヶ月後に「Bohemian Rhapsody」を発表した

フレディ・マーキュリーが数々の名曲を作曲したYAMAHA G2グランドピアノ 予想落札価格: 2000000ポンド〜3000000ポンド Courtesy of Sotheby’s

フレディ・マーキュリーがクイーンの不朽の名曲のために書いた手書きの草稿も出品される。ほとんどが1970年代半ばに作られたこれらの草稿はクイーンの曲の誕生のきっかけを明らかにするものであり、様々な試行錯誤が垣間見られる。「Don’t Stop Me Now」「Somebody to Love」「We Are the Champion」そして極めつけは不朽の名作「Bohemian Rhapsody」。黒と青のボールペンと鉛筆で書かれた「Bohemian Rhapsody」の初期草稿は、今はなき「ブリティッシュ・ミッドランド航空」の便箋15ページにわたって書かれている。あるページでは、マーキュリーは当初この曲を「Mongolian Rhapsody」と呼ぶつもりだったが、その箇所を消して「Bohemian」に置き換えたことがわかる。別のページでは、有名な2番の歌詞 「Mama, just killed a man 」の代替案が紹介され、3ページ目は、この曲のオペラ的な部分に焦点を当てたもので、単語やフレーズの羅列で完全に覆われている。「Galileo」「Fandango」「Scaramouche」や「Thunderbolts」の他、使用されなかった「Matador」「Belladona」といった単語も記載されている。

フレディ・マーキュリー直筆 Bohemian Rhapsody歌詞草稿 予想落札価格: 800000〜1200000ポンド © Queen Music Ltd - Sony Music Publishing UK Ltd

これはフレディ・マーキュリーにとって最も初期の歌詞ノートと考えられており、クイーンがバンドとして契約する前の時期に遡り、当時彼が大切にしていたものの一つ。このノートには、彼自身の作業用歌詞(Stone Cold Crazy、Liar、Keep Yourself 、Alive)だけでなく、クイーンが当時演奏していた他のアーティストの曲も書かれており、初期のライブのセットリストには、エルヴィス・プレスリーの「Jailhouse Rock」やザ・ローリング・ストーンズの「Stupid Girl」などの記載、落書きやクイーンのロゴのデザイン、未発表曲の断片も含まれている。

活動初期に歌詞草稿等に用いた赤いノートブック 予想落札価格: 120000ポンド〜180000ポンド Courtesy of Sotheby’s

マーキュリーは有名なラストツアー(The Magic Tour)でクイーンがパリに登場するちょうど1週間前、ナポレオン風の豪華なマントと王冠を作ることを思いついた。その後、1986年のネブワースでのバンド最後のライブに至るまで、ツアーのすべてのコンサートの最後を締めくくる「God Save The Queen」のフィナーレでこのマントは着用された。

フレディ・マーキュリーの冠とマント 予想落札価格:60000ポンド〜80000ポンド Courtesy of Sotheby’s

マーキュリーは日本を訪れるたびに、着物や帯、日本の高級磁器、福川窯の陶器、木版画、漆塗りのアンティーク家具を蒐集していた。明治時代から20世紀初頭のリバイバル作品に至るまで、英国最大級の日本のアンティーク木版画コレクションを所有していた時期もあった。日本の木版画の名作、歌川広重 「新大橋と安宅のにわか雨」は、印象派の画家たちに多大な影響を与えた作家の作品で、この作品は膨大なマーキュリーのコレクションのひとつ。

ガーデン・ロッジに飾られている歌川広重 「新大橋と安宅のにわか雨」(1857年)
予想落札価格:30000ポンド〜50000ポンド
Courtesy of Sotheby’s

Bohemian Rhapsodyミュージックビデオで着用のサテンのスーツ, 1975年
予想落札価格:50000ポンド〜70000ポンド
Courtesy of Sotheby’s

オークション開催に伴い、フレディ・マーキュリーと彼を取り巻く品々を紹介する記念のコレクションブック(発売期間限定版)を発売している。マーキュリーがガーデン・ロッジに所蔵していた個人的なコレクションの中から、美術品や個人的な思い出の品、ステージ衣装や手書きの歌詞、個人的なアーカイブから多数の写真に至るまで、選りすぐりのハイライトを紹介する本書には、サザビーズの専門家による寄稿や、サー・ティム・ライス、デイム・ザンドラ・ローズ、ピーター・フリーストーン、衣装デザイナーのダイアナ・モーズリーなど、友人やコラボレーターのインタビューが掲載されている。「Bohemian Rhapsody」の作曲から、彼がサザビーズに何度も通ったことまで、魅力的なエピソードに溢れるコレクションブックは、8月4日から9月13日まで、サザビーズ・ロンドン ギャラリーにて限定販売、またHatchardsのオンラインストアでも購入が可能。

『A World of His Own』オークション日程
フルコレクション展覧会
会期:2023年8月4日〜9月5日 場所:Sotheby’s London (34-35 New Bond Street)

ライブオークション
The Evening Sale 9月6日 17時 (以下全てロンドン時間)
On Stage 9月7日10時
At Home セッション1、9月8日10時
At Home セッション2、9月8日14時
オンラインオークション
In Love with Japan 8月4日〜 9月11日10時まで
Crazy Little Things パート1、8月4日〜9月12日10時まで
Crazy Little Things パート2、8月4日〜9月13日10時まで

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