来年2026年には結成45周年を迎えるジャパニーズロックの金字塔THE MODS(以下・モッズ)。彼らの約3年ぶりのツアー『THE MODS Premium Acoustic Tour 2025 “REV REHAB AROUND”』が東名阪、福岡で開催。そのファイナルが6月5日、東京、恵比寿LIQUIDROOMで行われた。

 “REV REHAB” のネーミング通り、療養を余儀なくされていたリーダー・森山達也の今後の活動を視野に入れた復帰ライヴということになる。LIQUIDROOMには待ち侘びたファンが詰めかけチケットはソールドアウト。開演前には恒例の “モッズコール” が場内に響き渡る。オンタイムにステージにはステージに散りばめられたライトが灯されて、それはさしずめアメリカ南部のジューク・ジョイントのような趣きでライヴが始まった。

 メンバーが登場するや、奏でられたのは1985年にリリースされたアルバム『BLUE~Midnight Highway』に収録された「DREAM ON」だ。歌詞にある「夢を見なけりゃ 夢にはなれない」というサビの部分は現在の彼らを体現しているようでもある。そして2曲目の「LESS THAN ZERO」でも「踏みださなきゃ 意味がない」と歌う。そうやってモッズは自分たちの心情を映し出したステージを観せる。これはデビューから一貫している彼らの姿勢でもある。

 今回はアコースティック・セット。苣木寛之が奏でるロックの激情を内包させながらも繊細かつ、あたたかみのある響きを、北里晃一のベースがロールしてボトムアップする。堅固なリズムでフロント3人を支えるのが佐々木周だ。そして森山のヴォーカルは、ソウルフィーリングを内包し、情感豊かに、時には艶のあるハイトーンで歌詞に潜む物語に輪郭をつけていく。現在進行形2025年のモッズだった。

 もし、ロックンロールが若さの特権であるならば、彼らもまた、激情に任せた熱狂が伝説を生んだアーリーデイズがピークということになるだろう。しかし、モッズはそこに甘んじることがなかった。デビュー1周年の “雨の野音”、80年代半ば以降バンドブームの嚆矢(こうし)となった「激しい雨が」、来るべき90年代に向かい原点回帰した「NAPALM ROCK」、自らの殻をぶち破り新たなロックンロールのフォーマットを確立した「壊れたエンジン」… モッズは幾度となく目の前に立ちはだかる壁を乗り越え、しかし、本質は変えずにアップデートを重ねてきたバンドである。モッズを見ているとピークは自らが作り上げるものだと思えてならない。

  確かに年齢に抗うこともひとつのロックの方法論かもしれない。しかしモッズのように、長きに渡る経験から、生き様を音として熟成させ、今の自分たちにしか出来ない現在進行形のステージで見せるというのが本当のロックの在り方だと思う。少なくともこの日、LIQUIDROOMのフロアを埋めたファンは2025年現在のモッズを待ち侘びていた。

 中盤、ゲストミュージシャンとして、ソウル・フラワー・ユニオンからJAH-RAH(パーカッション)、そして「ガキの頃からの盟友」と森山が紹介するKOZZY IWAKAWA(ギター)がステージに。ファンキーなリズムと、ルーツに根ざしたカントリーフィーリングなギターを味方につけ、パーティーチューンの「WAH WAH」が奏でられる。そして、これに続く「HONEY BEE」はオリジナルよりテンポを落とし、メロディの美しさが際立たせる。同曲は、「TWO PUNKS」に続くアンセムと言っていいだろう。「元気を出せよ ぶっ倒れちゃダメさ」とファンは口ずさみながら森山を思い、モッズはファンを思う。こういう無言のコミュニケーションがバンドとファンの間に存在するのもモッズの魅力でもある。

本編終盤、名バラッドの「今夜決めよう」からロッキン・ブルースが加速する「クラレンス+アラバマ」、そして、ロックのダイナミズムをアコースティク編成で再構築した「WHY WHY WHY」では森山が立ち上がり健在をアピール。会場は大歓声に包まれた。

そしてこの日は、3回のアンコール。「HIT THE TOWN」、「不良少年の詩」、「激しい雨が」という新たな息吹が注ぎ込まれた80年代の名曲たち。3回目のアンコールでは、JAH-RAH、KOZZYを再びステージに呼び、「I FOUGHT THE LAW」だ。ソニー・カーティスがオリジナルのロックンロール・クラシックをザ・クラッシュが自らのものにしたように、モッズの「I FOUGHT THE LAW」も彼らのオリジナルといえるだろう。そして「GO-STOP BOOGIE」でフロアは大合唱。大円団を迎えた。2025年現在のモッズにファンは大満足だった。フロアからは拍手が鳴り止まない。

森山はMCで、「今年の秋から冬にかけてスタンディングのモッズを」と言う。現在進行形のモッズを期待したい。モッズは日本のロックの至宝である。経験を重ね、ノスタルジーなど鼻にもかけず唯一無二の音をクリエイトし続ける姿こそが彼らの本質であり、ここにロックの未来を見出すことができるだろう。

カメラマン:斎藤ユーリ
ライター:本田隆

【SET LIST】
01. DREAM ON
02. LESS THAN ZERO
03. 夜のハイウェイ
04. WAS 17
05. JET LAG BLUES
06. WORK HARD & LITTLE PAY
07. ANGEL
08. WAH WAH
09. やってられないぜ
10. HONEY BEE
11. BLACK BLITZ BOY
12. 今夜決めよう
13. クラレンス+アラバマ
14. WHY WHY WHY

<ENCORE1>
01. HIT THE TOWN
02. SO WHAT
03. NOT FADE AWAY
04. 不良少年の詩

<ENCORE2>
01. LIVE WITH ROCK'N'ROLL
02. 激しい雨が
03. 涙のワンウェイ

<ENCORE3>
01. I FOUGHT THE LAW
02. GO-STOP BOOGIE

【プロフィール】
THE MODSは常にアグレッシヴな活動スタンスと"現役(リアリティー)"をキープし続けているバンドである。1981年のデビュー以来、時代に流されることなく音楽に対する真摯な姿勢を貫き今日まで活動。ファンのみならず多くのアーティスト達にも多大な影響を与えてきた。技術や理屈だけでは創れないバンド然とした強靭なサウンドと、リーダーの森山達也の類稀なる歌唱力とカリスマ性が最大の魅力である。そして現在、元来のハードさに哀しさや優しさといった人間的な深みが加わり、音楽はもちろん、存在自体を必要とされ、年齢・性別を越え、幅広い層のファンに愛されている数少ないアーティストである。

THE MODS OFFICIAL WEB SITE

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