前日は雪が降るなど天候が心配されたが、ライブ当日は晴天。ファンの間でも有名な“晴れ男・藤巻亮太”はここでも健在だった。

また、今回の公演では“THANK YOU”と銘打たれたツアータイトルを筆頭に、チケット代も3,900円と、“3”と“9”をフィーチャー。さらに、直前のアナウンスで開演時間が午後“3時”から“39分”へと変更されることが告げられると、会場に集まったファンから大きな拍手が上がった。

そして迎えた39分。バンドメンバーに続き、藤巻がステージに姿を現した。

この時期にぴったりの「Sakura」を皮切りに、「日日是好日」「まほろば」を立て続けに披露。軽快なナンバーにすっかり温まった会場の上には、今日という日をお祝いするかのように青空が広がっていた。ここまで3曲を歌い上げた藤巻の目にもそれは映っていたのだろう。最初のMCで「見てください、この青空を!」と呼びかける一幕も。さらに藤巻は「「39日」のリリースから20年という今日、この会場に集まれてうれしいなと思ってます」と言って、いつの時代も支えてくれているファンに感謝を伝えた。

MCの後は「Sunshine」、「シーズンドライブ」、「太陽の下」と、青空に下で聴くのにうってつけの3曲が続く。レミオロメン時代から、日常の何気ない風景の中に溶け込んでいる出来事や感情を歌詞にするのに長けていた藤巻。特にソロになってからは、<Its alright 楽しくやろうぜ>と歌う「Sunshine」のように、ほどよく肩の力が抜けた感じも魅力だ。

また、演奏とは直接関係ないことだが、この日の公演では“ファミリー席”も用意され、小さなお子さんを連れたお客さんも数多く来場。歌に合わせて小さな手を叩く姿はもちろん、歌とは関係なしに泣いたり、笑ったりする声が響くことも。一方、「太陽の下」で偶然目にしたのは、<笑って心開いたら あなたの事好きになった>というフレーズでそっと顔を見合わせて微笑むカップルの姿。藤巻の優しい歌声はもとより、さまざまな世代の人たちが思い思いに音楽を楽しむ様というのもいい演出となり、会場を温かな空気で包み込んだ。

2度目のMCでは、レミオロメンの頃やソロで活動する現在のことのみならず、小中高、さらには幼少期と、自身のこれまでを振り返った藤巻。「今の自分の音楽と何の関係もないように思えることも、自分が歩んできたすべてが今の自分の音楽に大事なものを与えてくれている」とする中で、確実に自分のルーツになっているものとして、出身地である山梨と、そこで出会ったメンバーと組んだレミオロメンを挙げた。

ここでまず披露されたのは「北極星」。東京での曲作りに息詰まり、山梨の実家近くの公民館を借りて制作したという1曲だ。生まれ育った街に自らの“原点”を見出すきっかけとなったこの楽曲を、藤巻は力強く歌い上げた。

その後は「Wonderful & Beautiful」、「粉雪」、「茜空」と、レミオロメンの楽曲を続けて披露。バンドが初めて日比谷野外音楽堂のステージに立ったときに初披露された「Wonderful & Beautiful」、言わずもがなレミオロメンの代表曲の一つであり、イントロが始まった瞬間、客席から歓声が沸いた「粉雪」と、ファンにとっても思い出深いであろう楽曲に続き、「茜空」ではギターを置いて観客一人ひとりに語りかけるように優しく歌い、観客を魅了した。

「自分の足元にある小さな幸せを感じて、それを少しずつ隣の人と共有して、つながり合っていけたら」という思いを込めて届けられた「小さな幸せ」で、ライブも折り返し。

このブロックでは、藤巻自身が東日本大震災で被災したさまざまな土地に足を運び、現地の方々の話を聞いて書き下ろしたという「大地の歌」を披露。奇しくも2日後に“3.11”が控えたこの日、集まった観客たちは藤巻の歌声を通して改めて毎日を“恙なく”過ごせることに感謝し、これからの日々が“恙なく”続くよう願った。

気づけば陽もだいぶ傾き、空気が冷え込んできた。場内を吹き抜ける北風が体温を奪うのはステージの上も同じようで、藤巻も「ここからは身体を動かして盛り上げていきましょう!」と声を張る。とはいえ、ここで用意されていたのは、まさかの新曲!「盛り上げていきましょうって言ったのに新曲かよって感じなんですけど(笑)」という藤巻の自虐に観客は笑いつつ、期待に満ちた目でステージを見つめる。

新曲は「桜の花が咲く頃」というタイトル通り、桜の花が咲く時期に、藤巻の胸に巡る想いをベースにした爽やかなアップチューン。小気味いいギターのサウンドが耳に心地よく、初披露にもかかわらず、観客たちは自然と音に身を任せていた。

ここからさらにギアを上げるため、藤巻は「南風」、「雨上がり」、「スタンドバイミー」というライブの定番曲3曲を連続投下。「南風」のポップでカラフルなサウンドを手拍子やジャンプなど全身で受け止める観客の熱気に呼応するかのように、「雨上がり」や「スタンドバイミー」ではパワフルな歌声に加え、アグレッシブなギタープレーを響かせた。

怒涛の後半戦を経て、本編最後を締めるのはもちろん「39日」。
もともとは「幼馴染への結婚祝い」として書かれたという楽曲も、時を経た今では、卒業式をはじめ門出を祝う楽曲として多くの人に愛されている。「こんなふうに何年も歌い継いでもらえる曲になるとは、当時はまったく思っていなかった」というが、20年の間に「卒業式とかいろんな場所で、いろいろな物語が刻まれていって、曲として成長させてもらったのかなと思います」と感慨深げ。

「今日ここで出会えたみんなの、明日からの日々が健やかで素晴らしいものであることを心から祈って、20年分の感謝を込めてお届けします」と話すと、一呼吸置いてから静かに演奏を始めた藤巻。一言一言を噛み締めるように、想いを宿した歌声は、観客一人ひとりの胸に沁み入り、心を温めたに違いない。

39日」の演奏を終え、バンドメンバーとともにバックステージへと姿を消した藤巻。しかし、日暮れが近づくにつれてまた一段と気温が下がったこともあってか、すぐさま1人でステージに再登場。「大丈夫ですか?みなさん!」と気遣いつつ、「寒いけど温かい歌を歌えたらと思いますので、アンコールお付き合いください!」と言ってアンコールをスタートさせた。

1曲目は「桜の花が咲く頃」に続き、この日2曲目の新曲「ありのままの君へ」。藤巻がつい最近歌いに行った高校の学生を見て、「そのままの自分でいてほしい」と思ったことがきっかけで制作したという。学生時代ならではのみずみずしさを凝縮したような歌詞が印象的なこの曲を、藤巻は自らアコースティックギターとハーモニカを演奏しながら観客へ届けた。

20年目の“39日”は、自分のなかの“現在地”の曲で締めくくりたい」と、再び呼び入れたバンドメンバーとともに「朝焼けの向こう」を披露し、アンコールを締めくくった。

演奏を終えたバンドメンバーを見送り、1人ステージに残った藤巻。締めの挨拶かと思いきや、その手にはアコースティックギターが握られている。

「一生忘れない“39日”になりました。みんなにも今日という日を覚えていてほしいなと思って」とのことで、ダブルアンコールへ突入。藤巻からの「一緒に歌う「39日」はいかがでしょうか!?」という呼びかけに、客席から大きな拍手と歓声が湧いた。

藤巻の演奏が始まると、観客はフルコーラスを合唱。最後は藤巻自身もその歌声の輪に加わり、美しいハーモニーが会場に響き渡る感動的なフィナーレとなった。

39日」のリリースから20年。考えてみれば、バンド結成やデビューの周年を祝うことはあっても、一つの楽曲のリリースを祝うのは珍しいことのように思う。しかし、事実こうしてスペシャルライブが開催できるのも、この楽曲が多くの人に愛されている証拠。生みの親である藤巻は「いくつもの物語が刻まれることで曲が成長した」と話していたが、この日この会場に集まったみんなで歌った「39日」も、この“THANK YOU LIVE 2024”というライブ自体も、新しい物語としてそこに刻まれたはずだ。

U-NEXTでは、そんな記念すべきライブの見逃し配信を426日(日)23:59まで実施中。1日限りの貴重な公演を観られるのはココだけなので、お見逃しなく!

(おわり)

取材・文/片貝久美子
撮影/Ryo Higuchi

Ryota Fujimaki 「THANK YOU LIVE 2024」

SET LIST

M 1.Sakura
M2.日日是好日
M3.まほろば
M4.Sunshine
M5.シーズンドライブ
M6.太陽の下
M7.北極星
M8.Wonderful & Beautiful
M9.粉雪
M10.茜空
M11.小さな幸せ
M12.電話
M13.東京
M14.大地の歌
M15.桜の花が咲く頃(新曲)
M16.南風
M17.雨上がり
M18.スタンドバイミー
M19.3月9日
M20.ありのままの君へ(新曲)
M21.朝焼けの向こう
M22.3月9日

┗2024年3月9日(土)@東京 日比谷野外音楽堂

U-NEXT

Ryota Fujimaki 「THANK YOU LIVE 2024」

配信詳細はこちら >>>
見逃し配信期間:2024426日(日)23:59まで3
※視聴可能デバイスに関してはこちらをご確認ください
【会場】
東京 日比谷野外音楽堂

■藤巻亮太・レミオロメン特集はこちら >>>

Ryota Fujimaki 「THANK YOU LIVE 2024」

LIVE INFORMATION

Mt.FUJIMAKI 2024

開催日時:2024928日(土)※雨天決行・荒天中止
会場:山中湖交流プラザきらら
出演:藤巻亮太 ほか

Mt.FUJIMAKI 2024

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