近年の活動を少しだけ振り返っておくと、サザンオールスターズは昨年の1月11日(土)〜12日(日)の石川公演を皮切りに全国13箇所26公演に及ぶアリーナ&5大ドームツアー『THANK YOU SO MUCH!!』を開催し、5月29日(木)に東京ドームで行われたファイナル公演は47都道府県272館589スクリーンでのライブ・ビューイングも実施。ツアー中盤となる同年3月19日(水)には実に10年ぶりとなる通算16枚目のアルバム『THANK YOU SO MUCH』をリリース。カバーアートは、「世の中の安寧を願い、災いから子供たちと守る」という気持ちが込められた日本の伝統的な工芸品の1つである“雛人形”(しかもヴィンテージではなく、現行品)が飾っていた。そして、クレイジーキャッツや坂本九、服部良一、永六輔、中村八大といった戦後のテレビ創世記を彩った昭和のスターたちを想起させる言葉があり、バンドのルーツとなっているリトル・フィートに加え、ザ・ビートルズ、ボブ・マーリィー、チャック・ベリー、イギー・ポップ、デヴィット・ボウイらの影が見えるフレーズもあった。そこには、桑田少年が思春期に先人たちから受けた影響を今日的な解釈で日本のポップミュージックに昇華し、次世代へと受け渡していきたいという明確な意図があったのではないかと思う。

サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』アルバムレビュー
実に10年ぶりとなる、サザンオールスターズの16枚目のオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』。もはや解説やレビューは不要ではあろうとも思うが、6年ぶりの全国ツアーのファイナルとなる東京ドーム公演を前に、もう一度だけ振り返っておきたい。
(2025年5月21日 掲載)
そして、桑田佳祐は今年2月26日に70歳の古希を迎え、“NEW 70’S ここからが始まりでしょ”とうキャッチコピーを掲げ、新曲のリリースと全国アリーナツアーの開催を発表した。ソロとして4年ぶりとなるアーティスト写真は、奈良時代に端を発し、室町時代に観阿弥が確立した“能楽”や“狂言”の舞台である能楽堂。松が描かれた(映った)鏡板の前で桑田が、老翁と女の能面をつけた能楽師とともに収められている。室町時代からおよそ650年以上、途絶えることなく演じられてきた、日本を代表する舞台芸術であることに加え、江戸時代には世阿弥が、未だ復興が続く能登にほど近い佐渡で民衆に根付かせたことも関係しているのではないだろうか。
一方で“NEW 70’S”の“70’S”にも目を向けてみよう。1970年代とはどんな時代だったのか。1956年2月生まれで、1978年にサザンオールスターズとしてデビューした桑田にとっては、中学2年生の14歳からの10年間というまさに思春期真っ只中を過ごしたことになる。日本の音楽シーンは、ロカビリーブームを経て、60年代半ばにGS(グループ・サウンズ)ブームが巻き起こり、ビートルズやストーンズなどのリバプールサウンドに影響を受けたニューロックが台頭。はっぴいえんどのデビューともに70年代の幕が開き、吉田拓郎、井上陽水、荒井由実、キャロル、チューリップらがデビュー。フォークソングやニューミュージック、昭和歌謡が黄金時代を迎えた。海外ではビートルズが事実上の解散を迎え、ジャニスやジミヘンがこの世を去った。ルーツロックと言われたリトル・フィートが活躍したのも70年だが、ロックバンドやシンガーソングライターだけでなく、モータウン、ニューソウル、ディスコ、ファンクも流行。かつてないほど多彩なジャンルが栄えたという点はサザンオールスターズの音楽性にもつながる部分がある。
前段が長くなってしまった。何が言いたい方と言うと、新曲「人誑し / ひとたらし」は、雛人形から能楽堂という伝統芸術に対する敬愛の念と、自身のルーツとなっているロック&ポップミュージックが最良の形でミックスされているのではないだろうか。サウンドの基調となっているのはアコギの弾き語りだ。フォークソングのようなアコギのリフがグループ・サウンズを思わせるマイナー・キーのギターリフへと引き継がれ、80年代のニュー・ジャック・スイングを彷彿とさせる打ち込みのビートで高揚感を上げ、ケルトミュージックのようなバイオリンや笛が踊り、最後はピアニカが締め括る。桑田印の和洋折衷が施されたエスニック・ビート歌謡となっている。
そして、作詞・作曲のすべてを手掛けたアニメへの楽曲書き下ろしは、バンド・ソロを含めて、デビュー48年目のキャリアで初ということもあり、歌詞もTV アニメ『あかね噺』と密接に関わった内容となっている。

原作は、幼い頃から噺家の父・阿良川志ん太(あらかわしんた)の魔法のような落語に魅せられていた桜咲朱音(おうさきあかね)が高校生になり、落語界の最高位“真打”を目指して突き進むというストーリー。<女流名人論破して/燃える勝負をしたい/ガラスの天井(そら)を破ったね>という冒頭から、近年は女性の真打昇進が見られる様になったものの、原作に「女性に落語はできない」というセリフがあるように、長らく男性社会(古典の登場人物の男の声は女に出せない)とされてきた落語界を指しており、なおかつ、初の女性総理が誕生した現代社会にも重ね合わせることができる。
また、<夢を見なさい>や<夜は寝なさい>という語り口は、師匠と弟子の様でもあり、親と子のようでもある。そもそもタイトルがアニメでは流れない2番には<茜色に/染めるのは>と主人公の名前があり、真打昇格試験にて一門のトップである阿良川一生により破門を宣告された父親の仇を取る(父親の芸を認めさせる)復讐劇の一面を表現した<臥薪嘗胆>という四字熟語も使っている。また、三遊亭金馬や圓生の名演で知られる「浮世床」(桑田さんは立川談志を見ているかもしれない)や、古今亭志ん生「火焔太鼓」の有名なサゲなど、古典落語の演目もフィーチャー。原作には出てこないが、落語を聞きながら散歩しているという桑田さんならではのチョイスで、漫画やアニメ、そして、このオープニング主題歌もまた、古典芸能である落語に触れたことのない初心者の最適な入り口にもなるのではないかと思う。
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
RELEASE INFROMATION

桑田佳祐「人誑し / ひとたらし」
2026年4月3日(金) 先行配信 >>
2026年6月24日(水)発売
完全生産限定盤(CD+Special Goods)/VIZL-3300/2,750円(税込)
通常盤(CD only)/VICL-38700/1,430円
2026 年7 月8 日(水)発売
アナログ盤/VIJL-61900/2,750円(税込)
LIVE INFORMATION

桑田佳祐 LIVE TOUR 2026
7月8日(水) 石川 石川県産業展示館4号館
7月9日(木) 石川 石川県産業展示館4号館
7月14日(火) 香川 あなぶきアリーナ香川
7月15日(水) 香川 あなぶきアリーナ香川
7月21日(火) 広島 広島グリーンアリーナ
7月22日(水) 広島 広島グリーンアリーナ
7月29日(水) 東京 TOYOTA ARENA TOKYO
7月31日(金) 東京 TOYOTA ARENA TOKYO
8月1日(土) 東京 TOYOTA ARENA TOKYO
8月7日(金) 三重 三重県営サンアリーナ
8月8日(土) 三重 三重県営サンアリーナ
8月13日(木) 熊本 グランメッセ熊本
8月14日(金) 熊本 グランメッセ熊本
8月19日(水) 兵庫 GLION ARENA KOBE
8月20日(木) 兵庫 GLION ARENA KOBE
8月27日(木) 北海道 北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
8月28日(金) 北海道 北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
9月2日(水) 神奈川 Kアリーナ横浜
9月3日(木) 神奈川 Kアリーナ横浜
9月9日(水) 宮城 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
9月11日(金) 宮城 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
9月12日(土) 宮城 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
U-NEXT×サザンオールスターズ プロジェクト

サザンオールスターズのMVやライブ映像など、特別コンテンツを配信中!
<スペシャル映像 第1弾>
「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」
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https://www.video.unext.jp/po2/southernallstars

サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」圧巻のツアーファイナルライブレポート
10年ぶりとなるオリジナル・アルバム『THANK YOU SO MUCH』をリリースし、ロング・ヒットを記録し続けているサザンオールスターズ。全国アリーナ&ドームツアー“サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」”の大千秋楽となった5月29日(木)の東京ドーム公演をレポート!
(2025年6月6日 掲載)
