昨年活動10周年を迎えたネットシンガーのSouが、2024年1月19日に東京・Zepp Haneda、1月21日に大阪・Zepp Nambaでワンマンライブ「Sou LIVE 2024~inside~」を開催した。「心の中に持っている音楽への欲求を追い求め、自分を貫いて表現したい」という思いを込めたライブタイトルからも並々ならぬ気合いが感じられたが、初日の東京公演はその言葉どおり、表現欲求を惜しみなくあらわにした爽快感溢れる一夜となった。

ノイズ混じりの波形を模したオープニングムービーが流れると、バンドメンバーに続いてSouが登場。SEとシームレスに「人マニア」のイントロへつながり、「いくぞ東京!」の掛け声でライブがスタートした。奇妙かつ痛快なムードに場内が沸くと、間髪入れずに「新興宗教」へ。ソフトな歌声と優雅な演奏で恋のときめきと狂気をもれなく表し、観客を翻弄した。

このライブが今年初の公な音楽活動となるSouは「このライブを通してみんなと一緒に今年のスタートを切りたい」と力強く語る。そして1月1日に発生した令和6年能登半島地震の被災者を思いやり、あらためてこの日に掛ける強い気持ちを表明した。

「ラグトレイン」では小気味よいビートに乗せてメランコリックで艶やかなムードを作り出し、「ヴィラン」では観客に手拍子を求め、ミステリアスかつ躍動感のあるボーカルで引き付ける。これだけ様々なジャンルの楽曲とボーカルが馴染むのは、彼が表現力を持ち合わせていることに加えて楽曲の本質を捉えているからだ。それが高い水準で成し遂げられるのも音楽への愛情の深さはもちろん、さらには自身が感動できる、内面と親和性が高い楽曲を選んでいるからだろう。「命辛辛」は音に乗せて晴れやかに解き放たれるボーカルがフロアを揺らした。

またSouは音楽への愛情があるからこそ、音の調和を重んじられる人物だ。ファンク風のベースラインを筆頭にスタイリッシュで色気のあるアレンジの「ミルキー」では、ビートに乗りながら艶やかな声を響かせる。遊び心に富んだキュートな音色がはじける「ホワイトハッピー」では少年のような無邪気さを、複雑なリズムが心の揺らぎを描く「タイニーバニー」ではため息が零れるように、涙が静かに頬を伝うように、人知れず溢れた悲しみを歌で表現して、楽曲に宿る感情を音楽へと昇華していた。緊迫感のある「ゼロトーキング」も曲中の主人公がこちらに語り掛けてくるような迫真のボーカルだった。それを大仰にならずに実現できるという繊細なパワーコントロールにも舌を巻く。

歌ってみた動画を投稿する際は、流行曲以外にも自身の心に深く響いた曲を積極的に選んでいるSouだが、いざそれをライブで披露するとなるとなかなか機会がなく、歯がゆい思いもしたという。そんな彼にとって今回のライブは「ライブでやりたくて仕方がない曲でセットリストを作る」という念願のコンセプトである。「この後の選曲も楽しみにしてて」という言葉からも、彼の高揚が伝わってきた。「囮と致死毒」「淡々、回想」「チョコレートミルク」と観客を曲の世界と自身の内面に引きずり込むように幻想的な空間を作り出すと、「おくすり飲んで寝よう」で浮遊感と解放感で包み込む。寂寥感と安らぎの間をたゆたうような感覚に、会場一帯が酔いしれた。

ライブの終盤では「CH4NGE」「KICK BACK」と挑発的な楽曲を畳みかけ、「バグ」や「ノウナイディスコ」ではさらに観客を巻き込んでいく。そして2013年に何気なく始めた活動がライブを開催できるほどの規模に発展したのは、支えてくれるリスナーのおかげであることを明かした。人前に立つことが苦手な彼はこの日もずっと緊張していたものの、観客からの「楽しい」という声援や、会場まで駆けつけてくれたという事実が、彼を大いに勇気づけたという。

「みんなのことを楽しませるつもりでやっているけれど、みんなと直接会って元気をもらっているのは僕のほう。活動はマイペースだけど辞める気はないし、不器用にこれからも頑張っていくのでこれからも応援してください」とまっすぐに伝えると、観客は拍手でその思いに応える。彼の言葉でさらに会場の結束が強まると、センチメンタルな「妄想感傷代償連盟」と青い透明感を帯びた「少女A」で焦燥を清々しく描いて本編を走り抜けた。

盟友・Eveの初期曲「ナンセンス文学」でアンコールをスタートさせると、「どうしても歌いたかった曲」と言い「炉心融解」を披露する。メランコリックでポップな楽曲が多く揃えられたセットリストを彼の声とともに体感し、Souというシンガーが白黒つけられない心情や対極の感情で揺れ動く様子を偽りなく表現できること、細やかな感情の機微をナチュラルに描けること、陰を美に昇華できることを再確認した。なかでもオリジナル楽曲「バブル」は彼のシンガーとしての資質が存分に発揮される。浮遊感と没入感、鋭さと柔らかさ、音の泉に溺れるような瑞々しさが会場を満たした。

いつも自分を支えてくれている人々を目の前にしている感動を再度示すと、「このライブをきっかけに、いい(2024年の)スタートを切れる気がします。最後もっとブチ上がって終わりたくないですか? 最後にアガる曲を持ってきました」と呼び掛け、自身が作詞に参加、作曲を担当した「ノイド」でこの日を締めくくる。傷を負いながらも突き進んでいくような勇敢な歌声で、観客の心を大いに刺激した。

ひとりステージに残った彼は深々と頭を下げ、「また会いましょう」と再会を誓いステージを後にした。自身の音楽への欲求を素直に表現するだけでなく、「ライブは緊張する」と前置きしながらも観客と顔を合わせられることへの喜びを何度も伝えた、2024年初ライブ。活動10周年を超えて、彼が新しいフェーズに突き進んだことを証明する一夜となった。

続けて1/21(日)に開催されたZepp Namba公演では、終演後に『重大発表』と題し、新曲「世界を射抜いて」が2024年放送のTVアニメ『THE NEW GATE』のオープニングテーマを担当することがサプライズ発表された。
TVアニメ『THE NEW GATE』は、原作 風波しのぎ、原作イラスト 魔界の住民・KeG・晩杯あきら、漫画 三輪ヨシユキが手掛ける同名原作小説とコミックスのTVアニメ作品。待望のアニメ化を彩るオープニングテーマ「世界を射抜いて」は、今回作品のために人気ボカロP・Neruが書き下ろした疾走感溢れる楽曲となっている。
リリース情報など詳細は近日発表されるため、続報をお楽しみに。

Sou LIVE 2024 「inside」setlist

SE
M1 人マニア
M2 新興宗教
-MC-
M3 ラグトレイン
M4 ヴィラン
M5 命辛辛
-MC-
M6 ミルキー
M7 ホワイトハッピー
M8 タイニーバニー
M9 ゼロトーキング
-MC-
M10 囮と致死毒
M11 淡々、回想
M12 チョコレートミルク
M13 おくすり飲んで寝よう
-MC-
M14 CH4NGE
M15 KICK BACK
M16 バグ
M17 ノウナイディスコ
-MC-
M18 妄想感傷代償連盟
M19 少女A

アンコール
EN1 ナンセンス文学
-MC-
EN2 炉心融解
-MC-
EN3 バブル
-MC-
EN4ノイド(2024.01.19 Zepp HANEDA(TOKYO))
EN4 愚者のパレード(2024.01.21 Zepp Namba(OSAKA))

Sou (読み:そう)
YouTube チャンネル登録者は165万人、Xフォロワーは約65万人を持ち、インターネットの世界を原点に堂々たる存在感と才能を飛躍させるボーカリスト。ネットを活用する現代的なスタンスで次々に音楽を発表、持ち前の音感の良さと中性的な質感を孕んだ声による表情豊かな歌唱スタイルでセルフプロデュースによる投稿を繰り返しその勢いは増すばかりだ。
2nd Album「深層から」はオリコンチャート3位、3rd Album「Solution」はオリコンチャート 6 位を獲得。1st Live「Salir」、初の東名阪ワンマンツアー「深層から見た景色」を全公演ソールドアウトさせ、配信シングル「ミスターフィクサー」は海外の音楽チャートでも首位を獲得した。

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