2013年4月3日にシングル「会いたいよ...会いたいよ!」をリリースし、アーティストデビューを果たした三森すずこ。

あれから10年、ベストアルバム『RPB』や「PINK♡BABY♡KISS♡」のリリース、6月にはひさびさとなる”みもパ!”の開催と、アニバーサリーイヤーを過ごしてきた。そんな彼女の10周年イヤーを華やかに彩るワンマンライブ”Mimori Suzuko 10th Anniversary Live RingRing PikaPika BangBang”が10月22日、東京・なかのZERO 大ホールにて開催された。今回は、三森すずこが歌ってきた10年間を凝縮したエンターテインメントショウの模様を、写真とともにレポートしていこう。

会場となったなかのZEROのステージ上にはカップケーキや卵などのカラフルなオブジェが並び、開演前からお祭りのようなワクワクとした雰囲気が会場を包み込む。開演を迎えると、同時に会場には小気味の良いゴージャスなインストが鳴り響き、ポップなサウンドに合わせて客席のファン=ミモリアンも手拍子で応えていく。会場全体のテンションが上昇していくなか、インストはハッピーハードコア調のハイパーなサウンドへと様変わり。

次の瞬間、ステージ中央にピンクのドレスを身に纏った三森すずこが登場。そのまま「PINK♡BABY♡KISS♡」の最初のフレーズを歌い始める。”君にキュンが届きますように”と三森が歌ったあとには、ミモリアンも一緒になって”are you ready?”の大合唱だ。

10周年記念ソングをライブの観客と共に歌い、祝う。まさにアニバーサリーライブにぴったりの幕開けである。テンポの速いビートに乗せてポップでキュートな三森が歌っていくと、ステージ奥からは色とりどりの衣装を身に纏ったダンサーたちがやって来て、ステージ上がカラフルに彩られたなかで、サビでは細かい手の動きがシンクロしたダンスを見せていく。キラキラと眩しいステージ上で、テクニカルなパフォーマンスを展開する一方で、その中心にいる三森の表情がそれ以上にキラキラとした笑顔に満ち溢れていたのが印象的だった。

 そんな圧巻のオープニングに続いて披露されたのは、2014年にリリースされた4thシングル「せいいっぱい、つたえたい!」。客席には緑のペンライトが灯されるなか、ポップで爽やかなサウンドと共に、ここでもダンサーと息のあったダンスを見せる。そこからまたしてもサウンドは変化、ジャジーな音に乗せて「恋はイリュージョン」へと続く。ここまで、まるで時間旅行のように三森すずこの10年を行き来する構成も印象的だったが、そのなかでアッパーな曲調で聴かせる序盤では、ダンサーを交えてのパフォーマンスが曲調と共にそれぞれ異なる光景を次々と見せてくれるようで、彼女のアプローチの幅広さ、そして改めて歴史の深さというものを感じさせるセットとなった。

のっけからみもりん流エンターテインメントをたっぷり堪能したあとは、最初のMCへ。ここでもとにかくうれしそうなニコニコとした表情が印象的。ワンマンライブとして2年ぶりにステージに帰ってきた喜びを爆発させつつ、ミモリアンに「みんなにもおかえりー!」と言うと、客席からは「ただいまー!」の返事が返ってくる。今年に入ってライブでの規制が緩和されたこともあり、客席のリアクションがダイレクトにステージに届くことに、三森本人だけではなく会場全体が喜びに包まれているようだった。

そんなハッピーな空間のなかで、「みんなと一緒に特別な一日にしていきたいと思います!」と改めて宣言したあとは、続いての楽曲「Colorful Girl」へ。最初はピンスポットの下で三森のアカペラからスタート。そのあとは、パラソルを持ったダンサーが登場してアップテンポに。もちろんサビでの”Colorful Girl☆Colorful Girl☆”のパートは観客がしっかりシンガロングし、中盤での三森の音頭で始まるペンライトの高速カラーチェンジも健在だ。

改めて”三森すずこのライブに来た”という光景を目の当たりにしながら、続いての「FUTURE IS MINE」では歌詞にも登場する”モフモフマイフレンド”なぬいぐるみやピンクのリコーダーといったアイテム使いも巧みに、視覚的にも楽しいステージが展開されていく。そして「ドキドキトキドキトキメキッス♡」ではお馴染みのアッパーな高速ビートに乗せて、手先を活かしたタットダンス的な振り付けを見せる。ここもまたさまざまなサウンドと演出で楽しませるブロックとなった。

MCでは、「ドキドキトキドキトキメキッス♡」の終盤で投げキッスを見せたことに触れ、「みんな、私のハニートラップに引っかかってくれた?」とかわいらしくおどけてみせたあとには本日の天気に触れ、「今年、晴れたの!」とうれしそうに報告。思えば最初のツアーであった”三森すずこ ライブツアー2014『大好きっ』”の東京公演では記録的豪雨だったこともあり、ライブでは雨という思い出が強いこの10年、「10年目にして晴れ女になりました!」と、この日が快晴だったことに喜びを表した。

まさに晴れ女らしくサニーな表情のまま「引き続き”RingRing PikaPika BangBang”をお楽しみください!」と言ったあとの次のブロックでは、アコースティックセットへ。ステージ上には、ベースに黒須克彦、ピアノに今井 隼、ギターに小池龍平という布陣で、まずはアコースティカルなインストが披露される。そののち「星屑のカーテン」のメロディと共に、白いドレスにティアラを頭に飾った三森がステージに再登場。これまでダンサブルなステージをヘッドセットマイクでパフォーマンスしていたが、ここからはハンドマイクに切り替えて、しっとりと優しい歌唱を聴かせる。MCを挟んでからの「ヒカリノメロディ」では今井のピアノに乗せてゆったりと、そしてよく通る綺麗な歌声を聴かせたかと思えば、アコースティックな演奏のなかにブレイクビーツが加わったローファイヒップホップ調の「アレコレ」では、ゆったりとした歩調でステージを歩きながら語りかけるようなフロウを聴かせる。

次のMCでは”バンドメンバーに聞きたい三森すずこの思い出コーナー”と称し、突如メンバーにこれまでの思い出を聞く三森。そんなほっこりとしたムードのなかで鳴らされたのは、彼女の代表曲のひとつ「エガオノキミヘ」。ピアノ主体のアレンジで、より三森のボーカルが美しく、そして優しく響く名演となった。そしてこのブロック最後には、「アコースティックの最後は、みんなと私の”これから”に向けて、この曲を歌いたいなと思います」と告げて、『RPB』に収録された新録曲「鈴がなる日」が鳴らされる。彼女が「みんなと私」と表明した通り、会場はステージと客席を繋ぐように明るく照らされる。そのなかで10年を迎えた喜びを歌い上げる姿は実に感動的で、彼女のミモリアンへの優しい想いも伝わる素晴らしいパフォーマンスとなった。

アコースティックセットのあとは、またしても会場の雰囲気が激変し、アグレッシブなEDMサウンドのなかで、みもりんダンサーズたちが激しいダンスを展開する。ふたたび会場のボルテージが上昇していくなかで、次の曲、あるいは次のみもりんの衣装は……?とステージ上に注目が集まるなか、「みんなでイエー☆オーッ!!」のサウンドとともに、赤い衣装の三森が1階客席の後方から登場。もちろん手にはタオルが握られている。ラテンのリズムに乗せてタオルを振り回せば、観客も同じくタオルを手に”イエー☆オーッ!!”の大合唱だ。序盤ですでに観客の歓声やコール&レスポンスは存分に聴かれていたと思っていたが、ここからのブロックはそれにも増してすさまじく、まさに大歓声のなか客席を練り歩くみもりんという、お祭り騒ぎな光景が見られた。そしてステージ上に戻ってきたあとは、そのまま「純情 Da DanDan」のイントロが鳴らされると、これにも客席からとてつもない大歓声が響く。そしてステージ上の三森はおなじみのハットを被り、ダンサーと共に椅子を使ったパフォーマンスを見せるという、初期から見られたみもりんらしいステージが展開されていく。

そしてそのあとは、ステージ後方のスクリーンに、何やら野球のスコアボードが映される。ピカピカオールスターズ対バンバンジャイアンツの試合で、スコアは5対3でバンバンジャイアンツの2点ビハインドの模様。アナウンサーが臨場感たっぷりに試合の模様を実況するなか、2アウト満塁でバッターボックスに立ったのはピンチヒッターの三森すずこ、というシチュエーションだ。

そしてアナウンサーが「ピンチをチャンスに変えろ!」と絶叫……となると次の曲はもちろん、「チャンス!」だ。もともと会場が一体となって盛り上がる楽曲だが、このような演出のあとでは観客のテンションは輪をかけて急上昇。まさに耳をつんざくようなチャントと大合唱がこだました。そして曲の中盤では野球パート(?)へと戻り、三森はバッターボックスへ。ニコニコとした表情でライブを行っていたこれまでとは一変して、勝負師の真剣な表情がスクリーンに大映しとなる。

ピッチャーからの投球を何球か見送ったあとに、おもむろにバットを外野スタンドに向ける予告ホームランのポーズを見せれば、スタジアムの観客(?)も三森へ歓声を送る。そして運命の一球が投げられると、カキーンという抜けのいい音と共に白球はスタンドへ……! 見事逆転満塁サヨナラホームランという結末と共に曲が再開されると、会場にこだまする歓声はまたさらに増大し、とてつもない熱狂に包まれていった。

ライブもクライマックスに差し掛かり、この上ない盛り上がりを見せるなかで、ステージ上の三森は観客に向けて「ここからはみんなもダンスに協力してもらうコーナーです!」と、ライブタイトルにある”RingRing””PikaPika””BangBang”それぞれを模したポーズを観客から募っていく。それを受けて始まった”TINY TRAIN TOUR”の中盤では、その場で考案された”RingRing PikaPika BangBang”ダンスを観客と一緒に踊っていく。

ここでの、即興的ながら観客と一体になった光景がまた素晴らしく、ミモリアンと共に作り上げるエンターテイメントショウが完成した、楽しくも感動的な瞬間であった。しかもそれが、「みんなでイエー☆オーッ!!」からMCを挟まずにさまざまな演出がノンストップで繰り広げられたことも驚くべきことだろう。エンターテイナーとしての三森すずこのすごさ、そしてタフさを目の当たりにしたブロックでもあった。

本編最後のMCでは「この10年、みんなの応援があってここまで来ることができました、本当にありがとうございました!」と改めて感謝を述べる。残りの楽曲もわずかなところで届けられたのは、「ユニバーページ」のメロディアスなイントロだ。オレンジ色に照らされたステージで三森は、先ほどまでタフなセットを経験してきたとは思えないほど軽やかにステージ上を舞う。どこか神々しさすら感じさせる光景のなかで、観客も精一杯歓声を送るという、シンプルながらあまりに美しいモーメントが届けられた。

そしてそのあとには、本編最後の曲となる、『RPB』収録の新録曲「ね、そうでしょう!?」へ。背景のスクリーンには、これまでの過去のライブオフショットがフラッシュバックする。この10年の思い出をたどるように、そしてタイトル通り観客に語りかけるような三森の歌声はいまだ瑞々しく、しかし歴史を経た深みも感じさせる、まさにベストなパフォーマンスだった。最後には「またたくさん思い出つくろうねー!」と叫び、ライブ本編を終えた。

本編が終わったあと、鳴り止まない客席からの大歓声に呼ばれてスタートしたアンコールでは、ライブTシャツと青いスカートといういでたちで登場、「大きな愛で君を抱きしめよう」から。王道の爽やかなサウンドのなかで、”好きだ!好きだ!好きだ! 叫ぼう...大好きだ!”と三森が愛を叫べば、観客はすぐさま「みもりん!」と愛をレスポンスする。お互いが愛で抱きしめ合う、ハッピーな空間が形成されていった。

MCで「”RingRing PikaPika BangBang”楽しんでくれたかな?」と問い掛ければ、満場一致の大歓声が返ってくる。「今年は10周年イヤーということで、今日はとっても楽しみにしていました。それはみんなも一緒だと思うけど! ねー!?」と喜びを伝えた。

あとは、告知や写真撮影を挟み、「まだまだ続いていく三森すずこのアーティスト活動、これからもよろしくお願いします」と改めて今後に向けての意気込みを語った。そして「次はみんなに伝えたい、みんなのための曲です!」と言えば、観客も待っていましたと大歓声を送る。鳴らされるのはもちろん「スマイリウム」だ。サビでは観客も一緒に同じ手の振りを見せるこの曲、終盤でも三森が”私とみんなで”と歌い、そのあとの”夜空が創れるなら”と観客が歌う感動的なシーンも含めて、改めて”みんなのための曲”であることを実感する。そしてそこから三森が”歌い続けるよ”と歌うお馴染みの流れだが、それが10周年というタイミングで歌われることにさらなる意味を感じさせるようで、グッと胸に迫るような瞬間でもあった。

アンコール最後の曲を歌うなかではどこか感極まった三森だったが、エンディングでは何か大きなものを達成し、その次へと向かおうとしているなかで、多くを噛み締めるような、そんな充実感たっぷりな表情が伺えた。そうした感動的なエンディングを迎えたアンコールだったが、一度ステージ上の演者が舞台からはけたあとも、客席からはアンコールを催促する歓声が響き渡る。

そこから三森ひとりが戻ってきたダブルアンコールで、彼女は「10周年イヤーということで思い出深い一日になるんじゃないかなと予想はしていたんですが、思った以上にステージに出たら楽しすぎて、想像を超えてきて、今すごく信じられないぐらいハッピーです!」と喜びを表現する。その一方で、「10年経ったら経ったで、えっ、まだ10年か……という」と素直な気持ちを語り始めた。

「きっと、何年経っても『まだまだ』って思い続けるんだろうなって。みんなも仕事や学校や習い事で、『自分はまだまだだな』って思っても、『まだまだだな』って思う気持ちって前に進む原動力だと思う」と”まだまだ”というワードをポジティブに伝えたあとは、「まだまだ、まだまだ、これから11年目、12年目、15年……20年! みんなが応援してくれる限りは私もアーティスト・三森すずことして進んでいきたいと思っています!」と力強く宣言。

最後には「大事なあの曲歌ってないよね? 10年前、みんなに出会った楽曲です。これからも三森すずこに……」と言えば、観客も一緒にデビューシングル「会いたいよ...会いたいよ!」のタイトルコール。ステージ背後のスクリーンには、これまでのさまざまな場所で歌ってきたこの曲のライブ映像がステージ上とシンクロして映される。この10年のさまざまな時代のみもりんが映されるなか、ステージ中央には今のみもりんが立っている。そしてその今の彼女こそが、ミモリアンが愛するフレッシュでキュートで、美しい存在であることを表現するような、そしてその”今”から”未来”へとあらたな一歩が始まったことを示すような、そんなグランドフィナーレとなった。

三森すずこの音楽における10年は、彼女のイマジネーションがさまざまな方向に放射されたエンターテインメントという10年でもあった。そうしたカラフルなエンターテインメントをぎゅっと凝縮し、大きな愛でデコレートしたのがこの日のステージで、楽曲ごとにころころと表情を変えて楽しませる、歴史を感じさせる濃厚なものだった。一方で、10年というなかでたくさんの歴史を作り上げてきたあとに、彼女は「まだまだ」という言葉を選択した。その言葉通り、2024年には上海での10周年ライブ、そしてビルボードライブでのステージが待っている。まだまだ、僕らはみもりんのライブと、その笑顔に会えるのだ。

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