ライブ前、ステージに設置された巨大LEDスクリーンに大きな時計が映し出される。スクリーンの時計の動きに合わせて秒針の音が会場に響く中、時計には「楽」「喜」「不安」「怒」「悲」「希望」の文字が針の動きとともに浮かび上がる。そして、メンバー一人ひとりの顔がそれぞれのメンバーカラーを印象的に使用した映像で、そのスクリーンに大写しにされる。その映像にはメンバーごとに直前の時計の映像と一緒に浮かび上がった文字がインサートされる。
最初は、春乃きいなで「楽」。続いては、蒼井りるあで「喜」。そこから順に、上田理子が「不安」、瀬田さくらは「怒」、柳美舞が「悲」、そして希山愛は「希望」だ。そこからメンバーが横一列に並んだ姿がスクリーンを彩り、次の瞬間には今回のライブのタイトルである『わたし、恋始めたってよ!』の文字が映る。果たしてメンバーとともに映し出された言葉が何を意味するのか、この時点ではまだわからないが、その答えが楽しみになったことも含め、期待が高まる演出でいよいよライブは幕を開けた。
オープニングを飾ったのは、ライブのタイトルにもなっている最新シングル「わたし、恋始めたってよ!」だ。オートチューンのボーカルとクールな表情のシンクロが魅力を放ちつつ、爽快感を放つサウンドも心地いい。そんな「わたし、恋始めたってよ!」をパフォーマンスし終えると、春乃以外の5人は後方に向き、春乃はソロのダンスを披露し始めた。スクリーンには「楽」の文字が映り、春乃は柔らかい笑顔で舞うように踊る。そこから、6人は「びびび美少女」と「OTOMEdeshite」を続けざまに披露。明るく元気なナンバーで、一気に会場を盛り上げる。
2曲を披露したあとは、スクリーンに「喜」の文字が映り、今度は蒼井りるあがソロのダンスをパフォーマンスする。蒼井のダンスのあとは、スカのリズムが楽しい「無敵のビーナス」と可憐なアイドルポップ「ころりんHAPPY FANTASY」でファンを魅了していく6人。その後は、ここまでの2人と同じようにそれぞれが冒頭で振り分けられていた漢字の映像をバックにソロダンスを披露し、その言葉が表す感情に寄り添うような楽曲を2曲ずつ歌いつないでいく。どうやらメンバー人ひとりに振り分けられた言葉とこの日のセットリストのバックグラウンドにはストーリーがありそうだ。
6人6様のダンスでつないだ13曲を歌い、踊ったあと、6人はこのライブで初めてのMCで、ここまでの流れの意図を語り始める。まず、6つの言葉は、恋をしたときに抱く感情を表しているということ。そして、それぞれのメンバーに振り分けられた言葉をもとにその感情を表現するソロダンスを披露し、それに続く楽曲パートではやはりその感情に沿った2曲ずつのナンバーをパフォーマンスしていったということ。コンセプチュアルな演出とともに新たなライブパフォーマンスに挑んだ6人は、無事にそのチャレンジをした安堵感と満足感からか、とても充実した表情をしている。
そして、14曲目の「おっしょい!」からはそれまでのコンセプチュアルな流れから一転し、これぞアイドルと言えるキュートなパフォーマンスでファンを惹きつけていく。前半での新たな試みを成功させた自信が早くも現れているのか、メンバーの笑顔もダンスも歌もより力強く、弾けるような魅力を放っている。「ますとばい!」のあとにはメンバーのわちゃわちゃ感に思わず笑みがこぼれるMCを挟み、本編はクライマックスに向かう。
「スウィンギタイ」からダンサブルなナンバーを立て続けに披露し、会場にこの日一番の熱を生み出していく6人。そして、本編ラストでは、蒼井と柳が2021年4月に新メンバーとして加入してからの6人の写真がスクリーンに流れる中、さわやかなミディアムナンバー「FREEな波に乗って」が披露され、幸福な一体感に会場全体が包まれていった。
6人がステージを去ると、すぐにアンコールを求める手拍子が巻き起こる。ほどなくスタージに登場した6人が披露したのは、新曲「YOIMIYA」だ。スタイリッシュなエレクトロサウンドと感情を抑えた歌声、そして和の情緒を感じさせるメロディーの三位一体がクセになるナンバーで、ばってん少女隊はこの曲でまたさらなる新境地を開いたと言えるだろう。
二部構成ともいえるセットリスト、映像と演出で異なる表情を見せた本編、そして新たな可能性を感じさせた新曲「YOIMIYA」まで、2022年のばってん少女隊が大きな飛躍をすることを期待させる、そんなワンマンライブだった。
(おわり)
取材・文/大久保和則
写真/冨田むつみ、清水 舞