ブランド初のウェアコレクション、日本企画で始動
「レスポートサック」は創業者夫妻がセーリングに通うマリンスポーツのシンプルで自由な精神に美学を見出したことに始まる。ヨットの帆に使われていた頑丈でありながら軽いリップストップナイロンに着目、その軽さと耐久性、さらに機能を追求し、シンプルなデザインと鮮やかなカラーのバッグを開発した。フランス語でバッグを意味する「le sac」と「sport」を組み合わせた「LeSportsac」として1974年にブランドを立ち上げ、ニューヨーク・グリニッジビレッジに店舗を構えると、それまでに無かったスマートなバッグは旅行など長距離の移動が多いニューヨーカーたちの評判を呼んだ。その後、多様なカラーや遊び心溢れるオリジナルプリントも展開し、アーティストやブランドなどとのコラボレーションにも先駆けて取り組むなどしてラインナップを充実させ、使う人の気分や好み、用途、スタイルに合わせて選べる楽しさを追求。販路もヨーロッパ、アジアなどへと広げ、グローバルブランドへと成長を遂げた。
日本には80年代後半に進出し、たちまちブームを巻き起こした。91年には初の直営店を出店、2001年に日本初の旗艦店「表参道フラッグシップストア」が誕生。ニューヨークに続き、世界で2店目のフラッグシップストアに。2006年には神宮前交差点近くの明治通り沿いに移転し、旗艦店として支持を集めてきた。この間、輸入販売を担ってきたのがレスポートサックジャパンだ。その株式を24年9月、マッシュホールディングスと伊藤忠商事が共同取得。レスポートサックジャパンは株式の過半を持つマッシュグループの連結子会社となった。新たな施策として打ち出したのが、ライセンスによるウェアコレクションの展開だ。レスポートサックジャパンがアパレルに取り組むのは初めて。バッグで体現してきたブランドのアイデンティティーを継承し、日本で企画したものを本国のチームと共に作り上げていく。マッシュグループの企画・生産背景や販路、顧客基盤を生かし、さらなるブランドの認知度アップと収益基盤の強化を進める。
New Flagship,New LeSportsac」として表参道店から世界へ
「バッグ×アパレル」によるライフスタイル提案の起点として選んだのは、世界中から人が集まる立地にあり、日本で最も歴史を刻んできた表参道フラッグシップストア。「ライフスタイルブランドとして新たなステージに立ったことを日本市場および海外に向けて発信する」(中井康滋レスポートサックジャパン常務取締役)ため、店舗の外装も内装も刷新した。店作りのコンセプトは、ずばり「New Flagship,New LeSportsac」だ。生まれ変わった店舗は、白とブランドカラーの爽やかなブルーが基調。22年に新設したソーホーの「レスポートサック グローバル旗艦店&グローバルデザインスタジオ」の空間デザインをベースに、ブランドのDNAである「軽さ」「機能性」「遊び心」に「ウェルネス」「アクティブ」「ヘルシー」といった要素を重ね、明るく洗練された空間として体現し、ウェアコレクションのデビューとなる25年10月1日にリニューアルオープンさせた。
売り場は2フロアで構成し、合わせて167㎡。以前はストックに使っていたスペースを無くして売り場面積を拡大し、カラフルな網目状の什器を随所に配置してより開放感を増した。1階はバッグの新作を中心に、ピックアップしたウェアも陳列してブランドの「今」を見せ、2階はウェアとバッグスタイリングを紹介しながら、平置き・ラック掛けでバリエーションを提案する。
1階エントランスの左側。白を基調に開放感を演出し、カラフルな商品を見やすく
1階エントランスの右側
階段の壁面には本国ビジュアルのアーカイブを展示
2階ではウェアコレクションをフルラインナップで提案
バッグとウェアのコーディネートで選べる
2階のウインドーは以前よりも大きくとり、より開放的に
バッグは日本限定や店舗限定の商品、コラボ商品なども揃う。25-26年秋冬コレクションでは、リボンディテールが愛らしいリップストップナイロン製の「BOW COLLECTION(ボウコレクション)」、バレンタインなどギフトに喜ばれるハートモチーフをプリントや刺繍、型押し加工で表現したコレクションなどを提案。店舗限定ではリニューアルオープン記念としてブランド初のカタカナロゴをデザインした「Katakana Collection(カタカナコレクション)」も揃えた。カタカナコレクションはレトロポップな書体とカラーが新鮮で、スポーティーな印象。リバーシブルトート、ポーチ、バッグチャームの3型各3色を展開する。また、2026年にデビュー10周年を迎えるニューヨークのクリエイティブデザインと日本の卓越した技術を使用した生地を掛け合わせた、超軽量の「Essential Collection(エッセンシャルコレクション)」や、多彩なサイズとバリエーションのポーチを集積したコーナーも思わず足を留めてしまう。
コラボや別注はこれまでも数多く取り組んできたが、取材時には「ADAM ET ROPÉ(アダム エ ロペ)」「JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)」「FREAK'S STORE(フリークス ストア)」といったセレクトショップとの別注や、キャラクターの「PEANUTS(ピーナッツ)」、イラストレーターのSHOGO SEKINEなどとのコラボアイテムを随所に陳列していた。SHOGO SEKINEは、ニューヨークをテーマに自身のアイコンである「りんご」の柄やオリジナルのタイポグラフィーをポップなカラーで表現し、遊び心溢れるアートでキャッチーなアイテムが目を引く。
セレクトショップとの別注アイテム。写真上「アダム エ ロペ」、中「ジャーナルスタンダード」、下「フリークス ストア」
ピーナッツ」とのコラボコレクション
「ニューヨーク」をテーマに製作したSHOGO SEKINEとのコレクション
ウェアは、ファーストシーズンの25-26年秋冬コレクションでは約40型を投入。着る人の気持ちが軽く明るくなるよう意図した「LIGHTEN YOUR WORLD」をテーマに、リップストップナイロンをはじめとするブランドのアイコニックな素材を使い、軽やかで機能的、カラフルでスポーティーなテイストのアイテムが並ぶ。キャップやソックスなどファッション小物も展開し、ライフスタイルをフォローアップする。
レスポートサックらしさを感じさせるのは、ナイロンアウター。撥水性に加え透湿性なども備え、何より軽い。GRS認証を取得したリサイクルナイロンを使用し、サステイナビリティーを前提とするブランドの姿勢を窺わせる。ロングブルゾンはフードと肩に止水テープを配し、ウエストと裾の内側に取り付けたドローコードでシルエット調整もできる。多様なコーディネート、シーンに対応し、手洗い可能なのも魅力。他にもニットのカーディガンやプルオーバー、ケーブルニットのフーディー、スエットなどがある。
バッグもウェアも、2月中旬には26年春夏コレクションを投入し、夏へ向けて入れ替えを進めていく。リップストップ生地を用いたアノラックジャケットは、持ち運びにも便利なパッカブルタイプ。裾とフードはドローコードで調節可能なので、シルエットも自由自在にアレンジ。同素材のウィンドパンツとセットアップで着こなしたり、軽めのアウターとしてはもちろん、ジャケットやコートのミドルインナーとしてもおすすめだ。タフタブルゾンは、羽織るだけで様になる立体的なコクーンフォルムのナイロンアウター。素材には薄手で軽く、適度なハリ感のあるメモリータフタ生地を使用した。カジュアルになり過ぎないクリーンでモードな着こなしが叶う。ワイドスタンド襟にはフードを収納できるので、スタイリングのバリエーションが楽しめるのも魅力。
「シェア利用」のファミリー層らに加え、若い世代の新客を増やす
リニューアルオープン後は、従来からの顧客層である30~50代だけではなく、10~20代の客層を新たに増やしている。また、カップル層とファミリー層のニーズも変わらず高い。「バッグはユニセックスなデザインなので、親子や家族でのシェア利用が多いんですね」と中井常務。「特にボストンバッグは家族旅行やキャンプなどはもちろん、お子さんであれば修学旅行やクラブ活動、お父さんは出張、お母さんはジムなど。汎用性が高いので、様々なシーンにシェア利用されています」。
バッグではインラインの新作が最も稼働率が高く、ウェアではシグネチャーであるナイロンを使ったジャケットやセットアップが「最も手に取られ、購入されている」。キャップやソックスも好評で、特に10代、20代の新規客に響いている。昨年からブランドミューズを務める世界的に人気のガールズグループ「BABYMONSTER(ベイビーモンスター)」のプロモーション効果も大きく、「学生の娘さんのためにお母様がベイビーモンスター着用品を購入してあげるシーンも見られたります。幅広い世代にご支持いただけるMDを意識していますが、10代、20代を中心とした若い世代に認知度の高いブランドミューズを起用したことで、レスポートサックとの出会いが促された」。立地柄、外国人客の来店も多く、買い上げベースで20~30%を占める。中国、アメリカ、韓国、台湾など様々だ。オープンして5カ月間で「最も重視した入店客数が非常に増え、売り上げは、予定通り計画値通りで推移中」。
表参道フラッグシップストアでは今後、東京とニューヨークの共同企画による「LeSportsac Atelier(レスポートサック アトリエ)」など主力のカプセルコレクションをフィーチャーするショップ・イン・ショップや、ワークショップなどの体験型イベントも企画していく。
また、リニューアルオープン時に自分が好きなアイテムに取り付けてカスタマイズできるピンバッジやカラビナチャームをカスタイマイズノベルティーとして進呈したところ好評だったことから、今後は定期的な実施も視野に入れている。表参道フラッグシップストアのみのサービスでは、購入したバッグやポーチへのイニシャルなどの刺繍入れに対応している。字体と糸色、ハートや星などの記号を選んでもらい、刺繍するサービスが好評だ。
「お買い求めいただいたアイテムによりそのお客様らしい価値を添える。ノベルティーやサービスに限らず、わざわざ来てくださるお客様に対してどんなバリューを提供できるのかは、実店舗にとって常に大きな課題と捉えている」と、パーソナルな顧客満足を重視する。新たな「バッグ×アパレル」の複合店も予定するが、「表参道店の品揃えをそのままスライドするのではなく、地域や立地、商業施設などの特性を踏まえ、適切なMDを組んでいきたい」としている。
写真/野﨑慧嗣、レスポートサックジャパン提供
取材・文/久保雅裕

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremodeコントリビューティングエディター。ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。元杉野服飾大学特任教授。東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。
