元yonawo荒谷翔大 「Focus feat. 鈴木真海子」に参加した鈴木真海子 (chelmico)との東阪福ツーマンツアー「Focus」の初日、東京公演が3月6日(木)duo MUSIC EXCHANGEにて開催。ライブレポ、ダイジェストムービを公開！

元yonawo荒谷翔大

「Focus feat. 鈴木真海子」に参加した鈴木真海子 (chelmico)との東阪福ツーマンツアー「Focus」の初日、東京公演が3月6日(木)duo MUSIC EXCHANGEにて開催。
ライブレポ、ダイジェストムービを公開！

撮影：TOYOHIRO MATSUSHIMA　

2023年にボーカルとほぼ全曲のソングライティングを手がけていたバンド、yonawoを脱退した荒谷翔大。シンガーソングライターとしての活動をスタートしてから初めて客演を迎えた「Focus feat. 鈴木真海子」に参加した鈴木真海子 (chelmico)との東阪福ツーマンツアー「Focus」の初日、東京公演が3月6日(木)にduo MUSIC EXCHANGEで行われた。

バンドが奏でるグルーヴにスモーキーな歌声を乗せ、満員のオーディエンスを揺らしていく荒谷。ときおり遊び心溢れるセッションを混じえ、音楽と自在に戯れている様からはソロアーティストとして活動を始めて約１年の充実ぶりが見て取れた。１曲終わる度にフロアからは熱気を帯びた拍手と歓声が巻き起こり、荒谷は何度も笑顔で「ありがとう！」と感謝を伝えた。

このライブの翌日にリリースされたメジャー1st EPの１曲目を飾るタイトル曲「ひとりぼっち」を披露する前、荒谷は楽曲に込めた想いを丁寧に語った。

「2023年の暮れにyonawoというバンドを脱退してソロの荒谷翔大として活動していますが、『ひとりぼっち』はそんな僕の心境を歌った曲です。yonawoのメンバー、今のバンドメンバー、支えてくれたスタッフ、応援してくれている皆さんへの感謝も込めていて、その感謝と一緒に改めて荒谷翔大として歌っていきたいっていう覚悟を込めた歌になっています。“ひとりぼっち”って寂しい響きですが、寂しさの分、人に優しくなれると思う。こうやって来てくれる皆さんもそうですが、名前も知らないひとりぼっちの誰かにこの歌が寄り添ったり、もしかしたら抱きしめることができるのかなと思って、自分のためにも書いたし、その先に誰かがいたら嬉しいなって思ってます」

そう話して、充実した表情を浮かべた荒谷。美しく切ないストリングスが流れ、荒谷は意を決したように〈出逢った日のこと　ぼんやり思い出して〉と「ひとりぼっち」を歌い始めた。目を閉じて繊細な情感を込め、大切な人との別れで負った傷と感謝、そして〈奏でよう　ひとりぼっちで旅立とう〉という決意を歌った。

荒谷と鈴木真海子との共演曲も複数披露された。ツーマンツアーのタイトルにもなっている昨年12月リリースの「Focus feat. 鈴木真海子」の二人のハーモニーは媚薬のような魅惑的な感触を放った。小気味いいラップを絡ませた後、〈Thinkin’ bout you〉と歌う心地の良いサビに抜けていく展開は絶品。ゆらゆら揺れながら〈ゆらゆら　考えちゃうな〉と歌う二人の姿はとてもキュートだ。フロアから拍手が上がる中、鈴木が荒谷に「『Focus』できましたかね？」と聞くと荒谷は「台湾で1回やってるからね」と、2月28日(金)に開催し鈴木も参加した台北でのライブを振り返った。鈴木は「台湾で1回やってるから自信付いてる」と胸を張り、荒谷は「東京で最高のコンディションでできました」と嬉しそうに口にした。

ツーマンツアー「Focus」は3月14日(金) Music Club JANUS での大阪公演を経て、3月19日(水) BEAT STATIONでの福岡公演でファイナルを迎える。

文＝小松香里

全国各地のフェスに引っ張りだこで大勢の音楽ラバーたちから愛されていた4人組バンド・yonawoの脱退を決意してまで、ここに懸ける想いがあった。それが「荒谷翔大」のソロプロジェクトだ。その歌は、すべての物事や感情を善か悪かで判断しようとする社会に、異なる価値観をそっと与えてくれる。今の世の中全体に欠けている、曖昧さを受け入れる考え方、「足るを知る」姿勢、哀愁に浸る時間といったピースを取り戻してくれるようだ。だからこそYaffle、TAIKING（Suchmos）など、時代の空気をいち早くキャッチする感度の高いクリエイターたちから、その声を求められているのだろう。尾崎豊、玉置浩二、井上陽水、Mr.Children、スピッツなど、荒谷自身のルーツから生まれるサウンドにその歌声が乗った音楽を、私はインタビューの場で「令和のバズレシピではなくおばあちゃん家のごはん」と表現し彼はそれに笑ってくれたが、日本人にとってどこか懐かしさやホッとする要素を感じさせながらも、決して古臭くない――そこはさすが、バンド時代に欧米のインディ・ミュージックも深く探求していたソングライターである――見事なバランス感で成立させている。人はどうしたって独りで生きていくしかないことを受け入れながらも「詞を書いて歌うことで繋がれるかもしれないと思えることが、僕にとっての生きる希望です」と語る荒谷が、今後どんな詞とメロディを紡ぐのかが非常に楽しみであり、新しい形の日本語ポップスを生み出してくれることに期待してしまう。

文：矢島由佳子