Ooochie Koochieの全国ツアー『Ooochie Koochie TOUR』の日本武道館2days公演が、2025年9月11日と12日に開催された。両日ともに超満員の9000人、のべ18000人を動員。

Ooochie Koochieは、1965年生まれ、広島県出身の奥田民生と吉川晃司が結成したユニットである。高校時代からバンド活動を通じて接点があった2人が還暦を迎えるタイミングで、『広島への恩返し』と『裸に帰る』という趣旨のもと、2025年2月に本格的に始動し、6月25日にアルバム『Ooochie Koochie』を発表。

7月12日の広島グリーンアリーナから全国ツアーをスタートし、大阪、福岡、札幌、仙台、名古屋を巡ってきた。初日の広島で生まれた熱気は全国各地の会場へと広がり、ツアーが一区切りとなる日本武道館公演を迎えたのだ。

巨大なOKのロゴマークの電飾風の照明が輝く中、Ooochie Koochieの2人が登場。水と油のように異なる個性を持つ両雄が武道館のステージに並び立つ姿は壮観だ。Ooochie(奥田)は赤いスパンコールのジャケットとパンツ、Koochie(吉川)は素肌にゴールドのロングコートとパンツをまとっている。2人とも全身“キラキラ”というよりは“ギラギラ”だ。このド派手な衣装からも、2人の遊び心と「観客に楽しんでもらいたい」というサービス精神が伝わってきた。

オープニングナンバーは彼らのテーマ曲とも言える「おちこち」だ。2つの強靭な歌声がユニゾンで鳴り響いた瞬間に鳥肌が立った。互いの個性が際立ったまま、共存・調和していたからだ。

バンドの演奏も重厚かつエネルギッシュ。ボーカル&ギターの2人に加え、2人の信頼するホッピー神山(Key)、湊雅史(Dr)、斎藤有太(Key)、大神田智彦(Ba)、Chloe Kibble(Cho)、mimiko(Cho)という6人のメンバーが集結した。

スリリングなボーカルとソリッドかつヘヴィな演奏に体が揺れたのは「Do The Shuffle」、Ooochie KoochieとChloeとmimikoのコーラスが観客へのエールのように響いたのは「Three Arrows」だ。この曲の後半で、<広島! サンフレッチェ!>というかけ声を<日本! 武道館!>と替えて歌うと、盛大な拍手が起こり、冒頭から会場内に高揚感と祝祭感が漂った。

「ごきげんよう。Ooochie Koochieへようこそ。大晦日に広島で最後のお祭りはありますが、この武道館公演もファイナル的な要素のあるライブです」とKoochieが挨拶すると、「Koochieは最初、『Koochie』と呼ばれるのを嫌がっていましたが、今や、『Koochieと呼んでくれ』と言うようになりましたね」とOoochie。気迫あふれる演奏から一転してMCは和やかで、まるで漫才コンビのような息の合った応酬に客席が爆笑するシーンもあった。

セットリストはアルバム『Ooochie Koochie』収録曲が中心だ。70's後半のディスコミュージックを彷彿させる「GOLD」では、大小のミラーボールの光が降り注ぐ中、Ooochieがハンドマイクを持って歌い、ダンスすると、熱いハンドクラップが起こった。

彼らのライブ活動の特徴のひとつは、それぞれがこれまでやったことのないことに挑んでいる点にある。Ooochieが踊りまくる、Koochieがギターを弾きまくる、それぞれがコーラスを務めるなどなど。それぞれのファンにとっても貴重なステージとなったに違いない。Koochieがボーカルを取った「片恋ハニー」は、今の年齢だからこその色気とせつなさの漂う歌声が染みた。

ダンスミュージックの名曲のカバーも今回のツアーの大きな見どころだ。OoochieのボーカルでのABBAの「Dancing Queen」とKoochieのボーカルでのデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」では、歌い手としての2人の多彩な魅力も堪能した。

「Dancing Queen」では、Chloeとmimikoが華麗な歌声で客席を魅了する場面もあった。今回のツアーで初披露という意味では、カバー曲もオリジナル曲も同じようにみずみずしく響いた。Koochieの広がりのあるノスタルジックな歌声が会場中に染み渡ったのは「マンデー」だ。

互いの曲を交換して歌うコーナーもあった。これは双方のファンにとっても心躍る企画だろう。Ooochieの歌う「LA VIE EN ROSE」とKoochieの歌う「Maybe Blue」では会場内から驚きと喜びの歓声が上がった。

それぞれが若き日に発表した歌を、還暦の彼らが歌い合うことによって、『この曲はこんな表情を持っていたのか』という新たな発見のある“温故知新”のライブとなったのだ。

彼らは青春期の歌に新たな息吹を吹き込んでいた。このユニットは、時代すらも軽々と超えていく。この他にも、「ギムレットには早すぎる」と「御免ライダー」も“交換”しての披露となった。

会場内が背筋を伸ばして聴き入ったのは「リトルボーイズ」だ。ひたむきな歌声と演奏によって、子を思う母親の気持ちのかけがえのなさや平和への祈りが真っ直ぐ届いてきた。

後半は、裸に帰った2人の初期衝動あふれるナンバーが続く展開となった。歌詞が全編広島弁で書かれたヘヴィなロックナンバー「ショーラー」、ユニット名のヒントになったリック・デリンジャーの「Rock and Roll, Hoochie Koo」の日本語カバーをしているKODOMO BANDのカバーも演奏された。

2人がギターキッズに戻ってギターを弾きまくったのは「GIBSON MAN」だ。本編最後の「OK」では観客の胸に情熱の炎を灯すような演奏が展開されて、会場内が一体となってシンガロングする熱きエンディングとなった。

アンコールも互いの曲を交換して歌う構成で、まずKoochieによる「さすらい」からの始まりだ。スケールが大きくてロマンティックな世界観がKoochieにぴったりだ。ラストの曲はOoochieがハンドマイクを持ち、踊りながら歌った「Juicy Jungle」。

Ooochieがこの曲の歌詞に沿って、アナコンダを首に巻くポーズを取りながら踊り、Koochieがグルーヴィーなギターのカッティングを披露した。観客もともに歌って踊り、まるで会場内の全員がOoochie Koochieとともに“裸に帰った”かのような開放感と一体感と多幸感のあふれる夜となった。

「ありがとうございました。還暦ということで面白いコンビができました」とOoochie、「また、何かあったらね」とKoochie。2人とも心なしか寂しげだ。さらにOoochieが「60歳だからこそ、できたんだよね」と言うと、Koochieが「60歳ということで、子どもに帰って甘えさせてもらい、やらせてもらいました。ありがとうございました」と観客に感謝の意を表した 。

還暦を迎えても守りに入らず、裸に帰って初めてのことに積極的に挑むステージ。同じ時代に、こんなにも頼もしい還暦のミュージシャンが存在しているという事実に胸が熱くなった。演奏中の視線での会話やMCでのやり取りなどから、2人の厚き友情を感じる瞬間もあったが、ただ麗しいだけの関係ではない。切磋琢磨し合っている者同士が奏でる音楽だからこそ、観客を鼓舞するパワーを備えているのだろう。

少年だった彼らを成長させてきたのは広島だが、デビュー後の大人の彼らをさらに大きく育ててきたのは、日本のおちこち(各地)の人々だろう。『広島への恩返し』から始まった彼らの旅は、全国の人々への感謝へと広がっていることを、この武道館公演で実感した。

ツアーは武道館2daysで一区切りを迎えるが、12月31日に広島グリーンアリーナでファイナルとなる追加公演が開催される予定だ。広島で始まり広島で終わる双六のようなツアー。だが、これはゴールではないだろう。裸に帰った2人はOoochie Koochieの活動を経て、また振り出しに戻り、新境地を切り拓いていくに違いない。

テキスト:長谷川誠

カメラマン:岸田哲平

「大人しゅうない 大人じゃけぇ」

誰よりも自由に、誰よりも自分らしく活躍し続ける奇跡のユニット・Ooochie Koochie。12月31日(水)の大晦日に、ツアーの追加公演として故郷・広島県で全国ツアーを締めくくる彼らに注目してほしい!

なお、Ooochie Koochie TOUR 日本武道館公演の模様は、2025年11月にWOWOWで独占放送・配信されることが決定している。また前月の10月には、ツアーに密着したドキュメンタリー番組などの放送・配信も決定している。詳細はWOWOW公式サイトをご確認いただきたい。


■Ooochie Koochie TOUR セットリスト


O1. おちこち
02. Do The Shuffle
03. Three Arrows
04. GOLD
05. 片恋ハニー
06. Dancing Queen
07. Let's Dance
08. マンデー
09. LA VIE EN ROSE
10. Maybe Blue
11. リトルボーイズ
12. ギムレットには早すぎる
13. 御免ライダー
14. ショーラー
15. Rock and Roll, Hoochie Koo
16. GIBSON MAN
17. OK


<ENCORE>
18. さすらい
19. Juicy Jungle

カメラマン:岸田哲平
カメラマン:岸田哲平
カメラマン:岸田哲平

アルバム『Ooochie Koochie』

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