(sic)boyが8月20日(水)、自身初となる主催イベント「blacknails」を渋谷WWWにて開催した。
本イベントは、(sic)boyが厳選した次世代のアーティストたちが集い、新たなコミュニティーの幕開けを感じさせる一夜となった。
(sic)boyをはじめ、彼をフックアップし世に知らしめた釈迦坊主、勢いを増すkegøn、MERIなどのニューカマー全8組が出演。満員の観客で埋め尽くされた渋谷WWWに、熱狂的なパフォーマンスを届けた。
【ライブレポート】
8月20日(水) 渋谷WWWにて(sic)boyが初主催となるイベント〈blacknails〉が開催された。
WWWの入り口の階段を下り始めると、さっそく(sic)boyらしい耽美な世界観の装飾がお出迎え。フロアに出ればオープンDJのsathiが洋邦問わず、新旧問わずのラウドなミックスでいきなりテンションをブチ上げてくる。知名度や露出度を問わず、才能に溢れた若者を中心とした出演者が発表された時点で、(sic)boyがこのイベントにどれだけ気持ちを込めているのかが伝わってきたが、これはきっと想像以上だ。イベント全体のVJがJACKSON kakiというのも信頼感がある。
「こんにちは、yuzuhaです」。(sic)boyのバックDJとしても知られるsathiによる約40分ほどのDJが終わると、〈PURE2000〉などのイベントで知られるアーティストコミュニティー、XPEEDのメンバーでもあるyuzuhaが控え目な挨拶からライブをスタート。主にギターボーカルを担当する彼女と、ギター、DJの3人編成で、オルタナティブなポップサウンドを届けていく。その音はどこか懐かしさを感じさせるもので、Y2K的な感覚を抱かせもするが、yuzuhaの儚げなボーカルの揺らぎには、そういった雑な解釈に収まることなく、雑多に繰り返されるリバイバルの混沌の中で息をする、現代のリアルな若者の声が宿っていた。
わずかな転換を挟んで、1999年生まれの北海道札幌市出身のラッパー、ORCOがステージに。1曲目「Full BET」で「決めんなよ天井」と叫び、フラストレーションをぶちまけていくと、2019年にはフロアから(sic)boyを観ていたと語った上で「嫌でもここからORCOって名前が広がっていくと思う」と宣言してみせる。おそらくほとんどの観客がORCOを知らない状況で、そう言ってのける力強さに痺れる。
ORCOがステージを去ると、間髪入れずHikoichiのショーケースに。アッパーなレゲトンサウンドで会場を一気に掌握していく。「今日出てるアーティストで1番知名度ないと思う」と語る彼の存在は、筆者もこのイベントのラインナップを観るまで知らなかったが、プエルトリコで発祥し、世界中の音楽ファンを熱狂させ続けているジャンル=レゲトンに真っ向から挑む若き才能と呼べるだろう。(sic)boyとのタッグでも知られるKMがプロデュースする「Wild&Free」も披露し、知名度のなさも関係なく、20分の間にフロアをがっちり味方につけてみせた。
Hikoichiがエモーショナルな未発表曲「Ayy」でライブを締めると、次の山田ギャル神宮は代表曲の一つ「MyStory」で頭からトップギアへ。2023年に『ラップスタア誕生』に出演したことでも注目を集めた彼はこの日のラインナップでも名の知れた方に入ると思うが、最後の曲「jiboujiki」の前に「black!」「nails!」のコールアンドレスポンスを挟み、「俺のこの黒のネイルもみんなの、みんなの熱で剥がしてくれよ!」と叫んでみせる熱いライブを披露。(sic)boyの指名に全力で応えてみせていた。
僅かな静寂の中、アカペラのボーカルが響かせながら、ジンバブエ出身で次世代のファッションアイコンとしての呼び声も高いMERIがステージに姿を現す。ここで初めて彼女のライブを目撃するリスナーも多かったであろう、その歌唱力に会場が圧倒される。それに加え、「大好きな人と作った曲」と言い添えて歌い始めた未発表曲「Could you hear my voice?」のラストにはKMのプロデューサータグが。(sic)boyの音楽を追っている者なら説明不要かと思うが、つまり、彼女の今後のリリースも要チェックということである。
MERIが「OMG」で観客のライトを浴びてステージを終えると、拳による2度目のDJタイムへ。こういったライブ中心のイベントではDJの時間が休憩代わりになることが多いが、彼は息継ぎの間を与えず、フロアの温度を見事に保っていた。こういった時間も非常に満足度が高い。
拳からバトンを受け取って、兵庫県出身で現在は東京を拠点に活動するラッパー/シンガー/プロデューサーのkegønがオンステージだ。すでに3時間ほど立ち続ける観客を「つまんねえなお前ら!棒立ちでさ!」「みんな動いて汗かいたほうが夏っぽいんじゃね?」と焚きつけまくり、会場のボルテージをもう一段上に持っていくと、ロック、ラップ、EDMなどを飲み込んだ爆発力あるサウンドを叩きつけていく。「(sic)boyくん大好きで、ロックな曲を持ってきた」と想いを告げつつ、9月にリリース予定のアルバムから新曲も投下し、ロックスターなステージングで約20分を軽やかに駆け抜けていった。
この日の出演者の中で唯一(sic)boyの先輩に当たるであろう釈迦坊主は、なぜか後転してみたり、落ち着きのない様子でステージに立つと、暴力的なまでにカオスなライブを展開。曲をプレイしている間は取り憑かれたように暴れ回り、MCでは「6ヶ月ぶりくらいに渋谷来たんだけど女の子かわいすぎ〜」「俺にはまだエロすぎるこの街は」とちょけてみせる。(sic)boyやTohjiといった現在も第一線で活躍するトップアーティストたちをTOKIO SHAMANで見出した人でありながら、感慨に浸る素振りすらないマイペースさで、相変わらずブレないカリスマっぷり(?)だ。ちなみに、現在アルバムを制作中とのこと。
釈迦坊主がカオスに会場をぶち上げた後は、いよいよ本日の首謀者、(sic)boyの登場だ。これが、はっきり言ってこれまで筆者が観た中でもトップクラスのライブだった。釈迦坊主からの流れを汲んで、ファンにとっても懐かしい「Blood Flowers」でライブを始めると「Dark Horse」でフロアを揺らし、「Hype's」を続けて特大シンガロングを巻き起こす。さらに最新シングル「Hello」からの必殺の「Heaven's Drive」ではvividboooyも登場!なお、「Heaven's Drive」では珍しく歌詞を飛ばす瞬間もあったが、終演後に本人に聞くと、なんとこの曲でそんなことが起きるのは初めてだそうで、「気持ちが乗り過ぎちゃったんです」と笑顔で語ってくれた。要するにそれだけ気合いがこもっていたということだ。その後も「もっとぶっ壊れようぜ!」と煽り、「Akuma Emoji」、釈迦坊主を呼び込んでの「落雷」と畳み掛け、フロアを完全に支配。MCでは、今後さらにこのイベントを広げていきたいという想いを告げ、「〈blacknails〉をよろしくお願いします」と繰り返し、ラストはMERIとのイベントテーマソング「blacknails」へ。「俺だけじゃなく、俺らが〈blacknails〉でした!」と約4時間にわたって繰り広げられた狂宴を、出演者、スタッフを代表して叫んで締めくくった。
SoundCloudから現れた(sic)boyも、かつては“才能に溢れた若者"の一人だった。同時に、その当時からロックとヒップホップの境界線を横断し続ける音楽性で、それゆえにはっきりとした居場所のないアーティストでもあった。そんな彼が、釈迦坊主らからバトンを受け取るように、今や自らが才能に溢れた若者たちのために場を作ってみせた。なんて素晴らしいストーリーだろうか。でも忘れてはいけない、そのストーリーはまだ始まったばかりだ。
〈文/高久大輝〉
〈カメラマン/Ohkubo Kousei〉
【補足】
出演アーティストの楽曲をまとめたプレイリストがApple Music、Spotify、YouTubeにて公開されている。
会場に足を運んだ人はもちろん、残念ながら参加できなかった人も、このライブレポートと共にぜひチェックしてほしい。
▼(sic)boy Presents "blacknails" プレイリスト
https://blacknails.lnk.to/lineup
【セットリスト】
【(sic)boy Presents「blacknails」】
【yuzuha】
1.mercury天使
2.thru 7+
3.GO
4.Quiet Magic
5.Glittering Sky
6.embrace
【ORCO】
1.Full BET
2.Raven
3.YUKI w/BHS Svve
4.exe w/yahiko
5.Carry on
6.Dawn
7.Sagittarius
【Hikoichi】
1.夢の話
2.Fire
3.Opossum
4.Paradice Mint
5.Wild&free
6.Ayy
【山田ギャル神宮】
1.MyStory
2.irony
3.***(solo)
4.fiya
5.kbz
6.CKANK(solo)
7.try
8.jiboujiki(solo)
【MERI】
1.game Over
2.Fake
3.SOs
4.Blue note feat. Awasetsu Mona
5.back2me feat. Awasetsu Mona
6.Could you hear my voice?
7.OMG
【kegøn】
1.intro~NEVER DIE YOUNG
2.ages*
3.RUN
4.drkshdw
5.GET HIGH
6.New Nikes
7.TESLA
【釈迦坊主】
1.Gyiyg
2.MOO MOO
3.Thanatos
4.Mandala loop
5.Abyss
6.papa
【(sic)boy】
1.Blood Flowers
2.Dark Horse(short)
3.Hype's
4.Hello(short)
5.Heaven's Drive feat. vividboooy
6.Akuma Emoji
7.落雷 feat. 釈迦坊主
8.blacknails feat. MERI

(sic)boy Presents「blacknails」INFO
【イベント情報】
•(sic)boy Presents「blacknails」
∟2025年8月20日(水) 渋谷WWW
∟OPEN・START 18:00
∟ラインナップ:(sic)boy / 釈迦坊主 / kegøn / MERI / 山田ギャル神宮 / yuzuha / Hikoichi / ORCO
DJ:拳 / sathi
VJ:JACKSON kaki
【(sic)boyプロフィール】
オルタナティブ、エモ、ラウドロックの要素やメロディアスなフローをヒップホップに落とし込んだスタイルで稀有な存在感を放つ(sic)boy(シックボーイ)。
1stアルバム『CHAOS TAPE』は東京をテーマに独自の世界観とジャンルレスなサウンドから“ジャンル東京”と称され国内外から注目を集め、2021年にリリースした2ndアルバム『vanitas』は主にLAで制作したlil aaronらを客演に迎えたグローバルな作品をリリースし、Lyrical Lemonadeで取り上げられるなど海外のインディーシーンから更なる注目を集めた。2023年にはVERNON(SEVENTEEN)やnothing,nowhere.を客演に迎えたメジャー1stアルバムをリリース。
2024年に入ってからはアニメ『怪獣8号』の挿入歌を担当、グラフィックアーティストVERDYがアートワークを提供した『Wasted EP』のリリースなど精力的に活動。8月にはSUMMER SONIC 東京 MOUNTAIN STAGEに出演。
2025年4月にはパナソニックのタイアップソングとなる「Tsubasa (Prod. uin)」をリリース。自身初の主催イベント”blacknails”を8月に開催することも発表した(sic)boyの新しい活動に注目したい。
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