11月8日(土)、パスピエが主催する対バンライブ『パスピエpresents「印象I」』」が東京・LIQUIDROOMにて行われた。

過去にも錚々たるゲストアーティストを招き、シリーズ化してきた対バンライブ。約2年ぶりに開催された本公演では、七尾旅人を迎え、この日のライブは観客とともに特別な一夜を作り上げた。

現在、バンドは来年2月にリリースされるアルバムに向けて楽曲制作中。アルバムを携えての全国ツアーも決定していることから

今後の活動に期待が高まるパスピエ。

本公演のライブレポートをお届けする。

『印象I』/11月8日

パスピエ主催イベントとしてシリーズ化してきた対バンイベントが、「パスピエ presents『印象I』」として約2年ぶりに開催。今回は11月8日/東京・LIQUIDROOM、2026年1月10日/東京・渋谷CLUB QUATTROの2公演で行われる。

11月8日公演のゲストは、七尾旅人。パスピエと七尾の出会いは、2014年3月に新木場STUDIO COASTで開催されたイベント〈alternative tokyo〉。そこで見た七尾のライブにパスピエのメンバーが衝撃を受け、「いつか自分たちのイベントにお誘いしたい」という思いを抱いていたという。それから11年以上が経ち、ついに両者の対バンが実現したというわけだ。

先にステージへ登場したのは七尾。“パスピエのメンバーから心のこもった手紙が届き、感銘を受けた”“ギターの三澤勝洸くん、ベースの露崎義邦くんとは同じ音楽学校の出身。僕は3日で辞めちゃったけど”といったトークの後、10代の頃、雑居ビルの隣の部屋に住んでいた女性をモデルにした「ストリッパーのおねえさん」をアコギの弾き語りで披露。さらにトレイシー・チャップマンの「Fast Car」の日本語詞カバー、東京から故郷の高知までドライブしたときのことを歌にした「Alone In My Car」、そして「パスピエさんの曲をいろいろ聴いて、この曲、歌詞がすごいんだよね」という言葉から「夕焼けは命の海」をカバーするなど多彩な楽曲を披露した。

最後は代表曲「サーカスナイト」。トラックを流しながら立ち上がって歌い始めた七尾は、「お客さんの雰囲気がいいので、こっちにします」とギターを手に取り、弾き語りスタイルに。楽曲の背景を紐解く丁寧なMCを含め、アコギの弾き語りの豊かな可能性をじっくりと体感できるアクトだった。その根底にあるのは、このシリアスな社会で生きるすべての人に向けられた深い思いだ。

そしてパスピエのステージへ。オープニングは、成田ハネダ(Key)の鍵盤から始まり、組曲的な展開が繰り広げられる「恐るべき真実」。さらに9月にリリースされた新曲「しあわせの気配」のドラマティックな旋律、サウンドが響き渡り、オーディエンスを惹きつける。「贅沢ないいわけ」では高揚感溢れるビートと〈じれったい このじれったい/気持ちの行方はどうすりゃいいの〉という歌詞が響き合い、ライブは早くも最初のピークを迎えた。

「旅人さんの声は天国みたいだなって、ご本人にも伝えました(笑)。旅人さん、そして、みなさんとここで出会えたことがうれしいです」という大胡田なつき(V)のMCを挟み、最新アルバム「カリギュラ」収録曲から「トゥパリタ」を披露。さらに七尾旅人の楽曲「DAVID BOWIE ON THE MOON」をカバー。浮遊感と壮大さを併せ持ったバンドサウンド、ホーリーな雰囲気のボーカルによって大らかな感動へと結びついた。

ライブ初披露となる「新擬態」(アルバム「カリギュラ」)からライブは後半へ。リリースされたばかりの新曲「煩悩ゴーウェスト」は、オリエンタルな世界観を軸にしながら多彩な情景を想起できる楽曲。メンバー全員のプレイヤビリティの高さを実感できる、パスピエらしいナンバーだ。

パスピエ流のディスコチューン「バジリコ」ではメンバー全員のソロ演奏が炸裂。さらにライブアンセムの一つ「MATATABISTEP」で心地よい一体感を演出した後、「次の曲は長いことやってるんですけど、今日のためにちょっとアレンジしてきました。これからもいろいろな形で曲を届けていきます」(大胡田)という言葉から本編の最後の「ONE」へ。鍵盤と歌で始まるアレンジによって、メロディと歌詞の魅力をしっかりと感じ取ることができた。

アンコールでは、七尾旅人の代表曲「Rollin' Rollin'」をカバー。七尾もステージに登場し、この日限りの貴重なセッションが実現した。ラストを飾ったのは、「この曲の雰囲気が七尾さんにぴったりだなと。あと、我々の曲のなかで唯一“七”が付く曲なんです」(成田)という「七色の少年」。爽やかで切ない歌が響き渡り、盛大な拍手と共にイベントはエンディングを迎えた。

文:森朋之

写真・佐藤広理

パスピエ プロフィール
Vocal:大胡田なつき / Keyboard:成田ハネダ / Guitar:三澤勝洸 / Bass:露崎義邦
2009 年に成田ハネダ(key)を中心に結成。バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。
卓越した音楽理論とテクニック、70s~00s まであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるMusic Video やアートワークが話題に。11 年に1st ミニアルバム「わたし開花したわ」でデビュー。
その後、数々の大型ロックフェスにも出演、対バン形式の自主イベント“印象”シリーズや全国でワンマンツアーを行い、好評を博す。
2016 年には単独で日本武道館公演を行い、成功を収める。
2024 年にはバンド結成15 周年を迎え、2024 年8 月28 日には、ニューアルバム「あちゃらか」をリリース。
New Album を引っ提げたワンマンツアー “パスピエ 2024 TOUR「あちゃらかカリギュラ」”を東名阪 3 箇所で行う。
2025 年4 月13 日(日)に、15 周年集大成ライブ『結成十五周年特別記念公演“十五年艦”』をBunkamura オーチャードホールにて開催し、ソールドアウト。9月には上海・北京での公演を成功させ、秋冬には自主企画の対バンライブ開催を予定。さらに来年2月には待望のニューアルバム「IMI」のリリースを控え、同作を携えて臨む全国ツアー「PSPE 2026 TOUR 意味新」の開催も決定している。


<パスピエ オフィシャルアカウント>
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