9月21~23日の3日間、神奈川・Kアリーナ横浜にて、SKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル・BMSGによる『BMSG FES'24』が開催された。SKY-HIの他、Novel Core、BE:FIRST、MAZZEL、Aile The Shota、edhiii boi、REIKO、RUI、TAIKI、KANONの計23人が出演。富士急ハイランドでの初開催『BMSG FES’22』、東京と大阪の2か所4公演『BMSG FES’23』を経て、今年は最大規模を実現し3日間6公演で12万人を動員した。
 各日、新たな情報も解禁された。初日には、東京ドームにてBMSGアーティスト23人全員参加のスポーツイベント「BMSG presents THE GAME CENTER」を11月26日に開催することを発表。2日目には、SKY-HI、Novel Core、Aile The Shota、edhiii boi、REIKOによるクルー「BMSG POSSE」のアルバムリリースと単独公演(12月11日、東京・豊洲PITにて)を発表した。そして最終日では、BMSGの3組目のボーイズグループ結成に向けたオーディションプロジェクト「THE LAST PIECE」を始動させることがSKY-HIの口から告げられた。RUI、TAIKI、KANONもこのオーディションに参加する。
 『BMSG FES’24』は、BMSGに所属する23人の表現者としての個性が光り輝き、それらが乱反射し互いを輝かせ合うようなショーとなった。「どこにも居場所がなかった、かつての自分のような存在のために居場所を作りたい」というSKY-HIの想いから始まったBMSGにて、今、多くの才能が救われている。以下、最終公演(23日夜公演)のオフィシャルレポートをお届けする。

 今年のセットは、ステージ左右の前方にレストランのような丸いテーブルと椅子を設置。出演アーティストはそこに座ってライブを見ることもできる仕様となっていた。開演時間が近づくと、昨年『BMSG FES’23』のフィナーレを飾った“The Sun from the EAST”&“The Moon in the WEST”マッシュアップのライブ音源が流れ始めた。昨年の終わりと今年の始まりをつなげるように、曲が終わると、オープニング映像がスタート。設立4年目の今年、BMSGの新たな拠点として東京に構えた自社ビルにて、踊って、歌って、筋トレして、サウナに入って……と、一人ひとりのキャラクターを引き立てながら23人が紹介される。
 最終日の第一声を担ったのは、SHUNTO(BE:FIRST)。『BMSG FES’24』のために結成された3つのグループ「BMSG MARINE」「BMSG SKY」「BMSG GAIA」から、Novel Core、SOTA(BE:FIRST)、SHUNTO(BE:FIRST)、JUNON(BE:FIRST)、RYOKI(BE:FIRST)、RAN(MAZZEL)、EIKI(MAZZEL)、TAIKIから成る「BMSG GAIA」による“Glitch”で幕が上がった。世界のダンス大会で4度の優勝経験があるSOTAの《ガキの頃から1番が板に付く俺》、俳優としても活躍するRYOKIの《天は二物 三物/いや もっとくれるね》など、それぞれのストーリーを活かしたボースティングをかまし、フック前では、静けさの中で囁くRANの歌声に2万人が耳を傾ける。さらにRANが得意のポップダンスを披露し、JUNONが清らかな歌声で景色を一変させて、EIKIが普段は見せないような小悪魔的な笑顔をカメラに向けるなど、彩り豊かな個性が連なる。“Glitch”が終わると出演者全員がステージに上がり、BMSG第一弾アーティストであるNovel Coreが「この23人で『BMSG FES’24』始めるぞ!」と口火を切った。

 そこからNovel Coreのソロステージへと突入。この1年、全国各地の大型フェスに出演し、“Glitch”の歌詞通り《RapstarでRockstar》の称号を手にした、Novel Core。「1対1やりにきたぞ」と煽ってから、スタジアムロックに進化した“No Way Back”と“カミサマキドリ”、ラップスキルを見せつける“DOG -freestyle-”と、2万人のオーディエンスと「1対1」で人間的な熱量をぶつけ合って、全員の身体を突き動かしてみせるライブを作り上げる。Novel Coreには炎の演出が抜群に似合う。2月11日、ここKアリーナにて、自身最大規模の単独公演を開催する。
 Novel Coreが“MF”を歌い始めると、RYOKIとSHUNTOは左右のバルコニーに登場。BMSGの中でもロックとヒップホップのエッセンスが体内に流れていて、爆発力のある表現で魅せる3人の集結だ。そしてNovel CoreがBMSGを代表するかのように「今の俺たちを俺たちたらしめるものは、港区に建った自社ビルでも、この豪華なステージセットでもない。あなたと俺らでこの身体に刻んできた数多の傷跡と誉れだよ!」とBMSGアーティストたちに共通する土台について言葉にしてから、TAIKI、edhiii boi、RYUKI(MAZZEL)、RYOKI、SKY-HIも加わって、SKY-HIの楽曲“Name Tag”に、それぞれの「傷」を「誉れ」に変えるスタンスをラップに乗せた。

 「さぁ俺たちも始めようか」というSKY-HIの合図から、美しいシルエットがステージに浮かび上がる。NAOYA(MAZZEL)の登場だ。SKY-HI、MANATO(BE:FIRST)、RYUHEI(BE:FIRST)、NAOYA(MAZZEL)、SEITO(MAZZEL)、RYUKI(MAZZEL)、REIKO、RUIによる「BMSG SKY」が、Ryosuke "Dr.R" Sakaiのビートに「みにくいアヒルの子」のテーマや言葉をBMSGの美学に重ねた“Swan’s War”を歌い上げた。そして彼らからバトンを受け取ったのは、MAZZEL。まずはリーダーのTAKUTOが「まだまだブチ上がれるよな?」と挨拶。印象的な声がループするヒップホップトラック“Counterattack”、ブラスの音色が印象的なジャズテイストのデビュー曲“Vivid”、メロディアスなサマーチューン“Seaside Story”と、MAZZELの多面性を凝縮して魅せる内容で、気合いの入ったパフォーマンスが繰り広げられた。“Vivid”では毎度おなじみの盛り上がりポイントであるSEITOの《ごちそうさま》には、Novel Core、SOTA、SHUNTO、KANONも立ち上がってジョイン。TAKUTOの冷静さと情熱や強いラップとしなやかな歌のギャップ、HAYATOの自身が大好きなディズニーキャラクターのような愛らしさ、RYUKIの無邪気な人間性がそのまま溢れ出たラップなど、「俺たちが最強の個性派集団だよ」というRANのシャウト通り、昨年以上に8人の明確な個性を強固に掛け合わせて、パフォーマンスの迫力が増していることをを証明したステージだった。

 KAIRYU(MAZZEL)とREIKOによる“ICE -Ballad Ver.-”では、ピアノの伴奏と二人の美しい歌声とメロディが絡まりあって、全身が震える瞬間だった。KAIRYUが歌うと、メロディに深みが増す。続けて、REIKOのソロステージへ。ストレスを溶かしてくれるようなグッドヴァイブスが流れる“So Good”を届けると、「冬に新曲を出します! 楽しみにしててね」と発表。歓声が上がったまま、灼熱の夏を描くエギゾチックな“Neverland”で会場の温度をさらに上げた。REIKOは、自身の生活や感情表現の一部に「音楽」や「音に合わせて身体を揺らすこと」があるような、音楽との距離が近い表現者だ。REIKOのグローバルスターとしてのポテンシャルは、この先さらに開花するだろう。そしてREIKOが《自分次第だなんて すべて分かってるんだ》と歌い出し、SKY-HIが《誰かじゃない自分が まだそこで待ってるから》、RANが《簡単じゃない なら不可能じゃない》とつなげると、MAZZELのプレデビュー曲“MISSION”がREIKOとSKY-HIが加わった編成で披露された。

 ステージの色が赤色から青色へと一変し、「BMSG MARINE」が登場。Aile The Shota、LEO(BE:FIRST)、KAIRYU(MAZZEL)、TAKUTO(MAZZEL)、HAYATO(MAZZEL)、edhiii boi、KANONが、スタンドマイクで“Memoria”を歌い始める。Aile The Shotaは自分の心の奥底にある愛や願いを包み隠さず表現へと昇華するアーティストだが、この曲では、他の6人の《閉じ込めたfeelings》も解放させて、丸裸の心が差し出されるような歌が鳴り響く。歌い始めと歌い終わりをまだトレーニーであるが確かな実力を秘めているKANONに託して、普段はラップを得意とするedhiii boiのエモーショナルな歌を引き出し、TAKUTOのソロダンスパートも効果的に作るなど、Aile The Shotaのプロデューサーとしての手腕が輝くステージ。そこから“踊りませんか?”、“J-POPSTAR”、“Pandora”、“Villains”と自身の代表曲でソロパートを彩った。すべての人の幸せを願う気持ちが乗ったAile The Shotaの声で歌われる“踊りませんか?”では、歌詞のとおり、この会場を《楽園》へと塗り替える。そして“Pandora”からは、レイザービームが飛び交って重低音が響くダンスミュージックパーティー状態。現行R&B/ヒップホップを昇華した新しいJ-POPサウンドを日本のど真ん中で鳴らし、日本人に「踊る」カルチャーを伝染させようとしているAile The Shotaは、来年3月16日に国内最大級のホールである東京ガーデンシアターにてワンマンライブの開催が決定している。
 “Villains”が鳴り止むと、SKY-HI、JUNON、LEO、TAKUTOが乱入し“Tiger Style”へ。BMSGの寅年生まれたちによる、寅年のためのパフォーマンスだ。音源はTAKUTO以外の4人で完成しているが、今年もそこにTAKUTOがジョイン。5人のヤンチャな一面がより全開となった、ワイルドなステージを繰り広げた。そして「時を2年前に戻そうか」というSKY-HIの掛け声から、2年前から在籍していた初期メンバーで“New Chapter”。「新章突入!」と2年前の『BMSG FES』のテーマをシャウトしたが、思えばBMSGは常に新しい試みを活発に行っている状態で、ある意味、毎年が「新章」の幕開けともいえるだろう。

 「一番ふざけていい時間がきたってことじゃないの?」とSKY-HI。ここからは、BMSG POSSEの時間だ。仲間たちと音楽で遊ぶのがBMSG POSSEではあるが、SKY-HI、Novel Core、edhiii boiという三者三様のスキルフルなラッパーと、Aile The Shota、REIKOという2人のボーカリストの歌声が混ざり合う、贅沢な時間でもある。社長がラップを始めるうしろで、「BMSG」の旗を振り回すedhiii boi。今年発表した“MINNA BLING BLING”、“OVERDRIVE”を続けた。
 ここで前半が終了。トレーニーがリポーターを務めて、先輩たちに質問をするコーナーが始まる。「BMSGに入って一番印象に残っている思い出は?」という質問に、EIKIは「オーディションでCoreくんの“DOG”を踊ったんですけど、そんなCoreくんのチームに今回入ったことです」と真摯に回答。「トレーニーとして大切なことは何ですか?」と聞かれたTAIKIが「デビューするまで頑張り続けることです」と答えると、会場から熱い声援が湧いた。
 後半戦の一発目を任されたのはLEO(BE:FIRST)。BE:FIRSTは、「One Of The BE:ST」と題して各メンバーのソロ楽曲をリリースする企画を行っているが、第一弾のJUNONに続いて次はLEOに決定。『BMSG FES’24』で初披露された“I just wanna be myself”は、R&B、ファンク、モータウンを含んだポップソングで、「自分の好きなように生きよう」とLEOらしいメッセージが込められた楽曲となっている。歌を終えて、MCを挟み、「あれ? 浮いてるやついるな……?」というLEOからのパスを受け取ったのはedhiii boiだ。PAエリアで座っているedhiii boiがスクリーンに映り、“Uiteru”を歌い始めた。マイクを握りながら客席を歩き、途中でオーディエンスにステッカーを手渡し、ステージへと向かう。「飛び跳ねろ!」と叫び、ビートに合わせて自分も飛び跳ねながらステージの端から端までエネルギッシュに駆ける。《俺は無敵レベチ日本の歴史を変える為/叫ぶんだ 死ぬまで》というリリックが大袈裟ではないくらい、オーディエンスもカメラも音もすべて自分の掌の上でコントールしているかのようなスター性を発揮していた。自分の音楽が鳴っている瞬間は無敵状態になる、edhiii boi。「3年後、俺が二十歳になった頃、時代の先端にいてやるよ!」とシャウトしてから見せつけた”GALAXY“のパフォーマンスも、「自分からは媚びず、みんなを自分に惹きつける」という精神性が形となっていて、その言葉に強い説得力が帯びるほどだった。

 そのあとは、BE:FIRSTの最新アルバム『2:BE』に収録されているユニット曲のひとつ、SHUNTOとRYUHEIによる“Metamorphose”を初披露。この2人は、BE:FIRSTを輩出したBMSG初のオーディション『THE FIRST』の審査の一環で「96Black」としてオリジナル曲を発表しており、ファンにとっては待望だった。当時から長い手足を活かした色気の漂うアーティスティックな表現で注目を集めたが、当然表現力に磨きがかかっている状態での2人の融合に、2万人が息を呑んだシーンだった。『THE FIRST』に参加した時、RYUHEIはまだ14歳だったのだ――そんなことを、次の“14th Syndrome”で思い出す。SKY-HI、edhiii boi、RUI、TAIKIが音源に参加している“14th Syndrome”に、昨年同様KANONがジョインし、新たにRYUHEIの歌とラップも加わって、BMSGの同世代が集結した“14th Syndrome”が完成した。
 最年少メンバーたちに混ざってステージ上を走り回ったボス、SKY-HI。「みんなが知的に、立派に、自分自身も人のことも尊重して大きくなっていて、君たちみたいな若い才能が育っていくところを隣で見られることが、どんな実績・数字といわれるものよりも嬉しい」と、4人に感謝を込めながらSKY-HIにとっての「幸せ」の真髄について語ってから、ここでビッグニュースを告げる。2025年、BMSGとして3つ目のボーイズグループを誕生させるオーディションプログラム『THE LAST PIECE』の開催を発表。「シビアなときもあるかもしれないし、つらいときもあるかもしれないけど、絶対にずっとそばにいるので、一緒に乗り越えて勝ち取りましょう」と、RUI、TAIKI、KANONにエールを送った。そして、RUI、TAIKI、KANONは、ポケモンアニメ「POKETOON」新シリーズとのタイアップが決定している“Forked Road”を披露。「僕たちで必ず世界を獲りたいと思ってます」と歌唱前に言葉を残したTAIKIは『THE FIRST』参加時から自身の強い意思を乗せたラップが印象的だったが、それをさらに強固なものにし、KANONは懐の大きい歌を、RUIは遠くまで届く声を響かせながら、3人ならではの世界観を作り上げた。
 その後、MANATO、SOTA、Aile The ShotaによるShowMinorSavageが先輩の貫禄を見せつける。R&BとHIPHOPを心の底から愛する3人による“Thinkin’ bout you”、“Ocean”は極上だ。そしてSOTAとMANATOのダンスブレイクを挟んで、BE:FIRSTのステージへ。まずは“Mainstream”。フック前のRYUHEIの《based》で大歓声が上がることもそうだが、2万人の歓声をコントロールしてみせるかのようなパフォーマンスだ。しかし、「緻密さ」だけでは語れないのがBE:FIRST。“Boom Boom Back”ではアドリブを挟み、“Blissful”ではSHUNTOやRYUHEIの笑い声が混じるほど、ステージをプレイグラウンドに変えて自ら楽しみ尽くす姿に、気がつけば巻き込まれている。

 最後はボス、SKY-HIの登場だ。まずは今日までの物語を伝えるように、“タイトル未定”。アイドルとして生きるようになった14歳の頃からの経験を振り返り、居場所がなかった自分が、数少ない先輩たちからの愛を抱えながらどうにかサバイブし、かつての自分や業界から去ってしまった仲間のように既存のジャンルや枠組みの中で認められない若き才能を救うため、ヒップホップの基本である「Do it yourself」の精神性で1億を資本金に事務所を興し、『BMSG FES’24』の開催と「自分と仲間の幸せ」という立派な成功にたどり着いた――そんなライフストーリーを音楽で表現する。“何様”は、音源ではぼくのりりっくのぼうよみが歌っているパートを、この日はなんとEIKIが歌唱。さらに“Turn Up”でボスとしてのスキルとサクセスへの揺るぎない意志を見せつけて、BE:FIRSTを迎えて“To The First”へ。BMSGが始まるまでのストーリーを4曲に凝縮して描き切り、最後には「ある日、気づいたんだよね。俺がこれだけもどかしいな、つらいな、嫌だなって思う気持ちをいっぱいしてるのって、同じような気持ちをしてるやつと出会って、そいつの人生をよくするためなんじゃないかなって。そう思ってやったのが『THE FIRST』で、その結果、出会えたのがみんなで、今隣にいるのがBE:FIRSTで。俺は心から嬉しいです」と素直な言葉をこぼす。そして「こうやって社長に居場所を作ったのは僕たちだけではなくて、あなた一人ひとりです」と、オーディエンスにも語りかけるLEO。

「最後はぶっとぶくらい踊って遊ぼうぜ」と、23人全員で“D.U.N.K.”。サイファー状態で、トップに踊り出たのはTAIKI。LEOとAile The Shotaは野球ボールを使って魅せて、Novel Coreは“Mainstream”の振りを取り入れる。SOTAとSEITOのコラボレーションには会場が大いに湧いて、SEITOのブレイキンには「やばっ!」「まじか!」の声まであがる。ラストは“Brave Generation -United Remix-”に、23人全員分のパートを加えたバージョンを披露。歌い始める前、BMSG設立前は孤独に戦っていたNovel Coreが「俺にこんなにたくさん仲間を作ってくれてありがとうございます」とSKY-HIへと伝えて、二人は肩を叩き合った。
 『BMSG FES’24』は、社長であり全体プロデューサーであるSKY-HIが、BMSGに所属する22人の仲間たちの才能を輝かせたショーだった。これまでも「クオリティファースト」「クリエティブファースト」「アーティシズムファースト」で音楽作品を作り上げ、「人生ファースト」でアーティストが幸せに人生を送れる環境を守り抜いてきたBMSG。この先も、進化は続く。そして、23人の物語もまだまだ続く。

テキスト:矢島由佳子
撮影:田中聖太郎写真事務所

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