ロックに心酔した少年は、いつからひとつのカテゴリには収まり切らない、ひとつのものを食らいつくすだけでは満足できない人間になったのだろうか。それともこれは彼が生を授かる前から決まっていた、逃れられない運命なのだろうか。だがどんな物事も自分自身の頭と心で考え、真剣に向き合ってきたからこそ、彼は自分という軸を失うことなく居場所を広げ、様々な仲間と信頼関係を深めることができた。その仲間が増えれば増えるほど活力は増し、その場所を純粋に愛することができた。そんな彼の27年の歩みと現在を凝縮、体現するステージだった。
“The 27 Club”に影響を受けた廣野凌大/Bimiの生前葬として、彼の27歳の誕生日に開催された「Bimi Live Galley #04 -Dear 27th-」。廣野が主演を務めた舞台『鋼の錬金術師』の脚本・演出でも知られる石丸さち子が総合演出を、廣野がミュージカル『テニスの王子様』に出演した際に共演した俳優・画家のDAI GOTO.がメインイメージを手掛けた。ステージ上にはスロット台、DJセット、バスタブ、DAI GOTO.によるBimiの肖像画、部屋の一角のようなソファとテーブル、アンプが配備されている。
定刻にDJ dipが登場すると、それに続いてモノトーンの服装のBimiが、気の合う人間が集まる酒場に顔を出すようなラフな雰囲気で現れた。穏やかで鋭い緊迫感を纏いながら2021年6月にリリースした初楽曲「Tai」でこの日の幕を開ける。続いての「Die young」ではイントロから観客に気さくに話しかけたり、フリースタイルで今日の思いを言葉にし、すがすがしいパフォーマンスで積極的に観客を先導した。「Burn it up」では全身を躍動させて勇猛果敢に気魄をぶつける。その一挙手一投足は激しく音を立てて飛び散る爆竹のようで、彼が命を削ってステージに立っていることを強く印象づけた。
この日、東京は夕方から強めの雨が降り始めた。「生憎のくそったれな雨で、皆さんお足元が悪いなか来てくださってありがとうございます」と挨拶をしたBimiは、彼のパーソナルを象徴するものがステージに用意されていることに触れた後、自身の生い立ちを話し始める。夢を追うべきか悩んでいるときに家族に背中を押され、音楽を始めるつもりが思いがけないことから俳優の世界に足を踏み入れ、命を懸けて芝居の道を究める人々との出会いが彼に価値観の変化をもたらした。様々な経験を経て「音楽にこぎつけることができた」と話す彼は、「普段こんなこと言わないけどまじでみんなのおかげだと思います」「今後俺ももっと上がっていって、いろんな景色を観てもらえるように頑張る」と観客に感謝と決意を表明する。その表情はとても柔らかかった。
石丸とDAI GOTO.との出会いを振り返り、それがこの日につながっていると噛み締めると、最近まで27歳が人生のリミットだと思っていたこと、今は仲間やファンのおかげで自分の可能性を感じられていることに触れ、“27歳まで”と思って頑張ってきた自分のおかげでここまで来れたからこそ「今日そいつをここで殺そうかなと思う」と宣言する。そして「みんなと歌いたい曲を持ってきた」と言い、観客とともに「LOVE」を歌い出す。その後も「熱気」「Popstar」とたたみ掛けて会場のテンションを上げるも、バスタブに身を預けた「飼ふ-味変-」では一転、ステージの背面に広がるLEDモニターの演出で、歌詞の文字がゆっくりと彼の身体の上に降り注ぎ、覆いかぶさっていった。
文字に埋もれるBimiはまどろむように歌い、そのうち文字は煤となり天へ還る。その煤が少しずつ空間を漆黒に侵し、最終的には埋め尽くした。この楽曲を書いた当時の彼が抱えていた懊悩煩悶が可視化されるようだ。内観的なムードが高まる。「Awake now」は息を呑むほどの切迫感で、ソファに腰掛けてグラスに水を注ぎ、喉を潤した後に煙草を喫んで静かに歌い出した「27th -味変-」も、The 27 Clubに憧れ、生き急いでいた彼の姿が重なって見えた。当時の自分への手向けのような歌は物悲しくも慈しみに満ちていた。
DJ dipのソロパフォーマンスを挟み「ミツ蜂」で再び会場を熱狂させると、「アップダウンを繰り返すサウナみたいなライブ」と笑わせる。自身の血筋や家族関係について明かし「この人生を選べてよかった」と胸を張ると、「廣野の血を味わってもらいたい。これはエンタメに見えてリアルだったんだよね」と「博徒街道」を歌い出す。覇気があるのにどこかアンニュイで、憂いや繊細さが毒気とユーモアに深みを作る。音楽を通して自分自身の本質を探るような、精神統一にも近いステージだった。
フロアに背を向けて亡くなった祖父への想いを言葉にしながら心臓を突き、彼の白いシャツの左胸と右手は真っ赤に染まる。生の象徴でもある血液を纏いながら「怒鈍器」「Safe Haven」とエネルギーを放出すると、「輪 -味変-」では切腹のパフォーマンスで何度もマイクで激しく腹部を刺した。人生を芸道にベットした彼にとって、身ひとつで表現をするステージという空間が本心を最も純度高く解放できる場所なのかもしれない。DJ dipが去り、単身ステージに現れた彼のギタープレイからつないだ「Nemo」ではギターを抱きしめながら取り繕うことなく、満身創痍で泣き叫ぶように歌う。そして縋りついていたギターを最後衝動的に床へ叩きつけた。
「歪」の終わりに手で銃をかたどると、それを喉に突っ込み弾丸を打ち込む。ステージに倒れ込んだ彼を白い光が照らし、花弁が降り注いだ。やおら立ち上がった彼はふらついた足元で「OIL」を歌う。暗闇の中で人知れず零れ落ちた純粋な涙のような歌声は、彼の27年間の人生の走馬灯を見せるだけでなく、明日を迎えるための子守歌としても響いていた。
「Good-by」で過去の自分を見送ると、27歳を迎えたBimiはDJ dipとともに「暴食」で復活の狼煙を上げる。続いての「You Gotta Power」で壊れたギターに「ありがとう」と「さよなら」を軽快に告げた一幕は、長きにわたり囚われていた憧れとの決別、つまり生まれ変わったことを象徴するシーンだったと思う。笑顔で全身を振り絞ってパワーを送る観客を前にしたBimiの表情は歓喜に満ちており、まさに水を得た魚だった。
最後にDJ dipがこの日のためにサプライズで書き下ろした誕生日祝いのビートを流し、Bimiも咄嗟の出来事に戸惑いながらもフリースタイルで感謝を告げる。すると石丸が花束を持ってステージに登場し、彼に差し出した。フロアからも溢れんばかりの「おめでとう!」の声が響き、BimiとDJ dipが袖に下がった後も会場の興奮は冷めやらない。そんな熱量に呼び寄せられるかのように再びふたりはステージに現れ、「さっき(本編では)みんなにオチを任せちゃったから」と急遽「輪 -味変-」を再度披露し、この日を痛快に締めくくった。
Bimiが27歳の誕生日をこれだけ盛大に迎えられたのは、27年間の人生で信頼できる仲間が増えたことでThe 27 Clubへの憧れという呪縛から解き放たれたからであると同時に、The 27 Clubへの憧れという呪縛で苦しみながらも生き急ぎ、どうにか音楽にこぎつけて、音楽に振り向いてもらおうとなりふり構わずしがみついてきたからだろう。Bimiはひとりで戦い続けてきた自分を成仏させて、仲間と観客からもらった愛と期待を糧に生まれ変わった。彼の本当の進化はここからである。
Text by:沖さやこ
Photo by:Yusuke Baba(Beyond the Lens)
<Setlist>
Bimi Live Galley #04 –Dear 27th-
M1 Tai
M2 Die young
M3 Burn it up
M4 LOVE
M5 熱気
M6 Popstar
M7 飼う -味変-
M8 Awake now
M9 27th -味変-
M10 ミツ蜂
M11 博打街道
M12 怒鈍器
M13 Safe Haven
M14 輪 -味変-
M15 Nemo
M16 歪
M17 OIL
M18 Good-by
M19 暴食
M20 You Gotta Power
En 輪 –味変-
プレイリストリンク一覧:https://elr.lnk.to/27th
Release
■Major 1st ALBUM『R』
購入リンク一覧:https://elr.lnk.to/RCD
品番:KICS-4189
商品形態:CD only
定価:\3,600(税抜価格 \3,273)
仕様:限定スリーブケース(初回プレス分のみ)
<収録内容>
M1. 辻斬り
M2. 百鬼夜行 feat.Whoopee Bomb
M3. 無敵 feat.呂布カルマ
M4. Bright feat.YUKI(from MADKID)
M5. 額 -HITAI-
M6. Right-Hand Chance
M7. 軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子
M8. 暴食
M9. All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi)
M10. Nemo
M11. ゴースト feat.新藤晴一(from ポルノグラフィティ)
M12. 27th-味変-
M13. Bonus Inst -R- (Prod. DJ dip)
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