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――今回のアルバムでは、クールスR.C.やダックテイルズといった、CKB以前にやっていたグループの楽曲も再演されていますね。
「クールスR.C.に入ったきっかけは、最初は音楽とは関係なくて。僕が古着の行商みたいなのをやっていた時期に、たまたま売りに入ったのがクールスのリーダーの店だったんです。そこからメンバーのパシリになり、スタッフになり、マネージャーになり、ファンクラブ担当になり、ボーカル担当になりと、出世していったわけです。それで、生まれてはじめて採用された自作曲が、17歳のときに書いた〈シンデレラ・リバティ〉。最初は作曲として関われればいいなと思っていて、自分が歌うなんて想像もしていなかったんですけど、レコード会社の選曲会議を経て、僕のボーカル・デビュー曲になりました。クールスのレコーディングは、ギターのジェームス藤木さんを中心としたヘッド・アレンジだったんですが、今回のCKBバージョンも、ほぼ原曲に準拠したアレンジで仕上げました」
――クールスといえばキャロルの弟分バンド的なイメージがありますけど、キャロルは聴いていたんですか?
「72年に神田の共立講堂で慶應のサークル主催のイベントがありまして、僕はチューリップが観たくて足を運んだんですけど、そこに飛び入りでキャロルが出たんです。音はデカいのに綺麗なアンサンブルで、アレンジもすごくお洒落で、最初は洋楽かと思いましたね。彼らはまだデビュー前で、曲名は分からなかったんだけど、それからしばらく経って〈ルイジアンナ〉のシングルを聴いて、あのとき演った曲だと分かりました。僕的には、キャロルのスタイリッシュな部分に一番惹かれたんですよ」
――クールスR.C.脱退後にはダックテイルズに参加されますね。
「ダックテイルズは、もともとシャネルズと競っていたバンドで、僕の同級生が在籍していた関係もあって、よく彼らの応援に行ってたんですよ。そのときに、シャネルズのボーカルがあまりにも歌が上手くてビックリして、それが鈴木雅之さんでした。彼らが顔を黒塗りする以前の、シャ・ナ・ナのスタイルで演っていた頃ですね。クールスとシャネルズは顔を合わせる機会もあったんですけど、おたがいにリーゼントで不良のイメージでしたから、敬遠し合っていたというか、仲良くしちゃいけない雰囲気でした(笑)。その後、ラッツ&スターを脱退した山崎(廣明)さんが改めてダックテイルズを組むタイミングで僕が参加して、今回再演した〈BABY BABY BABY〉と〈PLEASE〉は、その時代のレパートリーです。〈PLEASE〉は、当時、大瀧詠一さんがシリア・ポールのレコードでやっていた手法というか、フィル・スペクターへのリスペクト的なアレンジですね。〈BABY BABY BABY〉は、当時レコードにならなかった、ライブのみのレパートリーだった曲。もったいないと思ったので、今回初めてレコーディングしました」
――その後、さまざまな活動を経て、91年にCKBの前身となるCK’sを結成するわけですね。
「もともと僕は、楽器ではドラムを演りたかった人間なんですけど、ジェームス・ブラウンのレコードを最初に聴いたときに、ドラムの音がやたらとカッコよくて、最高に興奮した記憶があります。CKBの前身のCK‘sのときは、ジェームス・ブラウンのショウをそのままやってました。オリジナル禁止にして、全編JBのレパートリーをやっていた時期が3年くらいありましたね。バック・バンドのJB’sがすごく好きで、ああいうキュッと締まったサウンドをやりたいなと思ってました」
――インタビューの冒頭で“職業作家を目指していた”とおっしゃってましたけど、本来の横山さんは、メインに立つよりも裏方仕事のほうが好きなタイプなんですか?
「僕はもともと職業作家になりたくて、大瀧さんがやっていたサイダーのCMを聴いて、自分で広告代理店に“ああいうCMの音楽をやりたんですけど”って電話をかけたりもしたんです。車のCMソングをすごく作りたくて、自分でキャスティングや映像を考えたりしてね。もちろん当時はまったく採用されなくて、CMの仕事がくるようになったのはCKBをはじめてから。昔から作曲家という職業にすごく憧れていまして、筒美京平さんやいずみたくさんのように、アイドルに曲を書いて、仲良くなって、印税ガッポリみたいな(笑)。スターや人気者になると自由が無くなるし、自分にそうした素養があるとは思わなかったので、スタッフとして裏にまわる仕事がしたかったんです。当時は、レーシングドライバーで作曲家の三保敬太郎さんをイメージしていました。それが、クールスR.C.でいきなりメインに立つことになって、そこからライブの気持ちよさを知ることになるわけです」
――なるほど。今回のアルバムでは、そんな横山さんならではの職業作家としての側面も楽しむことができるわけですね。特にオススメの作品はありますか?
「今回アルバムのタイトル曲になった〈香港的士〉。僕はエキゾチック・サウンド系もすごく好きで、この〈香港的士〉には、まさにその影響が表われています。神崎まきさんへの提供曲で、そんなに知られている作品ではないんですけど、アルバムの混沌としたムードをギュッと凝縮した作品といえます。細野晴臣さんの〈北京ダック〉とかマーティン・デニー、あとはユーミン(松任谷由実)さんの〈HONG KONG NIGHT SIGHT〉とかすごく好きで、映画でいえば『スージー・ウォンの世界』やブルース・リーの一連の作品。それと、所ジョージさんの『REVENGE OF HONG KONG ホング・コングの逆襲』というアルバムのサウンド・プロダクションが最高で、現地のプロの胡弓奏者の演奏とかが収録されているんですよ。かなり影響を受けました」
――そうした音楽に興味を持ったきっかけは?
「中華街に發三電機商会というレコード屋さんがありまして、そこでよく台湾、香港、韓国、フィリピン、タイなんかのレコードを買って聴いていたので、そうしたエキゾチック系の音楽に親しみがあったんです。そうした自分好みの曲をジャンルに関係なく選曲したカセットテープを作って聴いていたのが、自分の音楽のベースになっています。僕が二十代のとき、香港にキャセイパシフィックの飛行機で行くと、着陸寸前にバリー・ホワイトの〈愛のテーマ〉が必ず流れたんですよ。その瞬間、僕のなかでフィリー系のストリングス・サウンドと香港とが結びついちゃって。その体験は大きかったですね」
(おわり)
文/木村ユタカ
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